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ローズ
妻の席
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国王の仕事に追われる忙しい日々を過ごすサミュエルに、せめて朝夕の食事だけでも時間を合わせて一緒にといわれたローズはその日、夕餉の席に足を運んだ。
国王としての仕事以外はブリアナに寄り添っている愛しい夫に振り向いてもらえない寂しさを堪えつつも、食事だけでも一緒にというサミュエルの気持ちを嬉しく思った。
そこはいつも、夫婦のほかに、ルイスとブリアナも時間が合えば食事に同席できるようになっていて、ただ、国王と王妃夫妻の席の位置だけは決められていた。
部屋に到着したローズは、思わず足を止めた。
納得のいかない顔のルイスと、仲良く国王夫妻の席に座るサミュエルとブリアナがいたのだった。
「ローズ様…申し訳ないのだけれど、どうしてもここに来るとウィリアム様との楽しかった食事の時間を思い出してしまうの。私がこの席を使うことを許していただけるかしら…。」
ブリアナの声はさも、申し訳なさそうに震えていたが、サミュエルから見えないようにしているその表情は厭らしい笑みを含んでいるのをルイスもローズも見逃さなかった。
サミュエルもわずかに申し訳なさそうにしているものの、ブリアナが自分の妻の席に座っている状況を満足げに見ているのを目にたローズは拒否することができなかった。
美味しいはずの食事は、ローズには何の味も感じることはできなかった。
会話も全く頭の中に入ってくることはなく、ローズは早々に席を立った。
「ローズ義姉さん。」
「ルイス様。」
「申し訳ない。ブリアナ義姉さんがあんなことをいいだすなんて。いや、あの人ならあれくらい普通にやりそうな気もするが…。ローズ義姉さん、申し訳ない。兄さんがブリアナ義姉さんを止めてくれたらよかったんだけど…。」
「ルイス様。ルイス様のせいじゃありません。どうかこれ以上私に謝らないでくださいませ。」
「しかし…。」
やるせない気持ちでいたのだろうルイスに、大丈夫だと言い聞かせその場を後にしたローズだった。
部屋に戻ったローズは、先ほどの光景を思い浮かべると、あれはまるでサミュエルがまだ婚約者だった時にブリアナと逢瀬を繰り返した光景のようだったと悲しく思った。
こんな時、ウィリアムがいたらきっと自分を助けてくれただろうにと、今は亡きウィリアムの存在の大きさを改めて感じ、もういなくなってしまったウィリアムを想い涙を流した。
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こんな時、ウィリアムがいたらきっと自分を助けてくれただろうにと、今は亡きウィリアムの存在の大きさを改めて感じ、もういなくなってしまったウィリアムを想い涙を流した。
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