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第4話 会いたい人:魔王の娘視点
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草花を愛でる。小さな動物たちを撫でる。
こんなことをしているとパパに魔王の娘としてふさわしくないと怒られるけど、フラータは暴力や奪うことよりもあたしは数少ない小さな命をゆっくりと見てる方が好き。
「いっけない。そろそろ戻らないと」
遅れるとまたパパに怒られちゃう。
「でも、今日もいい匂いだったなぁ。またね、みんな」
小さな、名前のわからない子たちに手を振ってお家に帰る。
家にもいてくれたらいいんだけど、連れ帰ったらどうなるかはわかってる。だからみんなは外だけ。我慢できる。
今日も日課の散歩を終えてフラータのお家、魔王城に帰る。
本当は外を出歩くこともダメみたいだけど、ギリギリ敷地は出てないし、そっちは大丈夫だよね?
「お嬢様。あまりお外には」
「大丈夫。特に危ない目にはあってないから」
「ですが」
「アルタラは心配性ね。ありがと。あーあ。パパもあなたみたいならいいんだけど」
「魔王様には魔王様の仕事がありますから」
「……。そうね」
みんなそう言う。
パパが偉いのはわかるけど、パパのためにあたしが我慢しなきゃいけないの?
パパがやること、パパが決めたことが本当に正しいの?
ううん。こんな風に考えても仕方ない。
フラータは魔王の娘なんだから。
「はー……」
部屋に戻るなりベッドに飛び込もうとして思わず明日止まった。
何よりまず目に飛び込んできたのは、お部屋に飾ってあった、ささやかな、せめてもの癒しだった花瓶が割られている光景だった。
「お花がない。うそ、そんな」
飾っていたお花は、別に高いものじゃない。特別な効果もない。
それに、フラータの部屋はフラータの部屋。誰かがら入るような場所じゃない。お花を取るにしても、人が住んでいる土地の方がよっぽどキレイな植物が生えているって聞いたことがある。
わざわざお花だけ持って行くとは思えない。そもそも、この部屋に入っていいなんて誰にも言ってない。
「姿が見えないと思ったが、どうせそこらでまた魔王の娘にふさわしくない行動でもしていたのだろう? フラータ」
「パパ! あれパパでしょ!」
「あれ? ああ、置いてあった容れ物のことか。そうだ。魔王の娘にあのようなものは必要ない」
「違う。お花!」
「どちらにしても同じことだ。もし必要だと断じるなら、奪え」
「…………」
フラータじゃ、パパには勝てない。
それに、無理矢理奪ったんじゃ、結局パパと同じだ。それは嫌だ。
「わかったならそれでいい。それより、今ままでどこをほっつき歩いていた? 魔王の娘として自覚が不足しているぞ」
実の娘に対しても、変わらず発する死のオーラ。
体が震え縮み上がり、勝手にひざまずいてしまう。
「……すみませんでした」
「謝れとは言っていない。どこへ行っていたかを聞いているのだ! どうせその辺の雑草や雑魚でも見ていたのだろう? そんなろくでもないを見て」
「雑草でも雑魚じゃありません。あの子たちは」
「口答えするな!」
オーラが強まり、まるで小石になってしまったように、自分が頼りなく感じられる。
ここでは、フラータは無力だ。
みんな優しくしてくれるけど、それもこのパパの力があるから。誰もフラータとして見ていない。魔王の娘としてしか見ていない。
魔王軍での前提は力。
そう思えば、今のフラータの立場なんて……。
「ほう? テレポートとは、少しはやるようになったではないか」
「え……」
パパの関心したような声に意識を戻すと、フラータはダンジョンの中にいた。
おかしい。あたしはテレポートの魔法なんて使っていない。
そもそも、パパを強制的にテレポートさせるなんて、パパ以上の強さを持っていなくては不可能なはず。一体誰が。
「だが、この程度では魔王の命までは取れないぞ。そこにいるのもワーウルフか。強力な魔獣を使役してから出直してくるべきだな」
近くに魔力がたまる感覚がある。
フラータにもワーウルフは見えているけど、パパの姿もパパの魔力が集まっている場所も目に見えない。
でも、確実に魔力がたまっている。急いでその場に伏せた。
「我が覇道を邪魔するものはことごとく消えよ!」
多分、パパの魔力砲はまっすぐ放たれた。
どういうわけか、フラータの頭上を前から通った感覚があったけど、当たることはなかった。
すぐに何かにぶつかって、激しい振動と衝撃音が鼓膜を叩いた。
そして、開いた穴からか、外からの風が吹き込んでくる。
「はっはははは! ダンジョンに穴を開けてしまったわ。残念だったな。ワーウルフ程度の雑魚では相手にならんわ。……ん?」
パパの勝利を確信した声。
しかし、目の前には変わらずワーウルフの姿。ワーウルフにはパパの魔力砲が効かなかったみたい。
「なにっ!?」
それどころかダンジョンにも傷一つ付いていない。
「ど、どういうことだ! これはテレポートと錯覚させるほどの幻覚だと!? いや、しかしこの音、確実にダンジョンの中」
驚くパパの声を聞きながら、呆然と、意識と関係なくワーウルフを倒していく光景を見ていた。
そして、気づくと視界が元に戻った。
「なんだったのだ。フラータ。今何をしたのだ!」
「ふ、フラータじゃありません」
「そんなはずなかろう。この距離だ。フラータならワシに何か使えたのではないのか」
「今のフラータにあれほどの幻覚が再現できると思いますか?」
「……。この魔王城内で一人として心当たりがない。まるで本物の情景を視界に上書きされ、聴覚まで上書きされていたような感覚……」
パパにすら効く力。
そして、見たことも体感したこともない技。
誰かはわからないけど、パパの死のオーラすら解除させてしまっている。これはすごい人に違いない! 会ってみたい!
急がないと、会えなくなっちゃうかも。もしも男の子だったら他の子に取られちゃうかも!
自分の部屋の壁が壊れ、窓が粉々に砕かれたことも気にせず、部屋を飛び出した。
こんなことをしているとパパに魔王の娘としてふさわしくないと怒られるけど、フラータは暴力や奪うことよりもあたしは数少ない小さな命をゆっくりと見てる方が好き。
「いっけない。そろそろ戻らないと」
遅れるとまたパパに怒られちゃう。
「でも、今日もいい匂いだったなぁ。またね、みんな」
小さな、名前のわからない子たちに手を振ってお家に帰る。
家にもいてくれたらいいんだけど、連れ帰ったらどうなるかはわかってる。だからみんなは外だけ。我慢できる。
今日も日課の散歩を終えてフラータのお家、魔王城に帰る。
本当は外を出歩くこともダメみたいだけど、ギリギリ敷地は出てないし、そっちは大丈夫だよね?
「お嬢様。あまりお外には」
「大丈夫。特に危ない目にはあってないから」
「ですが」
「アルタラは心配性ね。ありがと。あーあ。パパもあなたみたいならいいんだけど」
「魔王様には魔王様の仕事がありますから」
「……。そうね」
みんなそう言う。
パパが偉いのはわかるけど、パパのためにあたしが我慢しなきゃいけないの?
パパがやること、パパが決めたことが本当に正しいの?
ううん。こんな風に考えても仕方ない。
フラータは魔王の娘なんだから。
「はー……」
部屋に戻るなりベッドに飛び込もうとして思わず明日止まった。
何よりまず目に飛び込んできたのは、お部屋に飾ってあった、ささやかな、せめてもの癒しだった花瓶が割られている光景だった。
「お花がない。うそ、そんな」
飾っていたお花は、別に高いものじゃない。特別な効果もない。
それに、フラータの部屋はフラータの部屋。誰かがら入るような場所じゃない。お花を取るにしても、人が住んでいる土地の方がよっぽどキレイな植物が生えているって聞いたことがある。
わざわざお花だけ持って行くとは思えない。そもそも、この部屋に入っていいなんて誰にも言ってない。
「姿が見えないと思ったが、どうせそこらでまた魔王の娘にふさわしくない行動でもしていたのだろう? フラータ」
「パパ! あれパパでしょ!」
「あれ? ああ、置いてあった容れ物のことか。そうだ。魔王の娘にあのようなものは必要ない」
「違う。お花!」
「どちらにしても同じことだ。もし必要だと断じるなら、奪え」
「…………」
フラータじゃ、パパには勝てない。
それに、無理矢理奪ったんじゃ、結局パパと同じだ。それは嫌だ。
「わかったならそれでいい。それより、今ままでどこをほっつき歩いていた? 魔王の娘として自覚が不足しているぞ」
実の娘に対しても、変わらず発する死のオーラ。
体が震え縮み上がり、勝手にひざまずいてしまう。
「……すみませんでした」
「謝れとは言っていない。どこへ行っていたかを聞いているのだ! どうせその辺の雑草や雑魚でも見ていたのだろう? そんなろくでもないを見て」
「雑草でも雑魚じゃありません。あの子たちは」
「口答えするな!」
オーラが強まり、まるで小石になってしまったように、自分が頼りなく感じられる。
ここでは、フラータは無力だ。
みんな優しくしてくれるけど、それもこのパパの力があるから。誰もフラータとして見ていない。魔王の娘としてしか見ていない。
魔王軍での前提は力。
そう思えば、今のフラータの立場なんて……。
「ほう? テレポートとは、少しはやるようになったではないか」
「え……」
パパの関心したような声に意識を戻すと、フラータはダンジョンの中にいた。
おかしい。あたしはテレポートの魔法なんて使っていない。
そもそも、パパを強制的にテレポートさせるなんて、パパ以上の強さを持っていなくては不可能なはず。一体誰が。
「だが、この程度では魔王の命までは取れないぞ。そこにいるのもワーウルフか。強力な魔獣を使役してから出直してくるべきだな」
近くに魔力がたまる感覚がある。
フラータにもワーウルフは見えているけど、パパの姿もパパの魔力が集まっている場所も目に見えない。
でも、確実に魔力がたまっている。急いでその場に伏せた。
「我が覇道を邪魔するものはことごとく消えよ!」
多分、パパの魔力砲はまっすぐ放たれた。
どういうわけか、フラータの頭上を前から通った感覚があったけど、当たることはなかった。
すぐに何かにぶつかって、激しい振動と衝撃音が鼓膜を叩いた。
そして、開いた穴からか、外からの風が吹き込んでくる。
「はっはははは! ダンジョンに穴を開けてしまったわ。残念だったな。ワーウルフ程度の雑魚では相手にならんわ。……ん?」
パパの勝利を確信した声。
しかし、目の前には変わらずワーウルフの姿。ワーウルフにはパパの魔力砲が効かなかったみたい。
「なにっ!?」
それどころかダンジョンにも傷一つ付いていない。
「ど、どういうことだ! これはテレポートと錯覚させるほどの幻覚だと!? いや、しかしこの音、確実にダンジョンの中」
驚くパパの声を聞きながら、呆然と、意識と関係なくワーウルフを倒していく光景を見ていた。
そして、気づくと視界が元に戻った。
「なんだったのだ。フラータ。今何をしたのだ!」
「ふ、フラータじゃありません」
「そんなはずなかろう。この距離だ。フラータならワシに何か使えたのではないのか」
「今のフラータにあれほどの幻覚が再現できると思いますか?」
「……。この魔王城内で一人として心当たりがない。まるで本物の情景を視界に上書きされ、聴覚まで上書きされていたような感覚……」
パパにすら効く力。
そして、見たことも体感したこともない技。
誰かはわからないけど、パパの死のオーラすら解除させてしまっている。これはすごい人に違いない! 会ってみたい!
急がないと、会えなくなっちゃうかも。もしも男の子だったら他の子に取られちゃうかも!
自分の部屋の壁が壊れ、窓が粉々に砕かれたことも気にせず、部屋を飛び出した。
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