22 / 69
第22話 かっこよかったなぁ:魔王の娘フラータ視点
しおりを挟む
こっそりついて行ってみたけど、同じダンジョンにいたし、パパの視界まで上書きしてたのってあの子だよね?
パパのやってることが理解できなくて、色々と自分の思うままにやってきたけど、やっぱり、自分もパパの娘なんだなぁ。
「強い人を見ると、それだけでドキドキしちゃった」
ああ。リストーマくん……。リストーマって言うんだ。
「リストーマ。リストーマ。ふふっ」
名前を呼んでるだけで幸せな気分。
リストーマ。いい名前。ずっと読んでいたい名前。
ああ。リストーマくん。あんな大きなライオン男を、倒してかついで運んでるなんて、魔王軍にもそんなことできる人そうそういないよ。
「でも、今日はなかったなぁ。あの視界が変わる感じ」
どういうことなんだろう?
使わなかった、とか? 確かに、あれ以来ないけど使わなかったのかな?
でもでも、やっと見つけたフラータの愛しの人!
「危ないからお家に帰ったほうがいいと思う、だってー! キャー!」
心配されちゃった。
出るなとか、魔王の娘としてふさわしくないって、パパから言われるのは心の底から嫌なのに、リストーマくんから言われたら、何だか素直に聞いちゃいそう。
何が違うんだろう。
でも、フラータだって、魔王の娘。ダンジョンも深くまでもぐらなければ大丈夫だと思う。
それに、ダンジョンから逃げ出すような魔獣に負けることはない。
でも、人間なのに、魔王の娘のフラータを心配してくれるなんて!
「優しいなぁ。あの様子だと、相当腕も立つみたいだったしー! かっこよかったなぁ……。あぁ、また会いたいな。もっとお話ししたい」
見えた手や腕の振り。こっそり後ろから見てたけど、あの動きは一時的に見てたからわかる。
思い返せば思い返すほど、確実に同一人物だって確証が持てる。
「同じ人だよ!」
そう、そうに違いない。
フラータの勘は当たるんだもん。視界を変えたのはあの子で間違いないよ!
「はーあ。でも、他のこと知らないからなぁ。どうアプローチすればいいんだろ。何が好きなのか、何をしたいのか。お名前がわかっただけでも前進だけど、うーん……」
心をのぞいたり、洗脳したりするのはやりたくない。
リストーマくんのまま、フラータを好きになってほしい。
「そうなると、どこにいるのかわからないから、またダンジョンに行かないと。でも、心配させちゃうかな?」
それはやだな。
でも、他の方法がわからない。
相手は人間の男の子。
もしかしたら強い女の子は好みじゃないかもしれない。
そう思うと、大丈夫だよ! って強いところを見せたら嫌われちゃうかもしれない。
それもやだなぁ。
「はぁ。八方塞がりだよぉ。魔王城でフラータが好きって言ったら、誰でもついてきてくれるのに、リストーマくんには好きすら言えなかった。お話しできただけで嬉しくって、帰ってきちゃった」
もっとお近づきになりたいのに、人ってどうすれば女の子のこと好きになってくれるのかな?
リストーマくん、フラータのこと好きって言ってくれるのかな?
魔王城なら、困ったらとりあえず殴り合っているイメージしかない。
野蛮で怖くてアレだけど、フラータは、それで仲良くなっていく様子を何度も見てきた。
でも、人間の男の子も同じとは限らない。暴力が好きってことはない、よね……?
でも、フラータみたくお花やうさぎさんたちみたいな動物が好きとも限らない。
どっち? どうしたらいいの!?
「ドンッ! 入るぞおおおおお!」
「ドアが!」
かけてた鍵ごと壊されて、奇妙な叫びをあげながらパパが入ってきた……。
「なに……? 何か用?」
「今日はどこへ行っていた? ……む? その様子、いつもと違うな?」
「そうよ。パパが魔王の娘なら、魔王の娘ならってうるさいから、他のところにしたの。ダンジョンだから。それならもう文句ないでしょ?」
「……ダンジョン、か。確かにそのようだな。うむ。ダンジョンなら問題ない」
「じゃあ」
「だがな。少しは考えを直したようだから問題ないと言ったまで。ダンジョンで何をしてきた? 何をしたか、そこが重要だ」
「言わない」
「なにっ!?」
「言うわけないじゃん」
「…………!」
パパは、ほほをピクピクさせながら、額に青筋が浮かんでる。
でも、お利口なだけが魔王の娘じゃない。
フラータにだって、自分のことを自分で決める権利がある。
「相手がパパでも、フラータのやってることは教えないよ? だって、力が全てなんでしょ? 親でも何をしているかは明かさないよ」
「ふあっはっはっは!」
「なに? バカにしてるの?」
「いや、子は親を頼らずとも自らここまで成長するものかと思ってな。魔王の娘がどうのと話していたが、話さずともいずれ自覚を得たのかもなと思ったまで。他の種より先に、いや、誰より先にこのワシの首を取るがいい。ワシは誰より先に父の首を取った。期待して待っているぞ。バタン!」
また、変な声を出して部屋を出て行った。
本当にパパのことはよくわからない。理解したくもない。
でも、勘違いでフラータのやってることを魔王の娘らしいことだって思ってくれたみたい。
これで、過度な干渉が減るといいけど……。
「でも、思った通り、ダンジョンならよかった。リストーマくんと会うのは禁止されなさそう。だったら今度は、もう少しおめかししてみようかな?」
リストーマくん、どんな反応してくれるかな?
パパのやってることが理解できなくて、色々と自分の思うままにやってきたけど、やっぱり、自分もパパの娘なんだなぁ。
「強い人を見ると、それだけでドキドキしちゃった」
ああ。リストーマくん……。リストーマって言うんだ。
「リストーマ。リストーマ。ふふっ」
名前を呼んでるだけで幸せな気分。
リストーマ。いい名前。ずっと読んでいたい名前。
ああ。リストーマくん。あんな大きなライオン男を、倒してかついで運んでるなんて、魔王軍にもそんなことできる人そうそういないよ。
「でも、今日はなかったなぁ。あの視界が変わる感じ」
どういうことなんだろう?
使わなかった、とか? 確かに、あれ以来ないけど使わなかったのかな?
でもでも、やっと見つけたフラータの愛しの人!
「危ないからお家に帰ったほうがいいと思う、だってー! キャー!」
心配されちゃった。
出るなとか、魔王の娘としてふさわしくないって、パパから言われるのは心の底から嫌なのに、リストーマくんから言われたら、何だか素直に聞いちゃいそう。
何が違うんだろう。
でも、フラータだって、魔王の娘。ダンジョンも深くまでもぐらなければ大丈夫だと思う。
それに、ダンジョンから逃げ出すような魔獣に負けることはない。
でも、人間なのに、魔王の娘のフラータを心配してくれるなんて!
「優しいなぁ。あの様子だと、相当腕も立つみたいだったしー! かっこよかったなぁ……。あぁ、また会いたいな。もっとお話ししたい」
見えた手や腕の振り。こっそり後ろから見てたけど、あの動きは一時的に見てたからわかる。
思い返せば思い返すほど、確実に同一人物だって確証が持てる。
「同じ人だよ!」
そう、そうに違いない。
フラータの勘は当たるんだもん。視界を変えたのはあの子で間違いないよ!
「はーあ。でも、他のこと知らないからなぁ。どうアプローチすればいいんだろ。何が好きなのか、何をしたいのか。お名前がわかっただけでも前進だけど、うーん……」
心をのぞいたり、洗脳したりするのはやりたくない。
リストーマくんのまま、フラータを好きになってほしい。
「そうなると、どこにいるのかわからないから、またダンジョンに行かないと。でも、心配させちゃうかな?」
それはやだな。
でも、他の方法がわからない。
相手は人間の男の子。
もしかしたら強い女の子は好みじゃないかもしれない。
そう思うと、大丈夫だよ! って強いところを見せたら嫌われちゃうかもしれない。
それもやだなぁ。
「はぁ。八方塞がりだよぉ。魔王城でフラータが好きって言ったら、誰でもついてきてくれるのに、リストーマくんには好きすら言えなかった。お話しできただけで嬉しくって、帰ってきちゃった」
もっとお近づきになりたいのに、人ってどうすれば女の子のこと好きになってくれるのかな?
リストーマくん、フラータのこと好きって言ってくれるのかな?
魔王城なら、困ったらとりあえず殴り合っているイメージしかない。
野蛮で怖くてアレだけど、フラータは、それで仲良くなっていく様子を何度も見てきた。
でも、人間の男の子も同じとは限らない。暴力が好きってことはない、よね……?
でも、フラータみたくお花やうさぎさんたちみたいな動物が好きとも限らない。
どっち? どうしたらいいの!?
「ドンッ! 入るぞおおおおお!」
「ドアが!」
かけてた鍵ごと壊されて、奇妙な叫びをあげながらパパが入ってきた……。
「なに……? 何か用?」
「今日はどこへ行っていた? ……む? その様子、いつもと違うな?」
「そうよ。パパが魔王の娘なら、魔王の娘ならってうるさいから、他のところにしたの。ダンジョンだから。それならもう文句ないでしょ?」
「……ダンジョン、か。確かにそのようだな。うむ。ダンジョンなら問題ない」
「じゃあ」
「だがな。少しは考えを直したようだから問題ないと言ったまで。ダンジョンで何をしてきた? 何をしたか、そこが重要だ」
「言わない」
「なにっ!?」
「言うわけないじゃん」
「…………!」
パパは、ほほをピクピクさせながら、額に青筋が浮かんでる。
でも、お利口なだけが魔王の娘じゃない。
フラータにだって、自分のことを自分で決める権利がある。
「相手がパパでも、フラータのやってることは教えないよ? だって、力が全てなんでしょ? 親でも何をしているかは明かさないよ」
「ふあっはっはっは!」
「なに? バカにしてるの?」
「いや、子は親を頼らずとも自らここまで成長するものかと思ってな。魔王の娘がどうのと話していたが、話さずともいずれ自覚を得たのかもなと思ったまで。他の種より先に、いや、誰より先にこのワシの首を取るがいい。ワシは誰より先に父の首を取った。期待して待っているぞ。バタン!」
また、変な声を出して部屋を出て行った。
本当にパパのことはよくわからない。理解したくもない。
でも、勘違いでフラータのやってることを魔王の娘らしいことだって思ってくれたみたい。
これで、過度な干渉が減るといいけど……。
「でも、思った通り、ダンジョンならよかった。リストーマくんと会うのは禁止されなさそう。だったら今度は、もう少しおめかししてみようかな?」
リストーマくん、どんな反応してくれるかな?
0
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~
十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる