破滅不可避の悪役獣使いに転生したが肉塊になりたくないので聖獣娘、魔獣娘に媚びを売る〜嫌われないようにしていたらなぜか長たちになつかれている〜

マグローK

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第一章 魔王討伐編

第31話 試験会場へ

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 ティア学園への受験を説明すればみんな反対するかと思ったが、快く送り出してくれた。

 特にデレアーデさんは、
「あたしが留守を守るから行くべきだよ」
 とやけに積極的に勧めてきた。人間の文化なんて詳しくないだろうに、何があるのか知っているのだろうか。
 理由は結局わからなかったが、ティア学園とやらは重要なのだろう。

 まあ、試験がある以上、入りますと言って、はいそうですか。と入れてもらえるところではない。
 しかし、実力があれば年齢は関係なく入れるらしい。

「つきましたね」
「ああ」

 ということで俺は街の近くまでルミリアさんの背中に乗せてもらい移動してきた。
 アカリはアカトカで移動。馬車よりも早い到着だった。

「ここがマンベスティーの街か」
「すごいぞルカラ殿! 人とモンスターが大勢いるのじゃ!」

 人の姿に戻ったルミリアさんが興奮気味にあちこちを見ている。
 森の中に住んでいただけに大勢の人が街を行き交う光景に興奮しているのだろう。
 どうやらここはティア学園という獣使いの学校があるだけに、街でもモンスターと共に生活しているということのようだ。

「あんまりはしゃがないでくださいよ。これだけ人が多いんです。迷子にならないように気をつけてくださいね」
「大丈夫じゃ。ルカラがいつでも余を見つけてくれるからな!」

 何故か胸を張って言ってくるルミリアさん。
 いや、そうなんだけど、できればはぐれないでほしい。
 確かに本契約しているからどこにいるかはわかるが、人混みに紛れれば見つけられないかもしれない。
 普段は少し恥ずかしいが、俺は右腕を差し出した。

「ここでよければここにいてください」
「よ、よいのか? 今日のルカラはやけに積極的じゃな」
「見た目は女の子なんです。危険なヤカラが襲ってきたら困るでしょう」
「お、女の子か。確かにそうじゃな。それじゃあ」

 ルミリアさんはいつものように俺の腕に抱きついてきた。
 ひとまずもうすっかり定位置になった俺の腕で大人しくしていてもらおう。

「ん?」

 何故かアカリが空いていた左手を掴んできた。

「どうした? 人が多いところは苦手か?」

 出身、田舎だったしな。そういえばアカリも村育ちだし、人の多いところは慣れてないのか。
 まあ、確かにゲームでも街に来て人混みに圧倒されるような描写があったような。

 ルカラは屋敷にしても人はある程度多い場所で育った。それに、俺はコミュ障陰キャぼっちだけど一応都会っ子だからな。
 まあ、スクランブル交差点なんてほぼほぼ行かなかったけど、ファンタジー世界の街なら余裕だ。

「あ、あの、ししょー。手、手を離さないでください」
「わかった」

 街の外では新しい場所にワクワクしていたアカリも、今じゃすっかり借りてきた猫のように警戒気味。

「アカトカは大丈夫か?」
「グ、グアウ!」

 ちょっと酔ってるっぽい。
 これはそそくさと移動した方が良さそうだな。



 誰もはぐれることなく試験会場まで移動できた。

「おい。あいつの隣にいるの……」
「ふざけてやがるな。正気か?」
「素人はこれだから困るよな」

 試験会場、その控え室にやってきた、のだが、俺たちに視線が集中し、ヒソヒソ声が聞こえてくる。

「師匠。周りの人が見てます」

 すっかり落ち着いた様子のアカリがこれまたヒソヒソと言ってくる。
 アカリを主人公と認識している様子はないし、これはあれか。

「アカリがかわいいからだな」
「へっ!?」
「むっ!」

 こればっかりは仕方ない。
 見た目が良くて才能があるのはズルだ。
 まあ、本物の主人公だから仕方ないけども。

 なんかルミリアさんがぽかぽか叩いてくるが、これはよくわからない。

「し、師匠も、か、かっこいい、ですよ?」
「ん? ありがとう?」

 どうして俺は褒められたんだ?

 さらにルミリアさんにぽかぽか叩かれているが、余計に状況がわからない。
 なんかほほを膨らまして不機嫌だし、疲れてるのかな。

「なあ、余は? 余は!」
「え、ルミリアさんは見た目は幼いですけど、俺からすれば綺麗ですよ? そういうことでいいですか?」
「んっふふふぅ。長ぁ」
「いや、ちょ、え? 急にどうしたんですか? それに長はやめてください」

 急にルミリアさんがハグしてきた。ここまでしてくるのは珍しいが、かなり人の多さでやられ神経がたかぶっているのだろうか。試験大丈夫かな?

 しかし、今ので余計に目立った気がする。まあ人間態だしな。
 俺たち獣使いの試験だから獣使いを警戒していると思ったが、ルミリアさんのことも見られてるようだな。
 それに、アカトカというレッドドラゴンの存在も大きい。

 やはり、すでに試験でどれくらいの実力を発揮するか目星をつけているということだろう。
 皆が皆、本契約しているらしくかたわらにモンスターを控えさせ、周囲を警戒している。これは周りにいるやつみんな優秀に見える現象。

 しかし、さすがは獣使いの学園、ティア学園。入学資格として相棒となる本契約済みのモンスターとの協力が課題。

「おいお前。いいご身分だな。女を連れて参加とは! それで? お前の相棒はどこだ?」
「この方です」

 俺にハグしてきてる方。

 受付では聖獣の姿でいてくれたんだけどな……。そのおかげですんなりと通してくれたし。
 後から驚きの声が聞こえてきたけど。

「やめんか。余はもう長ではないのじゃ。ルカラ殿が長じゃ」
「それ形だけです……まあいいや。このルミリアさんが俺の今回の相棒です」
「相棒……」

 ちょっと恍惚とした表情で繰り返すルミリアさん。

「はっ! こいつはただの女だろ?」
「言われてますけど」

 相手にする気はなかったようだが、ため息をつくとルミリアさんは俺から離れた。

「仕方ない。少しだけじゃぞ?」

 ルミリアさんはたちまち稲光を発生させた。
 そしてまばゆく光を放ちながらは人の姿から聖獣の姿へと変わった。

「な、これは聖獣だとっ?」
「聖獣!? あの人嫌いの聖獣がどうして!?」

「は、はは。こ、こんなの、何かのスキルに違いない! おい、こいつの次に入ってきたあんたはどう思う。こんなふざけたやつと一緒なんて、おかしいと思うだろ?」

 え、アカリに聞いてるの?
 どうしよう。肯定されたら。
 と思っていると、アカリはぷいと男を無視した。

「師匠。私は師匠が試験を受けられなければ棄権しますから。師匠とともに学べない学園に価値はないですし」
「そ、そうか」
「これは、師匠から教わることがまだあるという意味で」
「わかってるって」

 とにかくありがたいと思おう。

「ふん! あくまでも今回のことは小手調べだ! 僕は全力を出していないからな! せいぜい試験を頑張りたまえよ!」

 ビビって逃げるのが小手調べなのか?

「なんだったのじゃあやつは」
「なんだったんですかね」

 まあ、これで喧嘩を売られずに済みそうだな。
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