初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。

梅雨の人

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ローズ

それでも破棄できない婚約1

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初めて殿下の婚約者として出席することになった夜会では、公爵家まで殿下の側近の方が迎えに来てくださった。

サミュエル殿下は城に私が到着すると現れ、私をエスコートしたのだった。

「忙しくて君を迎えに行けなくて申し訳なかった。」
「いえ…謝罪されるようなことでは…。」

そう一言二言会話を交わした私たちは会場に入場した。
ファーストダンスを婚約者の私と踊る殿下はおだやかな顔を私に向けており、周囲を驚かせていた。

「なんと…。サミュエル殿下もやっとかなわぬ思いを断ち切りローズ嬢を。」
「ええ、びっくりですわ。あのような表情を婚約者様にみせるようになるとは。」

囁くような周囲の声にさらに内心白けてしまっていた私をよそに、サミュエル様は私の耳元で囁いた。

「ローズ嬢。申し訳ないがこの後ブリアナ嬢と踊る約束をしているので少し君から離れても大丈夫だろうか。」

それみたことか!と期待を裏切らないこの展開に笑いを堪えるのに苦労した。

私に穏やかな顔を向けているのがなんだというのか。

そんなものに騙されるなと声高々にみんなに知らせてやりたい気持ちを押し殺しながら、それが殿下の演技であることを見抜いていた私は、笑顔で答えたのだった。

「どうぞ、殿下ごゆっくり楽しんできてください。私のことはお気になさらず。」

私があまりにもあっさりと答えたためかどうかは知らないが、惚けた顔が一瞬、思い切り引き攣ったように見えたのは気のせいだろうか。

何かローズに言いかけたサミュエルであったが丁度音楽が終了してしまった。

そしてダンスが終わるとローズに一度振り返ったものの、ウィリアム王太子殿下から許しを得たサミュエルは、それはそれは隠せもしない幸せそうな顔でブリアナとダンスを披露していた。

その二人の姿を見た周りの者たちは、やはりあの二人は未だにそういう関係だったのかと眉を顰めるのであった。

想像通り置いてきぼりを食らった私だが、両親や兄、友人など多くの人々に囲まれ和やかな時間をすごしていた。
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