破滅不可避の悪役獣使いに転生したが肉塊になりたくないので聖獣娘、魔獣娘に媚びを売る〜嫌われないようにしていたらなぜか長たちになつかれている〜

マグローK

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第一章 魔王討伐編

第34話 ルカラのターン!

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「あの、相棒はどちらに?」

 おっと。試験官殿までそんな反応か。
 俺が試験会場へ入るとまずそんなことを言われた。

 まあ、聖獣を直に見たことある人なんていないだろうし仕方のないことだ。
 いや、今はそれ以前の問題か。

「相棒はこのルミリアさんですけど」
「余じゃ!」
「いや、しかし女の子にしか見えないのですが、すみません…………え、はい……」

 急に担当者みたいな人がやってきた。
 確か、受付で別の人を担当していた人。多分、俺が去った後で驚いてた方の人だ。
 何やら取り込み中。何だろう。

 はっ!

「ルミリアさん。やっぱり人の姿じゃダメなんですよ」
「しかし、余はどの姿でも余じゃ。あくまで世を忍ぶための姿じゃったが、ルカラ殿と一緒になってからはこちらの姿の方が色々と都合がよいからの。もちろんルカラ殿を背に乗せ走るのもいいが」
「でも、今は試験なんですよ? 受付は聖獣の姿だと通れたじゃないですか。きっとダメなんですよ」
「大丈夫じゃよ」

 ルミリアさんじゃなく、試験のルール的な方で。

「す、すす、すみませんでした! 本当に失礼しました。聖獣ですね。かしこまりました。では、お願いします!」

 試験官殿は謝ると焦って逃げるように走り去っていった。
 さっきのアカトカがよっぽどだったのだろう。

「さて、どう壊すんですか? 剣ですかね」

 ターゲット間近で見るとそこそこでかい。大人三人分くらいだろうか。
 だが、ルミリアさんならセイクリッド・ソードで十分だろう。レーザーだと観客にあたれば大惨事だし。
 
「余は攻撃せんぞ?」
「え!? ちょっと待ってくださいよ。試験の内容わかってます?」
「もちろんじゃ」
「なら」
「待てルカラ殿。この試験とやらはルカラ殿と余が協力してあれを壊せばいいんじゃろう?」

 あれとはターゲットのことだろう。

「まあ、どちらかが壊せばいいはずですけど」
「ならばルカラ殿が壊しても問題ないはずじゃ」
「そうかもしれませんが、俺が壊すとなるとひどく時間がかかりそうな気がするんですが」
「そこはルカラ殿のあの力を使えばいいじゃろう!」

 キラキラした目で俺を見てくるルミリアさん。
 あの力ってのはあの力だよな。

「あれは、人前であんまり見せるものじゃ」
「なんじゃ? ルカラ殿は余の頼みは聞き入れてくれぬのか?」

 少しふてくされた様子でルミリアさんはしょんぼりとした。
 なんか、前よりあざとくなってる気がする。
 まあ、こんなところで不機嫌になられても困る。

「わかりました。やります。でも、ルミリアさんの負担はルミリアさんが壊すより大きくなるかも」
「大丈夫じゃ!」

 うーん。俺が無理やり使う訳ではないとわかっていても、ここまで使ってくれってのも変な感じだな。
 さすがにルミリアさんの感覚全てがわかる訳じゃないし。
 けど、そんなにいいものでもないような気がするのだが。

「……あれほどルカラ殿を感じられるものもないのじゃ」

「あの、制限時間があるので、準備があるのならお早めに」
「ご忠告ありがとうございます。大丈夫です」

 思っていたより時間が経っていたらしい。
 だが、決まってしまえばやるだけだ。
 俺の持つ剣では刃こぼれしてしまうかもしれないし、ここは相性も考えて、セイクリッド・ソードだ。
 今出せる俺の全力をぶつけることにしよう。

「いきますよ。ルミリアさん」
「ああ!」
「『セイクリッド・ソード』! 『オーラ・エンチャント』!」

 光の剣にルミリアさんの力が加わり、一度辺り一帯が真っ白な光に包み込まれた。
 目が慣れると、先ほどのアカトカのブレスもかくやというほどの極太の剣。
 セイクリッド・ソードは本来片手剣サイズの剣を出す魔法だが、これだとサイズ的に両手剣だ。
 もう発動時の視界を奪われるような輝きはないが、晴天の真昼よりも会場はさらに明るい。
 魔法にも使えることは検証済み。しかし、これはすごい。木剣とは比べ物にならないパワーだ。

「な、なな、何をなさったんです?」
「秘密です」
「そうですか……」

 まあ、話したところで俺しか使えないから意味がないのだが。

「いくのじゃ!」
「はい!」

 とはいえ光の剣の力が強化されている。試してみるべきだ。
 ターゲットの前で軽く一振り、二振り。
 うん。いける。軽いが重量感がちょうどよく手に返ってくる。

「よし、やりましょ」
「ルカラ殿はさすがじゃ!」
「え!?」

 これからって時にルミリアさんが背中に飛びついてきた。
 慌てて剣を解除してしまった。せっかく準備ができていたのに。

「ルカラ殿はやはり余が認めた男じゃ。もはやここまでとはな。しかし、ルカラ殿の力がほとんどじゃが、よも頑張ったよな? その、頭を……」
「いや、これからじゃないですか?」
「何を言っておるのじゃ?」

 ルミリアさんは本気で何を言っているのかわからないという顔をしている。
 いやいや、さすがに発動した圧だけで壊れていないのは俺も見ていた。

「これからですよ?」
「もう壊したではないか。なので頭を……」
「え?」

 俺はぽんぽんとルミリアさんの頭を撫でつつターゲットに目を向けた。
 そこには俺が軽く振るった先にクロスの跡だけを残して何も残っていなかった。
 まじで壊してたわ。あんなに軽く振っただけなのに……。

「……剣のリーチが伸びた? いや、斬撃を飛ばしたってことか?」

 セイクリッド・ソードは光の剣。
 リーチが多少伸びることはあるが、さすがに素振り程度で届く距離じゃなかった。
 属性との相性によるパワーアップ。デレアーデさんと使った魔属性の魔法のようなものだろう。

「これはもう決まりじゃな。ルカラ殿!」
「そうだといいですね」



「師匠! さすがでした。やっぱり師匠が一番じゃないですか」
「いや、ははは」
「そうじゃろう? そうじゃろう?」

 なぜかルミリアさんまで自慢げにアカリに対して胸を張っている。

「おいおい。何祝勝ムードになってんの? あんな地味なのでこの学園を受けようとしてたのか?」

 俺たちの楽しげな雰囲気を壊すように煽り男は言ってきた。
 逃げてないし煽り男。

「反論がないってことは、本当にあんなしょぼいのでここを受けようと思ってたのか? 光、斬撃。そこまでの準備が長すぎじゃないか? あれだけの時間があれば、もっとまともな魔法も使えただろうよ」
「……なんなのじゃあやつは」
「……師匠の実力がわからないみたいで終始こんなでしたよ。能力が足りないというのは困りものですね」
「……本当じゃな」
「……グアウ」
 
 ここまで全員の不評を買ってるのにまだ何か言いたいことがあるのか、男はじっと俺をみてきている。

「おいお前。この場で俺とのエキシビジョンマッチを受けろ!」

 まじで困りものだな。
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