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お似合いの二人3
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戻ってきた夫は、私の父であるハーゲンシュタイン侯爵と兄のジェイドと挨拶をかわした。
「義父上、義兄上、先日の会議ぶりですね。」
「陛下、国王就任おめでとうございます。」
一見穏やかに義理の息子である私の夫、ミラリス王サミュエルと雑談をしているように見える私の父と兄だがその背後で組まれた両拳は怒りでわずかに震えていた。
夫とブリアナがダンスが終わってから他の客と歓談して、ようやく妻である私のいる場所に戻ったところで、その腕は依然として義姉ブリアナの為に捧げられていたのだから。
夫サミュエルは当たり前のようにエスコートをされ艶やかに寄り添うブリアナに、この期に及んで愛しい視線を投げかけていた。
「ローズ義姉さん、顔色が悪い。サミュエル兄さんの腕はなぜかブリアナ義姉さんでふさがっているようだし、私で良ければローズ義姉さんをエスコートして控室にお連れしましょう。」
「っ!ぁあっ…ローズ、今まで気が付かずに悪かったね。ルイスの言うように顔色が少し悪いじゃないか。抱きかかえて行きたいところだけど、今はそれは難しいな…。しっかりと私の腕に捕まって。では少しの間席を外すがよろしく頼む。」
ブリアナの腕をやんわりと押しのけたサミュエルは、ようやくその腕を妻ローズのエスコートの為に差し出した。
そうして控室に入った途端、ローズを抱きかかえ自らの膝の腕で優しく抱きしめたサミュエルは、ローズの顔色が悪くなっていたことに気が付かなかったことを心から詫びたのだった。
残念ながらそれは、自分たちの愚かな行動のせいでローズの顔色を悪くさせてしまったことを謝罪するものではなかった。
前王妃であるブリアナは、亡き前国王ウィリアムの子を宿している可能性などを配慮して一年は王城に住まうことになっており、夫の死に悲しむブリアナをサミュエルは献身的に支え続けていた。
サミュエルが空いた時間のほぼ全てをブリアナに寄り添う時間に使うのを横目にローズの心は呆れ、嫉妬、悲しみ、怒り、諦め、焦燥など負の感情で埋め尽くされていった。
思いがけず王妃となったローズの重圧を分かち合うべき夫は、手を伸ばせばすぐそこにいる彼女のそんな感情を気遣うことが出来なかったのだ。
心優しいローズは夫を亡くし悲しむブリアナに何かできないかと寄り添おうとしたこともあった。
しかし、毎度の如くローズが歩み寄れば寄るほど、やんわりとサミュエルやブリアナ、そして二人の恋を応援する侍女らによっていつの間にか蚊帳の外に放り出されてしまっていたのだった。
「義父上、義兄上、先日の会議ぶりですね。」
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しかし、毎度の如くローズが歩み寄れば寄るほど、やんわりとサミュエルやブリアナ、そして二人の恋を応援する侍女らによっていつの間にか蚊帳の外に放り出されてしまっていたのだった。
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