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第10話 無視される:大神視点
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「こねぇ。それになにかがおかしくないか? いや、気のせいか」
いつもならそろそろ来てもいい頃だが影斗のやつがやってこない。
この大神ヒロタカ様に気にかけられているあの影斗くんが来ない。
それよりも影斗どころか他のやつらも来ない。
「どうなってやがる」
クラスチャットには影斗に対してどう対応するか書いておいたのだが、既読が一つもつかない。
昨日の調子に乗った影斗にこの世のルールを教えてやるつもりだったんだが、これでは話が進まない。
本当にどうなってやがる。この俺はどこの学校へ行ったとしても名前の知らない者はいないほどの有名人。大神ヒロタカ様だぞ。
「チッ」
仕方ない。校舎に向かうか。
俺は指示していた作戦を諦め、その場をあとにした。
「キャー! 大神様ァ!」
「見た? ねぇ見た?」
「見た見た。こんなところに来てくださるなんて……」
「当たり前でしょ? 大神様はうちの生徒なんだから」
「だけど……ああ、なんて美しいの!」
俺は笑顔で手を振ってやる。
俺にとっては取るに足らないことだが、女子たちは私に手を振ったのだと言い合いを始めてしまう。
やれやれ、みんなに振っているんだがな。
しかし、やはりと言うべきか。なにも知らない他学年の生徒、それも女子たちは俺に対していつも通りの態度を取ってくれている。
サッカー部キャプテンであり、イケメンの大神ヒロタカ様として認識して、迎え入れてくれる。
「おい」
「……」
「チッ! お前!」
「……」
「やあ」
「……」
「なんでだよ!」
「……」
だが、だが、だが! 明らかにおかしい。どうしてだ? 同学年のやつらは俺を見ることすらしない。
俺は目がいいからな。学年ごとに違うバッジも見えている。
だからこそわかる。同学年の生徒はみな俺のことを無視していると。
見えていないと思ったか? 俺は誰がどの学年かわかるんだよ!
「くそ!」
どうしてこの俺が周りの反応で心を乱されている。逆だろ。俺の行動で周囲の人間が動揺してしまう。それが俺だろう。
心を乱すのはこの学校で俺の特権だろ。
ああ! イライラする。
俺は廊下にいることに嫌気がさして、さっさと教室へ向かうことにした。
今日は影斗を教室でかわいがってやろう。
「さて、なにしてやろうか? どうかわいがってやろうか」
俺は廊下を歩きながら、ぶつぶつと考えを口に出して教室を目指した。
歩きながらの考え事も絵になってしまうらしく、女子たちは俺のことを盗撮し始めた。
ふっ。まったく、しょうがない子たちだ。
「キャー! 私死にそう」
「もう一生分の運使ったわ」
「死んでもいい」
俺が手を上げて笑いかけると、シャッター音が激増した。
そして、黄色い声が返ってくる。
そう、これが正常な反応だ。これが俺に対する世界の正しい反応だ。
もしかしたら、今まで通り過ぎてきた同学年の女子たちはなにか考え事でもしていたのかもしれない。
そうだ。そうに決まっている! だってそうだろう? こんな俺に話しかけられて舞い上がらない女子なんていないのだからな。
「ふふふ。ふっふっふっふっふ」
口に手を当て笑いが漏れないようにする。
謎が解けると気持ちがいいものだな。
「素晴らしい。気分がいい」
だが、その笑いはすぐに止まってしまった。
俺の教室からなにやらにぎやかな笑い声が聞こえてくる。
「あいつら。俺抜きでなにやってんだよ!」
俺を無視して楽しくやってるってのか?
いい加減にしろよ。
「俺を怒らせたらどうなるか。たっぷり思い知らせてやるよ。影斗を見せ物にするだけじゃ足りなかったみたいだからな!」
今日の標的は、今教室にいるやつら。お前らだ。
俺は急いで廊下を走り、教室のドアに手をかけた。
俺にワナをしかけるようなバカはいない。
それだけ確認してから、俺は力一杯ドアを横にスライドさせた
「うおっ」
誰かが驚いたように声を漏らすほど大きな音を立てた。
視線は一気に俺に集まる。
計画通り。
思わず笑いそうになるのをこらえ、俺は教室を見回した。
全員が俺を見て固まっている。
「……影斗?」
俺のささやき声に、影斗は身を小さくして体を隠すようにした。
どうやら話の中心人物は木高影斗。あいつだ。
どうしてだ! 俺が、無視されているのになんであいつが楽しそうに話している!
どうしてあいつが他のやつらと楽しそうにすることを許されている。
「……こんなことやるように指示した覚えはないぞ」
山原田と五反田のやつをにらみつけるが、俺から目線をそらすだけ。あいつらはもう役に立たない。
いや、あいつらはハナから俺に対して言うことを聞いているフリをしていたのか?
ずっとこいつらは俺をはめるために動いていたのか?
もしかして、影斗がクラスのやつらと楽しそうに話しているのが日常で、いじめは演技。それを俺がコントロールしていると勘違いしていたのか?
すべて、影斗の手のひらの上だったってのか?
「…………ありえない」
ありえてなるものか!
「ありえないありえないアリエナイアリエナイィ!」
そんなこと絶対にありえない!
いつもならそろそろ来てもいい頃だが影斗のやつがやってこない。
この大神ヒロタカ様に気にかけられているあの影斗くんが来ない。
それよりも影斗どころか他のやつらも来ない。
「どうなってやがる」
クラスチャットには影斗に対してどう対応するか書いておいたのだが、既読が一つもつかない。
昨日の調子に乗った影斗にこの世のルールを教えてやるつもりだったんだが、これでは話が進まない。
本当にどうなってやがる。この俺はどこの学校へ行ったとしても名前の知らない者はいないほどの有名人。大神ヒロタカ様だぞ。
「チッ」
仕方ない。校舎に向かうか。
俺は指示していた作戦を諦め、その場をあとにした。
「キャー! 大神様ァ!」
「見た? ねぇ見た?」
「見た見た。こんなところに来てくださるなんて……」
「当たり前でしょ? 大神様はうちの生徒なんだから」
「だけど……ああ、なんて美しいの!」
俺は笑顔で手を振ってやる。
俺にとっては取るに足らないことだが、女子たちは私に手を振ったのだと言い合いを始めてしまう。
やれやれ、みんなに振っているんだがな。
しかし、やはりと言うべきか。なにも知らない他学年の生徒、それも女子たちは俺に対していつも通りの態度を取ってくれている。
サッカー部キャプテンであり、イケメンの大神ヒロタカ様として認識して、迎え入れてくれる。
「おい」
「……」
「チッ! お前!」
「……」
「やあ」
「……」
「なんでだよ!」
「……」
だが、だが、だが! 明らかにおかしい。どうしてだ? 同学年のやつらは俺を見ることすらしない。
俺は目がいいからな。学年ごとに違うバッジも見えている。
だからこそわかる。同学年の生徒はみな俺のことを無視していると。
見えていないと思ったか? 俺は誰がどの学年かわかるんだよ!
「くそ!」
どうしてこの俺が周りの反応で心を乱されている。逆だろ。俺の行動で周囲の人間が動揺してしまう。それが俺だろう。
心を乱すのはこの学校で俺の特権だろ。
ああ! イライラする。
俺は廊下にいることに嫌気がさして、さっさと教室へ向かうことにした。
今日は影斗を教室でかわいがってやろう。
「さて、なにしてやろうか? どうかわいがってやろうか」
俺は廊下を歩きながら、ぶつぶつと考えを口に出して教室を目指した。
歩きながらの考え事も絵になってしまうらしく、女子たちは俺のことを盗撮し始めた。
ふっ。まったく、しょうがない子たちだ。
「キャー! 私死にそう」
「もう一生分の運使ったわ」
「死んでもいい」
俺が手を上げて笑いかけると、シャッター音が激増した。
そして、黄色い声が返ってくる。
そう、これが正常な反応だ。これが俺に対する世界の正しい反応だ。
もしかしたら、今まで通り過ぎてきた同学年の女子たちはなにか考え事でもしていたのかもしれない。
そうだ。そうに決まっている! だってそうだろう? こんな俺に話しかけられて舞い上がらない女子なんていないのだからな。
「ふふふ。ふっふっふっふっふ」
口に手を当て笑いが漏れないようにする。
謎が解けると気持ちがいいものだな。
「素晴らしい。気分がいい」
だが、その笑いはすぐに止まってしまった。
俺の教室からなにやらにぎやかな笑い声が聞こえてくる。
「あいつら。俺抜きでなにやってんだよ!」
俺を無視して楽しくやってるってのか?
いい加減にしろよ。
「俺を怒らせたらどうなるか。たっぷり思い知らせてやるよ。影斗を見せ物にするだけじゃ足りなかったみたいだからな!」
今日の標的は、今教室にいるやつら。お前らだ。
俺は急いで廊下を走り、教室のドアに手をかけた。
俺にワナをしかけるようなバカはいない。
それだけ確認してから、俺は力一杯ドアを横にスライドさせた
「うおっ」
誰かが驚いたように声を漏らすほど大きな音を立てた。
視線は一気に俺に集まる。
計画通り。
思わず笑いそうになるのをこらえ、俺は教室を見回した。
全員が俺を見て固まっている。
「……影斗?」
俺のささやき声に、影斗は身を小さくして体を隠すようにした。
どうやら話の中心人物は木高影斗。あいつだ。
どうしてだ! 俺が、無視されているのになんであいつが楽しそうに話している!
どうしてあいつが他のやつらと楽しそうにすることを許されている。
「……こんなことやるように指示した覚えはないぞ」
山原田と五反田のやつをにらみつけるが、俺から目線をそらすだけ。あいつらはもう役に立たない。
いや、あいつらはハナから俺に対して言うことを聞いているフリをしていたのか?
ずっとこいつらは俺をはめるために動いていたのか?
もしかして、影斗がクラスのやつらと楽しそうに話しているのが日常で、いじめは演技。それを俺がコントロールしていると勘違いしていたのか?
すべて、影斗の手のひらの上だったってのか?
「…………ありえない」
ありえてなるものか!
「ありえないありえないアリエナイアリエナイィ!」
そんなこと絶対にありえない!
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