初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。

梅雨の人

文字の大きさ
上 下
22 / 54
ローズ

寂しさを耐えて

しおりを挟む
突然のウィリアム毒殺という知らせに衝撃を受けた二人は、すぐに王宮に駆けつけた。

「ルイス!」

「サミュエル兄さん!」

「ああ…なんてことだ…。」

「サミュ…」

「ああ…ローズ。ローズ、大丈夫か?」

自分の兄が毒殺された衝撃もあるというのに、こんな時でも自分を気に掛けてくれるサミュエルをローズは頼もしく感じた。

「サミュエル兄さん、分かってると思うけど、兄さんが次の王座に就くことになるのは間違いない。そして、ローズ義姉さんは王妃になる。ローズ義姉さん、大変だと思うけど僕も出来るだけローズ義姉さんを支えるから。」

「ありがとうございます。ルイス様…。」

「ローズ、こんなことになってしまって申し訳ないが、私は君を必ず守って見せる。だから私と一緒にこの国を導いて行ってくれ。」

「ええ、サミュ。あなたと一緒なら頑張れそうです。それにウィリアム陛下の為にも。」

サミュエルの婚約者だった時、ブリアナとサミュエルの言動に心が折れかけていたローズにふと、未だに大事に取ってあるピンクの薔薇をくれたウィリアムを思い出した。

優しくて、暖かく自分を救ってくれていたウィリアムのその早すぎる死に、ローズも悲しみでいっぱいになった。

そして、サミュエルの国葬が行われ国民が悲しみに包まれる中、速やかに新国王としてサミュエルの戴冠式が行われたのだった。

「サミュエル様、いえ、サミュエル陛下。」

「ブリアナ義姉さん。ウィリアム兄さんがいなくなって辛いと思うが、私たちをいつでも頼ってくれ。」

「ブリアナお義姉様サミュエル様のおっしゃるとおりですよ。ぜひ私達を頼ってくださいませ…。」

ウィリアムが亡くなって城に戻ってきたサミュエルとローズは、ブリアナの心境を慮り寄り添おうとしたが、しかし、ブリアナがいつも必要としてくるのはサミュエルだけであった。

そして、いつしかサミュエルも時間があればブリアナに寄り添うようになり、城に戻るまでの甘い夫婦の時間は無くなってしまった。

サミュエルが急に遠くに行ってしまったような気分になったローズは寂しさを覚えるものの、夫を亡くして辛いだろうブリアナを想いぐっとその寂しさを耐えた。

戴冠式後の夜会では、サミュエルとブリアナのローズを軽んじるあり得ない行いに深く傷つけられたローズだった。

しかし、それからも無神経な二人の行動は日々悪化していった。

ローズは慣れない王妃の仕事を何とかこなしていくなかで、サミュエルがブリアナに寄り添う寂しさを紛らわすかのように、双子の世話と仕事に没頭するようになったのだった。

ルイスはそんなローズになんとか寄り添い、最大限の力を貸した。

そして、城に後一年留まることになったブリアナにルイスは鋭い視線を送ったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ
恋愛
 今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。  優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。  そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。  わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。 ★ 短編から長編へ変更しました。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。 なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。

【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける

堀 和三盆
恋愛
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」  王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。  クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。  せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。  キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。  クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。  卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。  目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。  淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。  そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

処理中です...