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第7話 剣聖家ひとまずの処遇
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やってきたのは僕の実家。
そう、僕の父様である当代剣聖の住む家だ。
移動の方法はテレポート。初めての経験で少し酔った。
「具体的にどこかまでは知らなかったのでありがとうございます」
「いえ。でも、どうしてここに?」
「リストーマ様が受けてきたことの話を聞いて、挨拶をしないわけにはいきませんから」
なんだか目が真剣だ。
姫様を勝手に外に連れ出してしまっているうえ、家に連れてくるなんてよかったのかな。
「心配入りませんよ。それで、お父様にはどうなってほしいですか?」
「僕は、別に。ここで、前と関わらずに生きていれば、それで」
「わかりました」
「あの。多分色々考えてのことだと思います。それでも、大ごとにしないでくださりありがとうございます」
「できればリストーマ様の意向を尊重したいので」
僕の家。
いや、僕の住んでいた家。
僕の暮らしていた部分は家の外。物置で物と一緒に暮らしていた。他の時間は、単に痛めつけられていた記憶しかない。
だから、中がどうなっているのかわからない。
「大丈夫ですよ」
姫様が隣にいてくれると本当にそう思えてくる。
「ありがとうございます」
決別しよう。この家と。
言われなくともわかる。そのために来たのだと。
「あの怯えた顔は笑ったね。傑作だったよ」
「いやー。何日経っても酒がうないな。こりゃ、置いてくるのは少しもったいなかったか?」
「いいのよそれくらいが、おかわりします?」
「ああ。じゃんじゃん持ってこい」
外にも聞こえてくるほどの騒ぎ声。さすがに僕がいる間はこんなことなかった。
庭の手入れもよく見れば行き届いているとは言えない。僕が住んでいたのはこんな場所だったのか。
「昼間から飲んでいるとは剣聖のやることとは思えませんね。先代の剣聖は素晴らしい方だと聞いていたのですが……」
「そうなんですか?」
「今の者になってから、初めて剣聖の名に傷がつくような者が剣聖となってしまったと聞いています」
少し、僕の話を納得してくれた理由がわかった気がした。
父が剣聖の名を汚していたのか……。
「では、正々堂々正面切って入りましょう。ここは私にお任せを。守られてばかりとはいきませんので。それに、いいところも見せたいですしね」
「え、ちょっと待ってください! ああっ!」
姫様は言葉通り、思い切りよくドアを開け屋敷に侵入した。
そして、使用人の人たちを無視して迷うことなく歩いて行くと、そのまま、大きな騒ぎ声のする部屋のドアを開けた。
「失礼します!」
「誰だ!」
「静まりなさい。私はセスティーナ・アルマ・ヴァレンティ。王より伝言を預かってきました」
「どうして姫様がわざわざここまで……。お前、どうして生きてる。いや、生きてやがったのか、このダメ息子が!」
「息子へかける言葉とは思えませんね。それに、ようやく尻尾を出しましたね」
「それは……」
バツの悪そうな父の顔。
母もリトートもなんだか居心地が悪そうだ。まるで、隠していたことがバレてしまったような。
あれ、尻尾を出したってことは、僕のことはそもそも知られていた!?
「い、いや! 何が悪い。家庭のことにまで口を出される理由はないはずだ! オレの教育方針だ!」
「家庭内で解決していればおっしゃる通りですが、リストーマ様はダンジョンに捨てられていました。これを見過ごすわけにはいきません」
「どうしてそれを……。まさか、あんたらあの場を通ったのか? 相変わらず悪運ばかり強いヤツめ」
「リストーマ様は私を助けてくださいました。それ以上の罵声は許されませんよ」
「そいつがどうやって……。いや、そもそもそいつは息子じゃねぇ! 子どもでもないガキを捨てて何が悪い! そんなやつハナから家族でもなんでもねぇんだ!」
「では、私のための兵を侮辱にしたということでいいですね?」
「は?」
「え?」
僕が、姫様の兵?
父がありえないものでも見るように僕の顔を凝視してくる。
いや、動揺するな。今は姫様が話している最中だ。
「リストーマ様は私の身辺警護の任に就きました。私のリストーマ様を侮辱するということは私を侮辱するということ。それがどういうことかお分かりですね?」
「は、いや、その論理はおかしい。そもそもそんなヤツがそんなこと務まるわけ」
「私の判断です。子どもであろうがそうでなかろうが関係ありません。それでは本題に入りましょう? 今日は最後の挨拶に来ました」
「最後の……?」
色々と聞きたいことは山積みだが、姫様は凛とした顔で父、母、リトートの顔を順に見渡した。
「リストーマ様が人格者なので、本来ならより重い罰を与えるところですが、今回はこの程度でよしとして差し上げます」
誰もが息を飲み、姫様の顔を見ていた。
次の言葉を待つような静けさ。そんな状況に、何も起きていないのに鳥肌が立つ。
「二度と私たちの前に現れないでください」
「…………」
「それでは、リストーマ様、こんなところ帰りましょう」
「は、はい」
誰も何も言わなかった。だが、何も言えないのだということは理解できた。
そう、僕の父様である当代剣聖の住む家だ。
移動の方法はテレポート。初めての経験で少し酔った。
「具体的にどこかまでは知らなかったのでありがとうございます」
「いえ。でも、どうしてここに?」
「リストーマ様が受けてきたことの話を聞いて、挨拶をしないわけにはいきませんから」
なんだか目が真剣だ。
姫様を勝手に外に連れ出してしまっているうえ、家に連れてくるなんてよかったのかな。
「心配入りませんよ。それで、お父様にはどうなってほしいですか?」
「僕は、別に。ここで、前と関わらずに生きていれば、それで」
「わかりました」
「あの。多分色々考えてのことだと思います。それでも、大ごとにしないでくださりありがとうございます」
「できればリストーマ様の意向を尊重したいので」
僕の家。
いや、僕の住んでいた家。
僕の暮らしていた部分は家の外。物置で物と一緒に暮らしていた。他の時間は、単に痛めつけられていた記憶しかない。
だから、中がどうなっているのかわからない。
「大丈夫ですよ」
姫様が隣にいてくれると本当にそう思えてくる。
「ありがとうございます」
決別しよう。この家と。
言われなくともわかる。そのために来たのだと。
「あの怯えた顔は笑ったね。傑作だったよ」
「いやー。何日経っても酒がうないな。こりゃ、置いてくるのは少しもったいなかったか?」
「いいのよそれくらいが、おかわりします?」
「ああ。じゃんじゃん持ってこい」
外にも聞こえてくるほどの騒ぎ声。さすがに僕がいる間はこんなことなかった。
庭の手入れもよく見れば行き届いているとは言えない。僕が住んでいたのはこんな場所だったのか。
「昼間から飲んでいるとは剣聖のやることとは思えませんね。先代の剣聖は素晴らしい方だと聞いていたのですが……」
「そうなんですか?」
「今の者になってから、初めて剣聖の名に傷がつくような者が剣聖となってしまったと聞いています」
少し、僕の話を納得してくれた理由がわかった気がした。
父が剣聖の名を汚していたのか……。
「では、正々堂々正面切って入りましょう。ここは私にお任せを。守られてばかりとはいきませんので。それに、いいところも見せたいですしね」
「え、ちょっと待ってください! ああっ!」
姫様は言葉通り、思い切りよくドアを開け屋敷に侵入した。
そして、使用人の人たちを無視して迷うことなく歩いて行くと、そのまま、大きな騒ぎ声のする部屋のドアを開けた。
「失礼します!」
「誰だ!」
「静まりなさい。私はセスティーナ・アルマ・ヴァレンティ。王より伝言を預かってきました」
「どうして姫様がわざわざここまで……。お前、どうして生きてる。いや、生きてやがったのか、このダメ息子が!」
「息子へかける言葉とは思えませんね。それに、ようやく尻尾を出しましたね」
「それは……」
バツの悪そうな父の顔。
母もリトートもなんだか居心地が悪そうだ。まるで、隠していたことがバレてしまったような。
あれ、尻尾を出したってことは、僕のことはそもそも知られていた!?
「い、いや! 何が悪い。家庭のことにまで口を出される理由はないはずだ! オレの教育方針だ!」
「家庭内で解決していればおっしゃる通りですが、リストーマ様はダンジョンに捨てられていました。これを見過ごすわけにはいきません」
「どうしてそれを……。まさか、あんたらあの場を通ったのか? 相変わらず悪運ばかり強いヤツめ」
「リストーマ様は私を助けてくださいました。それ以上の罵声は許されませんよ」
「そいつがどうやって……。いや、そもそもそいつは息子じゃねぇ! 子どもでもないガキを捨てて何が悪い! そんなやつハナから家族でもなんでもねぇんだ!」
「では、私のための兵を侮辱にしたということでいいですね?」
「は?」
「え?」
僕が、姫様の兵?
父がありえないものでも見るように僕の顔を凝視してくる。
いや、動揺するな。今は姫様が話している最中だ。
「リストーマ様は私の身辺警護の任に就きました。私のリストーマ様を侮辱するということは私を侮辱するということ。それがどういうことかお分かりですね?」
「は、いや、その論理はおかしい。そもそもそんなヤツがそんなこと務まるわけ」
「私の判断です。子どもであろうがそうでなかろうが関係ありません。それでは本題に入りましょう? 今日は最後の挨拶に来ました」
「最後の……?」
色々と聞きたいことは山積みだが、姫様は凛とした顔で父、母、リトートの顔を順に見渡した。
「リストーマ様が人格者なので、本来ならより重い罰を与えるところですが、今回はこの程度でよしとして差し上げます」
誰もが息を飲み、姫様の顔を見ていた。
次の言葉を待つような静けさ。そんな状況に、何も起きていないのに鳥肌が立つ。
「二度と私たちの前に現れないでください」
「…………」
「それでは、リストーマ様、こんなところ帰りましょう」
「は、はい」
誰も何も言わなかった。だが、何も言えないのだということは理解できた。
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