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第33話 大神炎上中
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自分の部屋に女の子がいることに少し、ほんの少しだけ慣れてきた。今日この頃。
そう思っていたのだが、現実はそう甘くなかったのだということを思い知らされる。
お互い好きとか言っちゃって甘い緊張というわけではなく、なんだか怜がピリついている。というか、余裕がないように見える。
僕、なにか怜を怒らせるようなことしてしまっただろうか。いや、してない断じてしてない。
日向と楽しそうに動画見てたのにな。疲れてるのかな。
「それじゃ、今日も」
「ちょっと待ってくれないか。僕の勘違いだったらいいんだけど、怜、今日は無理してないか?」
「してないけど……」
そこまで言って怜は言い淀む。
きっとなにかあったんだ。でも、きっと怜のことだ。参謀役として僕には迷惑をかけないようにしているに違いない。
黙ってじっと待っていると、
「そういえば、燃えてるわね」
とあくまで思い出したかのように怜はぽつりと言った。
だが、気がかりだったのだろう。なんだか少し気持ちが晴れたような顔を。
ん? 燃えてる?
「燃え、火事? うちが!? 焦げ臭いか?」
まったく気づかなかった。
なんか言われるとまったく焦げた臭いなどしない気がするが、焦げ臭い気もしてくる。
「そういうことは遠慮せず早く」
「ち、違うわよ。ネットよ。ネットの炎上で燃えてるってこと」
「炎上? キララが……? それはそれで一大事じゃ…………」
「大神くんよ。大神くんが炎上してるの! キララちゃんが炎上してたら気づくでしょ」
「そうか、そうだよな。え? 大神くん?」
「はー」
僕が冷静になってから、怜は気になっていたことを話してくれた。
僕は全然知らなかったが大神くんは配信者であり、動画投稿者でもあったらしい。怜にスマホ画面で見せられ、配信者としての大神くんが実在したことを認識した。
チャンネルへ投稿されているのは、どれも炎上しそうな、なにかに噛みつくような感じの内容らしい。サムネイルやタイトルからそのことは簡単にわかった。
再生数は、キララほどではないが多分回っている方なんじゃないだろうか。炎上系って見てないし、見たこともないから知らないけども。
「うわ。でも結構登録者もいる配信者だったのか」
「それでどうしてこんな話を……? 怜が気にすることじゃないんじゃない?」
「見ればわかるわ」
なぜか動画のリストがわざわざ古い方にスクロールされていたのがその理由だろうか。
確か、ネットで大神くんを知っているか。みたいなことを聞いてきたことがあったような気がする。
もしかしたら怜は、大神くんの動画を警戒して見ていてくれたのかもしれない。
なんだか嫌な予感がしながらもスクロールしていくと、最上段まで画面がスクロールされた。
一番新しい動画のタイトルは……、
「雲母坂キララの配信を見ているやつがバカな七つの理由……その前の動画は、雲母坂キララのチャンネルを見るべきでない七つの理由……」
自分事のせいか気になってしまう。見る言い訳として、動画の参考になるんじゃないかと思ってしまう。
だがそこで、怜はスマホを自分の手元に戻した。
再生済みのバーが表示されていなかったところを見ると、おそらく動画はひとつも再生していないようだし、内容までは知らないのかもしれない。
まあ、そりゃそうか。ああいうのって気になるだけで見たあとは嫌な気分になるだけだろうし、見なくて正解か。
「大神くんは私が消しておいたから心配しなくていいわ。先生方って本当に頼りにならないわよね」
「え?」
消したっつったか?
「ふふ、冗談よ。でも、キララのためならそれくらいできるってこと。今の私じゃ教室から追い出すくらいのことしかできなかったけど」
「ははは。怜も冗談とか言うんだ」
なんか優しく笑いかけてきているけど、正直、冗談には聞こえなかった。
少なくともまだやってないだけという印象だ。実際は本気なんだかそうじゃないんだかわかりづらい。
停学処分ってのも怜がなにか関与してるのだろうか。
まあ冗談と言うのだし気のせいなのだろう。
「こんなことより本題に入ろうぜ。話してスッキリしたか?」
「ええ。ごめんなさい。大神くんの企み程度で動揺するキララちゃんじゃなかったわね」
「当たり前だろ。こんなの耐えられなかったらVTuberなんて続けてられないさ。ははっ!」
とか言いつつ、めちゃくちゃ気にしている僕は怜を帰ってから大神くんの動画を開いた。
開いてしまった。
「どーも、ビッグ・オーガ・ゴッドでーす! ボフボフボフッ」
「ん?」
「ボフッバカボフッボフボフボフ」
「あれ?」
「クソボフボフボフッ」
「風強すぎて音質悪っ!」
全然聞き取れない。なにこれ、どうしてこんな動画で再生されてるの?
いや、イケメンだからかもしれないけどさ。
でも、読唇術が使えないからなに言ってるのかまったくわからないけども、表情といいなんといいものすごく悪い言われようをしているのは伝わってくる。
相手が大神くんなだけあり、とても怖い。
おちゃらけたツッコミを入れてみたけど、見てしまったと後悔した。
「はーあ」
恐怖、自然と首を守るように肩が上がってしまう。
「はあ。気にしない気にしない」
そういえば、大神くんはここまで必死になってキララの評価を下げようとしてるけど、キララにダメージないな。
なら気にする必要ないか。
そう思っていたのだが、現実はそう甘くなかったのだということを思い知らされる。
お互い好きとか言っちゃって甘い緊張というわけではなく、なんだか怜がピリついている。というか、余裕がないように見える。
僕、なにか怜を怒らせるようなことしてしまっただろうか。いや、してない断じてしてない。
日向と楽しそうに動画見てたのにな。疲れてるのかな。
「それじゃ、今日も」
「ちょっと待ってくれないか。僕の勘違いだったらいいんだけど、怜、今日は無理してないか?」
「してないけど……」
そこまで言って怜は言い淀む。
きっとなにかあったんだ。でも、きっと怜のことだ。参謀役として僕には迷惑をかけないようにしているに違いない。
黙ってじっと待っていると、
「そういえば、燃えてるわね」
とあくまで思い出したかのように怜はぽつりと言った。
だが、気がかりだったのだろう。なんだか少し気持ちが晴れたような顔を。
ん? 燃えてる?
「燃え、火事? うちが!? 焦げ臭いか?」
まったく気づかなかった。
なんか言われるとまったく焦げた臭いなどしない気がするが、焦げ臭い気もしてくる。
「そういうことは遠慮せず早く」
「ち、違うわよ。ネットよ。ネットの炎上で燃えてるってこと」
「炎上? キララが……? それはそれで一大事じゃ…………」
「大神くんよ。大神くんが炎上してるの! キララちゃんが炎上してたら気づくでしょ」
「そうか、そうだよな。え? 大神くん?」
「はー」
僕が冷静になってから、怜は気になっていたことを話してくれた。
僕は全然知らなかったが大神くんは配信者であり、動画投稿者でもあったらしい。怜にスマホ画面で見せられ、配信者としての大神くんが実在したことを認識した。
チャンネルへ投稿されているのは、どれも炎上しそうな、なにかに噛みつくような感じの内容らしい。サムネイルやタイトルからそのことは簡単にわかった。
再生数は、キララほどではないが多分回っている方なんじゃないだろうか。炎上系って見てないし、見たこともないから知らないけども。
「うわ。でも結構登録者もいる配信者だったのか」
「それでどうしてこんな話を……? 怜が気にすることじゃないんじゃない?」
「見ればわかるわ」
なぜか動画のリストがわざわざ古い方にスクロールされていたのがその理由だろうか。
確か、ネットで大神くんを知っているか。みたいなことを聞いてきたことがあったような気がする。
もしかしたら怜は、大神くんの動画を警戒して見ていてくれたのかもしれない。
なんだか嫌な予感がしながらもスクロールしていくと、最上段まで画面がスクロールされた。
一番新しい動画のタイトルは……、
「雲母坂キララの配信を見ているやつがバカな七つの理由……その前の動画は、雲母坂キララのチャンネルを見るべきでない七つの理由……」
自分事のせいか気になってしまう。見る言い訳として、動画の参考になるんじゃないかと思ってしまう。
だがそこで、怜はスマホを自分の手元に戻した。
再生済みのバーが表示されていなかったところを見ると、おそらく動画はひとつも再生していないようだし、内容までは知らないのかもしれない。
まあ、そりゃそうか。ああいうのって気になるだけで見たあとは嫌な気分になるだけだろうし、見なくて正解か。
「大神くんは私が消しておいたから心配しなくていいわ。先生方って本当に頼りにならないわよね」
「え?」
消したっつったか?
「ふふ、冗談よ。でも、キララのためならそれくらいできるってこと。今の私じゃ教室から追い出すくらいのことしかできなかったけど」
「ははは。怜も冗談とか言うんだ」
なんか優しく笑いかけてきているけど、正直、冗談には聞こえなかった。
少なくともまだやってないだけという印象だ。実際は本気なんだかそうじゃないんだかわかりづらい。
停学処分ってのも怜がなにか関与してるのだろうか。
まあ冗談と言うのだし気のせいなのだろう。
「こんなことより本題に入ろうぜ。話してスッキリしたか?」
「ええ。ごめんなさい。大神くんの企み程度で動揺するキララちゃんじゃなかったわね」
「当たり前だろ。こんなの耐えられなかったらVTuberなんて続けてられないさ。ははっ!」
とか言いつつ、めちゃくちゃ気にしている僕は怜を帰ってから大神くんの動画を開いた。
開いてしまった。
「どーも、ビッグ・オーガ・ゴッドでーす! ボフボフボフッ」
「ん?」
「ボフッバカボフッボフボフボフ」
「あれ?」
「クソボフボフボフッ」
「風強すぎて音質悪っ!」
全然聞き取れない。なにこれ、どうしてこんな動画で再生されてるの?
いや、イケメンだからかもしれないけどさ。
でも、読唇術が使えないからなに言ってるのかまったくわからないけども、表情といいなんといいものすごく悪い言われようをしているのは伝わってくる。
相手が大神くんなだけあり、とても怖い。
おちゃらけたツッコミを入れてみたけど、見てしまったと後悔した。
「はーあ」
恐怖、自然と首を守るように肩が上がってしまう。
「はあ。気にしない気にしない」
そういえば、大神くんはここまで必死になってキララの評価を下げようとしてるけど、キララにダメージないな。
なら気にする必要ないか。
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