勇者にこの世から追放された俺は妹の姿で生き返る〜妹を蘇生するため、全力で魔王討伐を目指します〜

マグローK

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第18話 大きな反応の調査

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 神が大きな反応があるとか言うから飛ばされるのを受け入れたが、着いた先はしんと静まり返っていた。

 なんだか見覚えがる。

 とても嫌な記憶がフラッシュバックする場所だ。

「ここは……」

「そうだ。貴様が殺された場所だ。正確に言えば」

「それ以上言うな」

 やっぱり。と思うが、面影があるだけで、まるで別の場所のように変わり果てていた。

 ダンジョンにいたせいで時間感覚は狂っているだろうが、俺が死んでからそう時間は経っていないはず。

 一体どういうことだ?

 それに。

「おい。反応って言ってたが、誰もいないじゃないか」

 俺は言ってから自分で気づいてしまった。

 そう、普通の街だったはずの場所に誰もいないのだ。

 崩れた建物、えぐれた路面。

 人が生活していた痕跡を破壊した後のようなこの場所には人の気配を感じられない。

「どういうことだ? 何かわかってることだってあるんだろ?」

「それはあるが、いいのか?」

「何が」

「説明している間にも状況は悪化していくぞ」

「っ!」

 遠くから何かが壊される音が聞こえてくる。

 おそらく今の街の状況と関係があるんだろう。

「現場に急ぐぞ。魔王に関連があるから俺たちをここに飛ばしたんだろ?」

 俺についてる神がかすかに笑った気がした。

 こいつ、俺を利用していることといい、本当に善良な神なのか?

 ま、神は人を利用しても何も思わないか。



 進むたび大きくなる音。

 そして、俺は元凶が見えた瞬間、思わずきた道を引き返し、建物に体を隠してしまった。

「何かあったの?」

 まだ何も見ていないタマミは不思議そうに聞いてきた。

 俺は言うか迷ったが、タマミも今は仲間なのだし素直に話すことにした。

「巨龍だ。直で見るのは初めて。多分、踏まれればそこで終わりの相手だ」

 青ざめるタマミ。どういうわけか目を輝かせるラーブ。

 ラーブに与えられたスキルやラーブの身体能力なら巨龍も怖くないかもしれない。

 だがタマミのスキルはサポート用だ。突っ込めば確実にやられてしまう。

 俺一人なら犠牲なんて考えることもなかったが、今はそういうわけにもいかない。

「私だって仲間なんです! 信じてください」

 俺のためらいを悟ったように、タマミが手を握ってきた。

 タマミの言葉を聞くと、不思議と俺の体に力が溢れてくる。

 それだけでない。どうやらタマミは自分自身の強化もできるようだ。手の握る強さが明らかに強くなっているのがわかる。

「踏まれないくらいなら私にもできます」

「ほらほら、ラウルちゃん? 自分のためにここまで女の子が言ってくれてるんだよ?」

「ラウルちゃんだって女の子でしょ? それに、私はラウルちゃんを助けたいだけで」

「色々言いたいことはあるが、俺についてくるってことは自己責任だからな。いつだって守れるわけじゃない」

「わかってる」

「あたぼうよ!」

 どうやら二人ともついてくるらしい。

 まあ、神に無理矢理動かされることもあり得そうだが、今は心配ないみたいだ。

「あたしも問題はないの」

「お前のことははなから気にしてない」

 俺の言葉に死神は明らかに不貞腐れている。

 なんだこいつ。どうせやられるようなやつじゃないだろ。

 俺のことなどつゆ知らず、ラーブは死神の頭を撫で始めた。

「シニーちゃんも気にしてほしいよね?」

 ラーブの余計な言葉に死神は頷く。

「シニーって誰だよ」

「死神って物騒でしょ。外で呼ぶわけにもいかないし」

「まあ」

「だからシニー」

「気に入った」

「よかったー」

「そうかい」

「シニーちゃんには何かないの?」

 シニーこと死神は俺のことをじっと見上げてくる。

 俺は頭をかいて目線をそらした。

「踏まれるなよ」

「わかったの」

「ラウルちゃんは素直じゃないなー」

 本当に厄介だ。なんでこんな奴ら連れてきたんだ。

 考えるのはやめだ。

「とにかく行くぞ!」

 俺は先行して前に出た。

 すると、俺のことなど見えていないはずの巨龍が俺を警戒する動きを見せた。

「なあ神、あれには剣を抜いていいだろ」

「もちろんだ。手加減する理由などないだろう」

「へっ! 遅い遅い!」

「あ! おい!」

 俺が腰の剣に手をかけた瞬間、ラーブが勢いよく飛び出していった。

 足が速いというのは伊達ではなく、俺の全速力以上のスピードで巨龍に接近した。

 これには巨龍も反応できていないようだ。いまだに俺を攻撃しようとしている。

 しかし、巨龍のスキをつけたのはいいが、ラーブにどうにかできるのか?

 走りながら見ていると巨龍の体が白く光った。

「マジかよ」

「神の力を舐めるな」

 俺についてる神が言った。

 お前の与えた力じゃないだろ。そう心の中でツッコミながら、俺は走り続けた。

 みるみるうちに巨龍は小さくなっていく。

 大量にいた巨龍の一体はラーブによって無力化されたらしい。

 せっかくだ、とにかく話を聞いてみるとするか。もう、この辺にいる魔王の部下は倒した後のはずだしな。何もないのにこんなことが起こることは考えにくい、何か理由があったはずだ。

「おい! 今起きていることを説明してもらおうか!」

 巨龍だった少女は俺の言葉を聞くとラーブの後ろに隠れてしまった。

「ちょっとー。ラウルちゃん。今仲良くなろうとしてるところだったのにさ。邪魔しないでよ」

「ら、ラーブは大声出さない?」

「もっちろーん。いい子いい子」

「ん」

 少女はラーブに撫でられると落ち着くのか気持ちよさそうにしている。

「ほら、怯えちゃったじゃん」

「すまない。ってどういうことだ!」

 巨龍だったくせに大きな声が苦手なのか、俺の声が苦手なのか、少女は体を小さくしてラーブに隠れてしまう。

 どうやらかなり苦手意識を持たれたらしい。

 いや違う。

「なんでそんななんだよ。巨龍ってもっと偉そうじゃないのか?」

 今だって俺たち人間の街をただただ破壊している。

 どうせ力関係で優位に立っていたやつが、やられたスキにそいつの領地に攻めてきてるんだろ。

 俺たちからしたらいい迷惑だ。

 まあ、今はあまり責めにくい見た目をしているが。

「みんながそうじゃないの。それに、この子は自分より大きいものが怖いんだから」

「まあ、あんだけでかけりゃ、自分より大きい相手なんてそういなかったはずだしな。それもそうか」

 ちらっと出てきて視線を送っただけだが、目が合うだけで隠れられてしまう。

 見た目が子どもだから精神的にちょっとキツいな。

「やっぱりラウルちゃんはこういう子が好きなの?」

「なんでそうなるんだよ。で、話は聞けたのか?」

「今からってところ。お願い、知ってることを話してくれないかな?」

「ラーブが言うなら」

 巨龍だった少女はラーブの背中から顔を出した。

 ラーブには相当懐いているらしい。
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