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第39話 今日は一人だ:魔王の娘フラータ視点
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「見れた! 近くまで来ててよかったー!」
もうできなくなっちゃったのかと思って心配してたけど、そんなことないよね!
よかった。本当によかった!
今日はダンジョンの中でも大きなナメクジと戦ってただけみたいだし、これはもう絶好の日じゃん!
「あー。んふふー! なんだかリストーマくんと一つになったみたいだったなー」
もう終わったのに、まだ夢の中にいるみたいな気分。
二回目だからか、フラータがリストーマくんの中に入っちゃったみたいな。リストーマくんがフラータの中に入ってきちゃったみたいな。不思議な感じだった。
また、パパは騒いでたかもしれないけど、そんなこともうどうでもいい。
今までこんなに一人のことを思ったことはないんだもん。
「まだかなまだかな? 少し休んでから出てくるかな?」
まさかフラータが惹かれる相手が人間なんて想像もしてなかった。
でも、フラータにとっては相手が人間か魔族かなんて小さなこと。
そもそも、誰かのことが気になったことなんて草花くらいだもん。
「あ、あなたもだよ?」
「……?」
言葉はわからないけど、いつも話を聞いてくれるうさぎさん。
魔王軍の間では、魔族に動物はなつかないなんて言われてたけど、そんなことない。
しっかり気持ちを伝えればこうしてリストーマくんを待つ間、隣にいてくれる。
「チッ。……先客かよ」
あれ、誰だろう。うさぎさんに夢中で気づかなかった。
あんまり脅威じゃなさそうだけど、敵意は強い感じ。
もしかしてフラータと同じ目的……?
でも、様子からして少し違う感じかな。
じゃあ、もしかしてフラータに敵対意識……!
それならどうしてどこかへ行っちゃったんだろう。まるでフラータがいたからやめておくみたいな。
「なんだったんだろう……? あ、来た……!」
反射的に隠れちゃった。
そっと顔をのぞかせると、リストーマくんが見える。
「ふぅ。スキルの対象が多いと発動自体は少しラクでも、いっぱい話しかけられるから、ちょっと大変だなぁ」
「一人!」
近くを念入りに探してみるけど、誰もいない。
魔族っぽい子も、ドラゴンっぽい子も、お姫様っぽい子もいない。
さっきの子も帰っちゃったみたいだし、リストーマくん一人。
今日は一人だ! これはもうフラータに今だと言ってるんだ!
今がチャンス、ちょっと緊張するけど、行くしかない!
「ひ、久しぶり! リストーマくん。元気だった?」
「あ、えっと。フラータ!」
「そう! 覚えててくれたんだね」
「この間、走ってどこかに行かなかった?」
「あ、ああ……。ごめんね……? ちょっと緊張しちゃって」
「そうなの!? 別に僕なんかに緊張しなくていいのに」
「そ、そんなことないよ。僕なんかなんてことない。リストーマくんはすごいよ!」
「そ、そうかな? 照れるなぁ」
あ、ごまかそうと思ったけど、正直に話しちゃった。
でも、なんだろう。嫌じゃない?
きっと魔王軍の誰かが相手だったら、どう言ってもダメだったはず。
ううん。そもそもこんなに正直に話せなかった。
でも、リストーマくんは安心して話せる。
「そういえば、フラータはここによく来るの? もしかして、フラータが僕に対して危ないって言おうとしてくれてたとか?」
「ううん。フラータが来るのは時々だよ。それに、リストーマくんなら大丈夫だと思う。フラータが、リストーマくんに危険って言われて、気をつけるようにはしてるくらいだから」
「そっか。よかった。でも、注意してね。女の子だし」
「……! ……女の子」
「あれ、何か変なこと言っちゃったかな?」
「ううん! ありがとう!」
女の子。女の子だって!
やっぱりこの服のおかげかな?
リストーマくんに女の子として心配されてたなんて!
「リストーマくん。やっぱり優しいんだね」
「別に普通だよ。それに、フラータは近くを歩くのは慣れてそうで、全然問題ないだろうから、僕の心配なんていらないかもだけど」
「そんなことないよ!」
「え?」
「あ、ごめん。急に大きな声出して……」
でも、フラータは、フラータは……。
「フラータはね? リストーマくんに心配してもらえて嬉しかった。親が、自分の子どもならって、フラータじゃなくて、あるべき姿ばっかり見てるからさ。でも、リストーマくんは、フラータを心配してくれたでしょ? だから、嬉しかった」
「……少しわかるな」
「そう、なの?」
「僕も、自分としては精一杯やってるつもりでも、本当はそう思われてなくってさ。期待されてたのは、親の決めつけた、あるべき姿だけだったから。……それも、あってなかったような期待だけだし……」
「リストーマくんでも……」
「あ、といっても、今はいい人と出会えて、その人のおかげで楽しく暮らせてるから大丈夫だよ? ごめんね。しんみりさせちゃって」
「ううん。聞けて嬉しい」
「そう?」
「またお話ししてくれるといいな」
「僕でよければ」
リストーマくんみたいな人でも悩んだりするんだ。
フラータの悩みも自分だけじゃないのかな?
一人だけじゃない……?
ちょっと心が軽くなった気がする。
「そうだ。近くで誰かが見てたんだけど、心当たりとかはある?」
「さあ? ここまで来るとなると知らないな」
「そっか。じゃあ、違ったのかな? またね!」
「うん。また!」
いいことを聞いた。
それに、前より長くしっかり話せた。
リストーマくんのことも前より知ることができたし。
ちょっとずつちょっとずつ。
「あれ、魅了できてたのかな……? ま、いっか!」
もうできなくなっちゃったのかと思って心配してたけど、そんなことないよね!
よかった。本当によかった!
今日はダンジョンの中でも大きなナメクジと戦ってただけみたいだし、これはもう絶好の日じゃん!
「あー。んふふー! なんだかリストーマくんと一つになったみたいだったなー」
もう終わったのに、まだ夢の中にいるみたいな気分。
二回目だからか、フラータがリストーマくんの中に入っちゃったみたいな。リストーマくんがフラータの中に入ってきちゃったみたいな。不思議な感じだった。
また、パパは騒いでたかもしれないけど、そんなこともうどうでもいい。
今までこんなに一人のことを思ったことはないんだもん。
「まだかなまだかな? 少し休んでから出てくるかな?」
まさかフラータが惹かれる相手が人間なんて想像もしてなかった。
でも、フラータにとっては相手が人間か魔族かなんて小さなこと。
そもそも、誰かのことが気になったことなんて草花くらいだもん。
「あ、あなたもだよ?」
「……?」
言葉はわからないけど、いつも話を聞いてくれるうさぎさん。
魔王軍の間では、魔族に動物はなつかないなんて言われてたけど、そんなことない。
しっかり気持ちを伝えればこうしてリストーマくんを待つ間、隣にいてくれる。
「チッ。……先客かよ」
あれ、誰だろう。うさぎさんに夢中で気づかなかった。
あんまり脅威じゃなさそうだけど、敵意は強い感じ。
もしかしてフラータと同じ目的……?
でも、様子からして少し違う感じかな。
じゃあ、もしかしてフラータに敵対意識……!
それならどうしてどこかへ行っちゃったんだろう。まるでフラータがいたからやめておくみたいな。
「なんだったんだろう……? あ、来た……!」
反射的に隠れちゃった。
そっと顔をのぞかせると、リストーマくんが見える。
「ふぅ。スキルの対象が多いと発動自体は少しラクでも、いっぱい話しかけられるから、ちょっと大変だなぁ」
「一人!」
近くを念入りに探してみるけど、誰もいない。
魔族っぽい子も、ドラゴンっぽい子も、お姫様っぽい子もいない。
さっきの子も帰っちゃったみたいだし、リストーマくん一人。
今日は一人だ! これはもうフラータに今だと言ってるんだ!
今がチャンス、ちょっと緊張するけど、行くしかない!
「ひ、久しぶり! リストーマくん。元気だった?」
「あ、えっと。フラータ!」
「そう! 覚えててくれたんだね」
「この間、走ってどこかに行かなかった?」
「あ、ああ……。ごめんね……? ちょっと緊張しちゃって」
「そうなの!? 別に僕なんかに緊張しなくていいのに」
「そ、そんなことないよ。僕なんかなんてことない。リストーマくんはすごいよ!」
「そ、そうかな? 照れるなぁ」
あ、ごまかそうと思ったけど、正直に話しちゃった。
でも、なんだろう。嫌じゃない?
きっと魔王軍の誰かが相手だったら、どう言ってもダメだったはず。
ううん。そもそもこんなに正直に話せなかった。
でも、リストーマくんは安心して話せる。
「そういえば、フラータはここによく来るの? もしかして、フラータが僕に対して危ないって言おうとしてくれてたとか?」
「ううん。フラータが来るのは時々だよ。それに、リストーマくんなら大丈夫だと思う。フラータが、リストーマくんに危険って言われて、気をつけるようにはしてるくらいだから」
「そっか。よかった。でも、注意してね。女の子だし」
「……! ……女の子」
「あれ、何か変なこと言っちゃったかな?」
「ううん! ありがとう!」
女の子。女の子だって!
やっぱりこの服のおかげかな?
リストーマくんに女の子として心配されてたなんて!
「リストーマくん。やっぱり優しいんだね」
「別に普通だよ。それに、フラータは近くを歩くのは慣れてそうで、全然問題ないだろうから、僕の心配なんていらないかもだけど」
「そんなことないよ!」
「え?」
「あ、ごめん。急に大きな声出して……」
でも、フラータは、フラータは……。
「フラータはね? リストーマくんに心配してもらえて嬉しかった。親が、自分の子どもならって、フラータじゃなくて、あるべき姿ばっかり見てるからさ。でも、リストーマくんは、フラータを心配してくれたでしょ? だから、嬉しかった」
「……少しわかるな」
「そう、なの?」
「僕も、自分としては精一杯やってるつもりでも、本当はそう思われてなくってさ。期待されてたのは、親の決めつけた、あるべき姿だけだったから。……それも、あってなかったような期待だけだし……」
「リストーマくんでも……」
「あ、といっても、今はいい人と出会えて、その人のおかげで楽しく暮らせてるから大丈夫だよ? ごめんね。しんみりさせちゃって」
「ううん。聞けて嬉しい」
「そう?」
「またお話ししてくれるといいな」
「僕でよければ」
リストーマくんみたいな人でも悩んだりするんだ。
フラータの悩みも自分だけじゃないのかな?
一人だけじゃない……?
ちょっと心が軽くなった気がする。
「そうだ。近くで誰かが見てたんだけど、心当たりとかはある?」
「さあ? ここまで来るとなると知らないな」
「そっか。じゃあ、違ったのかな? またね!」
「うん。また!」
いいことを聞いた。
それに、前より長くしっかり話せた。
リストーマくんのことも前より知ることができたし。
ちょっとずつちょっとずつ。
「あれ、魅了できてたのかな……? ま、いっか!」
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