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第50話 死神の居場所、コーロントへ
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ボロボロだった装備も整え、俺たちは死神アリスを目指してコーロントへと向かった。
俺が使う防具を用意するのが一番骨が折れた。まさか一人で二セット用意することになるとはこれまで考えもしなかった。
アルカの姿でここまで来てしまったが、どうしたものか。
少し不安になりながらも見えて来てしまったのは、魔王城やこれまで戦ってきた八芒星の領地とは違い、荒れ放題の土地だった。
「壊された街ってより、ただ住んでるだけって感じだな。モンスターすらいるのかどうか怪しいぞ」
「何かしらの文化とかもない感じ?」
ラーブが辺りをウロウロし出した。
「生活とかってどうしてるんでしょう?」
タマミも不思議そうに見渡している。
「ベヒは大穴」
ベヒは自慢げに言った。
「巨龍だったんだっけ。そうだよね。巨龍なら規模が違うから仕方ないけど、普通モンスターってゴブリンとかでも集まってればもうちょっと家っぽいものがあるよね?」
アルカが俺に聞いてきた。
「ああ。勇者パーティとして活動するそれ以前から見てきたモンスターならもっと生活感があった」
「だよね」
すでに怪しさ満点で、今見ている場所にはとてもじゃないが生活している形跡を見て取れない。
砂漠に少し手をかけたようなそんな状態だった。
「うわっ。崩れてきた。ひぇーぼろっち」
壁のようなものに触れたラーブが慌てて俺のところまで逃げてきた。
触ると崩れるような家じゃとてもじゃないが住むことはできないだろうな。
「なあ神、本当にモンスターは住んでるのか?」
「気配はある。そもそも感じているだろう」
「まあな。俺たちのことをうかがってるのはわかる。そこそこ実力はあるみたいだが」
少し先で道をふさぐようにその巨体を横たわらせているやつらが複数見える。
果たしてすでに姿を見せて様子をうかがっているようなやつの実力はどの程度のものだろうか。
「ヨーリン。そもそもここにいるやつらは四天王よりも強かったのか?」
「そうですね。荒削りなのでここから先でも場所によって実力にばらつきはあります。中には、四天王よりも強いモンスターもいました。もちろんワタクシより強いということはありませんが」
「じゃ、大丈夫だな」
「もちろんです。ワタクシをほれさせたラウル様の向かう先に敵はいません」
実力的にって話だったんだが、ヨーリンが興奮するだけでも俺の力が増幅しているようだし、いいだろう。
「みんなは俺の後ろに下がっておくように、タマミ、念の為みんなにスキルを発動しておいてくれ」
「全力でやるね」
「頼む。背中はアルカに任せた」
「おにいと一緒なら負けないよ」
二人の様子を確認をしてから、俺は巨体に進み出した。
「ちょっとー私たちはー?」
「ベヒたちはー?」
ラーブがベヒの肩に手を乗せている。わざとらしく口を尖らせながら二人が聞いてきた。
「二人はつかず離れずの位置にいてくれ、ラーブもベヒちゃんも俺が戦って相手の戦い方を知ってからのが動きやすいだろ?」
「確かに」
「わかった」
ラーブの応援軍団は邪神の時から街の防衛を任せてあるため今回もいない。
さて、明らかに邪魔してるやつらの場所まで行くか。
「おっと。おうおう! 人間。ここがどこだかわかっての来たのか?」
少し近づこうものなら、巨人が大声で怒鳴りつけてきた。
巨人と言っても頭が見えているし俺の三倍くらいしかない。巨龍と比べれば俺たち人間と大差ない。
それに、今はアルカの姿だから男の俺ならもう少し小さく見えたことだろう。
「ギャハハハハハ! ビビって声もでねぇか。ちっせぇなぁ。誰か可愛がってやれよ」
黙っているのを怯えていると判断したらしく大声で笑われる。
十分離れていてもよだれが飛んできそうな汚い笑い方が不愉快だ。
「おいらがやるよ。かわいこちゃーん。おいらのおもちゃになってくれるのかなー?」
のしのしと一歩一歩地面を揺らしながら巨体が近づいてくる。
ゆっくりだが歩幅が大きいせいですぐに俺の目の前まで来てしまった。
対処法を考えていなかった俺は、歩いてくる巨人を反射的に叩いてしまった。
「あ、やべ」
気づいた時には、巨人はすでにボロボロな壁だったものにうずくまっている。
場が凍りついてしまった。
こういう時は、えっと。
「あー。ごめんなさーい。ハエが近づいてきたのかと思ってー」
女の武器。できるだけかわいく振る舞う。
らしい。
「テメェ! おれの部下をよくもやってくれたな! 全員でぶっ飛ばすぞ」
「オウ! 調子に乗ってんじゃねぇぞメスガキ!」
ダメでした。
慣れないことはやるもんじゃないね。
「俺は多分メスガキじゃないぞ」
「ウルセェ!」
話が通じない様子。
伸びてくる大量の腕。
しかしその一発一発はどれも簡単に目で追うことができる。
「楽勝だな」
俺は思い切り腕を振り上げた。
その風圧で巨人たちはひっくり返り、落下の勢いで地面に刺さってしまった。
「さあて一発目! ってもう終わりか?」
「おにい。やりすぎ」
アルカが苦笑いでこっちを見ていた。
巨人だけでなく建物のようなものまで壊してしまったらしいが、絡んできた荒くれ以外、ここに住んでいるモンスターもいなかったようだ。
向こうから突っかかってきたんだし、問題ないだろ。
「ここで足止めくらう理由もないし、次行くとするか……」
気にしないようにしていたが、すでに視界に入ってきてしまったため、俺は無視することができなかった。
「ラーブ。一応聞いておこうか」
「何?」
「誰それ」
「今の人たちから案内役に一人。ガラライちゃん!」
「ああ。そう」
怯えた様子の女の子。赤ワインのような髪色をしている。
荒くれ巨人だった頃と同じようにやぶいた布を胸と腰に巻いているだけの格好をしている。
かなり怯えた様子でこちらを見ている。
どうやら荒くれをスキルで女の子にしたようだ。全く気づけなかった。
まあベヒが子分にしているようだし大丈夫だろう。
「さて、気を取り直して次に行くとしますか」
俺が使う防具を用意するのが一番骨が折れた。まさか一人で二セット用意することになるとはこれまで考えもしなかった。
アルカの姿でここまで来てしまったが、どうしたものか。
少し不安になりながらも見えて来てしまったのは、魔王城やこれまで戦ってきた八芒星の領地とは違い、荒れ放題の土地だった。
「壊された街ってより、ただ住んでるだけって感じだな。モンスターすらいるのかどうか怪しいぞ」
「何かしらの文化とかもない感じ?」
ラーブが辺りをウロウロし出した。
「生活とかってどうしてるんでしょう?」
タマミも不思議そうに見渡している。
「ベヒは大穴」
ベヒは自慢げに言った。
「巨龍だったんだっけ。そうだよね。巨龍なら規模が違うから仕方ないけど、普通モンスターってゴブリンとかでも集まってればもうちょっと家っぽいものがあるよね?」
アルカが俺に聞いてきた。
「ああ。勇者パーティとして活動するそれ以前から見てきたモンスターならもっと生活感があった」
「だよね」
すでに怪しさ満点で、今見ている場所にはとてもじゃないが生活している形跡を見て取れない。
砂漠に少し手をかけたようなそんな状態だった。
「うわっ。崩れてきた。ひぇーぼろっち」
壁のようなものに触れたラーブが慌てて俺のところまで逃げてきた。
触ると崩れるような家じゃとてもじゃないが住むことはできないだろうな。
「なあ神、本当にモンスターは住んでるのか?」
「気配はある。そもそも感じているだろう」
「まあな。俺たちのことをうかがってるのはわかる。そこそこ実力はあるみたいだが」
少し先で道をふさぐようにその巨体を横たわらせているやつらが複数見える。
果たしてすでに姿を見せて様子をうかがっているようなやつの実力はどの程度のものだろうか。
「ヨーリン。そもそもここにいるやつらは四天王よりも強かったのか?」
「そうですね。荒削りなのでここから先でも場所によって実力にばらつきはあります。中には、四天王よりも強いモンスターもいました。もちろんワタクシより強いということはありませんが」
「じゃ、大丈夫だな」
「もちろんです。ワタクシをほれさせたラウル様の向かう先に敵はいません」
実力的にって話だったんだが、ヨーリンが興奮するだけでも俺の力が増幅しているようだし、いいだろう。
「みんなは俺の後ろに下がっておくように、タマミ、念の為みんなにスキルを発動しておいてくれ」
「全力でやるね」
「頼む。背中はアルカに任せた」
「おにいと一緒なら負けないよ」
二人の様子を確認をしてから、俺は巨体に進み出した。
「ちょっとー私たちはー?」
「ベヒたちはー?」
ラーブがベヒの肩に手を乗せている。わざとらしく口を尖らせながら二人が聞いてきた。
「二人はつかず離れずの位置にいてくれ、ラーブもベヒちゃんも俺が戦って相手の戦い方を知ってからのが動きやすいだろ?」
「確かに」
「わかった」
ラーブの応援軍団は邪神の時から街の防衛を任せてあるため今回もいない。
さて、明らかに邪魔してるやつらの場所まで行くか。
「おっと。おうおう! 人間。ここがどこだかわかっての来たのか?」
少し近づこうものなら、巨人が大声で怒鳴りつけてきた。
巨人と言っても頭が見えているし俺の三倍くらいしかない。巨龍と比べれば俺たち人間と大差ない。
それに、今はアルカの姿だから男の俺ならもう少し小さく見えたことだろう。
「ギャハハハハハ! ビビって声もでねぇか。ちっせぇなぁ。誰か可愛がってやれよ」
黙っているのを怯えていると判断したらしく大声で笑われる。
十分離れていてもよだれが飛んできそうな汚い笑い方が不愉快だ。
「おいらがやるよ。かわいこちゃーん。おいらのおもちゃになってくれるのかなー?」
のしのしと一歩一歩地面を揺らしながら巨体が近づいてくる。
ゆっくりだが歩幅が大きいせいですぐに俺の目の前まで来てしまった。
対処法を考えていなかった俺は、歩いてくる巨人を反射的に叩いてしまった。
「あ、やべ」
気づいた時には、巨人はすでにボロボロな壁だったものにうずくまっている。
場が凍りついてしまった。
こういう時は、えっと。
「あー。ごめんなさーい。ハエが近づいてきたのかと思ってー」
女の武器。できるだけかわいく振る舞う。
らしい。
「テメェ! おれの部下をよくもやってくれたな! 全員でぶっ飛ばすぞ」
「オウ! 調子に乗ってんじゃねぇぞメスガキ!」
ダメでした。
慣れないことはやるもんじゃないね。
「俺は多分メスガキじゃないぞ」
「ウルセェ!」
話が通じない様子。
伸びてくる大量の腕。
しかしその一発一発はどれも簡単に目で追うことができる。
「楽勝だな」
俺は思い切り腕を振り上げた。
その風圧で巨人たちはひっくり返り、落下の勢いで地面に刺さってしまった。
「さあて一発目! ってもう終わりか?」
「おにい。やりすぎ」
アルカが苦笑いでこっちを見ていた。
巨人だけでなく建物のようなものまで壊してしまったらしいが、絡んできた荒くれ以外、ここに住んでいるモンスターもいなかったようだ。
向こうから突っかかってきたんだし、問題ないだろ。
「ここで足止めくらう理由もないし、次行くとするか……」
気にしないようにしていたが、すでに視界に入ってきてしまったため、俺は無視することができなかった。
「ラーブ。一応聞いておこうか」
「何?」
「誰それ」
「今の人たちから案内役に一人。ガラライちゃん!」
「ああ。そう」
怯えた様子の女の子。赤ワインのような髪色をしている。
荒くれ巨人だった頃と同じようにやぶいた布を胸と腰に巻いているだけの格好をしている。
かなり怯えた様子でこちらを見ている。
どうやら荒くれをスキルで女の子にしたようだ。全く気づけなかった。
まあベヒが子分にしているようだし大丈夫だろう。
「さて、気を取り直して次に行くとしますか」
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