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第32話 雲母坂キララ クソ:大神視点
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「ぷっ。つまんねぇ。クソじゃん」
雲母坂キララ。敵状視察と見てみたが、なーんにも学びにならなかった。
「こんなののどこがいいんだよ。それにこの女、絵じゃん。配信、動画。どれもこれも見る価値ないね。声まで電子音っぽいし。そもそも本当に人か?」
これをあの優等生、庄司怜やそのグループの女たちが見てるってんだから驚きだよな。
「ま、なんにせよ、くっだらねーけどな」
俺はスマホを握りしめてから画面を割ることなくポケットに突っ込んだ。
俺は画面を割るほどバカじゃない。
クラスのやつらはそうじゃないだろうな。あんなクッソくだらねー雲母坂キララとかいう変なやつで意気投合して俺を一人はみ出しものにしやがった。
クソが。
そういや、さっきの感じからして雲母坂キララは配信者だったな? ちょうどいい。あいつらにも現実を見せてやる。俺の本来の力を見せてやる。
これが、勝ち組の生き様だってな!
「あー、あー! よし、それじゃあ」
「おい!」
俺が声の調子を確認していると、勝手にドアを開け俺の部屋に入ってきたおっさんが一人。
「親父。急に入って来んなよ。あぶねぇだろ」
「学校行けないからって家で騒ぐな! 近隣の方々に迷惑だろう。少しは考えろ。それに、この時間は自由時間じゃないんだぞ。勉強をだな」
「チッ。わーった。わーったよ。ベンキョーすりゃいーんだろ?」
「……次からは気をつけるように」
親父は大人しく出ていった。
家じゃ無理か。
まあいい。抜けだしゃいいんだ。
二十四時間三百六十五日監視されてるわけじゃあないからな。
抜き足、差し足っと。
「ラクショーだったな。ちょろいちょろい」
学校まで顔出してやろうかと思ったが、さすがに連絡されそうだしやめといた。
だから俺は、真っ直ぐ近くの河川敷まで移動してきた。
ここなら大丈夫だろう。風は強いが、親父が邪魔してくる心配はない。
一応、後ろを確認するがついてきている様子もない。
まったく人のことに口出してきてなにやってるんだか。
「カメラOK! 俺、OK! いい感じだな。マイクは……風の音がうるさいな。いいや俺の声なら聞き取れるだろ。つーか聞け! この俺の声をありがたく受け取れ!」
機材の調子も確認できた。
俺ってばやっぱプロ。雲母坂とかいうあまちゃんとは違うのさ。
それから俺は自己最高の笑顔を作った。さすがプロ! 形だけのキララとは違う!
動画も配信もしたいがまずは動画からだな。
「どーも、ビッグ・オーガ・ゴッドでーす!」
今の声だけで俺が誰だか気づいたように、周りを通る人の足が一瞬止まる。
だが、恥ずかしいのか、いや親父みたいな常識がないわけじゃないのだ。しっかりと状況を把握したうえで全員がそのまま通り過ぎていってくれる。
ファンならサービスするぜ。ってそうじゃあない。今日の企画はそれじゃない。
「今日のネタはコイツだぁ! 雲母坂キララ! みんな知ってる? 名前ぐらいは聞いたことあるって言ってあげてくれよ? なんてったって、この俺がわざわざ取り上げてやってるんだからなぁ!」
俺の話はいつでも盛り上がってる。
俺の作戦はこうだ。インフルエンサーである俺が雲母坂キララが面白くないことを伝える。
そのことで雲母坂キララのファンが減る。
そして、結束するためのものを失ったクラスのやつらも次々に仲が悪くなる。
この作戦、問題があるとすれば、俺が紹介するのだから、一時的に雲母坂キララが伸びることだろう。が、一時的だ。その後は見てのお楽しみってところだなぁ!
「さてさて、この雲母坂キララ。少し見りゃわかることだが、クソ。ホントクソ。ホントーにしょーもない。なにが面白いのかわからんのさ」
ここで実際のシーンだな。とびきりつまらないのをのせてやる。
著作権? 俺の前にそんなものは通用しない。勝手にやるんだ。紹介されるだけありがたく思っての。
しっかし、ここまで正直に言っちゃったら美少女グループも解散か?
そうして、我先にと俺を求めてくるんだろうな。
これは影斗も俺への訴えを取り下げるな。
「話ももたついててまとまりがないし、なに言ってるのかまったくわからん。周りは信者ばっかでこれ以上成長はなさそうだし、見てるやつは見るのやめろーってところで、今日はこのチャンネルを見るべきではない七つの理由を教えていこうと思うぜぇ!」
ヒューヒューって声が聞こえてくる。ああ、いい盛り上がりだ。
動画が伸びる未来が見える。
「耳の穴かっぽじってよーく聞いとけよ。ぜってー俺の話のがいいから。まずは一つ目ぇ。バカ。これは見た目でわかるな。まともな見た目してないやつが、まともなわけねぇーんだよ。こいつ、人間じゃねぇだろ。無理無理。キモすぎ」
まあ、バカだな。バカ。話のわからないやつはバカで決まりだ。
つまり、庄司怜もバカだった。
「二つ目、声がキモい。これダメだな。見た目ヤバい。声もヤバい。終わってんだろ。どーせおっさんが加工して声出してんだろ? こんなんきめぇに決まってんじゃねぇか」
だからほんとありえないよな。庄司怜が見てるなんて。
ま、それでこそ人気を落とすかいがあるってもんだ。
俺はそれから合計七つほどキララのダメなところを紹介しておいた。
「ケヘヘ。これでキララの評判は落ちるはずだ。グフフ。いいぜいいぜぇ。伸びて伸びて伸びまくれ! クソでも肥やしぐらいにはなるからなぁ!」
雲母坂キララ。敵状視察と見てみたが、なーんにも学びにならなかった。
「こんなののどこがいいんだよ。それにこの女、絵じゃん。配信、動画。どれもこれも見る価値ないね。声まで電子音っぽいし。そもそも本当に人か?」
これをあの優等生、庄司怜やそのグループの女たちが見てるってんだから驚きだよな。
「ま、なんにせよ、くっだらねーけどな」
俺はスマホを握りしめてから画面を割ることなくポケットに突っ込んだ。
俺は画面を割るほどバカじゃない。
クラスのやつらはそうじゃないだろうな。あんなクッソくだらねー雲母坂キララとかいう変なやつで意気投合して俺を一人はみ出しものにしやがった。
クソが。
そういや、さっきの感じからして雲母坂キララは配信者だったな? ちょうどいい。あいつらにも現実を見せてやる。俺の本来の力を見せてやる。
これが、勝ち組の生き様だってな!
「あー、あー! よし、それじゃあ」
「おい!」
俺が声の調子を確認していると、勝手にドアを開け俺の部屋に入ってきたおっさんが一人。
「親父。急に入って来んなよ。あぶねぇだろ」
「学校行けないからって家で騒ぐな! 近隣の方々に迷惑だろう。少しは考えろ。それに、この時間は自由時間じゃないんだぞ。勉強をだな」
「チッ。わーった。わーったよ。ベンキョーすりゃいーんだろ?」
「……次からは気をつけるように」
親父は大人しく出ていった。
家じゃ無理か。
まあいい。抜けだしゃいいんだ。
二十四時間三百六十五日監視されてるわけじゃあないからな。
抜き足、差し足っと。
「ラクショーだったな。ちょろいちょろい」
学校まで顔出してやろうかと思ったが、さすがに連絡されそうだしやめといた。
だから俺は、真っ直ぐ近くの河川敷まで移動してきた。
ここなら大丈夫だろう。風は強いが、親父が邪魔してくる心配はない。
一応、後ろを確認するがついてきている様子もない。
まったく人のことに口出してきてなにやってるんだか。
「カメラOK! 俺、OK! いい感じだな。マイクは……風の音がうるさいな。いいや俺の声なら聞き取れるだろ。つーか聞け! この俺の声をありがたく受け取れ!」
機材の調子も確認できた。
俺ってばやっぱプロ。雲母坂とかいうあまちゃんとは違うのさ。
それから俺は自己最高の笑顔を作った。さすがプロ! 形だけのキララとは違う!
動画も配信もしたいがまずは動画からだな。
「どーも、ビッグ・オーガ・ゴッドでーす!」
今の声だけで俺が誰だか気づいたように、周りを通る人の足が一瞬止まる。
だが、恥ずかしいのか、いや親父みたいな常識がないわけじゃないのだ。しっかりと状況を把握したうえで全員がそのまま通り過ぎていってくれる。
ファンならサービスするぜ。ってそうじゃあない。今日の企画はそれじゃない。
「今日のネタはコイツだぁ! 雲母坂キララ! みんな知ってる? 名前ぐらいは聞いたことあるって言ってあげてくれよ? なんてったって、この俺がわざわざ取り上げてやってるんだからなぁ!」
俺の話はいつでも盛り上がってる。
俺の作戦はこうだ。インフルエンサーである俺が雲母坂キララが面白くないことを伝える。
そのことで雲母坂キララのファンが減る。
そして、結束するためのものを失ったクラスのやつらも次々に仲が悪くなる。
この作戦、問題があるとすれば、俺が紹介するのだから、一時的に雲母坂キララが伸びることだろう。が、一時的だ。その後は見てのお楽しみってところだなぁ!
「さてさて、この雲母坂キララ。少し見りゃわかることだが、クソ。ホントクソ。ホントーにしょーもない。なにが面白いのかわからんのさ」
ここで実際のシーンだな。とびきりつまらないのをのせてやる。
著作権? 俺の前にそんなものは通用しない。勝手にやるんだ。紹介されるだけありがたく思っての。
しっかし、ここまで正直に言っちゃったら美少女グループも解散か?
そうして、我先にと俺を求めてくるんだろうな。
これは影斗も俺への訴えを取り下げるな。
「話ももたついててまとまりがないし、なに言ってるのかまったくわからん。周りは信者ばっかでこれ以上成長はなさそうだし、見てるやつは見るのやめろーってところで、今日はこのチャンネルを見るべきではない七つの理由を教えていこうと思うぜぇ!」
ヒューヒューって声が聞こえてくる。ああ、いい盛り上がりだ。
動画が伸びる未来が見える。
「耳の穴かっぽじってよーく聞いとけよ。ぜってー俺の話のがいいから。まずは一つ目ぇ。バカ。これは見た目でわかるな。まともな見た目してないやつが、まともなわけねぇーんだよ。こいつ、人間じゃねぇだろ。無理無理。キモすぎ」
まあ、バカだな。バカ。話のわからないやつはバカで決まりだ。
つまり、庄司怜もバカだった。
「二つ目、声がキモい。これダメだな。見た目ヤバい。声もヤバい。終わってんだろ。どーせおっさんが加工して声出してんだろ? こんなんきめぇに決まってんじゃねぇか」
だからほんとありえないよな。庄司怜が見てるなんて。
ま、それでこそ人気を落とすかいがあるってもんだ。
俺はそれから合計七つほどキララのダメなところを紹介しておいた。
「ケヘヘ。これでキララの評判は落ちるはずだ。グフフ。いいぜいいぜぇ。伸びて伸びて伸びまくれ! クソでも肥やしぐらいにはなるからなぁ!」
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