上 下
20 / 21

第20話 第三回神からの贈り物

しおりを挟む
 さあ、ダンジョンがようやく魔物のものになったところ(まあ、一時的に活動している探索者がいなくなっただけだが)で、報酬ともらおうとしますかね。

「神様神様。今回もありがとうございました。わたくしめの活躍、いかがだったでしょうか」

「そう畏る必要はないだろう。ジン無くして、状況はないのだからな」

:またしても邪神の言なのが悔やまれるが、全くその通り
:言葉遣いだけが心ではないしな
:もっとも、驕ればその限りではないが

「なるほど? では、言葉で礼を尽くすのはここまで。ということで」

「いやしかし、実際にここまでの事を成すのは常人では不可能だっただろう」

「そうか?」

「そうだとも。相手にしていて思わなかったか? 彼らは、魔物達の間で、名の知れた探索者でこそなかったが、実力はかなり高位のものだったと言えるだろう」

「ああ……。それは、そうだな」

 そこはべフィアの言う通りだろう。

 事実、荷物持ちを雇えるくらいには金に余裕があった。

 確かに、次元の違う、組織の上位勢と比べれば、とてもじゃないが、レベルは低い。まだ人間と言える範疇の能力だ。

 だが、それでも、多くの魔物を凌駕するには、十分なパーティではあったことだろう。

「まあ、そこは、神様のご協力を、予めいただいていたからこそってところだな」

:そうかもしれぬが、にしても、だ
:ああ。一度放った鎖の拘束力を調整できるなど、いまだかつて聞いたことがない。
:我々の提供する道具と、さぞかし相性が良いのだろう

「そういうものか?」

「もちろんだ。得手不得手というものは、これまでも多々あったようだからな」

「ふーん?」

 それこそ、名の知れぬ神の使いが居たってことか?

 ま、俺からすりゃ、そんなことどうでもいいがな。

 俺の家族を殺したことを、一生後悔し続けるさせる準備は、着々と進んでいるからな。

 しかし、名の知れぬ神の使いかぁ。

:人間は愛も変わらず欲深いものだ

 そいつらも、こうして、神の言葉を聞いていたのだろうか。

:やはり、というか、なんというか。多くの者は、我らと姿しか似ていないのだな

「まあ、そんなもんじゃないですかねぇ」

 親子だって、どれだけ似ていても、やはり別人なのだ。

 神と人じゃあ大きく違うだろう。

 親、か……。

「ジン?」

「いや、なんでもない。しんみりしてちゃあ、せっかくデスゲームが終わったのに、敗北みたいに見えるからな。気にしないでくれ」

「そうか?」

「ああ。それで、今回の力、忘れる前に請求しようと思っていたんだが、どうでしょう?」

:ここから先、ジンの力だけでは、十分といかない者を、相手取ることもあるだろう
:そのために、予め考えていたぞ。ジンに与える、守りの次の力
:見たことのある技の完全再現、組み合わせ、上位への成長。これらを全てなしえる能力

「見たことがあるものだけ?」

:道具と違い、見たことのない能力は、人間では扱えぬだろうからな

「なるほどなぁ。でも、コピー能力か。それはありがたい」

 まあ、俺の知っている技など高が知れているが、ロウキ達の力をパクれるだけでも、かなりのものだ。

「あー。つっても。俺、魔力がないから、魔法系は使えないな」

「そうなのか?」

「ああ。魔法は、スキルに加えて魔力がないと駄目だからな。単に扱えるだけじゃあ、宝の持ち腐れってことになる。神にはわからないかもしれないが、どれだけ動きを正確に理解していても、体がついてこなかったら、技としては使えないってこと」

「そういうものか」

「ああ」

 今の俺じゃあ、魔法はただのノウハウ。

 詠唱まで発動できれば、脅しにはなるかもしれないが、それにしても、規模感を相手が理解していないと、ただ、俺が隙を晒すだけになる。

:では、その魔法に見合った力があればいいのだな?
:魔法。ほう、人間は魔法を、魔力というエネルギーを源にして発動しているのか
:ならば、その魔力とやらを与えればよいという訳だな?

:神の恵みを受け取るがいい!

「うおっ!」

 今回は突然、体が内から爆発するような感覚に襲われた。

 胸の内から熱が放たれるような感じ。

 なんだ、これ。

「何かが、見える……?」

 俺も、ベルドルフのことは言えなかった。実際のところ、魔力なんて感知できなかった。

 ダリアがやろうとしていることに気づけたのは、デスゲームのスキルによる、何かしようとしている反応があったからだ。

 だが、今は違う。空気中に漂う埃のようなものが見える。

 これが、魔力……?

「今までと明確に違う。変化がわかる。魔力が見える!」

:それは、無限の魔力だ
:これで、魔法の発動に困ることはあるまい
:まして、見たことのある、人間の使う魔法ならば、無尽蔵に扱えるであろう

「つまりは、人間程度に引けを取ることはなくなるってことか!」

 魔法だけでなく、魔力操作もできれば、腕に力を込め攻撃力を上げたり、壁として展開し防御力の強化をしたりできそうだ。

 ダリアがどこまでできたかは知らないが、あいつの力は、大魔導士としての力は、ただの大規模な魔法だけではなかったらしい。

「こうなってくると、試したくなるのが人間って奴だよなぁ」

 だが、魔力操作はスキルではない。

 となると、過去に見たことのあるスキル、魔法。

 すぐに思いつくものがあるとすれば、それはやはり、ダリアの使っていた魔法。

 興奮する自分を、呼吸により落ち着ける。魔法の発動は落ち着いた頭の方が威力が上がるらしいからな。

 さて、詠唱だ。

 まともに聴いた記憶はないが、扱えるようになっているらしく、それらの言葉はスラスラと出てくる。

 そして、詠唱が終わったところで、俺の持つ神の剣には、見るからに魔力が集まっていた。

 あとは、放つだけ。

「『火炎弾』!」

 俺は、ただ、目の前にあった大岩に向けて炎を放った。

 思った通りの威力。

 いや、それ以上の威力。

 ダリアが使っていたものよりも、簡単に数倍以上の威力が出ている。

「うわっ」

 大岩に魔法が激突し、激しい衝撃波が届いてきた。当初の目論見では、大岩だけ壊すはずだったのだが、余計にクレーターを作ってしまった。

 だが、これが、俺のコピー能力。

:まさかここまですぐに適応するとは
:まずは変わった体になれるところだと思ったが
:過去のものを正確に記憶していたとはな

「あれ、予想外だった感じ?」

「誰でも初めて使う力は、上手く扱えないものだろう。それを、一度で完璧に、元のもの以上で使えれば、神だって驚くというものだ」

「なるほどな」

 俺でも意外なほどに力が使えた。

 これは、サポートだけの性能ではなかったらしい。

 おそらく、これまで与えられた道具あっての力。だが、それにしても、十分以上の力だ。

 これなら、デスゲームの後処理も捗るだろう。

「ははは」

 足元に転がるベルドルフを見下ろしながら、俺は思わず笑ってしまった。

「一度で終わる訳がないだろう?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

女体化入浴剤

シソ
ファンタジー
康太は大学の帰りにドラッグストアに寄って、女体化入浴剤というものを見つけた。使ってみると最初は変化はなかったが…

異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」

マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。 目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。 近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。 さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。 新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。 ※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。 ※R15の章には☆マークを入れてます。

朝起きたら女体化してました

たいが
恋愛
主人公の早乙女駿、朝起きると体が... ⚠誤字脱字等、めちゃくちゃあります

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

処理中です...