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第20話 第三回神からの贈り物
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さあ、ダンジョンがようやく魔物のものになったところ(まあ、一時的に活動している探索者がいなくなっただけだが)で、報酬ともらおうとしますかね。
「神様神様。今回もありがとうございました。わたくしめの活躍、いかがだったでしょうか」
「そう畏る必要はないだろう。ジン無くして、状況はないのだからな」
:またしても邪神の言なのが悔やまれるが、全くその通り
:言葉遣いだけが心ではないしな
:もっとも、驕ればその限りではないが
「なるほど? では、言葉で礼を尽くすのはここまで。ということで」
「いやしかし、実際にここまでの事を成すのは常人では不可能だっただろう」
「そうか?」
「そうだとも。相手にしていて思わなかったか? 彼らは、魔物達の間で、名の知れた探索者でこそなかったが、実力はかなり高位のものだったと言えるだろう」
「ああ……。それは、そうだな」
そこはべフィアの言う通りだろう。
事実、荷物持ちを雇えるくらいには金に余裕があった。
確かに、次元の違う、組織の上位勢と比べれば、とてもじゃないが、レベルは低い。まだ人間と言える範疇の能力だ。
だが、それでも、多くの魔物を凌駕するには、十分なパーティではあったことだろう。
「まあ、そこは、神様のご協力を、予めいただいていたからこそってところだな」
:そうかもしれぬが、にしても、だ
:ああ。一度放った鎖の拘束力を調整できるなど、いまだかつて聞いたことがない。
:我々の提供する道具と、さぞかし相性が良いのだろう
「そういうものか?」
「もちろんだ。得手不得手というものは、これまでも多々あったようだからな」
「ふーん?」
それこそ、名の知れぬ神の使いが居たってことか?
ま、俺からすりゃ、そんなことどうでもいいがな。
俺の家族を殺したことを、一生後悔し続けるさせる準備は、着々と進んでいるからな。
しかし、名の知れぬ神の使いかぁ。
:人間は愛も変わらず欲深いものだ
そいつらも、こうして、神の言葉を聞いていたのだろうか。
:やはり、というか、なんというか。多くの者は、我らと姿しか似ていないのだな
「まあ、そんなもんじゃないですかねぇ」
親子だって、どれだけ似ていても、やはり別人なのだ。
神と人じゃあ大きく違うだろう。
親、か……。
「ジン?」
「いや、なんでもない。しんみりしてちゃあ、せっかくデスゲームが終わったのに、敗北みたいに見えるからな。気にしないでくれ」
「そうか?」
「ああ。それで、今回の力、忘れる前に請求しようと思っていたんだが、どうでしょう?」
:ここから先、ジンの力だけでは、十分といかない者を、相手取ることもあるだろう
:そのために、予め考えていたぞ。ジンに与える、守りの次の力
:見たことのある技の完全再現、組み合わせ、上位への成長。これらを全てなしえる能力
「見たことがあるものだけ?」
:道具と違い、見たことのない能力は、人間では扱えぬだろうからな
「なるほどなぁ。でも、コピー能力か。それはありがたい」
まあ、俺の知っている技など高が知れているが、ロウキ達の力をパクれるだけでも、かなりのものだ。
「あー。つっても。俺、魔力がないから、魔法系は使えないな」
「そうなのか?」
「ああ。魔法は、スキルに加えて魔力がないと駄目だからな。単に扱えるだけじゃあ、宝の持ち腐れってことになる。神にはわからないかもしれないが、どれだけ動きを正確に理解していても、体がついてこなかったら、技としては使えないってこと」
「そういうものか」
「ああ」
今の俺じゃあ、魔法はただのノウハウ。
詠唱まで発動できれば、脅しにはなるかもしれないが、それにしても、規模感を相手が理解していないと、ただ、俺が隙を晒すだけになる。
:では、その魔法に見合った力があればいいのだな?
:魔法。ほう、人間は魔法を、魔力というエネルギーを源にして発動しているのか
:ならば、その魔力とやらを与えればよいという訳だな?
:神の恵みを受け取るがいい!
「うおっ!」
今回は突然、体が内から爆発するような感覚に襲われた。
胸の内から熱が放たれるような感じ。
なんだ、これ。
「何かが、見える……?」
俺も、ベルドルフのことは言えなかった。実際のところ、魔力なんて感知できなかった。
ダリアがやろうとしていることに気づけたのは、デスゲームのスキルによる、何かしようとしている反応があったからだ。
だが、今は違う。空気中に漂う埃のようなものが見える。
これが、魔力……?
「今までと明確に違う。変化がわかる。魔力が見える!」
:それは、無限の魔力だ
:これで、魔法の発動に困ることはあるまい
:まして、見たことのある、人間の使う魔法ならば、無尽蔵に扱えるであろう
「つまりは、人間程度に引けを取ることはなくなるってことか!」
魔法だけでなく、魔力操作もできれば、腕に力を込め攻撃力を上げたり、壁として展開し防御力の強化をしたりできそうだ。
ダリアがどこまでできたかは知らないが、あいつの力は、大魔導士としての力は、ただの大規模な魔法だけではなかったらしい。
「こうなってくると、試したくなるのが人間って奴だよなぁ」
だが、魔力操作はスキルではない。
となると、過去に見たことのあるスキル、魔法。
すぐに思いつくものがあるとすれば、それはやはり、ダリアの使っていた魔法。
興奮する自分を、呼吸により落ち着ける。魔法の発動は落ち着いた頭の方が威力が上がるらしいからな。
さて、詠唱だ。
まともに聴いた記憶はないが、扱えるようになっているらしく、それらの言葉はスラスラと出てくる。
そして、詠唱が終わったところで、俺の持つ神の剣には、見るからに魔力が集まっていた。
あとは、放つだけ。
「『火炎弾』!」
俺は、ただ、目の前にあった大岩に向けて炎を放った。
思った通りの威力。
いや、それ以上の威力。
ダリアが使っていたものよりも、簡単に数倍以上の威力が出ている。
「うわっ」
大岩に魔法が激突し、激しい衝撃波が届いてきた。当初の目論見では、大岩だけ壊すはずだったのだが、余計にクレーターを作ってしまった。
だが、これが、俺のコピー能力。
:まさかここまですぐに適応するとは
:まずは変わった体になれるところだと思ったが
:過去のものを正確に記憶していたとはな
「あれ、予想外だった感じ?」
「誰でも初めて使う力は、上手く扱えないものだろう。それを、一度で完璧に、元のもの以上で使えれば、神だって驚くというものだ」
「なるほどな」
俺でも意外なほどに力が使えた。
これは、サポートだけの性能ではなかったらしい。
おそらく、これまで与えられた道具あっての力。だが、それにしても、十分以上の力だ。
これなら、デスゲームの後処理も捗るだろう。
「ははは」
足元に転がるベルドルフを見下ろしながら、俺は思わず笑ってしまった。
「一度で終わる訳がないだろう?」
「神様神様。今回もありがとうございました。わたくしめの活躍、いかがだったでしょうか」
「そう畏る必要はないだろう。ジン無くして、状況はないのだからな」
:またしても邪神の言なのが悔やまれるが、全くその通り
:言葉遣いだけが心ではないしな
:もっとも、驕ればその限りではないが
「なるほど? では、言葉で礼を尽くすのはここまで。ということで」
「いやしかし、実際にここまでの事を成すのは常人では不可能だっただろう」
「そうか?」
「そうだとも。相手にしていて思わなかったか? 彼らは、魔物達の間で、名の知れた探索者でこそなかったが、実力はかなり高位のものだったと言えるだろう」
「ああ……。それは、そうだな」
そこはべフィアの言う通りだろう。
事実、荷物持ちを雇えるくらいには金に余裕があった。
確かに、次元の違う、組織の上位勢と比べれば、とてもじゃないが、レベルは低い。まだ人間と言える範疇の能力だ。
だが、それでも、多くの魔物を凌駕するには、十分なパーティではあったことだろう。
「まあ、そこは、神様のご協力を、予めいただいていたからこそってところだな」
:そうかもしれぬが、にしても、だ
:ああ。一度放った鎖の拘束力を調整できるなど、いまだかつて聞いたことがない。
:我々の提供する道具と、さぞかし相性が良いのだろう
「そういうものか?」
「もちろんだ。得手不得手というものは、これまでも多々あったようだからな」
「ふーん?」
それこそ、名の知れぬ神の使いが居たってことか?
ま、俺からすりゃ、そんなことどうでもいいがな。
俺の家族を殺したことを、一生後悔し続けるさせる準備は、着々と進んでいるからな。
しかし、名の知れぬ神の使いかぁ。
:人間は愛も変わらず欲深いものだ
そいつらも、こうして、神の言葉を聞いていたのだろうか。
:やはり、というか、なんというか。多くの者は、我らと姿しか似ていないのだな
「まあ、そんなもんじゃないですかねぇ」
親子だって、どれだけ似ていても、やはり別人なのだ。
神と人じゃあ大きく違うだろう。
親、か……。
「ジン?」
「いや、なんでもない。しんみりしてちゃあ、せっかくデスゲームが終わったのに、敗北みたいに見えるからな。気にしないでくれ」
「そうか?」
「ああ。それで、今回の力、忘れる前に請求しようと思っていたんだが、どうでしょう?」
:ここから先、ジンの力だけでは、十分といかない者を、相手取ることもあるだろう
:そのために、予め考えていたぞ。ジンに与える、守りの次の力
:見たことのある技の完全再現、組み合わせ、上位への成長。これらを全てなしえる能力
「見たことがあるものだけ?」
:道具と違い、見たことのない能力は、人間では扱えぬだろうからな
「なるほどなぁ。でも、コピー能力か。それはありがたい」
まあ、俺の知っている技など高が知れているが、ロウキ達の力をパクれるだけでも、かなりのものだ。
「あー。つっても。俺、魔力がないから、魔法系は使えないな」
「そうなのか?」
「ああ。魔法は、スキルに加えて魔力がないと駄目だからな。単に扱えるだけじゃあ、宝の持ち腐れってことになる。神にはわからないかもしれないが、どれだけ動きを正確に理解していても、体がついてこなかったら、技としては使えないってこと」
「そういうものか」
「ああ」
今の俺じゃあ、魔法はただのノウハウ。
詠唱まで発動できれば、脅しにはなるかもしれないが、それにしても、規模感を相手が理解していないと、ただ、俺が隙を晒すだけになる。
:では、その魔法に見合った力があればいいのだな?
:魔法。ほう、人間は魔法を、魔力というエネルギーを源にして発動しているのか
:ならば、その魔力とやらを与えればよいという訳だな?
:神の恵みを受け取るがいい!
「うおっ!」
今回は突然、体が内から爆発するような感覚に襲われた。
胸の内から熱が放たれるような感じ。
なんだ、これ。
「何かが、見える……?」
俺も、ベルドルフのことは言えなかった。実際のところ、魔力なんて感知できなかった。
ダリアがやろうとしていることに気づけたのは、デスゲームのスキルによる、何かしようとしている反応があったからだ。
だが、今は違う。空気中に漂う埃のようなものが見える。
これが、魔力……?
「今までと明確に違う。変化がわかる。魔力が見える!」
:それは、無限の魔力だ
:これで、魔法の発動に困ることはあるまい
:まして、見たことのある、人間の使う魔法ならば、無尽蔵に扱えるであろう
「つまりは、人間程度に引けを取ることはなくなるってことか!」
魔法だけでなく、魔力操作もできれば、腕に力を込め攻撃力を上げたり、壁として展開し防御力の強化をしたりできそうだ。
ダリアがどこまでできたかは知らないが、あいつの力は、大魔導士としての力は、ただの大規模な魔法だけではなかったらしい。
「こうなってくると、試したくなるのが人間って奴だよなぁ」
だが、魔力操作はスキルではない。
となると、過去に見たことのあるスキル、魔法。
すぐに思いつくものがあるとすれば、それはやはり、ダリアの使っていた魔法。
興奮する自分を、呼吸により落ち着ける。魔法の発動は落ち着いた頭の方が威力が上がるらしいからな。
さて、詠唱だ。
まともに聴いた記憶はないが、扱えるようになっているらしく、それらの言葉はスラスラと出てくる。
そして、詠唱が終わったところで、俺の持つ神の剣には、見るからに魔力が集まっていた。
あとは、放つだけ。
「『火炎弾』!」
俺は、ただ、目の前にあった大岩に向けて炎を放った。
思った通りの威力。
いや、それ以上の威力。
ダリアが使っていたものよりも、簡単に数倍以上の威力が出ている。
「うわっ」
大岩に魔法が激突し、激しい衝撃波が届いてきた。当初の目論見では、大岩だけ壊すはずだったのだが、余計にクレーターを作ってしまった。
だが、これが、俺のコピー能力。
:まさかここまですぐに適応するとは
:まずは変わった体になれるところだと思ったが
:過去のものを正確に記憶していたとはな
「あれ、予想外だった感じ?」
「誰でも初めて使う力は、上手く扱えないものだろう。それを、一度で完璧に、元のもの以上で使えれば、神だって驚くというものだ」
「なるほどな」
俺でも意外なほどに力が使えた。
これは、サポートだけの性能ではなかったらしい。
おそらく、これまで与えられた道具あっての力。だが、それにしても、十分以上の力だ。
これなら、デスゲームの後処理も捗るだろう。
「ははは」
足元に転がるベルドルフを見下ろしながら、俺は思わず笑ってしまった。
「一度で終わる訳がないだろう?」
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