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第31話 日向が癒やし
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「最近さ。日向と一緒に話してる時が一番楽しいわ。落ち着く」
「へ!?」
おじいちゃんと孫みたいなセリフを言ったせいか、悲鳴にも似た声が日向の口から聞こえてきた。
やっぱ嫌よな。僕といるのは。
でも、家で一人で配信してても怜に見られている気がして、なーんか前よりもしっかりしないとって思っちゃうんだよなー。
前より好評ではあるんだけど、肩肘張っちゃうんだよ。
そう思うと、日向といる時はリラックスできる。
「そ、それってどういう?」
日向が上目遣いで見てきた。
これは、怪しまれてる。ここは正直に言おう。顔をのぞき込んできてるし、怖がられてるっぽいし。
「そのままの意味だよ。このまま日向が隣にいる時間がずっと続けばいいのにって思う」
僕の言葉を聞いて、目で見てわかるくらい、みるみるうちに日向が赤くなっていく。
「そ、そんな急に言われても……ちょっと答えは考えさせて…………影斗この間から積極的すぎだよー」
答え?
「別にいいけど」
答えってなんのだ?
「そ、そそ、それより。最近キララちゃん真に迫る感じだよね」
ドキッとして今度は僕が思わず日向の顔をのぞき込んでしまう。
そうだった。日向もキララのことを好きだった。ゆったりしていて忘れるところだった。
しかし、怜の影響で変化してることは気づいてるのか。
「真に迫る感じって?」
「なんか、近くにいるって感じがしてさー」
さらに心臓が跳ねた。
迫ってますよー。
いますよー。隣にいるよー。はは。
「どしたの? 顔、怖いよ?」
「い、いや。急に近くにいるなんて言うし、動揺してたからうつっちゃって」
僕は努めて鼻で笑った。大丈夫ごまかせてる。
「もー。笑わないでよー。本気で言ってるんじゃないよー? なんて言うか、現実感が増したって言うか。とにかく仮想だけどリアルなの」
「まあバーチャルだしな」
「本当なのー。ちゃんと見てるー?」
日向が頬をふくらませて僕をにらみつけてくる。
少しいつもの日向に戻った。よかったよかった。
でもまあ、リアリティは大事だしな。素直に嬉しい感想か?
そりゃ、怜がいるせいで常に銃口を額に突きつけられてる気持ちでやってるからな。そんな状況でやってたら現実味も出てくるわな。
「そうだ!」
猫騙しでもするように日向が手を合わせてきた。
「今度配信一緒に見ようよ」
「え」
またしてもギクリとしてしまう。
「何時になると思ってるの?」
「ダメ? 確かに影斗部活入ってないけど忙しそうだもんね。もう受験勉強とか始めてるの?」
「そうじゃない、が」
どうしよう。配信してるから一緒に見れませんなんて言えない。
ボイチャとかじゃないよな。
どっちにしろ無理だ。
僕は一人しかいないんだ。無理だ。
あ、そうだ!
「怜ちゃんたちとはお泊まりで見たんだけどなー」
「仲良いな。でも女友達のノリ? 僕は男だぞ。それに、僕は配信終わったあとでアーカイブをゆっくりと倍速で見るのが好きなんだよ」
「ゆっくりと倍速で? 矛盾してない?」
「してないしてない。ゆっくりは態度、倍速は速度。あれだよ。ほとんどはいい人だけど、配信中に時々ある変なコメントとか流れてくるのをできれば見たくないからさ」
まあ、画面にコメントが残るから見える時は見えちゃうんだけど、倍速にしてたら流れるのが速いからダメージが少なくて済む。という寸法。
その代わりめっちゃ長いしリアルタイムじゃないし、自分のコメントは読み上げてもらえないけどね。
「まあ確かに? うわーってなるコメントでうわーってなる時あるからね」
よかった。わかってくれた。
日向が気にしない人じゃなくてよかった。
「ということだから」
「じゃあさ!動画見ようよ」
「え?」
どうしよう。それは、断りようがない。でも、時間がないとか歩きスマホはダメとか。
「……本当は二人がいいけど……」
ガバッ! と顔を上げて日向は僕を止めてきた。
「昼にみんなで見ようよ。それなら時間もあるでしょ?」
こればっかりはどうしようもない気がする。
というか、断っても動画やら配信を流されそうな気がする。そもそも流されてそうな気がする。
急に流されるよりはいいか。もうやけだ!
「おうよ! それならいいとも!」
「やったー! 絶対! 絶対だよー!」
「わかった。わかったから」
何度も指をさして確認してくる日向に僕はニンマリしておいた。
正直、考えただけで死ぬほど恥ずい。
よく考えてほしい。両親が運動会の時に動画を撮っていたものを親戚の集まりで流されるようなものだ。
周りはほほえましかったり、喜ばしかったりするかもしれないが、当の本人からすればたまったものじゃないのだ。
恥ずかしすぎて死ぬ。
「……これが恥ずか死ってやつか」
昼。
「よかったー。約束守ってくれてー」
「あ、当たり前だろ?」
人知れずここは処刑場になっていた。
むしろ殺してくれ。
だが、やたらハイテンションの怜と日向のおかげで僕は画面が見れなかった。
いやー。ははは助かった。
と思っていたが、いつの間にか指を指で挟まれ、日向から逃げられないようになっていた。
「キャー! かわいいー!」
それ、本人の前で言うことか。
「当たり前よ。これが雲母坂キララだもの」
お前は止める側でいてくれよ怜。
「影斗くん顔真っ赤だね」
「はは」
「かげとんって人と見るの苦手?」
「まあね。なんか一人で見てると楽しめるんだけど、人と見てるとどうしてか恥ずかしいんだよ」
日向と怜が自分の世界に入ってるせいで、関根さんと白鷺さんの矛先が僕に向くんだが。
「うまい! うまい!」
「ここからよ!」
怜はいいよな。参謀役なのに自分の世界に入ってて。
僕には無理だよ。嬉しいけどさ。
「影斗くんてさ」
「かげとんかげとん」
ああ! 早く終わってくれー!
「へ!?」
おじいちゃんと孫みたいなセリフを言ったせいか、悲鳴にも似た声が日向の口から聞こえてきた。
やっぱ嫌よな。僕といるのは。
でも、家で一人で配信してても怜に見られている気がして、なーんか前よりもしっかりしないとって思っちゃうんだよなー。
前より好評ではあるんだけど、肩肘張っちゃうんだよ。
そう思うと、日向といる時はリラックスできる。
「そ、それってどういう?」
日向が上目遣いで見てきた。
これは、怪しまれてる。ここは正直に言おう。顔をのぞき込んできてるし、怖がられてるっぽいし。
「そのままの意味だよ。このまま日向が隣にいる時間がずっと続けばいいのにって思う」
僕の言葉を聞いて、目で見てわかるくらい、みるみるうちに日向が赤くなっていく。
「そ、そんな急に言われても……ちょっと答えは考えさせて…………影斗この間から積極的すぎだよー」
答え?
「別にいいけど」
答えってなんのだ?
「そ、そそ、それより。最近キララちゃん真に迫る感じだよね」
ドキッとして今度は僕が思わず日向の顔をのぞき込んでしまう。
そうだった。日向もキララのことを好きだった。ゆったりしていて忘れるところだった。
しかし、怜の影響で変化してることは気づいてるのか。
「真に迫る感じって?」
「なんか、近くにいるって感じがしてさー」
さらに心臓が跳ねた。
迫ってますよー。
いますよー。隣にいるよー。はは。
「どしたの? 顔、怖いよ?」
「い、いや。急に近くにいるなんて言うし、動揺してたからうつっちゃって」
僕は努めて鼻で笑った。大丈夫ごまかせてる。
「もー。笑わないでよー。本気で言ってるんじゃないよー? なんて言うか、現実感が増したって言うか。とにかく仮想だけどリアルなの」
「まあバーチャルだしな」
「本当なのー。ちゃんと見てるー?」
日向が頬をふくらませて僕をにらみつけてくる。
少しいつもの日向に戻った。よかったよかった。
でもまあ、リアリティは大事だしな。素直に嬉しい感想か?
そりゃ、怜がいるせいで常に銃口を額に突きつけられてる気持ちでやってるからな。そんな状況でやってたら現実味も出てくるわな。
「そうだ!」
猫騙しでもするように日向が手を合わせてきた。
「今度配信一緒に見ようよ」
「え」
またしてもギクリとしてしまう。
「何時になると思ってるの?」
「ダメ? 確かに影斗部活入ってないけど忙しそうだもんね。もう受験勉強とか始めてるの?」
「そうじゃない、が」
どうしよう。配信してるから一緒に見れませんなんて言えない。
ボイチャとかじゃないよな。
どっちにしろ無理だ。
僕は一人しかいないんだ。無理だ。
あ、そうだ!
「怜ちゃんたちとはお泊まりで見たんだけどなー」
「仲良いな。でも女友達のノリ? 僕は男だぞ。それに、僕は配信終わったあとでアーカイブをゆっくりと倍速で見るのが好きなんだよ」
「ゆっくりと倍速で? 矛盾してない?」
「してないしてない。ゆっくりは態度、倍速は速度。あれだよ。ほとんどはいい人だけど、配信中に時々ある変なコメントとか流れてくるのをできれば見たくないからさ」
まあ、画面にコメントが残るから見える時は見えちゃうんだけど、倍速にしてたら流れるのが速いからダメージが少なくて済む。という寸法。
その代わりめっちゃ長いしリアルタイムじゃないし、自分のコメントは読み上げてもらえないけどね。
「まあ確かに? うわーってなるコメントでうわーってなる時あるからね」
よかった。わかってくれた。
日向が気にしない人じゃなくてよかった。
「ということだから」
「じゃあさ!動画見ようよ」
「え?」
どうしよう。それは、断りようがない。でも、時間がないとか歩きスマホはダメとか。
「……本当は二人がいいけど……」
ガバッ! と顔を上げて日向は僕を止めてきた。
「昼にみんなで見ようよ。それなら時間もあるでしょ?」
こればっかりはどうしようもない気がする。
というか、断っても動画やら配信を流されそうな気がする。そもそも流されてそうな気がする。
急に流されるよりはいいか。もうやけだ!
「おうよ! それならいいとも!」
「やったー! 絶対! 絶対だよー!」
「わかった。わかったから」
何度も指をさして確認してくる日向に僕はニンマリしておいた。
正直、考えただけで死ぬほど恥ずい。
よく考えてほしい。両親が運動会の時に動画を撮っていたものを親戚の集まりで流されるようなものだ。
周りはほほえましかったり、喜ばしかったりするかもしれないが、当の本人からすればたまったものじゃないのだ。
恥ずかしすぎて死ぬ。
「……これが恥ずか死ってやつか」
昼。
「よかったー。約束守ってくれてー」
「あ、当たり前だろ?」
人知れずここは処刑場になっていた。
むしろ殺してくれ。
だが、やたらハイテンションの怜と日向のおかげで僕は画面が見れなかった。
いやー。ははは助かった。
と思っていたが、いつの間にか指を指で挟まれ、日向から逃げられないようになっていた。
「キャー! かわいいー!」
それ、本人の前で言うことか。
「当たり前よ。これが雲母坂キララだもの」
お前は止める側でいてくれよ怜。
「影斗くん顔真っ赤だね」
「はは」
「かげとんって人と見るの苦手?」
「まあね。なんか一人で見てると楽しめるんだけど、人と見てるとどうしてか恥ずかしいんだよ」
日向と怜が自分の世界に入ってるせいで、関根さんと白鷺さんの矛先が僕に向くんだが。
「うまい! うまい!」
「ここからよ!」
怜はいいよな。参謀役なのに自分の世界に入ってて。
僕には無理だよ。嬉しいけどさ。
「影斗くんてさ」
「かげとんかげとん」
ああ! 早く終わってくれー!
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