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第18話 妹からの疑惑
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家の扉を開けると、すぐにリビングの方から走ってくる足音が響いてきた。
現れたのは僕の妹こと遠谷キュウ。
僕と同じ黒髪で、頭の横側で軽く結んだような髪型をしているラフなカッコのやつだ。黙っていれば可愛らしいのだが、妹の宿命か、残念なやつでもあった。
キュウは僕の帰りを知って玄関までやってくると、仁王立ちをして僕のことをにらんできた。
「おい。弟、今回はどこに行ってやがる」
本人としては十分低い声を出しているつもりなのだろうが、あまり威厳のない声で僕に対して問い詰めてきた。
「関係ないだろ妹。それに、両親の許可は降りてる。だから、お前の許可は必要ない」
「関係あるわよ。私もあんたの保護者なんだから」
「そもそも、ここでも下の子扱いをされる覚えはない」
「弟が何言ってるのよ」
あきれたように両手を広げるキュウ。
「私が姉なのは当然のことでしょ」
そう言うとキュウは、僕のことを見下すように指差してきた。
お互い弟だの妹だのと呼んでいると、自分でも少し混乱してくるが、実のところ僕らは双子なのだ。
そう男女の双子である。
人から見たら似ていると言われるが、そんなことたまったものじゃないと思う。それくらいこいつの性格は残念だ。こうして兄である僕のことを弟扱いしてくる点など、正しく残念の極みであろう。
「まったく、今はそんなことどっちでもいいだろ」
「……」
僕が受け流すようにしながら靴を脱ごうすると、普段ならどこかへ行くキュウも未だ仁王立ちの姿勢のままで立っていた。
「何か用なのか?」
「いや、そうじゃないわよ。でも、今日のあんた、なんか声高くない?」
「……」
札のほうが指摘を受けなかったことから、完全に油断していたが、どうやら僕の存在を元の僕として認識させているわけではないらしい。
いぶかしむような目で見るキュウの視線は、確実に普段僕に向けられているものとは違う疑いの色を含んでいた。
「かまってちゃんか? まったく妹だな」
「誰が妹か。やっぱりあんた何か誤魔化してるでしょ。前の時も何か違和感あったのよね」
「気のせいを人のせいにしないでもらいたいな」
スライムの時も周りは全く気にした様子もなかったのに、こいつだけは執拗に僕の状態を咎めてきていた。
ほんと仲が悪いくせに、変なところだけ勘が鋭いんだよな。
靴を脱いだところで、僕が鼻で笑いながら自室へ戻ろうとすると、キュウは僕の手を掴んできた。そのまま武道の技でもかけるように僕の体を引っ張ってくる。
「うおっなにしやがる!」
「おとなしくしてれば手荒な真似はしないわ」
「もう手が出てるだろ!」
抵抗しようといつものように体に力を込めるがうまく力が入らない。キュウ程度の力、どうってことないはずなのだが、うまく振り解くことができなかった。
そこで、今の体がタレカのものだということを思い出す。通りで思ったようには体が動かないはずだ。
そんな感触はキュウの方も同じだったようで、僕の抵抗を込みで動いていたキュウの攻撃も、やはり普段と違う調子らしく、驚いたようにしながらなぜか僕の体に抱きついてきた。
「なにしてんの? やっぱり甘えたかったの?」
「黙って」
抱きついているのではなく絞め技なのかもしれない。効いているのかわからないが、何か真剣な表情でキュウは僕の体に抱きついてきていた。
この状態ではどう抵抗すればいいのかわからず、僕も思わず動きを止めてしまう。
しかし、徐々に苦しくなるという事はなく、なんだか体のそこかしこからくすぐったさが広がってきた。
「ん? んー……ん?」
「な、なにしてるんだって。なんか、くすぐったいんだけど」
「ちょっと変な声出さないでよ。あと少しで違和感が分かりそうなんだから」
「変なところ触ってるのはそっちだろって、やめ、うふ」
「ねえあんた。体柔らかくない? それに胸、あるみたいだし?」
ギクッとして、僕は体を硬くした。
おそらくそこまで明確に変化は出ていないだろうが、キュウには違和感に気づかれていたようだ。
お札の効果だけでは、肉体の筋肉や脂肪の付き具合までは変化させることはできない。
あまり鍛えていた方ではなかったけれど、男は男。僕の体は僕の体だった。女子とは違ったわけだ。
キュウのほうも、そこまでしっかり記憶していたわけでは無いだろう。だがそれでも、男か女かの違和感くらい、普段一緒に生活していれば敏感に気づくのではないだろうか。
キュウが僕の体を揉むのに集中している隙に、僕は体の力が抜ける前に慌てて身をよじり、急いでキュウのの拘束から脱出した。すぐさまキュウから距離を取る。
「あ、逃げるな」
「こうしてくれる!」
僕は右手を突き出して、ちょうど大胸筋の高さの位置で静止した。
すると飛びかかってきたキュウの胸が、ちょうど僕の右手のところに当たった。
キュウは反射的に跳びのくと、体を抱くようにして、顔を真っ赤にしながら、僕のことをにらみつけてきた。
「あ、あんたいきなりどこ触ってんのよ」
「僕の手に胸を突き出しておいて酷い言いようだな。それに先に揉んできたのはそっちだろ?」
「男の胸と女の胸を一緒にすんな」
「妹の胸を揉むのなんて胸を揉んだ内には入らない。兄の胸を揉むのだってそうだったろ?」
「あんたねぇ……」
悔しさをにじませるようにギリギリと歯をかみしめるようにしながら、それでもキュウは今のも僕にかみつきそうな気迫を殺さずに残していた。
「おっと。まだやる気か? それならさっきみたいな一瞬じゃなく、今度は兄からのハグをお返ししてあげよう。なあに、今さっき妹の方から抱擁してくれてたんだ。兄の方から抱擁するのなんて家族としては当然のスキンシップだろ?」
「そ、そんなわけないでしょ? いい加減にしてよね。あんまり心配かけんじゃないわよ。さっさと終わらせて帰ってきなさい!」
何やら捨て台詞を言い残すとキュウはすぐに自室へと逃げていった。
全く世話の焼ける妹だ。
しかし危うくばれるところだった。師匠の道具さえあれば家に帰ってゲームを取ってくるくらい大丈夫だと油断していた。
「こうなると、そう簡単に家にも帰って来られないよな……」
次帰ってきた時はバレる時かもしれないし、色々と持ってっといた方がいい、か。
現れたのは僕の妹こと遠谷キュウ。
僕と同じ黒髪で、頭の横側で軽く結んだような髪型をしているラフなカッコのやつだ。黙っていれば可愛らしいのだが、妹の宿命か、残念なやつでもあった。
キュウは僕の帰りを知って玄関までやってくると、仁王立ちをして僕のことをにらんできた。
「おい。弟、今回はどこに行ってやがる」
本人としては十分低い声を出しているつもりなのだろうが、あまり威厳のない声で僕に対して問い詰めてきた。
「関係ないだろ妹。それに、両親の許可は降りてる。だから、お前の許可は必要ない」
「関係あるわよ。私もあんたの保護者なんだから」
「そもそも、ここでも下の子扱いをされる覚えはない」
「弟が何言ってるのよ」
あきれたように両手を広げるキュウ。
「私が姉なのは当然のことでしょ」
そう言うとキュウは、僕のことを見下すように指差してきた。
お互い弟だの妹だのと呼んでいると、自分でも少し混乱してくるが、実のところ僕らは双子なのだ。
そう男女の双子である。
人から見たら似ていると言われるが、そんなことたまったものじゃないと思う。それくらいこいつの性格は残念だ。こうして兄である僕のことを弟扱いしてくる点など、正しく残念の極みであろう。
「まったく、今はそんなことどっちでもいいだろ」
「……」
僕が受け流すようにしながら靴を脱ごうすると、普段ならどこかへ行くキュウも未だ仁王立ちの姿勢のままで立っていた。
「何か用なのか?」
「いや、そうじゃないわよ。でも、今日のあんた、なんか声高くない?」
「……」
札のほうが指摘を受けなかったことから、完全に油断していたが、どうやら僕の存在を元の僕として認識させているわけではないらしい。
いぶかしむような目で見るキュウの視線は、確実に普段僕に向けられているものとは違う疑いの色を含んでいた。
「かまってちゃんか? まったく妹だな」
「誰が妹か。やっぱりあんた何か誤魔化してるでしょ。前の時も何か違和感あったのよね」
「気のせいを人のせいにしないでもらいたいな」
スライムの時も周りは全く気にした様子もなかったのに、こいつだけは執拗に僕の状態を咎めてきていた。
ほんと仲が悪いくせに、変なところだけ勘が鋭いんだよな。
靴を脱いだところで、僕が鼻で笑いながら自室へ戻ろうとすると、キュウは僕の手を掴んできた。そのまま武道の技でもかけるように僕の体を引っ張ってくる。
「うおっなにしやがる!」
「おとなしくしてれば手荒な真似はしないわ」
「もう手が出てるだろ!」
抵抗しようといつものように体に力を込めるがうまく力が入らない。キュウ程度の力、どうってことないはずなのだが、うまく振り解くことができなかった。
そこで、今の体がタレカのものだということを思い出す。通りで思ったようには体が動かないはずだ。
そんな感触はキュウの方も同じだったようで、僕の抵抗を込みで動いていたキュウの攻撃も、やはり普段と違う調子らしく、驚いたようにしながらなぜか僕の体に抱きついてきた。
「なにしてんの? やっぱり甘えたかったの?」
「黙って」
抱きついているのではなく絞め技なのかもしれない。効いているのかわからないが、何か真剣な表情でキュウは僕の体に抱きついてきていた。
この状態ではどう抵抗すればいいのかわからず、僕も思わず動きを止めてしまう。
しかし、徐々に苦しくなるという事はなく、なんだか体のそこかしこからくすぐったさが広がってきた。
「ん? んー……ん?」
「な、なにしてるんだって。なんか、くすぐったいんだけど」
「ちょっと変な声出さないでよ。あと少しで違和感が分かりそうなんだから」
「変なところ触ってるのはそっちだろって、やめ、うふ」
「ねえあんた。体柔らかくない? それに胸、あるみたいだし?」
ギクッとして、僕は体を硬くした。
おそらくそこまで明確に変化は出ていないだろうが、キュウには違和感に気づかれていたようだ。
お札の効果だけでは、肉体の筋肉や脂肪の付き具合までは変化させることはできない。
あまり鍛えていた方ではなかったけれど、男は男。僕の体は僕の体だった。女子とは違ったわけだ。
キュウのほうも、そこまでしっかり記憶していたわけでは無いだろう。だがそれでも、男か女かの違和感くらい、普段一緒に生活していれば敏感に気づくのではないだろうか。
キュウが僕の体を揉むのに集中している隙に、僕は体の力が抜ける前に慌てて身をよじり、急いでキュウのの拘束から脱出した。すぐさまキュウから距離を取る。
「あ、逃げるな」
「こうしてくれる!」
僕は右手を突き出して、ちょうど大胸筋の高さの位置で静止した。
すると飛びかかってきたキュウの胸が、ちょうど僕の右手のところに当たった。
キュウは反射的に跳びのくと、体を抱くようにして、顔を真っ赤にしながら、僕のことをにらみつけてきた。
「あ、あんたいきなりどこ触ってんのよ」
「僕の手に胸を突き出しておいて酷い言いようだな。それに先に揉んできたのはそっちだろ?」
「男の胸と女の胸を一緒にすんな」
「妹の胸を揉むのなんて胸を揉んだ内には入らない。兄の胸を揉むのだってそうだったろ?」
「あんたねぇ……」
悔しさをにじませるようにギリギリと歯をかみしめるようにしながら、それでもキュウは今のも僕にかみつきそうな気迫を殺さずに残していた。
「おっと。まだやる気か? それならさっきみたいな一瞬じゃなく、今度は兄からのハグをお返ししてあげよう。なあに、今さっき妹の方から抱擁してくれてたんだ。兄の方から抱擁するのなんて家族としては当然のスキンシップだろ?」
「そ、そんなわけないでしょ? いい加減にしてよね。あんまり心配かけんじゃないわよ。さっさと終わらせて帰ってきなさい!」
何やら捨て台詞を言い残すとキュウはすぐに自室へと逃げていった。
全く世話の焼ける妹だ。
しかし危うくばれるところだった。師匠の道具さえあれば家に帰ってゲームを取ってくるくらい大丈夫だと油断していた。
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