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第48話 影斗と怜が出てくるのを見てしまった:日向視点
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今、わたしは影斗の家に向かっている。
気分はいい。最高にいい。
「ふふんっ」
ひさしぶりに、出かけない? なんて言われた時はびっくりしたけど、すっごく楽しかった。
急遽行ってみたかったテーマパークに行って、嫌な顔一つしないで当日券も買ってくれて、一緒にアトラクションにも乗ってくれて最後まで楽しい一日だった。
「ふふっ」
思い出すだけで笑顔になっちゃう。
それに影斗、あんな服持ってたんだ。今まで見せなかったとかかな?
つい先日はヨレヨレの文字入りTシャツを着てたけど、そんなんじゃなかった。昔からよくわからない服を着てたから、ああいうのが好きだと思ってたけど、どうなんだろう。
でも、二人で出かけるなんてデートみたいで楽しかった。ちょっと準備に時間がかかったけど、忙しくてもお菓子渡すくらいならいいよね。
重いかな? ううん。ありがとうって伝えるだけだし大丈夫でしょ。
「え、嘘…………」
思わず手に持つ手作りクッキーを地面に落としてしまった。
反射的に電柱の影に隠れてしまう。わたしは口を押さえて、顔だけ出して先を見た。
「なんのためだったと思ってるのよ。勉強でしょ。勉強」
「いや、勉強になったこと書いただろ?」
「あれで?」
「まあ、それについては悪いとは思ってるよ。でも、緊張しちゃって。あはは」
「あははって、ねえ。仕方ないわね。やる前と比べれば少しはわかったんだろうし、それでよしとしましょ。本当にどうして配信だとあれだけ色々と気配りできるのかしら」
「いや、一人で話すほうが話しやすいって」
「話し相手もいないのに? わからないわ。それはもう能力ね」
「イマジナリーフレンドと話さない?」
「話さないわよ」
楽しそうに話しながら影斗の家から出てくる影斗と怜ちゃんを見て、わたしは電柱の影に隠れてしまった。
幸い? わたしのほうには歩いてこなかったけど、あれは確実に影斗と怜ちゃんだった。
「今の、なに? どうして二人が影斗の家から……?」
あわてて二人の行った先を見ると、まだ二人が話しながら歩いている背中が見えた。
今度は塀に隠れてしまった。振り返っても見えないように。別にやましいことなんてないのに。なんだか見られたくなくて。
どうして二人が影斗の家の中から出てきたの? 影斗はわかるけど、どうして怜ちゃんまで?
「……二人はあんなに仲がよかったの……?」
心臓の音がうるさい。
もしかして、わたしは遊ばれてた?
昨日のデートは、たまには他の女の子と遊ぶかっていう影斗のふしだらな理由?
かっこつけてたのも、わたしのためじゃなくて怜ちゃんのため? 使い回しだったの?
「そういえば、いつからか影斗と怜ちゃんお互いに呼び捨てに……」
なにかあったんだ。わたしの知らない間に。二人の間に、なにかあったんだ。わたしに内緒で、二人だけで。
影斗はキララちゃんが好きだった。クラスでキララちゃんを広めたのは怜ちゃんだ。
なにかつながりが……?
いや、影斗も怜ちゃんもそんな悪い人じゃ。隠し事なんてする人じゃ……。
「わかんないよー。どうして! どうして……」
目元が熱い。
ほっぺたまで熱い。
別にわたしは影斗とつき合っていたわけじゃない。
でも、心が落ちつかない。息が整わない。
ただ、二人が楽しそうに話していただけなのに、影斗の家から出てきただけなのに。
それをわたしが知らなかったから?
「……用事だって、忙しいって……」
それでも、わたしに動画編集を教えてくれていた。切り抜きだってほめてくれたし、驚いてくれた。
キララちゃんの動画の話をしてくれた。
手も繋いでくれたし、
つい先日はデートをしてくれた。わたしの行きたいところにつき合ってくれた。
でも、それはわたしが一方的に思っていただけ? 昔から影斗が好きで影斗を思うと胸が締め付けられて、影斗が笑っているだけで嬉しかったのは、わたしだけ?
影斗はなんとも思ってなかったの? 怜ちゃんとつき合ってて、わたしなんてただの遊び相手だったの……?
「わたし、どうしたらいいの……?」
二人がどこへ行くのかわからない。どこへ行ったのか知るのが怖い。また見て、まだ見えるのが怖い。
知りたくない。
これ以上なにも見たくない。
でも、わたしはスマホを見てしまった。
「……やっぱり、夢じゃない……」
スマホの画面には、しっかりと二人の姿が写っている。
二人が家から出てきたのを見た瞬間、反射的に写真をとってしまった。これが現実なんだと突きつけられているようで嫌だ。
二人とも笑顔だ。わたしといるときに見せていたような頑張ってる笑顔じゃなくて、もっと自然な笑顔だ。
写真のはずなのに、見ているとそのまま動き出して、どこか遠くへ行きそうな。もう行ってしまったような感じがして怖くなる。
スマホの画面にしきりに水滴が落ちてくる、上を見上げるも空は曇っているだけで雨は降っていない。
「う、うう」
自分の涙だと自覚すると、急にとめどなくあふれ出てくる。
止まらなくなる。止まってくれない。
考えが止まらない。悪い方悪い方に考えが進んでいく。
「そんなことないのに。まだわからないのにー」
気づけば全速力で走っていた。今の自分を誰にも見られたくなくて、影斗たちが戻ってきてしまいそうで。
影斗たちに見られるのが怖くて。
気分はいい。最高にいい。
「ふふんっ」
ひさしぶりに、出かけない? なんて言われた時はびっくりしたけど、すっごく楽しかった。
急遽行ってみたかったテーマパークに行って、嫌な顔一つしないで当日券も買ってくれて、一緒にアトラクションにも乗ってくれて最後まで楽しい一日だった。
「ふふっ」
思い出すだけで笑顔になっちゃう。
それに影斗、あんな服持ってたんだ。今まで見せなかったとかかな?
つい先日はヨレヨレの文字入りTシャツを着てたけど、そんなんじゃなかった。昔からよくわからない服を着てたから、ああいうのが好きだと思ってたけど、どうなんだろう。
でも、二人で出かけるなんてデートみたいで楽しかった。ちょっと準備に時間がかかったけど、忙しくてもお菓子渡すくらいならいいよね。
重いかな? ううん。ありがとうって伝えるだけだし大丈夫でしょ。
「え、嘘…………」
思わず手に持つ手作りクッキーを地面に落としてしまった。
反射的に電柱の影に隠れてしまう。わたしは口を押さえて、顔だけ出して先を見た。
「なんのためだったと思ってるのよ。勉強でしょ。勉強」
「いや、勉強になったこと書いただろ?」
「あれで?」
「まあ、それについては悪いとは思ってるよ。でも、緊張しちゃって。あはは」
「あははって、ねえ。仕方ないわね。やる前と比べれば少しはわかったんだろうし、それでよしとしましょ。本当にどうして配信だとあれだけ色々と気配りできるのかしら」
「いや、一人で話すほうが話しやすいって」
「話し相手もいないのに? わからないわ。それはもう能力ね」
「イマジナリーフレンドと話さない?」
「話さないわよ」
楽しそうに話しながら影斗の家から出てくる影斗と怜ちゃんを見て、わたしは電柱の影に隠れてしまった。
幸い? わたしのほうには歩いてこなかったけど、あれは確実に影斗と怜ちゃんだった。
「今の、なに? どうして二人が影斗の家から……?」
あわてて二人の行った先を見ると、まだ二人が話しながら歩いている背中が見えた。
今度は塀に隠れてしまった。振り返っても見えないように。別にやましいことなんてないのに。なんだか見られたくなくて。
どうして二人が影斗の家の中から出てきたの? 影斗はわかるけど、どうして怜ちゃんまで?
「……二人はあんなに仲がよかったの……?」
心臓の音がうるさい。
もしかして、わたしは遊ばれてた?
昨日のデートは、たまには他の女の子と遊ぶかっていう影斗のふしだらな理由?
かっこつけてたのも、わたしのためじゃなくて怜ちゃんのため? 使い回しだったの?
「そういえば、いつからか影斗と怜ちゃんお互いに呼び捨てに……」
なにかあったんだ。わたしの知らない間に。二人の間に、なにかあったんだ。わたしに内緒で、二人だけで。
影斗はキララちゃんが好きだった。クラスでキララちゃんを広めたのは怜ちゃんだ。
なにかつながりが……?
いや、影斗も怜ちゃんもそんな悪い人じゃ。隠し事なんてする人じゃ……。
「わかんないよー。どうして! どうして……」
目元が熱い。
ほっぺたまで熱い。
別にわたしは影斗とつき合っていたわけじゃない。
でも、心が落ちつかない。息が整わない。
ただ、二人が楽しそうに話していただけなのに、影斗の家から出てきただけなのに。
それをわたしが知らなかったから?
「……用事だって、忙しいって……」
それでも、わたしに動画編集を教えてくれていた。切り抜きだってほめてくれたし、驚いてくれた。
キララちゃんの動画の話をしてくれた。
手も繋いでくれたし、
つい先日はデートをしてくれた。わたしの行きたいところにつき合ってくれた。
でも、それはわたしが一方的に思っていただけ? 昔から影斗が好きで影斗を思うと胸が締め付けられて、影斗が笑っているだけで嬉しかったのは、わたしだけ?
影斗はなんとも思ってなかったの? 怜ちゃんとつき合ってて、わたしなんてただの遊び相手だったの……?
「わたし、どうしたらいいの……?」
二人がどこへ行くのかわからない。どこへ行ったのか知るのが怖い。また見て、まだ見えるのが怖い。
知りたくない。
これ以上なにも見たくない。
でも、わたしはスマホを見てしまった。
「……やっぱり、夢じゃない……」
スマホの画面には、しっかりと二人の姿が写っている。
二人が家から出てきたのを見た瞬間、反射的に写真をとってしまった。これが現実なんだと突きつけられているようで嫌だ。
二人とも笑顔だ。わたしといるときに見せていたような頑張ってる笑顔じゃなくて、もっと自然な笑顔だ。
写真のはずなのに、見ているとそのまま動き出して、どこか遠くへ行きそうな。もう行ってしまったような感じがして怖くなる。
スマホの画面にしきりに水滴が落ちてくる、上を見上げるも空は曇っているだけで雨は降っていない。
「う、うう」
自分の涙だと自覚すると、急にとめどなくあふれ出てくる。
止まらなくなる。止まってくれない。
考えが止まらない。悪い方悪い方に考えが進んでいく。
「そんなことないのに。まだわからないのにー」
気づけば全速力で走っていた。今の自分を誰にも見られたくなくて、影斗たちが戻ってきてしまいそうで。
影斗たちに見られるのが怖くて。
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