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第3話 この視界は……?:神視点
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「消え失せろ!」
「おー。怖い怖い。さっすがノルキーちゃん、神様だねぇ」
「そこか!」
悪魔は見つけ次第消す。それがワタシの神としての仕事だ。
なかなかしぶとい悪魔に対し、私としたことが、消すのに十年以上かかってしまっている。今までならば、戦闘不能にするのに一日とかからず、数年かけてじっくりと存在を抹消するというのに、すでに数体の悪魔を消せるだけの時間が経ちながら、未だに目の前の悪魔はくたばらない。
そのうえ、悪魔を消してきた実績からか、悪魔に名前が知られてしまっている。もしかしたら、粘られているのはそのせいかもしれない。
「あーあ。まーた地形変えちゃってー。神様は生き物が可哀想とか思わないの?」
「思わないな。そもそも、他の生き物がワタシたち神の行動に合わせて適応していくのだ。そんな言葉で動揺を誘っても無駄だ!」
「うわー! ……なーんちゃって!」
攻撃が当たったかと思えば、カメのように引っ込んでいただけ。また腕や足が出てくる。
二つに結んだ黒い頭髪を揺らしながら、今度はわざとらしく息を吐くと、なんだかバカにするような顔でこちらを見てくる。
「生き物は面白いのになー。この良さが理解できないなんて」
「貴様はよほど生き物が好きらしいな」
「貴様じゃなくてアタシにはメフェっていう名前があるんだけど……。まあいいわ。名前を覚えるつもりないみたいだし。そう。アタシは生き物好きよ」
赤い目を輝かせながら言う姿は悪魔に似合わず、いや悪魔特有の、邪心などないような顔をしている。そう、まさしく悪魔の顔だ。
悪魔は、悪意に対して純粋なのだ。ゆえに顔だけ見ても判別不可能。
こいつは悪魔だ。だから消さねばならない。
「顔が怖いよー」
「ふん!」
腕を振る。かわされる。
「特に人間が好きかなー」
「私は聞きたくないな!」
光の玉を飛ばす。かわされる。
「聞いてよー。あの欲しかったものが手に入った時の嬉しそうな顔。そして、その心から欲しかったものが、目の前で壊されていく絶望の表情。あれは見ていてゾクゾクするなー。本当にたまらなくなるよ。ね、そう思わない? やっぱり感情がわかりやすい生き物の方が見てて面白いよね!」
「興味ないな」
「えー。もっと面白がってみればいいのにー」
「その前にお前を消すさ!」
「わっ、わっ!」
おどけた調子でワタシの攻撃を全てかわす。こんなことは今まで初めてだ。
ワタシはやはり、悪魔の趣味嗜好を理解できない。悪魔はただの消すべき存在なだけだ。
「人が本物の神を知ったら悲しむだろーなー」
「どうでもいいさ。そんなこと」
チラチラと見ながら言ってくるのが余計に腹が立つ。
人の語る神と、本物の神は乖離している。
たまたま我々を見た者が、神の話として語っているだけだ。
悲しまれようがどうなろうが関係ない。ワタシたち神は、人のために存在しているわけではない。
「なっ……!」
私は先ほどまで悪魔を消そうとしていたはずが、突然場所が変わった。
「ここは、どこだ……?」
気がつけばダンジョンの中。いつの間にかまったく知らない場所に移っていた。
目の前にいるのはワーウルフか?
悪魔はどこだ。
「ふふっ。反応が滑稽だねー。その様子だと、ノルキーちゃんにも初めて効き目があった感じかな?」
「これは貴様の力か?」
「それならとっくに攻撃するか逃げるかしてると思うなー。それに、アタシに同じことができたら、出会い頭に使うだろうし?」
悪魔の言う通りだ。それもそうか。
あの悪魔が十年も温存するとは思えない。この悪魔は、初っ端から技のオンパレードと言わんばかりに、出し惜しみなくさまざまな技を披露してきた。
そのくせ体力は果てず、私の攻撃を避け続けている。
思い出すだけで向っ腹が立つが、今の現象は悪魔の力ではないらしい。
「……見覚えは、ないな……」
じっと見える範囲を観察するが、知らないダンジョンの中。そして、体に合わせて視界が動くことがない。ワタシの力で視界だけ他の場所へ飛ばそうとしても、自分の意思で動かすことができない。
それだけじゃない。音からしてワタシは移動していない。だが、今聞こえている音は、悪魔と戦っていた場所の自然音と、目の前のワーウルフのうなり声が混じって聞こえてくる。
場所は移動していないはずだが、まるでダンジョンに移されたかのような気分だ。
厄介なのは、実際に転移させられたわけではないということ。
周りがどうなっているのかノイズが多いせいで判別できず、感知系のスキルも私がいた場所とダンジョンの情報が重なってしまっているせいで、どちらのものか区別できない。
「アタシの技はほっとんど効き目がなかったのに、弱点知っちゃったかも?」
「こんな特異な力、この世に二人といないはずだ。貴様は使えない」
「そうかもしれないけど、アタシの協力者にはできるよね?」
「……」
何者かわからない以上、悪魔の手先になる可能性は否定できない。
もとより、攻撃が得意なワタシは、相対的に耐性面が弱い。にしても、神以外の者が使うスキルが、このワタシに通用するとは思えない。
ダンジョンの光景から一致する場所を探し出し、止めるよう頼みに行くとするか。
「おー。怖い怖い。さっすがノルキーちゃん、神様だねぇ」
「そこか!」
悪魔は見つけ次第消す。それがワタシの神としての仕事だ。
なかなかしぶとい悪魔に対し、私としたことが、消すのに十年以上かかってしまっている。今までならば、戦闘不能にするのに一日とかからず、数年かけてじっくりと存在を抹消するというのに、すでに数体の悪魔を消せるだけの時間が経ちながら、未だに目の前の悪魔はくたばらない。
そのうえ、悪魔を消してきた実績からか、悪魔に名前が知られてしまっている。もしかしたら、粘られているのはそのせいかもしれない。
「あーあ。まーた地形変えちゃってー。神様は生き物が可哀想とか思わないの?」
「思わないな。そもそも、他の生き物がワタシたち神の行動に合わせて適応していくのだ。そんな言葉で動揺を誘っても無駄だ!」
「うわー! ……なーんちゃって!」
攻撃が当たったかと思えば、カメのように引っ込んでいただけ。また腕や足が出てくる。
二つに結んだ黒い頭髪を揺らしながら、今度はわざとらしく息を吐くと、なんだかバカにするような顔でこちらを見てくる。
「生き物は面白いのになー。この良さが理解できないなんて」
「貴様はよほど生き物が好きらしいな」
「貴様じゃなくてアタシにはメフェっていう名前があるんだけど……。まあいいわ。名前を覚えるつもりないみたいだし。そう。アタシは生き物好きよ」
赤い目を輝かせながら言う姿は悪魔に似合わず、いや悪魔特有の、邪心などないような顔をしている。そう、まさしく悪魔の顔だ。
悪魔は、悪意に対して純粋なのだ。ゆえに顔だけ見ても判別不可能。
こいつは悪魔だ。だから消さねばならない。
「顔が怖いよー」
「ふん!」
腕を振る。かわされる。
「特に人間が好きかなー」
「私は聞きたくないな!」
光の玉を飛ばす。かわされる。
「聞いてよー。あの欲しかったものが手に入った時の嬉しそうな顔。そして、その心から欲しかったものが、目の前で壊されていく絶望の表情。あれは見ていてゾクゾクするなー。本当にたまらなくなるよ。ね、そう思わない? やっぱり感情がわかりやすい生き物の方が見てて面白いよね!」
「興味ないな」
「えー。もっと面白がってみればいいのにー」
「その前にお前を消すさ!」
「わっ、わっ!」
おどけた調子でワタシの攻撃を全てかわす。こんなことは今まで初めてだ。
ワタシはやはり、悪魔の趣味嗜好を理解できない。悪魔はただの消すべき存在なだけだ。
「人が本物の神を知ったら悲しむだろーなー」
「どうでもいいさ。そんなこと」
チラチラと見ながら言ってくるのが余計に腹が立つ。
人の語る神と、本物の神は乖離している。
たまたま我々を見た者が、神の話として語っているだけだ。
悲しまれようがどうなろうが関係ない。ワタシたち神は、人のために存在しているわけではない。
「なっ……!」
私は先ほどまで悪魔を消そうとしていたはずが、突然場所が変わった。
「ここは、どこだ……?」
気がつけばダンジョンの中。いつの間にかまったく知らない場所に移っていた。
目の前にいるのはワーウルフか?
悪魔はどこだ。
「ふふっ。反応が滑稽だねー。その様子だと、ノルキーちゃんにも初めて効き目があった感じかな?」
「これは貴様の力か?」
「それならとっくに攻撃するか逃げるかしてると思うなー。それに、アタシに同じことができたら、出会い頭に使うだろうし?」
悪魔の言う通りだ。それもそうか。
あの悪魔が十年も温存するとは思えない。この悪魔は、初っ端から技のオンパレードと言わんばかりに、出し惜しみなくさまざまな技を披露してきた。
そのくせ体力は果てず、私の攻撃を避け続けている。
思い出すだけで向っ腹が立つが、今の現象は悪魔の力ではないらしい。
「……見覚えは、ないな……」
じっと見える範囲を観察するが、知らないダンジョンの中。そして、体に合わせて視界が動くことがない。ワタシの力で視界だけ他の場所へ飛ばそうとしても、自分の意思で動かすことができない。
それだけじゃない。音からしてワタシは移動していない。だが、今聞こえている音は、悪魔と戦っていた場所の自然音と、目の前のワーウルフのうなり声が混じって聞こえてくる。
場所は移動していないはずだが、まるでダンジョンに移されたかのような気分だ。
厄介なのは、実際に転移させられたわけではないということ。
周りがどうなっているのかノイズが多いせいで判別できず、感知系のスキルも私がいた場所とダンジョンの情報が重なってしまっているせいで、どちらのものか区別できない。
「アタシの技はほっとんど効き目がなかったのに、弱点知っちゃったかも?」
「こんな特異な力、この世に二人といないはずだ。貴様は使えない」
「そうかもしれないけど、アタシの協力者にはできるよね?」
「……」
何者かわからない以上、悪魔の手先になる可能性は否定できない。
もとより、攻撃が得意なワタシは、相対的に耐性面が弱い。にしても、神以外の者が使うスキルが、このワタシに通用するとは思えない。
ダンジョンの光景から一致する場所を探し出し、止めるよう頼みに行くとするか。
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