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第1話 剣聖家から追放
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「リストーマ。オマエは追放だ!」
祝うべき日にまったく似合わない言葉を投げかけられ、僕は何を言われてたのか咄嗟に理解できなかった。
「と、父様、もう一度おっしゃっていただけませんか?」
「聞き取れなかったのかこのグズが。ならもう一度言ってやる。お前を我が栄光のシュウェット家から追放する!」
聞き間違いじゃなかった。
僕を追放するということは間違いじゃなかった。
今日、僕はジョブに覚醒した。
この世界の人間は、18歳の誕生日を迎ええると天職であるジョブに覚醒する。
そんなめでたいこの日に、父様から言い渡されたのは祝いの言葉ではなかった。
「な、なぜですっ……! どうしてですかっ……!」
震えながら、拳に力を込め精一杯声をあげる。
だが、父様はそんな僕の様子を鼻で笑うだけ。
「どうしてだとぉ?」
さらには、クスクスと笑う母様と弟のリトートの声まで聞こえてくる。
まるで僕以外のみんなは理解しているみたいに。
「オマエを追放する理由など決まっているだろう。オマエのジョブが剣聖でなかったからだ」
「それは……」
何も言い訳できなかった。
シュウェット家は剣聖の家系。その家に生まれ育ったというのに、ジョブが剣聖ではなかったのだ。
もちろん、全員が全員剣聖になれるわけではない。そんなことはわかっていた。剣聖でなくても立派に活躍している親戚の方もいるのだ。
そう、僕は剣聖ではなかった。
それでも。
「追放はあんまりじゃありませんか?」
「察しが悪いったらありゃしない……。父様、このにいさ、いや、ダメ兄は仕方がありませんよ。元々、我々と同じ血筋を継いではいないのですからね」
「え……」
「さすがリトート。それもそうだな。ダメ息子には元から酷な話だったか」
「そうよ。私がこの腹を痛めて産んだわけじゃないんだもの。ジョブが剣聖なんてそもそもあり得ない話なのよ」
「う、嘘だ。そんな……」
「たまたま見かけ拾ってみたら、少し剣ができるからと育ててやっていたが、まさかそんなことも知らなかったのか? 気づきそうなものだがな。そもそも、髪の色も顔立ちも、何から何まで違うというのに、どうして気づかなかったのだ?」
「だから察しが悪いのですよ。このダメ兄は」
「そうだったな。クッ、アッハッハッハッハ!」
こらえきれないとばかりに、全員そろって大声で笑い出した。
僕は剣聖の血筋じゃない? シュウェット家の人間じゃない……?
髪も、顔も、何もかも、何か理由があるんだと思って考えないようにしていたのに、みんなは金髪なのに僕だけ黒髪なことにも理由があるんだと思っていたのに、それが本当に僕と家族の関係がない証拠?
「嘘だ……」
「嘘なものですか。あなたはね。父様がたまたま通りかかった森に捨てられていたの。父様の慈悲の心で拾われたの。ただのそれだけの人間よ」
「も、森で、ひ、拾われた……?」
それじゃあ、僕は誰で、なんなんだ……。
「だーが、結局剣聖が育てても剣聖にはならなかったな。万に一つのギャンブルだったが、剣聖として人並みの剣の才すらないゴミめ。まあ、ゴミはゴミ。捨てられていたのだから当然か」
「そうです父様。今度はダンジョンにでも捨てて差し上げましょうよ。近くにほとんど未踏破のダンジョンがあったはずです。あそこは未知。きっと我々の知らない危険なモンスターであふれていますよ」
「それはいい! どこに捨てようか悩んでいたんだ。ダンジョンならその辺と違い、誰かに見つかる可能性が低い。そのうえ、報告する時も名誉の死にできる」
「実力がなくとも、シュウェット家に恥じない死に方ができるなんて、光栄じゃないですか」
「ああ。そうだ。そうに決まっている」
僕は未だ、自分が家族と思っていた人間が赤の他人だったことが飲み込めていないというのに勝手に話が進んでいる。
止めないと。
このままだと僕は。
「い、痛っ!」
「だまれ!」
「や、やめ、やめてくださ」
「静かにしろと言ってるだろ」
「うっ」
無理矢理髪を掴まれ、僕の体は投げ飛ばされた。
「本当に貧弱だな。少しの間でもシュウェット家の者として育てたこと自体が失敗だった。捨てられた子を拾うなんて善行をしたことが、それ以上の汚点になるとは……」
抵抗する間もなく体を縛られ、何かで強く頭を叩かれ、僕はそのまま意識を失った。
「ここでいいか」
次に目を覚ますと薄暗い場所にいた。
「うらっ!」
「ぐあっ! ゴホッ! ゲホッゲホッ! …………ここは……?」
「ダンジョンだ。そんなこともわからないのか。生きたきゃここから家まで帰って来ればいい。そうしたら、実力を認めてうちの雑用係ぐらいにはしてやってもいい」
「それは傑作ですね。よくわからない【配信者】とかいう、聞いたこともないジョブで何ができるって話ですけどね」
「まったくもってその通りだな」
「「アッハッハッハッハ」」
「待っ、待って。置いてかないで!」
僕の声が聞こえていないのか、父様もリトートも、僕のことを見ないで歩いて行ってしまった。
ダンジョンに一人、本当に捨てられてしまった。
話が本当なら、これで捨てられるのは人生二度目ってことになるのか……。
体はロープで縛られ、持ち物は着ていた服だけ。靴すらない。
「本当に、【配信者】で何ができるって言うんだ」
祝うべき日にまったく似合わない言葉を投げかけられ、僕は何を言われてたのか咄嗟に理解できなかった。
「と、父様、もう一度おっしゃっていただけませんか?」
「聞き取れなかったのかこのグズが。ならもう一度言ってやる。お前を我が栄光のシュウェット家から追放する!」
聞き間違いじゃなかった。
僕を追放するということは間違いじゃなかった。
今日、僕はジョブに覚醒した。
この世界の人間は、18歳の誕生日を迎ええると天職であるジョブに覚醒する。
そんなめでたいこの日に、父様から言い渡されたのは祝いの言葉ではなかった。
「な、なぜですっ……! どうしてですかっ……!」
震えながら、拳に力を込め精一杯声をあげる。
だが、父様はそんな僕の様子を鼻で笑うだけ。
「どうしてだとぉ?」
さらには、クスクスと笑う母様と弟のリトートの声まで聞こえてくる。
まるで僕以外のみんなは理解しているみたいに。
「オマエを追放する理由など決まっているだろう。オマエのジョブが剣聖でなかったからだ」
「それは……」
何も言い訳できなかった。
シュウェット家は剣聖の家系。その家に生まれ育ったというのに、ジョブが剣聖ではなかったのだ。
もちろん、全員が全員剣聖になれるわけではない。そんなことはわかっていた。剣聖でなくても立派に活躍している親戚の方もいるのだ。
そう、僕は剣聖ではなかった。
それでも。
「追放はあんまりじゃありませんか?」
「察しが悪いったらありゃしない……。父様、このにいさ、いや、ダメ兄は仕方がありませんよ。元々、我々と同じ血筋を継いではいないのですからね」
「え……」
「さすがリトート。それもそうだな。ダメ息子には元から酷な話だったか」
「そうよ。私がこの腹を痛めて産んだわけじゃないんだもの。ジョブが剣聖なんてそもそもあり得ない話なのよ」
「う、嘘だ。そんな……」
「たまたま見かけ拾ってみたら、少し剣ができるからと育ててやっていたが、まさかそんなことも知らなかったのか? 気づきそうなものだがな。そもそも、髪の色も顔立ちも、何から何まで違うというのに、どうして気づかなかったのだ?」
「だから察しが悪いのですよ。このダメ兄は」
「そうだったな。クッ、アッハッハッハッハ!」
こらえきれないとばかりに、全員そろって大声で笑い出した。
僕は剣聖の血筋じゃない? シュウェット家の人間じゃない……?
髪も、顔も、何もかも、何か理由があるんだと思って考えないようにしていたのに、みんなは金髪なのに僕だけ黒髪なことにも理由があるんだと思っていたのに、それが本当に僕と家族の関係がない証拠?
「嘘だ……」
「嘘なものですか。あなたはね。父様がたまたま通りかかった森に捨てられていたの。父様の慈悲の心で拾われたの。ただのそれだけの人間よ」
「も、森で、ひ、拾われた……?」
それじゃあ、僕は誰で、なんなんだ……。
「だーが、結局剣聖が育てても剣聖にはならなかったな。万に一つのギャンブルだったが、剣聖として人並みの剣の才すらないゴミめ。まあ、ゴミはゴミ。捨てられていたのだから当然か」
「そうです父様。今度はダンジョンにでも捨てて差し上げましょうよ。近くにほとんど未踏破のダンジョンがあったはずです。あそこは未知。きっと我々の知らない危険なモンスターであふれていますよ」
「それはいい! どこに捨てようか悩んでいたんだ。ダンジョンならその辺と違い、誰かに見つかる可能性が低い。そのうえ、報告する時も名誉の死にできる」
「実力がなくとも、シュウェット家に恥じない死に方ができるなんて、光栄じゃないですか」
「ああ。そうだ。そうに決まっている」
僕は未だ、自分が家族と思っていた人間が赤の他人だったことが飲み込めていないというのに勝手に話が進んでいる。
止めないと。
このままだと僕は。
「い、痛っ!」
「だまれ!」
「や、やめ、やめてくださ」
「静かにしろと言ってるだろ」
「うっ」
無理矢理髪を掴まれ、僕の体は投げ飛ばされた。
「本当に貧弱だな。少しの間でもシュウェット家の者として育てたこと自体が失敗だった。捨てられた子を拾うなんて善行をしたことが、それ以上の汚点になるとは……」
抵抗する間もなく体を縛られ、何かで強く頭を叩かれ、僕はそのまま意識を失った。
「ここでいいか」
次に目を覚ますと薄暗い場所にいた。
「うらっ!」
「ぐあっ! ゴホッ! ゲホッゲホッ! …………ここは……?」
「ダンジョンだ。そんなこともわからないのか。生きたきゃここから家まで帰って来ればいい。そうしたら、実力を認めてうちの雑用係ぐらいにはしてやってもいい」
「それは傑作ですね。よくわからない【配信者】とかいう、聞いたこともないジョブで何ができるって話ですけどね」
「まったくもってその通りだな」
「「アッハッハッハッハ」」
「待っ、待って。置いてかないで!」
僕の声が聞こえていないのか、父様もリトートも、僕のことを見ないで歩いて行ってしまった。
ダンジョンに一人、本当に捨てられてしまった。
話が本当なら、これで捨てられるのは人生二度目ってことになるのか……。
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