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第17話 新たなアイテムを求めて
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「原因は家庭や家族ってところなんだろうな……」
タレカにとって、家族の根は深いらしい。
つい先ほどのタレカの青ざめた顔を思い出しながら僕はそんなふうに思った。
それがたとえ別の家族であったとしても、実際に会うとなると耐えられないもののようだ。
顔色の変化を見過ごしがちな僕であっても、タレカの顔面蒼白具合はすぐにわかった。
実際、少し頬があからんでいたあの美少女スマイルの後ならなおさらかもしれない。
「とはいえ、僕も僕で、今すぐ帰れるわけでもないからな」
タレカに代わって僕がゲームを取りに行くことにしたのだが、それはそれとして対策が必要だった。
吉良さんの反応から、僕が預かっていたアクセサリーは、見た目に対してある程度カバーはしてくれることははわかった。しかし、誰なのかという部分までは対処してくれないみたいだ。
なので、僕が今の姿で自分の家に帰るには、また別の道具が必要なんだと思う。
「というわけで師匠、助けてください」
「どういうわけだよ、まったく」
連日ではあるが、僕は師匠の店、アリス・イン・ワンダーランドへと来ていた。
僕が借りているあのアクセサリーも師匠のものだ。となれば、姿が変わるキセキへの対策だけでなく、きっと、入れ替わりというキセキへの対処ができるアイテムも何かしら持っているはず、という論理だ。
店内には、店の内装とは不釣り合いなほど幼い少女が、歳に似合わない無愛想な表情で僕のことをにらみつけてきていた。
「一人で来て何の用かな? 昨日の子を撒いてくるなら、もっといい隠れ場所があったんじゃないの?」
「その通りですよ。だから僕は、別にタレカから逃げてきたわけじゃありません」
僕の呼び方に、師匠はちょっと驚いたように、幼い顔をより幼い感じにして目を丸くした。
「その顔可愛いですよ」
「ふざけてる場合か。急に距離を詰めたようだし、解決したって報告なのか?」
「違いますよ。解決したならわざわざ助けを求めたりしません」
「大人の知恵が必要な別のことをしようってんじゃないの?」
「違いますって」
先ほどの驚きはどこへやら、師匠は僕をからかうのを明らかに楽しむように、話題をそらそうとあれやこれやを振ってくる。
本当、僕以外の人がいれば話を進めてくれるのに、なんて人だ。
「しかし感心しないな」
「何がですか?」
「ワタシはあくまで君とは一線を引いているつもりなんだよメイト」
「そんな硬いこと言わないでくださいよ」
「硬いとかそういうことじゃないさ。君だって、昨日言ってたじゃないか。今回のキセキ、いいことばかりじゃないんだろ?」
「それは、そうですけど」
「なら、ワタシのところへはあまり来ない方がいい。そうでなくとも来るべきじゃない。奇跡に首を突っ込んでいる人間と関われば、自然、巻き込まれる可能性は高まるのだから」
しっしっ、と追い払うように手を振る師匠。
この人はひねてるような態度を取りつつも、どこか優しさで動いているような気がしてしまう。
もっとも、これは僕が見た目からそう思いたいだけかもしれないのだが。
「まったく。帰るつもりはないってことか?」
「そりゃ、手ぶらじゃ帰れませんからね。師匠のせいで僕は当分タレカの妹なんですよ」
「ああ。それで呼び捨てなんだ。じゃあ今はワタシに話を聞くようパシリにされたと」
師匠はくっくと笑いをこらえるような音を漏らした。
「違いますよ。わかってて言ってるでしょ」
「当然だよ。だけど、こう言ったほうがメイトは反発してくれるだろ?」
「なんですかその好きな子に意地悪しちゃう子みたいなのは」
「ワタシのところに来たんなら、せいぜい大人の戯言を受け流す器の大きさを持っていないとってことだよ」
めんどくさいと言いつつも、師匠は何やら持ち物をゴソゴソと漁りだした。
どうやら、ようやく本題に入ってくれるらしい。
すぐに水晶の置かれた机へ並べられたのは二枚のお札だった。何やら不思議な模様が描かれていていかにもな雰囲気を放っている。
「何ですかそれ」
「入れ替わり系のキセキに対して使えるやつかな。使うともう一人として認識してもらえるのさ」
「それはつまり、僕が」
「メイトが使えば、タレカちゃんじゃなくメイトだって思ってもらえるんだよ」
「今僕がそう言おうとしたのに」
「タレカちゃんならいいけど、メイトの理解が早いのはからかいがいがないからねぇ」
「そんな理由……」
楽しそうにケタケタ笑いながら、師匠はお札をひらひらさせる。
僕がそのお札に手を伸ばすと、師匠はヒョイっとそのお札を上にあげた。
「何ですか」
「前回の分の支払いがまだだけど、受け取っちゃっていいの?」
「学生なんです。そんなにぽんぽん大金は入ってきませんよ」
「それはそうだけどさ。タレカちゃんを連れて来なかったのって、これをメイトが自分一人で背負うつもりなんじゃないのかと思ってさ」
「何のことですかね? 僕はお姉ちゃんのパシリをやらされてるだけですよ。そこで発生した費用は、当然妹の支払いですよね」
「パシリはさっき否定してたじゃないか」
「そうでしたっけ?」
「はあ……君が納得してるなら、ワタシは別にいいんだよ」
「なら早くくださいよ」
「だが、そういう君の性格があのキセキを引き起こしたんじゃないのかな?」
「それも自覚してますよ。だからあのままにしてるんじゃないですか」
「そっか。君としては全部織り込み済みなのね」
師匠が何やら言い終わると同時、ピシッとキョンシーのように、額にお札を貼り付けられた。そして、もう一枚は手の上に乗せられた。
「今回の代金は解決してから考えよう。ひとまずタレカちゃんのキセキをどうにかしなさい。その後で仕事の斡旋くらいしてあげるさ」
「ありがとうございます」
僕は額にお札をはっつけたまま、アリス・イン・ワンダーランドを後にした。
タレカにとって、家族の根は深いらしい。
つい先ほどのタレカの青ざめた顔を思い出しながら僕はそんなふうに思った。
それがたとえ別の家族であったとしても、実際に会うとなると耐えられないもののようだ。
顔色の変化を見過ごしがちな僕であっても、タレカの顔面蒼白具合はすぐにわかった。
実際、少し頬があからんでいたあの美少女スマイルの後ならなおさらかもしれない。
「とはいえ、僕も僕で、今すぐ帰れるわけでもないからな」
タレカに代わって僕がゲームを取りに行くことにしたのだが、それはそれとして対策が必要だった。
吉良さんの反応から、僕が預かっていたアクセサリーは、見た目に対してある程度カバーはしてくれることははわかった。しかし、誰なのかという部分までは対処してくれないみたいだ。
なので、僕が今の姿で自分の家に帰るには、また別の道具が必要なんだと思う。
「というわけで師匠、助けてください」
「どういうわけだよ、まったく」
連日ではあるが、僕は師匠の店、アリス・イン・ワンダーランドへと来ていた。
僕が借りているあのアクセサリーも師匠のものだ。となれば、姿が変わるキセキへの対策だけでなく、きっと、入れ替わりというキセキへの対処ができるアイテムも何かしら持っているはず、という論理だ。
店内には、店の内装とは不釣り合いなほど幼い少女が、歳に似合わない無愛想な表情で僕のことをにらみつけてきていた。
「一人で来て何の用かな? 昨日の子を撒いてくるなら、もっといい隠れ場所があったんじゃないの?」
「その通りですよ。だから僕は、別にタレカから逃げてきたわけじゃありません」
僕の呼び方に、師匠はちょっと驚いたように、幼い顔をより幼い感じにして目を丸くした。
「その顔可愛いですよ」
「ふざけてる場合か。急に距離を詰めたようだし、解決したって報告なのか?」
「違いますよ。解決したならわざわざ助けを求めたりしません」
「大人の知恵が必要な別のことをしようってんじゃないの?」
「違いますって」
先ほどの驚きはどこへやら、師匠は僕をからかうのを明らかに楽しむように、話題をそらそうとあれやこれやを振ってくる。
本当、僕以外の人がいれば話を進めてくれるのに、なんて人だ。
「しかし感心しないな」
「何がですか?」
「ワタシはあくまで君とは一線を引いているつもりなんだよメイト」
「そんな硬いこと言わないでくださいよ」
「硬いとかそういうことじゃないさ。君だって、昨日言ってたじゃないか。今回のキセキ、いいことばかりじゃないんだろ?」
「それは、そうですけど」
「なら、ワタシのところへはあまり来ない方がいい。そうでなくとも来るべきじゃない。奇跡に首を突っ込んでいる人間と関われば、自然、巻き込まれる可能性は高まるのだから」
しっしっ、と追い払うように手を振る師匠。
この人はひねてるような態度を取りつつも、どこか優しさで動いているような気がしてしまう。
もっとも、これは僕が見た目からそう思いたいだけかもしれないのだが。
「まったく。帰るつもりはないってことか?」
「そりゃ、手ぶらじゃ帰れませんからね。師匠のせいで僕は当分タレカの妹なんですよ」
「ああ。それで呼び捨てなんだ。じゃあ今はワタシに話を聞くようパシリにされたと」
師匠はくっくと笑いをこらえるような音を漏らした。
「違いますよ。わかってて言ってるでしょ」
「当然だよ。だけど、こう言ったほうがメイトは反発してくれるだろ?」
「なんですかその好きな子に意地悪しちゃう子みたいなのは」
「ワタシのところに来たんなら、せいぜい大人の戯言を受け流す器の大きさを持っていないとってことだよ」
めんどくさいと言いつつも、師匠は何やら持ち物をゴソゴソと漁りだした。
どうやら、ようやく本題に入ってくれるらしい。
すぐに水晶の置かれた机へ並べられたのは二枚のお札だった。何やら不思議な模様が描かれていていかにもな雰囲気を放っている。
「何ですかそれ」
「入れ替わり系のキセキに対して使えるやつかな。使うともう一人として認識してもらえるのさ」
「それはつまり、僕が」
「メイトが使えば、タレカちゃんじゃなくメイトだって思ってもらえるんだよ」
「今僕がそう言おうとしたのに」
「タレカちゃんならいいけど、メイトの理解が早いのはからかいがいがないからねぇ」
「そんな理由……」
楽しそうにケタケタ笑いながら、師匠はお札をひらひらさせる。
僕がそのお札に手を伸ばすと、師匠はヒョイっとそのお札を上にあげた。
「何ですか」
「前回の分の支払いがまだだけど、受け取っちゃっていいの?」
「学生なんです。そんなにぽんぽん大金は入ってきませんよ」
「それはそうだけどさ。タレカちゃんを連れて来なかったのって、これをメイトが自分一人で背負うつもりなんじゃないのかと思ってさ」
「何のことですかね? 僕はお姉ちゃんのパシリをやらされてるだけですよ。そこで発生した費用は、当然妹の支払いですよね」
「パシリはさっき否定してたじゃないか」
「そうでしたっけ?」
「はあ……君が納得してるなら、ワタシは別にいいんだよ」
「なら早くくださいよ」
「だが、そういう君の性格があのキセキを引き起こしたんじゃないのかな?」
「それも自覚してますよ。だからあのままにしてるんじゃないですか」
「そっか。君としては全部織り込み済みなのね」
師匠が何やら言い終わると同時、ピシッとキョンシーのように、額にお札を貼り付けられた。そして、もう一枚は手の上に乗せられた。
「今回の代金は解決してから考えよう。ひとまずタレカちゃんのキセキをどうにかしなさい。その後で仕事の斡旋くらいしてあげるさ」
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