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第54話 増殖する手の対処法
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任せろと言って俺はガラライを後ろに下がらせたわけだが。
実際のところ特別な対処法を思いついたわけではない。
ただ、大きな声を出した時に、手が一直線に集まってくることに気づいただけだ。
神の力で地下でも先まで見えるからわかったことだろう。
「ふん!」
俺はひとまず剣を抜き放ち、近くの手を切り伏せた。
「……? もしかして持久戦を?」
「いいや」
まとまった手を切り伏せたことで少しの間、手が来るのが止んだ。
どうやら、ある程度の量はあるにしても限度があるようだ。
再びやってきた手は一つ一つ対処してきていた時には気づかなかったが、規則性を持って俺たちの方へと順番に迫ってくる。
やはり、無限ではない。
「ふっ! はっ!」
声を漏らすだけでも手は俺に向かってやってくる。体が動く音だけでもすぐに感知して手は俺をおそってくる。
目がない代わりに光のない場所でも敵を把握できる能力を持っているようだ。
「くそっ。やめろ!」
だが、そっと下からこられると、足や腕を掴まれ桃に指を這わせられる。そこにどんな意味があるのかはわからないが、気持ち悪さに思わず感情的になってしまう。
まるで蜘蛛が足元から這い上がってくるような嫌悪感だ。
「いやらしい手つきだ」
とても手だけとは思えない。本体がどこかにあるはずだ。
アルカの体を辱めやがって。
かといってすぐに男に戻るわけにもいかない。
装備は地上に置いてきてしまっている。
「この。離れろ!」
声に反応しているとわかったが、気づいたとしても少し準備が必要だ。
バラバラだとどうしようもないから、どこかで様子を見てまとめて戦ってしまえばいい。
全てを一気に集めて切ってしまえば決着はすぐそこだ。
後方確認。
ガラライも俺から十分離れることができた。
注意は全て俺に向いている。
「準備は整った」
あとはガラライがやっていたように俺への注意を一直線に集めればいい。
「ふん!」
拳を振り上げ、俺は手を吹き飛ばした。
今はこれで十分。
俺は一歩引いてから息を吸い込んだ。
「かかってこい!」
暗がりを反響する俺の声。
だが、手は一斉に一直線で俺に向かって猛スピードで迫ってくる。
ゆったり探るような雰囲気は全くなく、俺を攻撃する目的で真っ直ぐと、まるで木の幹のように密集してやってくる。
「うおおおおおお!」
俺はその手の塊を一刀両断した。
まとまっている頑丈さは俺に対しては無意味だ。
おそらく強敵に対し、決着をつけるための機能なのだろう。
「分析している場合じゃない」
腕のような部分を適度に切り離しながら、俺は手を根元に向かって全速力でかけた。
走りながらでも切っていく。
効果があるのか知らないが、ダメージが入っている時の方が、次が出てくるまでのスピードが遅かった気がする。
「見えた」
予想通り、手には本体となるような部分があった。
モンスターではなく、手というモンスターのコアになるような部分だろう。
光る球のようなものが手の根元に、壁に埋まる形で設置されていた。
そこからは今にも新しい手がそこから生えようとしている。
ダメージを入れているおかげか、なかなか手の形ができるまで時間がかかっているようだ。
「残念だったな。動けなくて。アルカの体に不用意に触った罰だ!」
まあ俺の体でもあるのだが、そんなことはどうでもいい。
俺は思いっきり剣を振りかぶると光る球に叩きつけた。
球は剣がぶつかるとすぐにヒビが入り、粉々に跡形もなく砕け散った。
「ふっ。よしやり!」
球から出てこようとしていた手にもトドメを刺し、俺は急いでガラライの元までかけた。
「大丈夫だったか?」
近くを見回すが手が復活した様子はない。
少しずつ手の方も形が崩れ消えていくようだった。
「はい」
ガラライは戸惑った様子で返事をした。
まあ、敵を倒し冷静になった状態で色々と思うこともあるだろう。
俺としては仲間と言った手前、ガラライに対し雑な扱いはできない。
理由も説明せずに戻れば、ラーブからどんな扱いを受けるかわかったものではない。
「あの……ありがとうございました」
「いいんだ。その代わり、できることは頼むかもしれないから覚悟しとけよ」
「もちろんです!」
「クックック。仲のいいこった。第一ステージクリアおめでとう」
どこからともなく、くぐもった声が響いてきた。
聞き覚えのない声だ。
それに死神アリスの声とは似ても似つかない男のような声。
「誰だ?」
「第二ステージといこうか」
俺の質問を無視し、声は言った。
すると遠くの方で何かが崩れる音がした。
手のコアがあった方向だ。
だが、第二ステージなんて言っているが付き合ってやる義理はない。
「帰るぞガラライ」
「え、今の流れで帰るんですか? でも、どうやって……」
俺はニヤリと笑いかけガラライを抱え上げた。
「え、え。急に何を?」
「こうするんだよ!」
俺は唯一うっすらと光の差し込む上を見上げた。
俺たちが落ちてきた場所だ。
そう、俺は今から跳び上がる。
足りなければ壁を蹴ってでも這い上がる。
「ヒッヒヒ。そんな簡単に返すと思ってるのかい?」
笑い声とともに再びくぐもった声が響いてきた。
実際のところ特別な対処法を思いついたわけではない。
ただ、大きな声を出した時に、手が一直線に集まってくることに気づいただけだ。
神の力で地下でも先まで見えるからわかったことだろう。
「ふん!」
俺はひとまず剣を抜き放ち、近くの手を切り伏せた。
「……? もしかして持久戦を?」
「いいや」
まとまった手を切り伏せたことで少しの間、手が来るのが止んだ。
どうやら、ある程度の量はあるにしても限度があるようだ。
再びやってきた手は一つ一つ対処してきていた時には気づかなかったが、規則性を持って俺たちの方へと順番に迫ってくる。
やはり、無限ではない。
「ふっ! はっ!」
声を漏らすだけでも手は俺に向かってやってくる。体が動く音だけでもすぐに感知して手は俺をおそってくる。
目がない代わりに光のない場所でも敵を把握できる能力を持っているようだ。
「くそっ。やめろ!」
だが、そっと下からこられると、足や腕を掴まれ桃に指を這わせられる。そこにどんな意味があるのかはわからないが、気持ち悪さに思わず感情的になってしまう。
まるで蜘蛛が足元から這い上がってくるような嫌悪感だ。
「いやらしい手つきだ」
とても手だけとは思えない。本体がどこかにあるはずだ。
アルカの体を辱めやがって。
かといってすぐに男に戻るわけにもいかない。
装備は地上に置いてきてしまっている。
「この。離れろ!」
声に反応しているとわかったが、気づいたとしても少し準備が必要だ。
バラバラだとどうしようもないから、どこかで様子を見てまとめて戦ってしまえばいい。
全てを一気に集めて切ってしまえば決着はすぐそこだ。
後方確認。
ガラライも俺から十分離れることができた。
注意は全て俺に向いている。
「準備は整った」
あとはガラライがやっていたように俺への注意を一直線に集めればいい。
「ふん!」
拳を振り上げ、俺は手を吹き飛ばした。
今はこれで十分。
俺は一歩引いてから息を吸い込んだ。
「かかってこい!」
暗がりを反響する俺の声。
だが、手は一斉に一直線で俺に向かって猛スピードで迫ってくる。
ゆったり探るような雰囲気は全くなく、俺を攻撃する目的で真っ直ぐと、まるで木の幹のように密集してやってくる。
「うおおおおおお!」
俺はその手の塊を一刀両断した。
まとまっている頑丈さは俺に対しては無意味だ。
おそらく強敵に対し、決着をつけるための機能なのだろう。
「分析している場合じゃない」
腕のような部分を適度に切り離しながら、俺は手を根元に向かって全速力でかけた。
走りながらでも切っていく。
効果があるのか知らないが、ダメージが入っている時の方が、次が出てくるまでのスピードが遅かった気がする。
「見えた」
予想通り、手には本体となるような部分があった。
モンスターではなく、手というモンスターのコアになるような部分だろう。
光る球のようなものが手の根元に、壁に埋まる形で設置されていた。
そこからは今にも新しい手がそこから生えようとしている。
ダメージを入れているおかげか、なかなか手の形ができるまで時間がかかっているようだ。
「残念だったな。動けなくて。アルカの体に不用意に触った罰だ!」
まあ俺の体でもあるのだが、そんなことはどうでもいい。
俺は思いっきり剣を振りかぶると光る球に叩きつけた。
球は剣がぶつかるとすぐにヒビが入り、粉々に跡形もなく砕け散った。
「ふっ。よしやり!」
球から出てこようとしていた手にもトドメを刺し、俺は急いでガラライの元までかけた。
「大丈夫だったか?」
近くを見回すが手が復活した様子はない。
少しずつ手の方も形が崩れ消えていくようだった。
「はい」
ガラライは戸惑った様子で返事をした。
まあ、敵を倒し冷静になった状態で色々と思うこともあるだろう。
俺としては仲間と言った手前、ガラライに対し雑な扱いはできない。
理由も説明せずに戻れば、ラーブからどんな扱いを受けるかわかったものではない。
「あの……ありがとうございました」
「いいんだ。その代わり、できることは頼むかもしれないから覚悟しとけよ」
「もちろんです!」
「クックック。仲のいいこった。第一ステージクリアおめでとう」
どこからともなく、くぐもった声が響いてきた。
聞き覚えのない声だ。
それに死神アリスの声とは似ても似つかない男のような声。
「誰だ?」
「第二ステージといこうか」
俺の質問を無視し、声は言った。
すると遠くの方で何かが崩れる音がした。
手のコアがあった方向だ。
だが、第二ステージなんて言っているが付き合ってやる義理はない。
「帰るぞガラライ」
「え、今の流れで帰るんですか? でも、どうやって……」
俺はニヤリと笑いかけガラライを抱え上げた。
「え、え。急に何を?」
「こうするんだよ!」
俺は唯一うっすらと光の差し込む上を見上げた。
俺たちが落ちてきた場所だ。
そう、俺は今から跳び上がる。
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笑い声とともに再びくぐもった声が響いてきた。
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