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第43話 邪神が操る最強のスライム
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邪神の封印から染み出してきたスライムがブクブクと肥大化していく。
それが邪神によって与えられた力の影響なのか、明らかに元のサイズより大きくなっている。
最弱モンスターと言えど、邪神なんて神がついているなら油断は禁物だ。
それに、形が変わるのはかなり厄介だ。
「くらえ!」
殴り飛ばすことで、スライムは空気とともに消えた。
しかし、残った部分が俺の攻撃よりも早く大きくなってしまうせいで、殴ってスライムを限りなく小さく潰しても、他の部位が大きくなってしまって意味がない。
力を抑えて殴れば、邪神の力か硬さで攻撃が通らない。
もし中途半端な力で殴ってしまえば、スライムが二体目として増殖を開始することだろう。
そう思うとこれ以上うかつに殴れない。
「クハハハハ! どうしたどうした! 痛くもかゆくもないわ!」
「どうしたら……」
ヨーリンやウランクのように、力で勝負をしかけてくるなら、俺のスキルで戦えたが、スライムとなるとどう戦えばいいかわからない。
これまでのスライムなら、攻撃しているだけで体力を使い果たし、活動を止めてくれた。が、邪神が操っているならそうはならない。
つまり、事実上不死身。
神が封印しようとし、俺に倒させようとする気持ちもわかる。
「神! 何か手は?」
「我ではどうにも……」
「ふっふっふ。もしかして私のスキルを忘れたのかな? ラウルちゃん」
ラーブが楽しげに笑っている。
「そうか!」
「ラーブちゃんなら、スライムを攻撃して女の子にしちゃえば!」
タマミも気づいたらしい。
確かに、俺の攻撃よりも今の状況なら有効かもしれない。
ラーブのスキルを使ってしまえば、スライムだろうと女の子にしてしまう。
神に効くかはわからないが試してみる価値はある。
「そういうこと。だか」
ラーブがいい終わるより早く、ラーブはスライムに飲み込まれてしまった。
「え……?」
タマミの顔から笑顔が消える。
そりゃそうだ。
邪神が操っているのだから、単純に対処さえできればいいと思っていた。
だが、スライムの雑食性は失われていなかったわけだ。
ラーブはスライムの半透明な体の中で気を失った様子でぐったりしている。
「おい! 状況整理中に攻撃してくんな! ズルだろ! お前思いやりとか知らないのか!」
「そんなものは知らん! そもそも状況整理中だろうがなんだろうが交戦中なら攻撃するものだろ。ルールなんてあると思う方がおかしいだろう」
「くっ! その通り」
ラーブにさっさとスキルを使わせておけばよかった。
でも、ラーブのテンションなら、説明したがったら説明するよな。俺がすぐに頼めばよかったのか。
何にせよこれで、ほぼ唯一だと思われる対抗手段を奪われた。早くも絶体絶命だ。
仕方なく迫ってくるスライムを弾き飛ばし対処するが防戦一方。
「キャッ!」
「アルカっ!」
「ああっ!」
「タマミ!」
「うわ!」
「シニーちゃん!」
「ぶゎ!」
「ベヒちゃん!」
俺を残して仲間たちはスライムに囚われてしまった。
心なしか魔法耐性のない服を着ていたラーブの服が、すでにスライムに消化され始めている気がする。
ラーブ本人は神がいるから大丈夫なようだが、このまま戦闘が長引けば俺の方が精神的にもたない。
「これでも神に認められた人間か?」
「くそっ! 俺が前に出るはずが仲間ばかり囚われて」
ラーブが一人囚われた瞬間から、俺はスライムを全力で殴れなくなっていた。
スライムを殴り飛ばせば仲間にまで被害が及ぶかもしれないからだ。
俺は無事だが、それも部屋をスライムが満たすまでだ。このまま有効打が打てないとなると時間の問題。
「スライムのくせに強すぎだろ。こんなスライム初めてだ」
「相手をスライムだと思う必要はない。あれは邪神だ」
「そうかもしれないが……」
「ワッハハハハハ! 無様無様! 長年封印されてきた意趣返しだ!」
それ、俺は関係ないんだが!
「このままオレサマに食われるがいい!」
「それは最悪だ!」
みんなどうにか耐えてくれ。
俺もこのアルカの体で使う力に慣れてきた。
アルカやみんなが神から与えられた力で耐えられることを信じて。
「俺はみんなごとスライムを全力で殴る」
「正気か?」
「ああ。殴った後に回復させる。死ぬよりいいはずだ。これ以外、俺のスキルじゃどうにも」
「その必要はありませんわ」
「ヨーリン?」
戦闘が始まってからここまでダンマリを決め込んでいたヨーリンが口を開いた。
俺は藁にでもすがる気持ちで聞いてしまう。
「本当か?」
「ええ。ワタクシなら、スライムの弱点がわかりますわ」
「だが、どうやるんだ?」
「簡単ですわ。ただ、ラウル様を苦しませることになりますから。ワタクシとしては心苦しのですから」
「アルカたちを助けられるんだろ? やるに決まってるじゃないか」
「お優しいんですね」
影から慈悲にも似た暖かい感覚がある。
俺を利用している様子はないが、ヨーリンは一体何を考えているんだ?
「ふっ! とっさに何を話しているかと思えば、オレサマの弱点がわかると? ヨーリン。その人間をだましオレサマに差し出すつもりか?」
「いいえ。ワタクシはラウル様を裏切りません」
「ならオレサマに弱点があると? ありえない。オレサマに不可能はない。オレサマに弱点はない。オレサマは完璧なモンスターを生み出せる最高の神。邪神様だ! スライムだろうとキサマらに勝ち目はないィ!」
「そのおごり、後で後悔しますわよ」
ヨーリンは余裕しゃくしゃくといった様子で、不敵に笑っている。
それが邪神によって与えられた力の影響なのか、明らかに元のサイズより大きくなっている。
最弱モンスターと言えど、邪神なんて神がついているなら油断は禁物だ。
それに、形が変わるのはかなり厄介だ。
「くらえ!」
殴り飛ばすことで、スライムは空気とともに消えた。
しかし、残った部分が俺の攻撃よりも早く大きくなってしまうせいで、殴ってスライムを限りなく小さく潰しても、他の部位が大きくなってしまって意味がない。
力を抑えて殴れば、邪神の力か硬さで攻撃が通らない。
もし中途半端な力で殴ってしまえば、スライムが二体目として増殖を開始することだろう。
そう思うとこれ以上うかつに殴れない。
「クハハハハ! どうしたどうした! 痛くもかゆくもないわ!」
「どうしたら……」
ヨーリンやウランクのように、力で勝負をしかけてくるなら、俺のスキルで戦えたが、スライムとなるとどう戦えばいいかわからない。
これまでのスライムなら、攻撃しているだけで体力を使い果たし、活動を止めてくれた。が、邪神が操っているならそうはならない。
つまり、事実上不死身。
神が封印しようとし、俺に倒させようとする気持ちもわかる。
「神! 何か手は?」
「我ではどうにも……」
「ふっふっふ。もしかして私のスキルを忘れたのかな? ラウルちゃん」
ラーブが楽しげに笑っている。
「そうか!」
「ラーブちゃんなら、スライムを攻撃して女の子にしちゃえば!」
タマミも気づいたらしい。
確かに、俺の攻撃よりも今の状況なら有効かもしれない。
ラーブのスキルを使ってしまえば、スライムだろうと女の子にしてしまう。
神に効くかはわからないが試してみる価値はある。
「そういうこと。だか」
ラーブがいい終わるより早く、ラーブはスライムに飲み込まれてしまった。
「え……?」
タマミの顔から笑顔が消える。
そりゃそうだ。
邪神が操っているのだから、単純に対処さえできればいいと思っていた。
だが、スライムの雑食性は失われていなかったわけだ。
ラーブはスライムの半透明な体の中で気を失った様子でぐったりしている。
「おい! 状況整理中に攻撃してくんな! ズルだろ! お前思いやりとか知らないのか!」
「そんなものは知らん! そもそも状況整理中だろうがなんだろうが交戦中なら攻撃するものだろ。ルールなんてあると思う方がおかしいだろう」
「くっ! その通り」
ラーブにさっさとスキルを使わせておけばよかった。
でも、ラーブのテンションなら、説明したがったら説明するよな。俺がすぐに頼めばよかったのか。
何にせよこれで、ほぼ唯一だと思われる対抗手段を奪われた。早くも絶体絶命だ。
仕方なく迫ってくるスライムを弾き飛ばし対処するが防戦一方。
「キャッ!」
「アルカっ!」
「ああっ!」
「タマミ!」
「うわ!」
「シニーちゃん!」
「ぶゎ!」
「ベヒちゃん!」
俺を残して仲間たちはスライムに囚われてしまった。
心なしか魔法耐性のない服を着ていたラーブの服が、すでにスライムに消化され始めている気がする。
ラーブ本人は神がいるから大丈夫なようだが、このまま戦闘が長引けば俺の方が精神的にもたない。
「これでも神に認められた人間か?」
「くそっ! 俺が前に出るはずが仲間ばかり囚われて」
ラーブが一人囚われた瞬間から、俺はスライムを全力で殴れなくなっていた。
スライムを殴り飛ばせば仲間にまで被害が及ぶかもしれないからだ。
俺は無事だが、それも部屋をスライムが満たすまでだ。このまま有効打が打てないとなると時間の問題。
「スライムのくせに強すぎだろ。こんなスライム初めてだ」
「相手をスライムだと思う必要はない。あれは邪神だ」
「そうかもしれないが……」
「ワッハハハハハ! 無様無様! 長年封印されてきた意趣返しだ!」
それ、俺は関係ないんだが!
「このままオレサマに食われるがいい!」
「それは最悪だ!」
みんなどうにか耐えてくれ。
俺もこのアルカの体で使う力に慣れてきた。
アルカやみんなが神から与えられた力で耐えられることを信じて。
「俺はみんなごとスライムを全力で殴る」
「正気か?」
「ああ。殴った後に回復させる。死ぬよりいいはずだ。これ以外、俺のスキルじゃどうにも」
「その必要はありませんわ」
「ヨーリン?」
戦闘が始まってからここまでダンマリを決め込んでいたヨーリンが口を開いた。
俺は藁にでもすがる気持ちで聞いてしまう。
「本当か?」
「ええ。ワタクシなら、スライムの弱点がわかりますわ」
「だが、どうやるんだ?」
「簡単ですわ。ただ、ラウル様を苦しませることになりますから。ワタクシとしては心苦しのですから」
「アルカたちを助けられるんだろ? やるに決まってるじゃないか」
「お優しいんですね」
影から慈悲にも似た暖かい感覚がある。
俺を利用している様子はないが、ヨーリンは一体何を考えているんだ?
「ふっ! とっさに何を話しているかと思えば、オレサマの弱点がわかると? ヨーリン。その人間をだましオレサマに差し出すつもりか?」
「いいえ。ワタクシはラウル様を裏切りません」
「ならオレサマに弱点があると? ありえない。オレサマに不可能はない。オレサマに弱点はない。オレサマは完璧なモンスターを生み出せる最高の神。邪神様だ! スライムだろうとキサマらに勝ち目はないィ!」
「そのおごり、後で後悔しますわよ」
ヨーリンは余裕しゃくしゃくといった様子で、不敵に笑っている。
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