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第22話 かっこよかったなぁ:魔王の娘フラータ視点

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 こっそりついて行ってみたけど、同じダンジョンにいたし、パパの視界まで上書きしてたのってあの子だよね?

 パパのやってることが理解できなくて、色々と自分の思うままにやってきたけど、やっぱり、自分もパパの娘なんだなぁ。

「強い人を見ると、それだけでドキドキしちゃった」

 ああ。リストーマくん……。リストーマって言うんだ。

「リストーマ。リストーマ。ふふっ」

 名前を呼んでるだけで幸せな気分。

 リストーマ。いい名前。ずっと読んでいたい名前。

 ああ。リストーマくん。あんな大きなライオン男を、倒してかついで運んでるなんて、魔王軍にもそんなことできる人そうそういないよ。

「でも、今日はなかったなぁ。あの視界が変わる感じ」

 どういうことなんだろう?

 使わなかった、とか? 確かに、あれ以来ないけど使わなかったのかな?

 でもでも、やっと見つけたフラータの愛しの人!

「危ないからお家に帰ったほうがいいと思う、だってー! キャー!」

 心配されちゃった。

 出るなとか、魔王の娘としてふさわしくないって、パパから言われるのは心の底から嫌なのに、リストーマくんから言われたら、何だか素直に聞いちゃいそう。

 何が違うんだろう。

 でも、フラータだって、魔王の娘。ダンジョンも深くまでもぐらなければ大丈夫だと思う。

 それに、ダンジョンから逃げ出すような魔獣に負けることはない。

 でも、人間なのに、魔王の娘のフラータを心配してくれるなんて!

「優しいなぁ。あの様子だと、相当腕も立つみたいだったしー! かっこよかったなぁ……。あぁ、また会いたいな。もっとお話ししたい」

 見えた手や腕の振り。こっそり後ろから見てたけど、あの動きは一時的に見てたからわかる。

 思い返せば思い返すほど、確実に同一人物だって確証が持てる。

「同じ人だよ!」

 そう、そうに違いない。

 フラータの勘は当たるんだもん。視界を変えたのはあの子で間違いないよ!

「はーあ。でも、他のこと知らないからなぁ。どうアプローチすればいいんだろ。何が好きなのか、何をしたいのか。お名前がわかっただけでも前進だけど、うーん……」

 心をのぞいたり、洗脳したりするのはやりたくない。

 リストーマくんのまま、フラータを好きになってほしい。

「そうなると、どこにいるのかわからないから、またダンジョンに行かないと。でも、心配させちゃうかな?」

 それはやだな。

 でも、他の方法がわからない。

 相手は人間の男の子。
 もしかしたら強い女の子は好みじゃないかもしれない。

 そう思うと、大丈夫だよ! って強いところを見せたら嫌われちゃうかもしれない。

 それもやだなぁ。

「はぁ。八方塞がりだよぉ。魔王城でフラータが好きって言ったら、誰でもついてきてくれるのに、リストーマくんには好きすら言えなかった。お話しできただけで嬉しくって、帰ってきちゃった」

 もっとお近づきになりたいのに、人ってどうすれば女の子のこと好きになってくれるのかな?

 リストーマくん、フラータのこと好きって言ってくれるのかな?

 魔王城なら、困ったらとりあえず殴り合っているイメージしかない。

 野蛮で怖くてアレだけど、フラータは、それで仲良くなっていく様子を何度も見てきた。

 でも、人間の男の子も同じとは限らない。暴力が好きってことはない、よね……?

 でも、フラータみたくお花やうさぎさんたちみたいな動物が好きとも限らない。

 どっち? どうしたらいいの!?

「ドンッ! 入るぞおおおおお!」
「ドアが!」

 かけてた鍵ごと壊されて、奇妙な叫びをあげながらパパが入ってきた……。

「なに……? 何か用?」

「今日はどこへ行っていた? ……む? その様子、いつもと違うな?」

「そうよ。パパが魔王の娘なら、魔王の娘ならってうるさいから、他のところにしたの。ダンジョンだから。それならもう文句ないでしょ?」

「……ダンジョン、か。確かにそのようだな。うむ。ダンジョンなら問題ない」

「じゃあ」
「だがな。少しは考えを直したようだから問題ないと言ったまで。ダンジョンで何をしてきた? 何をしたか、そこが重要だ」
「言わない」
「なにっ!?」
「言うわけないじゃん」
「…………!」

 パパは、ほほをピクピクさせながら、額に青筋が浮かんでる。

 でも、お利口なだけが魔王の娘じゃない。

 フラータにだって、自分のことを自分で決める権利がある。

「相手がパパでも、フラータのやってることは教えないよ? だって、力が全てなんでしょ? 親でも何をしているかは明かさないよ」

「ふあっはっはっは!」

「なに? バカにしてるの?」

「いや、子は親を頼らずとも自らここまで成長するものかと思ってな。魔王の娘がどうのと話していたが、話さずともいずれ自覚を得たのかもなと思ったまで。他の種より先に、いや、誰より先にこのワシの首を取るがいい。ワシは誰より先に父の首を取った。期待して待っているぞ。バタン!」

 また、変な声を出して部屋を出て行った。

 本当にパパのことはよくわからない。理解したくもない。

 でも、勘違いでフラータのやってることを魔王の娘らしいことだって思ってくれたみたい。

 これで、過度な干渉が減るといいけど……。

「でも、思った通り、ダンジョンならよかった。リストーマくんと会うのは禁止されなさそう。だったら今度は、もう少しおめかししてみようかな?」

 リストーマくん、どんな反応してくれるかな?
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