破滅不可避の悪役獣使いに転生したが肉塊になりたくないので聖獣娘、魔獣娘に媚びを売る〜嫌われないようにしていたらなぜか長たちになつかれている〜

マグローK

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第一章 魔王討伐編

第50話 束の間の平和

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 やっとネルングの森、そしてデグリアス邸が見えてきた。

 だが俺は今、四肢が引きちぎられるんじゃないかという勢いで全身を引っ張られていた。
 どうしてこんなことになったのか、それは今朝までさかのぼる。



「んんー!」

 気持ちのいい朝。
 久しぶりにぐっすり眠り、気持ちのいい朝日で目を覚ます。そのままのんきに体を伸ばして周りを見る。
 見知らぬ場所。そもそも起こせない体。
 魔王城で朝を迎えてしまったのか?
 魔物はアカトカが全滅していたためよかったが、いくら魔王を倒したとはいえ油断しすぎだ。

「それにしても動けない……」

 やけに重い体を見下ろすと、何故か俺に覆い被さるようにみんなが寝ていた。
 これは一体……。

 昨日は魔王討伐とアカリの回復で疲れて気を失ったような気がする。正確には覚えていないが、みんな生きてるよな?
 心配になり一番近くで寝息を立てるアカリの頬をつつくとむにゃむにゃと言っている。

「よかった。生きてる」
「師匠。私も好きです。んふふふ」

 アカリはものすごく幸せそうな表情で気持ちよさそうに寝ている。
 うん。寝言だ。聞かなかったことにしよう。

 そう思った時、全員が全員タイミングをそろえて目を覚ました。
 そこからというもの、ぬいぐるみを取り合う子どものように俺は引っ張られていた。



 いや、マジで、振り返ってみたけど、どうしてこうなってるのかマジでよくわからない。
 魔王倒して緊張感がなくなったとかか?
 でも、これが魔王を倒したやつらだって聞いても、他の人に信じてもらえないんじゃないか?

「し、師匠。あれはその、違くはないですけど……とにかく師匠は私を治すほど大切にしています! 私が支えるべきです」
「ルカラ殿は余の夫じゃ!」
「ルミリアさん。そこは譲れません。あたしのです!」
「ルカラにはアカリを治してもらった恩がある。感謝してもしきれない。この恩は今返すべきだ」

 話を聞く限り、なんだかよくわからない理由で俺を支えて歩くという話になっていたらしい。
 しかし、俺は全然支えられていないのだが、これはどういうことだろうか。

「もうわかりましたから。それに、俺は大丈夫ですって。いったん帰りましょ? ほら、ユイシャたちが見えてきましたから、落ち着きましょ?」

「あ、ルカラだ! ルカラー!」
「わわん! ワオーン! ご主人! ご主人!」
「にゃにゃにゃ! にゃーん! ご主人様にゃ!」

 いや、なんかこっちも大変なことになってる。
 ユイシャと一緒に二人の女の子が走ってきてるが、俺はどっちも知らない。
 犬耳でメイド服の少女と猫耳でメイド服の少女だ。
 あれ、うちの屋敷のメイドと同じ服だよな。新しく雇ったとかか?

「どちら様で?」
「ご主人様! タロですわん!」
「え、タロ!?」
「ジローですにゃ。ご主人!」
「ジロー!?」

 疑ってみるも、二人とも嘘はついていない。確かに本当だ。
 本契約しているからわかる。反応からして二人ともタロとジローだ。
 犬耳少女がタロで、猫耳少女はジローだ。

「お、おいユイシャ。これ、何が起こってるんだ? なあ、俺たちがいない間に何があった?」
「突然二人の体が光って、気づいたら女の子になってた」

 うーむ。何故今? これはアカトカに起こったみたいな進化、なのか?
 ルミリアさんやデレアーデさんみたく人型になれるようになったということだろうか。
 聖獣や魔獣ならありえない話じゃないが、どうなんだろう。

「何にしても帰ってきたってことはやったんだよね。ルカラが魔王討伐」
「俺って言うか、俺たちが、だけどな」
「ふふ。よかった!」

 と自分のことのように嬉しそうに笑うユイシャ。
 きっと他にもこうして安心して笑える人が現れてくれることだろう。
 まだ魔王を倒しただけでやることはあるはずだが、俺の無事もこれでだいぶ確実になったはずだ。

 そんなことを考えていると、ユイシャがぴょんと跳ねてくる。
 そしてユイシャは、俺の顔の前に顔を寄せ、

「おかえり、ルカラ」
「「「「「「あっ!」」」」」」

 全員の声が合唱した。
 俺は何が起きたのかわからず唇を押さえる。

 え。柔らかかった?

 俺の目の前ではみんながユイシャに掴みかかった!
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