勇者にこの世から追放された俺は妹の姿で生き返る〜妹を蘇生するため、全力で魔王討伐を目指します〜

マグローK

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第63話 アルカに心配される俺

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 俺は温かい光に包まれ、ゴーレムを召喚した疲労感が和らいでいくのを感じていた。

 アルカの叫びとともに放たれた光は、今もなお俺たちを包み込んだままだ。

 ガラライのスキルは自分が取り囲まれているときにしか使えない技だったはずだ。つまり、今の状況では俺たちの助けにはならない。

 だが、この光は確実に俺たちの元まで届いている。

 おそらくアルカのスキルなんだろうが、こんなもの俺は知らない。

「なっ」

 足元のアンデッドたちが浄化されているのか、苦しむような表情に見えた顔が安らかな表情に変わっている。

 そしてアンデッドたちは次々に土に帰っていった。

 建物の奥を確認すると、最初に現れたアンデッドまでもが姿を消している。

 どうやら全てのアンデッドを浄化することができたようだ。

 俺は安全を確認してからゴーレムから降り、引っ込めた。

「おにい! 大丈夫? ケガはない?」

 焦った様子でアルカが走ってきた。

 俺の目の前までやってくると、ペタペタと俺の体をしきりに触ってくる。

 妹相手とはいえ、そこかしこを入念に触られると照れるんだが。

「い、いや。大丈夫。大丈夫だから」

 それになんだかくすぐったい。

 足元を特に触られているが、そんなところ意識したことないし、余計に変な気分になってくる。

 不満そうに口を尖らせながらアルカは手を止めた。

「ほら、大丈夫だろ?」

「でも、見えないケガとか」

 今度は背中側に回ると足元から念入りに俺の体を調べ始めた。

「そんな相手じゃなかったし、ほらベヒちゃんも無事だし俺も大丈夫だって」

「うーん。あれ? その手は?」

 手の状態に気づいたのかアルカが俺の手を取って言った。

「あ、ああ。これはアンデッドを殴った時のダメージだな。多少回復してるみたいだし、時間が経てば治るだろ」

「タマミちゃーん!」

「任せて!」

 アルカは仲良くなったらしいタマミを呼んだ。

 タマミはアルカの期待に応えるように、すぐさま俺の手を回復させた。

 みるみるうちに傷は癒え、ボロボロだった手は嘘のようにキレイになっている。

 アンデッドと戦う前よりキレイな気がするほどだ。

「ありがとな。なあ、治っただろ? さすがにもう大丈夫だって」

 治ってもタマミが手を離そうとしない。

 俺はどれだけ信頼されていないのだろう。

「二人とも大丈夫だから。俺はアンデッドにやられてないから」

「うん。私から見てもラウルちゃんは大丈夫そうだよ?」

「最後に聞かせて」

 なんだか泣きそうな顔でアルカが言ってきた。

 俺、なにかしたか?

「わたしのスキルでのダメージはない?」

「ない。けど、どうして?」

「そっかー。よかったー」

 やっと安心したようにアルカが笑みをこぼした。

「ヨーリンちゃんがくっついてるから、おにいにもダメージが入ったかもって思ってさ。心配したんだよ?」

「それはすまん」

 でも言われてみれば確かに不思議だ。

 浄化魔法が悪魔やアンデッドだけでなくモンスターにも効果があるのなら、俺に効いてもおかしくなさそうなのに、俺の体にはダメージがなかった。

「ヨーリンには浄化魔法は効かないのか?」

「もちろんです。今のワタクシは完璧に善良な市民であるラウル様の影ですから」

「そうか?」

「そうです! 邪神も倒されましたし、神にもモンスターとして認定されない以上、ワタクシはもうラウル様の影です」

 自信満々に言ってのけるヨーリン。

 まあ、そりゃ影なんだが。

「でも、現実を見るからにヨーリンには浄化魔法が効かないんだよなー」

「ラウル様! ありがとうございます!」

「いや、自分で言ったんじゃん。それにありがとうってどういう、はいはい。足が熱いから、落ち着いてくれないか?」

「もう! ラウル様ったら! イケメンなんですから!」

 浮かれて俺の話を聞いていない気がする。

 でも、見た目をほめられたことなんて今まであっただろうか。

 そこまで思って俺は今、アルカの姿のままだと気づく。

 アルカは男女どちらにもモテたのかな……。

「ヨーリンちゃんの言う通り、ラウルちゃんはかっこいいよー」

 遠くの方でニヤニヤしながらラーブまでもが言ってくる。

「バカにしてるだろ」

「ふふふー」

 笑って返事するラーブ。

 俺たちは完全に油断していた。

 わきあいあいとした雰囲気をぶち壊すような金属音が聞こえてくるまで。

「みんな下がれ」

 俺は一歩前に出て全員を後ろに下がらせた。

 アンデッドを片せば終わりだと油断していた。

 ガラガラと檻が開かれるような音がする。

「ガルルルルフシュー」

 そして、聞いたこともないような声が聞こえてきた。

「おい兄貴! おい! 兄貴!」

 ガイドの言葉に返事はない。

「この僕ちんがいながらキメラを投入するのか? 兄貴! 違うよな!」

 兄貴とやらに呼びかけ続けるガイド。

「そりゃないぜ!」

 返事がないことに涙目になりながらガイドは地に手をついた。

 あいつなんつった? キメラっつった?

 俺は急いで目を動かす。

 よく見ると、この建物には上の階が存在するようだ。

 そこから何かが真っ直ぐ、俺たちめがけて勢いよく走ってきた。

「キメラだ!」

 俺は仲間を警戒させるため大きな声で叫んでいた。
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