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第一章 魔王討伐編
第43話 不和の森1
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不和の森。
ここは、ゲームでのルカラの死に場所。
主人公に敗北し、やがて肉塊へ変わり果てる場所。
まだ霧が出るほど深くまで来ていないが、俺は後ろを歩くみんなを確認する。
「みんな大丈夫そうか?」
俺の言葉に全員がうなずく。
まだ冷静なようだ。ほっと安心する。
「ふー」
改めて俺は前を向き魔王城への道を踏み出した。
この森は名前の通り、不和を引き起こす森。ゲームでは信頼度が一定値を超えていないと、一度霧を吸い込んだ時点で一生仲違いし続ける呪いにかかる恐ろしい森だった。つまり、準備できていなければいくら主人公たちでもルカラと戦う前にゲームオーバーとなってしまう。
ゲームでのルカラでは突破できようもない場所である。
だからこそ、俺は、ルミリアさんやデレアーデさんに、肉塊にされる恐怖から、なかなかここを目指す決断ができなかった。たとえ、魔王を倒した方が安全になるとわかっていても。
しかし、今の俺はルミリアさんの言葉を信じている。俺たちはきっとこの森を抜け、魔王城へたどり着くことができると確信している。
だが、警戒しなくていい訳じゃない。渡されたファイントの書を頼りに道を進む。
警戒すべきは霧。いや、霧を出すモンスター。ニーベル・トレント。
今のところ姿は見えないが、油断はできない。
「師匠、大丈夫ですよ。そんなに警戒していてはいくら師匠でも疲れてしまいますよ。力不足かもしれませんが、私たちに周囲の警戒は任せてください」
「いや、俺はアカリたちの力を信頼していない訳じゃない。アカリたちを疲弊させたくないだけだ。俺は最悪この戦いを生き残れたらそれで、ふむっ!」
言葉の途中でデレアーデさんに指で口をふさがれた。
「大切に思ってくれるのは嬉しいけど、それが行き過ぎるとむしろ信頼されていないんじゃないかって不安になるんだよ?」
「デレアーデの言う通りじゃ。みな、ルカラ殿の力になりたくてここにいるのじゃからな。一人の力でなんとかなるならルカラ殿だけで十分じゃろう?」
「ああ。その通りだ。この森を抜けるには協力が必要なのだろう?」
「確かに。みんなごめん。俺が悪かった」
「そこはありがとうでいいんですよ。師匠」
「そうだな。ありがとう」
ずっと、俺が一人生き残ることを考えてきた。ずっと死なないようにすることばかり考えていた。
周りは安全を作るための道具、もしくは安全を脅かす脅威としか見ていなかった。はずだった。
それなのに、いつの間にか俺は周りを大切に思っていた。
そして、周りは俺を殺そうなんて思っていないみたいだ。
ルミリアさんの力で確認したはずだったけど、こうして直接言われると、なんだか目元が熱くなってくる。
「背中は任せた。さあ、行こうか」
そうして、俺が肩の力を抜いた瞬間だった。
「ぐあああ! はあ、はあっ……」
「グルルルルルゥ」
「フシューフシュー」
「グガアアアア!」
「おい、大丈夫か!」
みんなが途端に苦しみ出した。
雰囲気に流され油断してしまっていた。
気づけば森に霧が急に出てきた。それに、濃くなるのがやけに早い。近くにニーベル・トレントが現れた証拠だ。霧を出し始めたんだろう。
俺は根っからの精神耐性があるおかげで大丈夫みたいだが、
「ああああ! ああっ! ああっ!」
「グウウウ」
「ガウガウ!」
「グオオオオウ」
俺以外は全員理性が飛んでいるように見える。
「大丈夫か! うっ!」
落ち着かせようと肩を掴むが普段のアカリとは思えないほどの力で俺のことを突き飛ばしてきた。
きっとみんな同じようなものだろう。今のみんなは俺のことを簡単に突き飛ばす程には暴走している。
ゲームでもいくら信頼度を上げていても霧を吸ってすぐは苦しみ出す。
だが、ニーベル・トレントとの遭遇は落ち着き霧に慣れてから。
「カタ、カタカタカタ」
「こんな時に!」
接近も早い。
森を抜けるにはこいつを倒さなくてはいけない。
だが、霧を克服することが条件。そもそも暴走している状態で倒せる相手じゃない。
こいつは五箇所同時かつ別々の種類の攻撃でないと倒すことはできない。
俺一人じゃ腕が足りない。それでも、やるっきゃない。
「はっ! はっ! はあっ!」
みんなには一歩たりとも近づかせない。
一撃たりとも入れさせない。
この霧は克服できる。みんななら大丈夫。俺たちは大丈夫。
この霧は何もデメリットだけじゃない。
だから、俺はみんなが霧を克服するまで時間を稼ぐ。それだけだ。
ここは、ゲームでのルカラの死に場所。
主人公に敗北し、やがて肉塊へ変わり果てる場所。
まだ霧が出るほど深くまで来ていないが、俺は後ろを歩くみんなを確認する。
「みんな大丈夫そうか?」
俺の言葉に全員がうなずく。
まだ冷静なようだ。ほっと安心する。
「ふー」
改めて俺は前を向き魔王城への道を踏み出した。
この森は名前の通り、不和を引き起こす森。ゲームでは信頼度が一定値を超えていないと、一度霧を吸い込んだ時点で一生仲違いし続ける呪いにかかる恐ろしい森だった。つまり、準備できていなければいくら主人公たちでもルカラと戦う前にゲームオーバーとなってしまう。
ゲームでのルカラでは突破できようもない場所である。
だからこそ、俺は、ルミリアさんやデレアーデさんに、肉塊にされる恐怖から、なかなかここを目指す決断ができなかった。たとえ、魔王を倒した方が安全になるとわかっていても。
しかし、今の俺はルミリアさんの言葉を信じている。俺たちはきっとこの森を抜け、魔王城へたどり着くことができると確信している。
だが、警戒しなくていい訳じゃない。渡されたファイントの書を頼りに道を進む。
警戒すべきは霧。いや、霧を出すモンスター。ニーベル・トレント。
今のところ姿は見えないが、油断はできない。
「師匠、大丈夫ですよ。そんなに警戒していてはいくら師匠でも疲れてしまいますよ。力不足かもしれませんが、私たちに周囲の警戒は任せてください」
「いや、俺はアカリたちの力を信頼していない訳じゃない。アカリたちを疲弊させたくないだけだ。俺は最悪この戦いを生き残れたらそれで、ふむっ!」
言葉の途中でデレアーデさんに指で口をふさがれた。
「大切に思ってくれるのは嬉しいけど、それが行き過ぎるとむしろ信頼されていないんじゃないかって不安になるんだよ?」
「デレアーデの言う通りじゃ。みな、ルカラ殿の力になりたくてここにいるのじゃからな。一人の力でなんとかなるならルカラ殿だけで十分じゃろう?」
「ああ。その通りだ。この森を抜けるには協力が必要なのだろう?」
「確かに。みんなごめん。俺が悪かった」
「そこはありがとうでいいんですよ。師匠」
「そうだな。ありがとう」
ずっと、俺が一人生き残ることを考えてきた。ずっと死なないようにすることばかり考えていた。
周りは安全を作るための道具、もしくは安全を脅かす脅威としか見ていなかった。はずだった。
それなのに、いつの間にか俺は周りを大切に思っていた。
そして、周りは俺を殺そうなんて思っていないみたいだ。
ルミリアさんの力で確認したはずだったけど、こうして直接言われると、なんだか目元が熱くなってくる。
「背中は任せた。さあ、行こうか」
そうして、俺が肩の力を抜いた瞬間だった。
「ぐあああ! はあ、はあっ……」
「グルルルルルゥ」
「フシューフシュー」
「グガアアアア!」
「おい、大丈夫か!」
みんなが途端に苦しみ出した。
雰囲気に流され油断してしまっていた。
気づけば森に霧が急に出てきた。それに、濃くなるのがやけに早い。近くにニーベル・トレントが現れた証拠だ。霧を出し始めたんだろう。
俺は根っからの精神耐性があるおかげで大丈夫みたいだが、
「ああああ! ああっ! ああっ!」
「グウウウ」
「ガウガウ!」
「グオオオオウ」
俺以外は全員理性が飛んでいるように見える。
「大丈夫か! うっ!」
落ち着かせようと肩を掴むが普段のアカリとは思えないほどの力で俺のことを突き飛ばしてきた。
きっとみんな同じようなものだろう。今のみんなは俺のことを簡単に突き飛ばす程には暴走している。
ゲームでもいくら信頼度を上げていても霧を吸ってすぐは苦しみ出す。
だが、ニーベル・トレントとの遭遇は落ち着き霧に慣れてから。
「カタ、カタカタカタ」
「こんな時に!」
接近も早い。
森を抜けるにはこいつを倒さなくてはいけない。
だが、霧を克服することが条件。そもそも暴走している状態で倒せる相手じゃない。
こいつは五箇所同時かつ別々の種類の攻撃でないと倒すことはできない。
俺一人じゃ腕が足りない。それでも、やるっきゃない。
「はっ! はっ! はあっ!」
みんなには一歩たりとも近づかせない。
一撃たりとも入れさせない。
この霧は克服できる。みんななら大丈夫。俺たちは大丈夫。
この霧は何もデメリットだけじゃない。
だから、俺はみんなが霧を克服するまで時間を稼ぐ。それだけだ。
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