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第一章 魔王討伐編
第25話 本物の主人公が来た
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今回は反応が近づいてもやけに静かだ。
やはり、善意の人。
被害が出ている様子は全くない。
二ターン目なんてことはなかった。
少し力が強いみたいだから戦士か魔法使いとか冒険者の人だろう。
魔物を追ってきたなら残念だったな。俺が先に倒してしまった。
まあでも平和すぎる。
正直、今の俺は魔物でもないと、戦う相手がいない。
あくまで護身用の力だし戦うためのものじゃないが、明確な目標は無くなってしまった。
ということで、教えることも特訓のうちらしいので俺はユイシャに教えている。
「わたしだって獣使いの才能はあるもの!」
俺が教えると言ったら、ユイシャはやる気満々だ。
「よろしくね」
「もちろんだ」
俺とともに訓練していたユイシャはしっかり三年かけてツリーさんの特訓を終え仮契約を自在に使えるようになった。
だから今は、今後本契約できるように、俺がルミリアさんから教えてもらった剣術とデレアーデさんから教えてもらった魔法をユイシャに教えていた。
才能として授かってはいないものの、俺にはありとあらゆる才能があるらしいし、俺が教えれば多少は使えるようになるはずだ。
「動きがよくなったな」
「ありがとう。これもルカラのおかげだよ」
始めた時はまるで動けていなかったユイシャも少し教えれば普通の大人相手ならなんとかできるレベルまで上達した。
「なあルカラ殿。反応を確かめに行かぬのか?」
「被害は出ていないみたいですし、大丈夫ですよ」
「まあ、魔物ではなさそうじゃが」
「うん。悪い人が来ている感じはないし、ルカラくんが言うならあたしはそれでいいよ。おかげで魔物が来ても魔獣には被害が出てないし」
「聖獣もじゃ。被害は何もない」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。きっと旅人とかですよ」
「そうじゃな」
「かもね」
「じゃあ、俺はユイシャを教えるのに戻りますね。色々教わったものは多くの人に知ってほしいですからね」
「今なら人に知られても嫌ではないわ。ユイシャならむしろ知ってほしいくらいじゃ」
「ですね」
「さ、やろうぜ」
俺が再びユイシャに教えようとしたその時だった。
「ん? なんか急速に近づいてきてる」
なんだろう。これまでのスピードとは比べ物にならない」
「何か走ってきてるね」
「せっかくいいところだったのに」
「あれ、馬か?」
いや、人? いやいや、絶対違う。ありえない。速すぎる。
「なあこっちに向かってきておるのじゃが」
「あれはなんですかね」
「さ、さあな」
「どうかしたの?」
「いや」
遠目だが、俺は気づいてしまった。今、気づいてしまった。
あれは、まさかの女主人公パターン!
反応だけじゃわからなかったが、近くまで来て目視してしまえばわかる。
今接近してきているのは相棒のドラゴンと移動しているこの【シックザール・モンスター】の主人公。デフォルトの名前は確かアカリ・リレアー。
茶髪をポニーテールにした快活そうな見た目。空のような青い色の瞳。モンスターを使役するのに役立つ杖に動きやすさを重視した装備。
はっきりと見えたわけではないがデフォルトで選べる主人公。あれは確実に俺も知っているアカリ・リレアーだ。
しかし、アカリの旅は十五からのはず。あと二年ほどあるはずなのだが、もう相棒のドラゴンが一段階進化もしている。
この際男か女かは重要じゃない。このゲームは男主人公と女主人公を選べるが、別に結末に変化はない。ヒロインと男女の恋をするか百合になるかくらいの違いだと思っている。
魔物にしろ主人公にしろこんなところに来るのはおかしい。ああ。ルカラが肉塊になったシーンが見える。
いかんいかん。
どう対応するか考えなくては。
本来ならたまたま出会ったルカラが主人公に喧嘩をふっかけ、敗北することになるんだが。
本当にどうしよう。魔物追ってきたのだろうか。
「ふー。とーちゃくー。あ、早速人発見。すみません。聖獣や魔獣と一緒にいる人がいるって聞いてここまで来たんです。最近は魔物まで倒してるとかって。もしかしてこの中の誰かですか?」
「あなたいきなり何?」
ギョッとして後ろを向くと、にらみつけるような顔でユイシャが腕を組んでいる。
特訓の邪魔をされて不機嫌なのか。
「すみません。申し遅れました。私はアカリ・リレアー。こっちはアカトカです。私たちは聖獣、魔獣どちらも使える人を探しに来たんですよ。それに、この辺には元勇者パーティの人もいるとかって聞いたので」
「それなら! このルカラよ!」
「え、ちょっ!?」
俺は突然背中を押され前に出された。
聖獣、魔獣を使えるのは間違いじゃないが、勇者パーティの人ではない。
それに、なんでユイシャが嬉しそうなんだ?
改めて近づくと主人公怖い。
「やっぱり! でも、ずいぶんと若いんですね。ルカラって呼ばれるからには、あなたはツリー・ルカラ・ドットマンさんってこと? もしかして同い年!?」
「俺はルカラ・デグリアス。ツリーさんは俺の師匠です」
「なるほどー。そうなんですね。じゃあ、聖獣、魔獣も」
「あ、聖獣、魔獣の使い手は多分俺です」
「多分じゃない。ルカラ殿は聖獣の使い手じゃ」
「そうだよ。魔獣の使い手だよ」
「それより、不用心じゃぞ。こんな初対面の相手にそのことを話してしまうなぞ」
「あはは。いやぁすみません。ルミリアさん」
正直に話してしまったが、確かにその通り。
でも、主人公相手だと失礼な態度も取れない。
ここは情報収集に努めるのがベスト。そう判断して信頼を得るための行動。そういうことにしておこう。
それより、ただ使い手を探してここまで? 一体どうして。
「あの、それでどういったご用件で?」
「私とあの、手合わせをお願いします!」
「は?」
手合わせって、戦うのか?
それ、ルカラ闇落ちのイベント。
相当まずい状況じゃないか?
やはり、善意の人。
被害が出ている様子は全くない。
二ターン目なんてことはなかった。
少し力が強いみたいだから戦士か魔法使いとか冒険者の人だろう。
魔物を追ってきたなら残念だったな。俺が先に倒してしまった。
まあでも平和すぎる。
正直、今の俺は魔物でもないと、戦う相手がいない。
あくまで護身用の力だし戦うためのものじゃないが、明確な目標は無くなってしまった。
ということで、教えることも特訓のうちらしいので俺はユイシャに教えている。
「わたしだって獣使いの才能はあるもの!」
俺が教えると言ったら、ユイシャはやる気満々だ。
「よろしくね」
「もちろんだ」
俺とともに訓練していたユイシャはしっかり三年かけてツリーさんの特訓を終え仮契約を自在に使えるようになった。
だから今は、今後本契約できるように、俺がルミリアさんから教えてもらった剣術とデレアーデさんから教えてもらった魔法をユイシャに教えていた。
才能として授かってはいないものの、俺にはありとあらゆる才能があるらしいし、俺が教えれば多少は使えるようになるはずだ。
「動きがよくなったな」
「ありがとう。これもルカラのおかげだよ」
始めた時はまるで動けていなかったユイシャも少し教えれば普通の大人相手ならなんとかできるレベルまで上達した。
「なあルカラ殿。反応を確かめに行かぬのか?」
「被害は出ていないみたいですし、大丈夫ですよ」
「まあ、魔物ではなさそうじゃが」
「うん。悪い人が来ている感じはないし、ルカラくんが言うならあたしはそれでいいよ。おかげで魔物が来ても魔獣には被害が出てないし」
「聖獣もじゃ。被害は何もない」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。きっと旅人とかですよ」
「そうじゃな」
「かもね」
「じゃあ、俺はユイシャを教えるのに戻りますね。色々教わったものは多くの人に知ってほしいですからね」
「今なら人に知られても嫌ではないわ。ユイシャならむしろ知ってほしいくらいじゃ」
「ですね」
「さ、やろうぜ」
俺が再びユイシャに教えようとしたその時だった。
「ん? なんか急速に近づいてきてる」
なんだろう。これまでのスピードとは比べ物にならない」
「何か走ってきてるね」
「せっかくいいところだったのに」
「あれ、馬か?」
いや、人? いやいや、絶対違う。ありえない。速すぎる。
「なあこっちに向かってきておるのじゃが」
「あれはなんですかね」
「さ、さあな」
「どうかしたの?」
「いや」
遠目だが、俺は気づいてしまった。今、気づいてしまった。
あれは、まさかの女主人公パターン!
反応だけじゃわからなかったが、近くまで来て目視してしまえばわかる。
今接近してきているのは相棒のドラゴンと移動しているこの【シックザール・モンスター】の主人公。デフォルトの名前は確かアカリ・リレアー。
茶髪をポニーテールにした快活そうな見た目。空のような青い色の瞳。モンスターを使役するのに役立つ杖に動きやすさを重視した装備。
はっきりと見えたわけではないがデフォルトで選べる主人公。あれは確実に俺も知っているアカリ・リレアーだ。
しかし、アカリの旅は十五からのはず。あと二年ほどあるはずなのだが、もう相棒のドラゴンが一段階進化もしている。
この際男か女かは重要じゃない。このゲームは男主人公と女主人公を選べるが、別に結末に変化はない。ヒロインと男女の恋をするか百合になるかくらいの違いだと思っている。
魔物にしろ主人公にしろこんなところに来るのはおかしい。ああ。ルカラが肉塊になったシーンが見える。
いかんいかん。
どう対応するか考えなくては。
本来ならたまたま出会ったルカラが主人公に喧嘩をふっかけ、敗北することになるんだが。
本当にどうしよう。魔物追ってきたのだろうか。
「ふー。とーちゃくー。あ、早速人発見。すみません。聖獣や魔獣と一緒にいる人がいるって聞いてここまで来たんです。最近は魔物まで倒してるとかって。もしかしてこの中の誰かですか?」
「あなたいきなり何?」
ギョッとして後ろを向くと、にらみつけるような顔でユイシャが腕を組んでいる。
特訓の邪魔をされて不機嫌なのか。
「すみません。申し遅れました。私はアカリ・リレアー。こっちはアカトカです。私たちは聖獣、魔獣どちらも使える人を探しに来たんですよ。それに、この辺には元勇者パーティの人もいるとかって聞いたので」
「それなら! このルカラよ!」
「え、ちょっ!?」
俺は突然背中を押され前に出された。
聖獣、魔獣を使えるのは間違いじゃないが、勇者パーティの人ではない。
それに、なんでユイシャが嬉しそうなんだ?
改めて近づくと主人公怖い。
「やっぱり! でも、ずいぶんと若いんですね。ルカラって呼ばれるからには、あなたはツリー・ルカラ・ドットマンさんってこと? もしかして同い年!?」
「俺はルカラ・デグリアス。ツリーさんは俺の師匠です」
「なるほどー。そうなんですね。じゃあ、聖獣、魔獣も」
「あ、聖獣、魔獣の使い手は多分俺です」
「多分じゃない。ルカラ殿は聖獣の使い手じゃ」
「そうだよ。魔獣の使い手だよ」
「それより、不用心じゃぞ。こんな初対面の相手にそのことを話してしまうなぞ」
「あはは。いやぁすみません。ルミリアさん」
正直に話してしまったが、確かにその通り。
でも、主人公相手だと失礼な態度も取れない。
ここは情報収集に努めるのがベスト。そう判断して信頼を得るための行動。そういうことにしておこう。
それより、ただ使い手を探してここまで? 一体どうして。
「あの、それでどういったご用件で?」
「私とあの、手合わせをお願いします!」
「は?」
手合わせって、戦うのか?
それ、ルカラ闇落ちのイベント。
相当まずい状況じゃないか?
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