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第43話 古着
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そろそろ多方面から変人扱いされないか不安になってきた楓だったが、今日は疲れて家に居た。
連日の特訓と宿題の日々で疲労困憊だった。
しかし、だらけていようと時間は等しく過ぎていく。
現実は無情だ。
このままではいかんと思い、楓はせめて少しでも日光に当たりに行こうと体を起こすと、着替えて外へ出た。
「ごきげんよう」
そこそこ大きめの手荷物を持った宿敵を前にして、楓はどうするか迷った。
セミの鳴き声はうるさく響き、目の前の人物が鳴いているのではと思えるほどだった。
「今日はなんですか? 散歩しながらでいいですか?」
「ええ。いいわよ。でも、この暑い中歩くなんてドMなの?」
「違いますよ。いい睡眠。ひいては健康のためです」
「そう」
そんな楓に、茜はかわいそうな目を向けた。
「本当に違いますからね」
そして、楓の目論見通り、近くの公園で散歩を始めた。
そこまではよかった。
何事もなく、物事は楓の思い通りに進んでいたはずだった。
「暑い。飲み物持ってくるんだった」
「持ってこなかったの?」
「はい。すぐに帰る予定だったので。こんなことなら、肩から下げるやつでも持ってくるんだった」
隣では優雅にボトルに口をつける茜の姿。
今の楓は間接キスなど気にしている場合ではなかった。
うだる暑さ。まとわりつく空気。
照りつける夏の日差しのもと、日陰の少ない公園を歩いたことで、喉はカラカラにかわいていた。
生唾をのみ、楓は茜に手を伸ばした。
「それ、ください」
「ごめんなさい。ちょうどなくなっちゃって」
茜はボトルを地面に向けて傾けた。
楓は反射的に手を伸ばしたが、水滴がほんの少ししたたり落ちるだけだった。
近くを見回したが、水道はなく、自販機はあった。
駆けつけて、すぐに体中を確かめた楓だったが、財布も持っていなかった。
「お財布もないの?」
しょぼくれながら、楓は頷いた。
「健康どうこう言っている人間の準備力とは思えないわね」
楓は返す言葉もなかった。
家まではそこそこ距離があるとはいえ、我慢できないほどではない。
楓はふらふらした足取りで、自販機を後にすると、家に向けて歩き出した。
しかし、茜はそんな楓の腕を掴んだ。
「何するんですか。今は体力が惜しいんです」
「さて、これはなんでしょーう」
茜が取り出したのは、紛れもなく硬貨だった。それも自販機で飲み物を買うには十分な量の。
きらりと輝く金属に、楓は目を奪われた。
「おごってくれるんですか?」
「もちろん。ただし、条件があるわ」
いつもの、ろくでもないものだろうと思ったが、楓はため息をつくと、頬をかいた。
楓の態度に茜は表情を曇らせた。
「条件じゃなくて、頼まれてやれたらやるし、やれなかったらやらないでよくないですか?」
「それって友達ってこと? 私達友達なの?」
「え、違ったんですか?」
勝手に、遊び相手だから友達だと思っていたため、楓は頬を染めた。
しかし、茜はどういうわけか、笑みを浮かべていた。
「馬鹿にしてるんですか?」
「違うわ。その、嬉しくて。遊んでくれるのね? 理由もなく」
「はい。僕に何を頼もうとしているのかまではわかりませんけど、できることならやりますよ」
楓にとって、茜とのやり取りは、ろくでもないものばかりで、疲れることしかなかったが、楽しくもあった。
また、向日葵がこんな姉と過ごしていたのだと思うと、なんだか向日葵のことを知ることができているようで、嬉しくもあった。
「ふふふふふ」
と笑う茜が、楓には初めて、一人の少女の姿に見えた。
今までもただの女の子だったはずだが、どこか底の知れぬ恐ろしいような、作り物のような何かを感じていた。
しかし、今ではそのような何かが消え、生き生きとした笑顔を浮かべていた。
やはり、友達がいないだけの寂しい人だったらしい。遊びたかっただけなのだろう。と思った。
となると向日葵が悲しんでいるという話が気になったが、今はそれどころではなかった。
「じゃあ楓ちゃんも私を頼ってね」
「そうですね。何か買ってくれません?」
「いいわよ」
茜は硬貨を自販機へ入れると、楓に譲った。
楓はスポーツドリンクを選び、ガコンと排出されると即座に取り出し、頬に当てた。
「冷たーい」
「そこは、キンキンに冷えてやがる。じゃないの?」
「え、うーん。冷たいけど、キンキンって感じでもないかなと。というかキンキンって何ですか?」
「知らない」
どこかで聞いた言葉を振られるも、楓はやらずにキャップを開けた。
口をつけ、一気に流し込むと、冷たさが体中に広がった。
「うまい」
「悪魔的? 犯罪的」
「暑くて喉がかわいて飲むスポーツドリンクは、美味しいけど、どっちでもないんじゃない? もっとポジティブな感じな気がする」
「そっか。じゃあどんな感じ?」
「天にも登る美味しさ?」
「なんかかっこよくないね」
茜の期待していたところは、楓にはよくわからなかったが、構わず中身を飲み干した。
冷たい飲料による水分補給で、楓は生き返る心地だった。
やっと余力も生まれ、横にあったゴミ箱に入れたところで、楓はハッとした。
茜の条件とは、モノマネだったのかもしれないということに。
これもまた、女子力だったのかもしれない。
楓はおずおずと茜の顔を見上げた。
「あの、茜ちゃん。ありがとう。それで頼みって何?」
「暑いからとりあえず帰ろっか」
「はい」
モノマネをしなかったことに憤った様子も、残念な様子もなかったため、楓は胸を撫で下ろした。
クーラーの効いた家に戻ると、楓は再び生き返る思いだった。
冷気が汗をかいた肌に当たると、ヒヤッという感覚がした。
少しの間歩いていただけだったが、汗まみれになったため、シャワーを浴びたい気分だったが、茜を家にあげて一人だけ浴びるというわけにもいかず、楓は我慢した。
汗は拭いたものの、少しするとクーラーによって今度は冷えてきた。
「汗をかいたみたいだし、着替えたらどうかしら?」
「いや、でも僕だけ着替えるのは申し訳ないというか」
「私のことは気にしなくていいわ。それに、頼みというのも、小さくなった服を持ってきたことなの」
なるほど、と楓は手を打った。
「楓ちゃんに似合うと思ってね」
荷物はそういうことだったのかと思い、持たせたまま歩かせてしまったことが悔やまれた。
だが、知らなかったのだから仕方がないと切り替え、楓は手を伸ばした。
しかし、茜は袋を引っ込めた。
「少し着るのが大変だと思うから、嫌じゃなければ私が着替えさせてあげるわ」
「そういうことならお願いします」
安心したように茜が笑うと、楓は一瞬困ったが、茜の持ってきた服を着てみるため、ゆっくりと服を脱ぎだした。
体育の授業の前も、似た状況ではあったが、それとは違った状況に、楓は頬を染めた。
するすると脱いでいる間、茜に見つめられていると思うと、楓の体が火照りだした。
脱ぎ終わると、茜は包みを持って立ち上がった。
「少しの間、目をつむっててもらえる?」
「わかりました」
楓は茜の言う通り目をつむった。
普段ならば警戒してしないことだろうが、なんだか急に親しくなった気がして、楓は心を許していた。
これまでも、何度か人に服を着させてもらうことはあったが、今度ばかりは緊張していた。
「臭くないですか?」
首元に鼻を寄せ、すんすんと嗅ぐ音が聞こえ、楓はびくりとした。
「全然」
汗をかいたこともあり、体臭が気になったが、茜は気にする様子も見せなかった。
時々、肌と肌が触れ、吐息がかかり、息が漏れるたが、嗅がれた後は、それ以上何もなかった。
楓としては、なんだか悪いことをしているような気分になった。
これまでの非礼を心の中で詫びながら、楓は茜の指示通りに動いて服を着させてもらった。
「できたわ。目を開けていいわよ」
目を開き、光にだんだんと順応してくると、茜に差し出された鏡に映る自身の姿が鮮明になっていった。
しかし、どこかで見たような格好をしている人物を自分自身だと思うことができず、頬を撫で確かめた。
そして、体をひねってみると鏡の中でも対応して動いていた。
やっと自分だという認識を掴めると、楓は再びしてやられたという思いでいっぱいになった。
今回はスカートも十分な長さがあったが、どう見てもコスプレだった。
「これはどういうことですか? ウィッグまでつけちゃって。小さくなったんじゃないんですか?」
「そうよ。小さくなったの。私が着ていたのだけど、着られなくなっちゃったから」
鏡に映る楓の姿は、楓も知るアリスの姿。
途中から服を着させるだけの動きではないことに気づいてはいたが、茜を信じて目を開けなかった。
結果がこれだ。
他人が着ているものを見ることもなかったのに、自分が着ることになるとはと、とほほと息を吐いた。
そう思いつつも、意外と似合っているかもという思いから、油断するとにやついてしまいそうになった。
「今回は先に形から入ろうと思いましてね」
「喋り方、急にどうしたんですか?」
「楓さん。ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう?」
そういえば、出会い頭もごきげんようと言われたことを思い出し、楓は気づいた。
今日の女子力はお嬢様的な話し方をしろということだったのだ。
しかし、アリスはお嬢様なのだろうかという疑問が頭をもたげた。
「……この労力をもっと別のところに使えばいいのに……」
楓はボソッと言った。
「楓さん。聞こえてますわよ。私を甘く見ないでもらいたいですわ。これはあくまで余力でやっているに過ぎないのよ。さ、楓さんもご一緒に」
「ごきげんよう。茜さん?」
「もっと堂々と!」
妹喋りよりも口馴染みがなく、楓は苦労しながらお嬢様口調で話す特訓をしたのだった。
連日の特訓と宿題の日々で疲労困憊だった。
しかし、だらけていようと時間は等しく過ぎていく。
現実は無情だ。
このままではいかんと思い、楓はせめて少しでも日光に当たりに行こうと体を起こすと、着替えて外へ出た。
「ごきげんよう」
そこそこ大きめの手荷物を持った宿敵を前にして、楓はどうするか迷った。
セミの鳴き声はうるさく響き、目の前の人物が鳴いているのではと思えるほどだった。
「今日はなんですか? 散歩しながらでいいですか?」
「ええ。いいわよ。でも、この暑い中歩くなんてドMなの?」
「違いますよ。いい睡眠。ひいては健康のためです」
「そう」
そんな楓に、茜はかわいそうな目を向けた。
「本当に違いますからね」
そして、楓の目論見通り、近くの公園で散歩を始めた。
そこまではよかった。
何事もなく、物事は楓の思い通りに進んでいたはずだった。
「暑い。飲み物持ってくるんだった」
「持ってこなかったの?」
「はい。すぐに帰る予定だったので。こんなことなら、肩から下げるやつでも持ってくるんだった」
隣では優雅にボトルに口をつける茜の姿。
今の楓は間接キスなど気にしている場合ではなかった。
うだる暑さ。まとわりつく空気。
照りつける夏の日差しのもと、日陰の少ない公園を歩いたことで、喉はカラカラにかわいていた。
生唾をのみ、楓は茜に手を伸ばした。
「それ、ください」
「ごめんなさい。ちょうどなくなっちゃって」
茜はボトルを地面に向けて傾けた。
楓は反射的に手を伸ばしたが、水滴がほんの少ししたたり落ちるだけだった。
近くを見回したが、水道はなく、自販機はあった。
駆けつけて、すぐに体中を確かめた楓だったが、財布も持っていなかった。
「お財布もないの?」
しょぼくれながら、楓は頷いた。
「健康どうこう言っている人間の準備力とは思えないわね」
楓は返す言葉もなかった。
家まではそこそこ距離があるとはいえ、我慢できないほどではない。
楓はふらふらした足取りで、自販機を後にすると、家に向けて歩き出した。
しかし、茜はそんな楓の腕を掴んだ。
「何するんですか。今は体力が惜しいんです」
「さて、これはなんでしょーう」
茜が取り出したのは、紛れもなく硬貨だった。それも自販機で飲み物を買うには十分な量の。
きらりと輝く金属に、楓は目を奪われた。
「おごってくれるんですか?」
「もちろん。ただし、条件があるわ」
いつもの、ろくでもないものだろうと思ったが、楓はため息をつくと、頬をかいた。
楓の態度に茜は表情を曇らせた。
「条件じゃなくて、頼まれてやれたらやるし、やれなかったらやらないでよくないですか?」
「それって友達ってこと? 私達友達なの?」
「え、違ったんですか?」
勝手に、遊び相手だから友達だと思っていたため、楓は頬を染めた。
しかし、茜はどういうわけか、笑みを浮かべていた。
「馬鹿にしてるんですか?」
「違うわ。その、嬉しくて。遊んでくれるのね? 理由もなく」
「はい。僕に何を頼もうとしているのかまではわかりませんけど、できることならやりますよ」
楓にとって、茜とのやり取りは、ろくでもないものばかりで、疲れることしかなかったが、楽しくもあった。
また、向日葵がこんな姉と過ごしていたのだと思うと、なんだか向日葵のことを知ることができているようで、嬉しくもあった。
「ふふふふふ」
と笑う茜が、楓には初めて、一人の少女の姿に見えた。
今までもただの女の子だったはずだが、どこか底の知れぬ恐ろしいような、作り物のような何かを感じていた。
しかし、今ではそのような何かが消え、生き生きとした笑顔を浮かべていた。
やはり、友達がいないだけの寂しい人だったらしい。遊びたかっただけなのだろう。と思った。
となると向日葵が悲しんでいるという話が気になったが、今はそれどころではなかった。
「じゃあ楓ちゃんも私を頼ってね」
「そうですね。何か買ってくれません?」
「いいわよ」
茜は硬貨を自販機へ入れると、楓に譲った。
楓はスポーツドリンクを選び、ガコンと排出されると即座に取り出し、頬に当てた。
「冷たーい」
「そこは、キンキンに冷えてやがる。じゃないの?」
「え、うーん。冷たいけど、キンキンって感じでもないかなと。というかキンキンって何ですか?」
「知らない」
どこかで聞いた言葉を振られるも、楓はやらずにキャップを開けた。
口をつけ、一気に流し込むと、冷たさが体中に広がった。
「うまい」
「悪魔的? 犯罪的」
「暑くて喉がかわいて飲むスポーツドリンクは、美味しいけど、どっちでもないんじゃない? もっとポジティブな感じな気がする」
「そっか。じゃあどんな感じ?」
「天にも登る美味しさ?」
「なんかかっこよくないね」
茜の期待していたところは、楓にはよくわからなかったが、構わず中身を飲み干した。
冷たい飲料による水分補給で、楓は生き返る心地だった。
やっと余力も生まれ、横にあったゴミ箱に入れたところで、楓はハッとした。
茜の条件とは、モノマネだったのかもしれないということに。
これもまた、女子力だったのかもしれない。
楓はおずおずと茜の顔を見上げた。
「あの、茜ちゃん。ありがとう。それで頼みって何?」
「暑いからとりあえず帰ろっか」
「はい」
モノマネをしなかったことに憤った様子も、残念な様子もなかったため、楓は胸を撫で下ろした。
クーラーの効いた家に戻ると、楓は再び生き返る思いだった。
冷気が汗をかいた肌に当たると、ヒヤッという感覚がした。
少しの間歩いていただけだったが、汗まみれになったため、シャワーを浴びたい気分だったが、茜を家にあげて一人だけ浴びるというわけにもいかず、楓は我慢した。
汗は拭いたものの、少しするとクーラーによって今度は冷えてきた。
「汗をかいたみたいだし、着替えたらどうかしら?」
「いや、でも僕だけ着替えるのは申し訳ないというか」
「私のことは気にしなくていいわ。それに、頼みというのも、小さくなった服を持ってきたことなの」
なるほど、と楓は手を打った。
「楓ちゃんに似合うと思ってね」
荷物はそういうことだったのかと思い、持たせたまま歩かせてしまったことが悔やまれた。
だが、知らなかったのだから仕方がないと切り替え、楓は手を伸ばした。
しかし、茜は袋を引っ込めた。
「少し着るのが大変だと思うから、嫌じゃなければ私が着替えさせてあげるわ」
「そういうことならお願いします」
安心したように茜が笑うと、楓は一瞬困ったが、茜の持ってきた服を着てみるため、ゆっくりと服を脱ぎだした。
体育の授業の前も、似た状況ではあったが、それとは違った状況に、楓は頬を染めた。
するすると脱いでいる間、茜に見つめられていると思うと、楓の体が火照りだした。
脱ぎ終わると、茜は包みを持って立ち上がった。
「少しの間、目をつむっててもらえる?」
「わかりました」
楓は茜の言う通り目をつむった。
普段ならば警戒してしないことだろうが、なんだか急に親しくなった気がして、楓は心を許していた。
これまでも、何度か人に服を着させてもらうことはあったが、今度ばかりは緊張していた。
「臭くないですか?」
首元に鼻を寄せ、すんすんと嗅ぐ音が聞こえ、楓はびくりとした。
「全然」
汗をかいたこともあり、体臭が気になったが、茜は気にする様子も見せなかった。
時々、肌と肌が触れ、吐息がかかり、息が漏れるたが、嗅がれた後は、それ以上何もなかった。
楓としては、なんだか悪いことをしているような気分になった。
これまでの非礼を心の中で詫びながら、楓は茜の指示通りに動いて服を着させてもらった。
「できたわ。目を開けていいわよ」
目を開き、光にだんだんと順応してくると、茜に差し出された鏡に映る自身の姿が鮮明になっていった。
しかし、どこかで見たような格好をしている人物を自分自身だと思うことができず、頬を撫で確かめた。
そして、体をひねってみると鏡の中でも対応して動いていた。
やっと自分だという認識を掴めると、楓は再びしてやられたという思いでいっぱいになった。
今回はスカートも十分な長さがあったが、どう見てもコスプレだった。
「これはどういうことですか? ウィッグまでつけちゃって。小さくなったんじゃないんですか?」
「そうよ。小さくなったの。私が着ていたのだけど、着られなくなっちゃったから」
鏡に映る楓の姿は、楓も知るアリスの姿。
途中から服を着させるだけの動きではないことに気づいてはいたが、茜を信じて目を開けなかった。
結果がこれだ。
他人が着ているものを見ることもなかったのに、自分が着ることになるとはと、とほほと息を吐いた。
そう思いつつも、意外と似合っているかもという思いから、油断するとにやついてしまいそうになった。
「今回は先に形から入ろうと思いましてね」
「喋り方、急にどうしたんですか?」
「楓さん。ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう?」
そういえば、出会い頭もごきげんようと言われたことを思い出し、楓は気づいた。
今日の女子力はお嬢様的な話し方をしろということだったのだ。
しかし、アリスはお嬢様なのだろうかという疑問が頭をもたげた。
「……この労力をもっと別のところに使えばいいのに……」
楓はボソッと言った。
「楓さん。聞こえてますわよ。私を甘く見ないでもらいたいですわ。これはあくまで余力でやっているに過ぎないのよ。さ、楓さんもご一緒に」
「ごきげんよう。茜さん?」
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