もうあなたを離さない

梅雨の人

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巻き戻り前

夫婦の亀裂1

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レオがリズリー様を屋敷に連れてきてからずっと一人寝をするようになった。

夫婦になってから、レオナルドと二人で使っていたこのベッドは私一人には大きすぎて寒く感じる。

これまでずっと、夫婦の寝室でレオナルドと寝てきた私は深い孤独を感じた。

各部屋にも一応ベッドを備え付けはしたが、私たちは絶対に必要のないものだと思っていたし、レオナルドもそう断言していたのを覚えている。

それもあるし、いつかレオナルドが私の元に戻って来てくれるという希望も込めて夫婦の寝室での一人寝を続けた。
私も意地になっていたのだろう。

幾日も寝室に現れないので、扉続きになっているレオナルドの部屋で寝ているのかと疑ったが、そこにレオナルドはいなかった。
やはりリズリー様の部屋で過ごしているのだと容易に想像でき胸が締め付けられる。

夫婦仲がぎくしゃくし始めたころからレオナルドを見かけることは減っていたが、今となってはたまに偶然顔を見かける程度になってしまった。

ある日気分転換にと侍女にも勧められ、屋敷の庭園を散策していた。
よほどのことがない限りは、レオナルドと一緒に歩いてきたこの庭園を一人で散策した。

庭園はよく手入れをされていて、私の好きな花々が咲き乱れてくれている。
ここにはまだ、私のことを考えてくれたレオナルドが作ってくれた場所が残っていたんだと気が付き、でもそれがどうしたと自嘲してしまう。

この庭を考えてくれた時は私のことを想ってくれていたとしても、今レオナルドの思っているのはあのリズリー様なのだ。

これまで色づいて見えていた花々がモノクロの絵のように見えてきた。
自分はもうここで花を愛でることも出来なくなってしまったのかと呆然とした。

そんな私を察してか、侍女がそろそろ部屋へ戻りましょうかと声をかけてくれたので踵を返したときだった。

向こうの生垣から、リズリー様が楽しそうにレオナルドと話す声が聞こえてきた。

生垣の隙間からちらりと見えたリズリー様はそれはそれは高価な宝石をこれでもかというほど身につけていた。
二人はセットされたテーブルで優雅にお茶を楽しんでいるようだった。

レオナルドの表情は笑顔で溢れ、リズリー様を慈しむ視線を向けていた。


その視線は私にではなくリズリー様に…。
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