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第57話 悪魔遊び:悪魔メフェ視点

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~悪魔メフェ視点~

「ババアども! よくも、母様をおおおおお!」

「あ、いたんだ。存在が希薄すぎて気づかなかった」

「……! んだとお! よくもかわしたな!」

 さすがにノルキーちゃんのやったことだから、ザコな彼の母を戻してあげらんないけど、仲良しなんだなぁ。

 この二人は。

「一撃かわしたくらいで調子に乗るなよ。ザコ呼ばわりしてたくせに。お前らは俺に勝ったことは一度もないんだからな」

「あっはは。まだ負けてないつもりなんだ? あーんな恥をさらすような形で逃げてったのに?」

「くっ。黙れ黙れ黙れえ! あれはお前らに負けたんじゃないからな!」

「でも、不意打ち狙いとは卑怯だね」

「違う! これは、そんなんじゃない!」

 しっかし、以前よりもさらにでたらめな動きで剣を振り回してくるけど、当たらない当たらない。

 面白いくらいに当たらない。

「母親がいなくなっちゃったことがそんなにさみしいの? かわいそうにねぇ?」

「うるさいうるさい!」

「あーあ。泣いちゃって。さみしいんでちゅーって?」

「うああああ!」

 幼稚だなぁ。

 からかいがいがあるなぁ。

 バランス感覚がないしスキだらけだから、ちょっと押してあげるだけで転んじゃった。

「うっ……」

 ノルキーちゃんと一緒でなかなか好きなようにできなかったし、ちょっと興奮してきたかも。

「負けてないなんて、どーの口が言ってるのかなぁ?」

「ワタシの出る幕はなさそうだな」

「止めないの?」

「そいつに加減は必要ない」

「そっか。じゃあ遠慮なく」

「へっ。一人ずつか。ヨユーヨユー」

「アタシたち二人を相手にするつもりだったの? 無理よアンタじゃ」

「なめるな。俺はまだ本気じゃないんだ」

「それじゃ、見せてもらおうかしら? その本気ってやつ」

「ふん。今までのを俺の実力だと思ってるなら、痛い目見るぞ」

「おーこわー」

 今ならノルキーちゃんに何も言われず、鬱憤晴らしができそうだし。チャンスチャンス。

「準備運動はこれくらいにしとくか」

「へー、準備だったんだ。長いねぇ」

「俺の勝手だろ」

「そうだね。でも、まるでアタシたちが悪みたいに言ってたけどさ。アンタは自分の母親が飛ばされる瞬間、怖くて動けなくなってただけでしょ」

「なっ。そ、そんなことはない! 俺が来た時にはもう」

「えー。嘘だよー。だってここ、なにも起こった様子はないよね? 来た時にはもういなかったんなら、どうして母親の仇討ちみたいにアタシたちを責められるわけ?」

「……」

「図星? 図星かな? いいねぇその顔。いい感情。全部の光景を見てたのに、一人で動けなかったから他人を責めて、情けない自分を肯定してたんでしょ? ああいい。久しぶりだわぁ。ああ。すごくいい」

「……うるさい」

「なに?」

「うるさいってんだよ」

「そればっかりだなぁ。根性なし、意気地なし」

「……それは……」

「そろそろ認めなよ。誰よりも才能がないって。誰よりも力がないって。誰よりもひ弱で、両親に守ってもらわないとなにもできないってことを」

「黙れ! いい加減怒ったからな」

 はあ。

 アタシには感情なんて手に取るようにわかるのに。

 隠したって無駄なのにね。

「ちょっとだけ自覚してるから、がんばって否定してないと自分を保てないってこと、アタシにはわかってるよ? ね? 認めちゃおうよ」

「うるさいうるさいうるさい! 俺はザコじゃない。あの野郎の相手をした時は手加減してたんだ。あんたら二人くらいなら、軽くぶっ飛ばしてやるんだからな」

「ほら、ほら。どこから来る? 今のところ攻撃は当たりそうもないよ?」

「うおおおお!」

 母親の方は仮にもノルキーちゃんの正体に勘づいてたのに、こっちの子はオーラを出しても気づけないくらいには余裕がないみたい。

 残念な生き物だなぁ。

 こうまでしないと自分を保てないなんて。

 ま、アタシにとってはそこがかわいいんだけどね。

「ふふっ」

「なにを笑ってやがる。今のをかわしたからって、それで終わりじゃないからな!」

「もしかしてさ、一回取り押さえられてたこと忘れちゃった? ねえ? そうなの?」

「やめろぉ! それ以上言うなー!」

 ビュンビュン振っても当たらない。

 本当に才能ないのかな?

「パキン!」

「え、どうして俺の剣が……」

「はーい。ざーんねん。武器がなくっちゃ戦えないねぇ」

「……」

「もう少し早く人の心を持ってたなら、こんなことにならずに済んだかもしれないのにね。情けないなぁ」

 剣にも見放されて、能力は元からなくって、かわいそうな子。

 とーってもかわいそう。

 ぐずぐずしたドス黒い感情が渦巻いてて、そんな感情が刺激的でいい。

 人間相手はこうでなくっちゃ。

「う、うあああああ!」

「あーあー。今度は拳? 女の子相手に拳で?」

「うあああああ!」

「もう言葉も話せないくらいには理性が飛んじゃってるのかな」

 拳だって、でたらめに振っても当たらないのに。

 叫び声うるさいし、これ以上はもう味わえなさそうだなぁ。

「ね、アンタの母親とおんなじところへ連れてってあげるって言ったら、どうする?」

「うあ、あ?」

「どう? 興味湧いちゃった? 湧いちゃったんでしょ」

「そんなこと、できるのか?」

「できるよ。じゃ、合意ってことで、行っちゃおー!」

「うああああああ!」

 綺麗に飛んでった。多分、おんなじ方向だね。
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