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巻き戻り前
限界1
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アイシャは心労から、誰から見ても痩せ過ぎだと分かるほどにやつれ、艶やかだった髪からはその艶がなくなってしまった。
きらめきを放っていたその大きな瞳はうつろで、夜は眠れない日々を過ごしていた。
リズリーやレオと顔を合わせるのに耐えられなくなってしまったアイシャは、自室から一歩も外へ出なくなってしまった。
いつか戻って来てくれるかもという期待もいつの間にか消え去ってしまったアイシャは、夫婦の寝室に向かう扉に幾重もの錠を備え付けた。
今更、夫婦の部屋の扉に鍵をつけてレオとの接触を拒むようにしたことに無意味なことだと分かっていても、もうレオがこの扉をいつか使って私の元へ戻って来てくれるという期待を抱き続けることに耐えられなくなってしまった
。
だから、鍵をかけてそんな期待を断ち切ろうとしたのだ。
それからというもの、自室の一人用のベッドで寝起きしてそこから必要がなければ一歩も部屋の外へは出ない日々を送っていた。
今まであの二人がこれまで夫婦の寝室で過ごしていないことだけが救いだった。
もしあの二人がこの部屋と扉一枚でつながっているあの夫婦の寝室で閨を共にすると思っただけで、もう胸が張り裂けそうだった。
伯爵夫人としての仕事は屋敷に関することが多く、自室に閉じこもってその執務を行うのは困難ではあったが、使用人一同が皆協力してくれたおかげで何とかなっていた。
リズリーの散財も、もはや止めようがなく主のレオがそれを許していたので自分にあてがわれている予算をその分減らしていった結果、伯爵家の妻という立場でありながら使える予算はこの数か月何も残ってはいなかった。
よもや設定された予算以上を食いつぶしているようで、伯爵家の財産はどんどん減っていく一方だった。
精神的疲労から食べては吐きを繰り返し、やって来た医師に処方された薬でさえも飲んでしまえばまた吐き出してしまうほど状況は悪化していた。
そしてある日、遂にリズリーにせがまれたレオナルドはメアリーと夫婦の寝室で夜を共に過ごしてしまった。
その日、二人の情事を聞いてしまったアイシャはメアリーの部屋へ駆け込んだ。
メアリーは自分の大事な主人であるアイシャにこのような思いをさせるレオナルドがどうしても許せなくなった。
きらめきを放っていたその大きな瞳はうつろで、夜は眠れない日々を過ごしていた。
リズリーやレオと顔を合わせるのに耐えられなくなってしまったアイシャは、自室から一歩も外へ出なくなってしまった。
いつか戻って来てくれるかもという期待もいつの間にか消え去ってしまったアイシャは、夫婦の寝室に向かう扉に幾重もの錠を備え付けた。
今更、夫婦の部屋の扉に鍵をつけてレオとの接触を拒むようにしたことに無意味なことだと分かっていても、もうレオがこの扉をいつか使って私の元へ戻って来てくれるという期待を抱き続けることに耐えられなくなってしまった
。
だから、鍵をかけてそんな期待を断ち切ろうとしたのだ。
それからというもの、自室の一人用のベッドで寝起きしてそこから必要がなければ一歩も部屋の外へは出ない日々を送っていた。
今まであの二人がこれまで夫婦の寝室で過ごしていないことだけが救いだった。
もしあの二人がこの部屋と扉一枚でつながっているあの夫婦の寝室で閨を共にすると思っただけで、もう胸が張り裂けそうだった。
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そしてある日、遂にリズリーにせがまれたレオナルドはメアリーと夫婦の寝室で夜を共に過ごしてしまった。
その日、二人の情事を聞いてしまったアイシャはメアリーの部屋へ駆け込んだ。
メアリーは自分の大事な主人であるアイシャにこのような思いをさせるレオナルドがどうしても許せなくなった。
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