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第51話 剣聖の企み……?

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 怪鳥を倒したはいいが、森が荒らされてしまった様を見ていると胸が痛い。

 自分のせいではないが、自分の知る魔獣の仕業と考えると責任を感じてしまう。

 なんであの怪鳥はこんなところに現れたんだ。

「フラータはどうしてさっきの怪鳥に襲われてたの?」

「フラータもわからない。でも、いつもみたいに歩いてたら、ここが荒らされているのを見て、それで、居ても立っても居られなくなって……」

「そっか……。申し訳ない」

「全然! リストーマくんは助けてくれたから」

「ありがとう」

 怪鳥に関しては、どこから放たれたかまではわからないけど、少なくともフラータが来た時点から怪鳥はもうこの周辺で暴れていたようだ。

 怪鳥が倒れ、静かになったからか、戻ってきた動物たちもいるが、なんだか顔が暗く見える。

 それもそうだろう。自分たちのすみかが荒らされてしまっているのだから、仕方ない。

「リストーマくんは、さっきの怪鳥について何か知ってるの?」

「剣聖のペットだよ」

「剣聖って。人間の中でも強いってあの?」

「そうだね。人間の中でも強い人。その剣聖のペットだったはず。だけど、最近はどこにいたのかは知らない。てっきり連れて行ったんだと思ってたけど……」

「逃げ出したとかかな?」

「そんなことができるとは思えないけどなぁ」

 今までと同じようにできなくとも、怪鳥を放置してむやみやたらに自由にするとは思えない。

 これまでやってきたの重さはもうわかっているだろうに、そこに罪を重ねるような真似をするだろうか。

 冷静な人間ならそんなことしないはずだ。怪鳥をわざわざ野に放つようなことをしないと思う、けど……。

「何にしても申し訳ない」

「ううん。フラータに謝ることじゃないよ。この子たちもリストーマくんのことは責めてないしさ。むしろ、ありがとうって言ってるよ」

「そうかな?」

 いつの間にか僕たちの近くに寄り添ってきていた動物たちは、頭をこすりつけたり、体をこすりつけたりしてきていた。

 フラータにはだいぶ慣れているようだけど、僕のことも慰めるように接してくれている。

 ありがたい。それにあったかい。

「ね? 怒ってないでしょ? 多分、わかってるんだよ」

「確かに、フラータに言われるとそんな気がする」

「ふふっ。リストーマくんと一緒に、この森の動物たちと過ごせて嬉しいな」

 フラータがいつもよりほぐれた笑顔で笑っている。

 今まではどこか硬い印象があったけど、今はそれがない。

「本当に動物たちが好きなんだね」

「うん。さっきみたいな危険もあるけど、フラータはここにいる子たちが好き。もしかしたら、怪鳥は飼えなくなって放しちゃったのかな? それで、怪鳥もみんなと仲良くしたかったとか。それなら少し、かわいそうなことをしたかな……」

「ないとは言えないけど……」

 話に出しただけで、動物たちは怪鳥のことだとわかるのか、急に体を震わせ出した。

 相当、怪鳥のことが怖かったのだろう。

 どれほどのことだったのか、どれだけの間のことだったのか、森を見ることでしか僕にはわからない。

 それでも、そこまで長くはなかったはず。そんな短時間で、怪鳥は僕だけでなくこの森の動物たちの心にも傷を残した。

「剣聖たちが放したってことはあるかもしれないけど、それは剣聖の都合で僕たちが考えることじゃない」

「そうだよね。家族に捨てられるなんてかわいそうだし」

「……。そうだね。でも、仲良くしたいってことも多分ない。僕が今までやられた仕打ちを考えれば、あいつが周りを見ていたとは思えない」

「リストーマくんは昔から知ってたの?」

「実はね。前に話したと思うけど、僕が認められなかったのは剣聖に対してなんだ。だから飼ってた怪鳥のことも知ってる……」

「え……」

「剣聖のところでさっきの怪鳥と暮らしてた。だからわかる。あいつに思いやりなんて、なかった……」

「そっか、ごめんね。何も知らないのに勝手なこと言って」

「ううん。フラータは悪くないよ」

 でも、剣聖自体は飼い続けられないほどの状況じゃないはず。

 よほどぜいたくな生活をしようとしなければ、特に困ることはないはず。

 もちろん、今までよりいい生活はできなくなるけど、今までの僕以上の生活は、工夫次第では何とでもなるはず。

 僕だって、工夫で命をつないできたんだ。それくらいできるはずなのに……。

「辛いことを思い出させちゃったよね。リストーマくんより怪鳥のことを考えちゃってたし」

「ううん。フラータは優しい子なんだね」

「え……。そ、そんなことないよ!」

「あるって。フラータはこうして動物にも懐かれてるし、自然を大切にしてる。そんな優しい心があるから、きっと気遣いができるんだよ」

「少しだけだよ。でも、ありがとう」

「こちらこそ」

 姫様には謝ろうと思ったけど、これはしっかりと報告しなくちゃいけないことな気がする。

 剣聖が関係していたとしたら、今回の怪鳥のこと以外にも、いずれ何かあるかもしれない。

 もし仮に剣聖が関わっていなかったとしても、魔獣が暴走するような騒ぎになると危険だ。

「それじゃあ、僕はすぐに帰らないといけないから」

「そっか。ありがとね」

「うん。また。フラータが無事で何よりだよ」

「また。……えへへ。リストーマくんに助けられちゃった」
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