破滅不可避の悪役獣使いに転生したが肉塊になりたくないので聖獣娘、魔獣娘に媚びを売る〜嫌われないようにしていたらなぜか長たちになつかれている〜

マグローK

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第一章 魔王討伐編

第24話 魔物襲来2

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 今回は接近したのを感知してすぐに現場に向かおうと思っていたが、それより早くに被害が出始めたため、慌てて走って向かった。
 前回より準備や想定をしていたが、やってきている反応は一つ。
 反応は全部で三つだったが、ここにいるのはそのうち一つ。残りの二つは遅れてくるようだ。
 今回は二ウェーブってことか?

「ルカラくん」
「ああ、これはまずい」

 俺にできる最高速度でやってきたが、すでに傷だらけの人……。
 まだ敵は村からすれば点のような大きさしか見えないのだが、被害が出るのが早すぎる。

「ああ。どうか、助けてください!」

 俺に言ってるのか? そうだ。目の前のおっさんは俺を見ている。以前のルカラならこんなこと言われるのはありえなかったな。

「わかった」

 近くの人が困っているなら、助けておかないと俺はどっちみち死ぬだろう。なんてったってルカラだからな。

「ルミリアさん。怪我人の手当ては任せます。タロも頼んだ」
「わかったのじゃ」
「アウ」
「じゃあ、あたしたちは」
「はい。これ以上被害が出ないよう食い止めます。行きましょうデレアーデさん。ジロー」
「うん」
「にゃ」

 一度でたなら別におかしなことではないが、にしてもまたここに魔物が出るなんて。
 この世界の魔物ってのはゴキブリみたいなもので、一度発生なり侵攻なりを受けると、立て続けに来るものなのだが、ネルングの森は遠いうえに、間隔が一年ごとと長い。
 しかも、こんなところに来るにしては魔物が強すぎる。

 走りながら考えていると、デレアーデさんも同じことを考えていたようだ。

「ルカラくんは今回の魔物どう思う?」
「気まぐれでしょうか? 遠いという理由で攻めないだけで、生き物が住んでる以上、魔王の攻撃対象ではある訳ですし」
「そうだね。やっぱり、ルカラくんが強いから、あとはあの未来も」
「え?」
「あ、ううん。なんでもない」

 いや、なんだろう。未来って、まあいい。
 今日の魔物はツリーさんより圧倒的に強い。
 誰かの時間稼ぎは期待できない。

「あれはデス・プリーストだね。魔物にしてもこんなところに来るのじゃないはずです」

 デス・プリースト。こいつはストーリー最終盤に出てくるような魔物。下手すると即死魔法が当たりまくって敗北するやつ。マジでこんなところに来るやつじゃない。魔王城周辺まで行ってようやく遭遇するような魔物。
 前回のストーム・スネークなんかとは比較にならないほどの相手。
 実際、魔法による攻撃のせいか、被害の広がり具合が早い。
 幸い死者は出ていないようだが、殺すことが目的じゃない可能性も。

「くそ。俺の接近に気づいて距離を取ってるみたいだ。全然距離が縮められない」
「あたしたちから逃げてるような」
「どうして?」
「わからないけど、こうなったら魔法で戦おう。相手も移動に全力でこちらに気づいてからは攻撃してないみたい」

 なんだよ。この反応。まるで俺を誘い出しているような。殺さず手負いを増やしたのも、俺の治療中でも狙う目的なのか。
 いやいや、自意識過剰だ。魔王が生き物を殺すためにそんな頭を使って魔物を使ったりしない。ただ、理由もなく殺す。それが、この世界の魔王のやり方。

「わかりました」

 遠いなら、遠くからでも当たる攻撃をすればいいだけ。
 点のような大きさでしか見えていない。今から行ってもその間に被害が広がるかもしれない。
 俺の背後で被害が広がる様を見せつけるつもりか。
 なら、足元まで俺を誘い出す目的、つまり、実力者を攻撃対象から離す。それが効率的に殺せると判断したんだろう。
 なら、その策略をぶち壊してやるまで。

「ジローちゃんでしてたように、ルカラくんの力は魔法の補助にも使えるんでしょ?」
「どうしてそれを?」
「あたしが知らないと思って?」

 くそう。こっそりやったのにバレてる。
 ジローお前バラしたのか?

「はい。できます。でも、人のことに……」
「いいのよ。長はルカラくん。本契約を頼んだのはあたし。あたしは、長でありご主人のルカラくんやることを信じるよ」
「ありがとうございます!」
「ふふ。もっとあたしを頼っていいのよ」

 正直心強い。
 今の俺なら遠くても狙える。そして、魔法の威力もある程度出せる。
 しかし、俺だけの力じゃ、当てるだけで精一杯。倒すまではいかないかもしれなかった。
 さすがに敵が遠すぎる。威力が減衰してしまう。さらに、デス・プリーストは魔法抵抗が強い。
 こりゃいい。火力は少し劣るが、魔法との相乗効果を狙うなら魔属性魔法だ。

「いきますよ。デレアーデさん」
「いいよ!」
「ジローは周囲の警戒」
「にゃにゃ!」

 詠唱してたら逃げられる。あくまで速さ、正確さ、そして、デレアーデさんの補助を信じる!

「『ダークネス・グラビティ・ボール』! 『オーラ・エンチャント』!」

 光さえ吸い込む漆黒の球が俺の手のひらから勢いよく射出された。そこに、デレアーデさんの力が加わり、球はさらに加速する。
 目にも止まらぬ勢いで高速移動し、デス・プリーストまで直進。

「よし!」

 直撃の手応え。体力を一撃で削り切った時の膨張と収縮の演出。跡形も残さず広がる黒がデス・プリーストを飲み込み、無に帰す。

「よかった。当たったね」
「デレアーデさんの助力があったんです。当たらないわけがないですよ」
「ふふ。嬉しいこと言ってくれるね」

 内心はヒヤヒヤしたが、しっかり真ん中に当たってくれてよかった。

「これもデレアーデさんが教えてくれたおかげですから」
「もー。ルカラくんの努力のおかげだよー」
「ありがとうございます。デレアーデさん」
「力になれたならよかった」
「そんなもんじゃないですよ。ここまで、できれば」

 ツンツンと背中をつつかれ振り返る。

「……!?」
「盛り上がっているところ悪いが、気配があと二つあるのじゃぞ」

 ジト目で俺を見てくるルミリアさん。

「そうでした」

 今回はこれで終わりじゃない。
 でも、何度反応を確かめてみても、善意の人とモンスターっぽい。けど……うーん。
 一般人にしては強すぎるし、そんなの魔物にいたか……?
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