28 / 68
第28話 ボロボロでも調子に乗ってる勇者
しおりを挟む
「ぐあ。ああ! あああ。はあ、はあ」
苦しい。体が痛む。これまで以上だ。戦闘での怪我よりひどい。
そして何より悔しい。アルカに、アルカにまた先を越された。
俺はまだ四天王を一体も倒してないというのに。
「ぐ。はあ、はあ!」
なんとか痛みを抑え込み、俺は拳を握り締めた。
どういうわけかわからないが、力が戻っているにも関わらず傷はどんどんと痛みだす。
回復したと思ったが、無理に動いたせいか途端に傷口が開いたようだ。
まるで、中から何かが飛び出してくるような感覚がある。
「痛い。体が痛む」
「だから大人しくしとけばいいだろ」
「そういうわけにいかないだろ」
最後の四天王も現れて、いよいよ魔王までの道のりも大詰めってところか。
だが、さすがにこれ以上の愚行をアルカに許すわけにはいかない。
俺は思うままを口にした。
「ここまでの流れは絶対におかしい! 陰謀だ! 策略だ! 誰だお前! アルカじゃないだろ!」
俺の言葉にアルカはピクリと肩を動かした。
当てずっぽうだったが本当だったようだ。妙な違和感の正体はこれだった。
やはり、アルカは別人だった。見た目が同じってことは中身が違うのだろう。
だが、中身が誰であろうと知ったことではない。ラウルだろうが他の誰かだろうが、俺に従わないのなら悪だ。
「反論がないってことは図星か?」
「……」
すぐにそんなわけないと言えば済むことだが、アルカは何も言わない。
思わず片方がつり上がってしまう。いかんいかん。こんな笑い方は俺に似合わない。
「喋り方もおかしかったしなぁ。それに、女、ばかり、連れて……」
俺はそこでようやく、アルカについている女の顔をよく見た。
俺のことを警戒しているのか、失礼にも目が合うと武器を構えられてしまう。が、どこかで見た顔のような気がする。
おかしい。俺がアルカの集められるような冒険者の顔を覚えているはずがない。
俺はもっとレベルの高いところで活躍してきたんだ。
アルカ一人の活動で集められるやつなんて、どうせ程度の低いやつだ。
「おいおい。僕のことは置いてけぼりかい?」
「ちょっと待て四天王。今いいところなんだ」
どういうわけか四天王から目を離さないアルカ。
モンスターに発情してるのか? にしては目が怖いか。
じゃない。今はあいつら。
「そうか! 思い出した」
そうだそうだ。片方は信者の話を聞きながら、時折、人を生き返らせることができると嘘をついてた女。
神官のくせに世間に嘘を撒き散らしていた。
名前はラーブ・ロンベリアとか言ったか。
「で。ああ、ああ。なるほどね」
「な、何よ」
「強がらなくていい。そんなやつに連れられた災難だったな。神官、それに村娘」
「っ!」
やっぱりそうだ。
もう一人は神への信仰が強すぎて騙されやすそうだったやつ。嘘つく前に放り込んでおいた女。タマミ・ユーレシア。
人に迷惑をかける前にダンジョンへ入れた二人だと言うのに、まさか生きていたとはな。
「どうして私の素性を?」
「どうしてだろうな。だが、俺に感謝すべきだ」
さすが俺の記憶力。どおりで冒険者に似つかわしくない見た目をしてるわけだ。
そして、やはりアルカは悪だった。
勇者である俺の、素晴らしい世界平和のための作戦を邪魔するとは。決して許されない行い。
「誰があんたなんかに感謝するかっての」
まあ、自分のことを真に理解している人間なんて俺くらいだ。
わからなくとも仕方がないか。
だが、ここまでのアルカの行動にも合点がいった。
「アルカ。お前、兄を生き返らせるために必死か!」
「そうか、ベルトレットから見ればそう思うか」
「違うのか?」
なんだか含みのある言い方だが、そんなことは関係ない。
「俺の計画を邪魔してくれやがって。蘇生ができるなんて言ってる奴らをダンジョンから出したな」
やっとアルカは俺の方をキッと睨みつけたきた。
思わず、俺も新しく出てきた四天王も思わずのけぞってしまう。それほどまでの迫力があった。
いやいや、迫力? あの女に? 冗談だろ。
俺はただ伸びをしただけだ。
「お前が二人を危ない目に合わせたのか……!」
「おっと、勘違いするな。俺は世界に対する危険因子を人知れず排除していただけだ。その中にそこの二人が混じっていたにすぎない。悪いのはアルカ。お前の方だ。危険因子をこの世界に再び放ったこと。それがお前の罪だ。巨龍の暴走やら魔王軍の侵攻なんかもお前のせいなんじゃないのか」
「ふざけるなクソ野郎が。ベルトレット。お前どこまでクズなんだよ。俺を殺すところで止まっておけよ」
どうやらアルカの中身はラウルらしい。だが、ラウルは間違っている。
「俺は何も悪いことはしていないぞ。世界は俺を中心に回ってるんだ。俺の行いは全て正しい。ルールはそこから始まってるんだよ」
ここまで行ってもわからないのか、ラウルは俺に剣先を向けてきた。
これは、この世界最大の罪を犯すつもりか?
「ベルトレット。四天王の前にお前からやってやるよ」
「はっ! これだから自分の目的のためにしか動いてない人間は嫌なんだよ」
俺なんか世界平和のため、日々魔王軍の情報を集めていたというのに。
そこら中を暴れ散らかして名の売れていた冒険者二人組だから、迷惑をかけないよう俺のパーティに入れてやったっていうのに。
その恩も返すことなく俺に戦いを挑むのか。
「クソ野郎はお前の方だラウル」
「貴様が言うなぁ!!」
苦しい。体が痛む。これまで以上だ。戦闘での怪我よりひどい。
そして何より悔しい。アルカに、アルカにまた先を越された。
俺はまだ四天王を一体も倒してないというのに。
「ぐ。はあ、はあ!」
なんとか痛みを抑え込み、俺は拳を握り締めた。
どういうわけかわからないが、力が戻っているにも関わらず傷はどんどんと痛みだす。
回復したと思ったが、無理に動いたせいか途端に傷口が開いたようだ。
まるで、中から何かが飛び出してくるような感覚がある。
「痛い。体が痛む」
「だから大人しくしとけばいいだろ」
「そういうわけにいかないだろ」
最後の四天王も現れて、いよいよ魔王までの道のりも大詰めってところか。
だが、さすがにこれ以上の愚行をアルカに許すわけにはいかない。
俺は思うままを口にした。
「ここまでの流れは絶対におかしい! 陰謀だ! 策略だ! 誰だお前! アルカじゃないだろ!」
俺の言葉にアルカはピクリと肩を動かした。
当てずっぽうだったが本当だったようだ。妙な違和感の正体はこれだった。
やはり、アルカは別人だった。見た目が同じってことは中身が違うのだろう。
だが、中身が誰であろうと知ったことではない。ラウルだろうが他の誰かだろうが、俺に従わないのなら悪だ。
「反論がないってことは図星か?」
「……」
すぐにそんなわけないと言えば済むことだが、アルカは何も言わない。
思わず片方がつり上がってしまう。いかんいかん。こんな笑い方は俺に似合わない。
「喋り方もおかしかったしなぁ。それに、女、ばかり、連れて……」
俺はそこでようやく、アルカについている女の顔をよく見た。
俺のことを警戒しているのか、失礼にも目が合うと武器を構えられてしまう。が、どこかで見た顔のような気がする。
おかしい。俺がアルカの集められるような冒険者の顔を覚えているはずがない。
俺はもっとレベルの高いところで活躍してきたんだ。
アルカ一人の活動で集められるやつなんて、どうせ程度の低いやつだ。
「おいおい。僕のことは置いてけぼりかい?」
「ちょっと待て四天王。今いいところなんだ」
どういうわけか四天王から目を離さないアルカ。
モンスターに発情してるのか? にしては目が怖いか。
じゃない。今はあいつら。
「そうか! 思い出した」
そうだそうだ。片方は信者の話を聞きながら、時折、人を生き返らせることができると嘘をついてた女。
神官のくせに世間に嘘を撒き散らしていた。
名前はラーブ・ロンベリアとか言ったか。
「で。ああ、ああ。なるほどね」
「な、何よ」
「強がらなくていい。そんなやつに連れられた災難だったな。神官、それに村娘」
「っ!」
やっぱりそうだ。
もう一人は神への信仰が強すぎて騙されやすそうだったやつ。嘘つく前に放り込んでおいた女。タマミ・ユーレシア。
人に迷惑をかける前にダンジョンへ入れた二人だと言うのに、まさか生きていたとはな。
「どうして私の素性を?」
「どうしてだろうな。だが、俺に感謝すべきだ」
さすが俺の記憶力。どおりで冒険者に似つかわしくない見た目をしてるわけだ。
そして、やはりアルカは悪だった。
勇者である俺の、素晴らしい世界平和のための作戦を邪魔するとは。決して許されない行い。
「誰があんたなんかに感謝するかっての」
まあ、自分のことを真に理解している人間なんて俺くらいだ。
わからなくとも仕方がないか。
だが、ここまでのアルカの行動にも合点がいった。
「アルカ。お前、兄を生き返らせるために必死か!」
「そうか、ベルトレットから見ればそう思うか」
「違うのか?」
なんだか含みのある言い方だが、そんなことは関係ない。
「俺の計画を邪魔してくれやがって。蘇生ができるなんて言ってる奴らをダンジョンから出したな」
やっとアルカは俺の方をキッと睨みつけたきた。
思わず、俺も新しく出てきた四天王も思わずのけぞってしまう。それほどまでの迫力があった。
いやいや、迫力? あの女に? 冗談だろ。
俺はただ伸びをしただけだ。
「お前が二人を危ない目に合わせたのか……!」
「おっと、勘違いするな。俺は世界に対する危険因子を人知れず排除していただけだ。その中にそこの二人が混じっていたにすぎない。悪いのはアルカ。お前の方だ。危険因子をこの世界に再び放ったこと。それがお前の罪だ。巨龍の暴走やら魔王軍の侵攻なんかもお前のせいなんじゃないのか」
「ふざけるなクソ野郎が。ベルトレット。お前どこまでクズなんだよ。俺を殺すところで止まっておけよ」
どうやらアルカの中身はラウルらしい。だが、ラウルは間違っている。
「俺は何も悪いことはしていないぞ。世界は俺を中心に回ってるんだ。俺の行いは全て正しい。ルールはそこから始まってるんだよ」
ここまで行ってもわからないのか、ラウルは俺に剣先を向けてきた。
これは、この世界最大の罪を犯すつもりか?
「ベルトレット。四天王の前にお前からやってやるよ」
「はっ! これだから自分の目的のためにしか動いてない人間は嫌なんだよ」
俺なんか世界平和のため、日々魔王軍の情報を集めていたというのに。
そこら中を暴れ散らかして名の売れていた冒険者二人組だから、迷惑をかけないよう俺のパーティに入れてやったっていうのに。
その恩も返すことなく俺に戦いを挑むのか。
「クソ野郎はお前の方だラウル」
「貴様が言うなぁ!!」
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界を服従して征く俺の物語!!
ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。
高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。
様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。
なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる