破滅不可避の悪役獣使いに転生したが肉塊になりたくないので聖獣娘、魔獣娘に媚びを売る〜嫌われないようにしていたらなぜか長たちになつかれている〜

マグローK

文字の大きさ
上 下
21 / 50
第一章 魔王討伐編

第21話 魔法の特訓

しおりを挟む
「ルカラ殿ー。今日はどこ行くのじゃ?」

 俺がルミリアさんと本契約してからというもの、行く先々にルミリアさんがついてくるようになった。

「……つまんない」

 そして、デレアーデさんが不機嫌になった。
 ほほを膨らませてジト目でにらまれることが多くなった。

 そんなある日。

「ルミリアさん。今日はあたしがルカラくんに魔法を教える日です」

 不機嫌なのに、デレアーデさんは俺に魔法を教えると言って聞かなくなった。
 話が見えない。

「えー。いいじゃないか少しぐらい。なー、ルカラ殿?」
「ダメです。あたしがルカラくんに頼まれていたことです。ルカラくんがかわいそうです。ルカラくんはあたしに魔法を教わりたいよね?」

 今、俺はつな引きのつなのように引っ張られている。
 うーん。ルミリアさんとデレアーデさんは仲がいいと思っていたのだが、違うのか?

 どちらにしろ、今の俺の目的はデレアーデさんに媚びを売ること。

「すいません。ルミリアさん。デレアーデさんがせっかく思いついてくれたみたいなので、教わっていいですか?」
「ルカラ殿がそう言うならいいのじゃ」

 俺はルミリアさんに手を離され、そのまま体勢を崩してデレアーデさんの胸に顔をうずめた。

「始めよっか」
「お願いします」



 聖獣、魔獣の扱う魔法は種固有。ゆえに、本来、人間は使えないとされている。
 正直、不機嫌になった時はめちゃくちゃ焦ったが、それでも教えたいと言うなら、教わろう。
 媚びを売るというだけでなく、身を守る手段は多いに越したことはない。

 ルミリアさんを見ると、俺の腕から離れてからぽけーっと覇気のない表情で俺のことをじっと見ている。

 いかんいかん。今は魔法を教わる時間だ。

「ようやく思いついたの!」

 さっきまでの不機嫌が嘘のように、満面の笑みを浮かべながらデレアーデさんは言ってきた。

「俺はどうすればいいんですか?」
「人間が魔属性の魔法を使えないのは、体内に魔属性の魔法を使う準備がないからなんだよ。だから、ちょっと乱暴な方法だけど、ルカラくん一発くらってみようか」

「はい?」

 デレアーデさんが背中を見せて俺から距離を取り始めた。
 どうやら、俺に魔法を打ち込むらしい……何となくだけどそんな気はしてた。

「……でも、ルカラくんの魔法壁って厚すぎなのよね。弱めにしてあげたいけど、無効化されそう。そういえば誰かに打つのは久しぶりだし、殺すつもりでやってみようかしら」

 なんだか寒気がしてきた。
 ふと、今朝、鏡を見た時の感想を思い出した。
 俺がこの世界に来て二年。だいぶ顔つきが俺の知るルカラに似てきた。
 なんだか、破滅の道を避けられていない気がして不安になる。
 これ、俺、死なないよな?

「いっくよー!」
「はい!」

 もう、俺の才能と独学を信じて! 俺は防御姿勢をとった。

「ウッ!」
「おい! 容赦しないかデレアーデ! 大丈夫か? ルカラ殿!」
「ごめんなさい! さすがにやりすぎた。大丈夫? ルカラくん」

 魔法をくらってから動かないでいると、ルミリアさんとデレアーデさんが俺のところまで走ってきて、傷を撫でてきた。
 当たった時は痛かった。でも、今はなんともない。
 うん。生きてる。
 案外大丈夫だったし、手加減してくれたみたいだ。

「大丈夫です。ピンピンしてますよ。最初は誰だって痛いし、こんなものじゃないですか? ビシバシお願いします」
「「……!?」」

 どうして驚いてるんだ?
 いや、やっぱり殺すつもりだったのか? 訓練中の事故を装って。
 もしくは、俺、才能あるある言われてる割に弱すぎるのか? 魔法抵抗力に関しても人より強いって話だったんだが……。

「……殺すつもりでやったのに、かすり傷程度しかダメージが入らないなんて。これはルミリアさんが目をかけるわけね」
「あの」
「いいわ! ルミリアさんより、あたしの方が魔法は得意だもの。もっとやってみましょう!」
「お願いします!」
「……でも、ここまで丈夫で才能もあるなんて本当にただの人間かしら……」
「どうしました?」
「ううん」

 なんだろう。とても内容が気になる。

 そんなことより、

「あの、俺の視界が暗いんですけど、どこから来るかくらいはわかってた方がいいんじゃないかと思うのですが」
「え?」
「おお。見事じゃな」

 なぜか知らないが、気づいた時には俺の眼前に黒い板のようなものが浮いていた。
 どれだけ動いてもついてくる。
 これって確か、魔属性の魔法、ブレイク・シールドとか言ったはず。発動中は魔法も物理攻撃も吸収し体力を回復できる便利な魔法。
 便利すぎて、使われた時は攻撃する前にしっかり解除しないといけないのだが、これが俺の前にあるのはどういうことだ? デレアーデさんが攻撃の後で俺にミスって使ってしまったのか?
 意味わからんぞ? 吸収もありならさっきもつけておいてほしかったんだが。

「えーと……ルカラくん。それ、どうやって出したの?」
「へ? いや、俺出してないですよ?」
「いやいや、あたしも出してないよ。もしかして、ルカラくんって魔獣? だから、実は教えなくても使えたとか……?」
「そんなわけないじゃないですか。人間ですよ」
「でも、使えてるし」
「えーと……?」

 つまり、今目の前にあるブレイク・シールド、これはデレアーデさんが出したのではなく、俺が出したと……?
 離れていたデレアーデさんがまたも俺に向けて歩いてくると、ブレイク・シールドに触れ、それ以上進めない様子が透けて見える。
 デレアーデさんが自分に使ったやつが、俺の目の前にあるわけではないようだ。

「あっ! ジロー! お前だろ?」

 ご主人を守るために使ってくれたんだな? いい子や。でも、今は少し違うんだな。
 とか思いながらジローを見るが、フルフルと頭を横に振って違うと伝えてくる。

「え、じゃあ……」
「だから、ルカラくんに聞いたんじゃん。どうやって出したの? って」

 信じられないが、俺がブレイク・シールドを出したのか?
 それが本当なら、ルカラ、相変わらずとんでもねぇ才能してやがる。
 なら、意識すれば……。

「消えた」

 手を伸ばし、力を抜いたら消えた。解除は魔法陣を飛ばす仮契約に近い。
 これは、本当に俺が出していたらしい。
 次が来ると思って使ってしまったのか。

 しかし、直接使い方を見た訳ではないのに使えた。
 ということは!

「ルミリアさんも打ってみてください!」
「いや、デレアーデ」
「大丈夫。だと思います」
「わかった」

 ん? なんだか詠唱を始めた。
 いや、ちょっと待って、長い。
 これ、あれだ。ゲーム中最大火力も狙える。

「ちょ、待っ!」
「『セイクリッド・ルミナス・レーザー』!」
「痛い! 痛い痛い痛い!」

 焼ける。体が焼けるように熱い。
 ゲームだと演出カッケーとか思ってたけど、実際にくらうと眩しくて何も見えないし、怖い!

「バカな……」

 服ボロッボロになったのに、俺は生きてる。
 詠唱して、全力の最大火力。俺は耐えた。

 そこからというもの、魔属性の最大威力を誇るダークネス・グラビティ・ボールや見栄え重視のファントム・ソード。その他、汚染、時間経過でダメージの増える魔法、影に潜む魔法、使用回数によりダメージが増加する魔法。などなど。
 聖属性からは、光の剣みたいなセイクリッド・ソード、ありとあらゆる攻撃を反射するセイクリッド・シールド。光と同化する魔法、周囲の探索魔法、浄化。などなど。
 魔属性、聖属性のありとあらゆる魔法を試し、自分でも一応発動はできることを確認した。

 人間は使えないとはなんだったのか……。

「すごいよ! あとは反復、高速化、工夫、組み合わせ。どっちも使えるなんて夢が広がるね。そうですよね、ルミリアさん!」
「そうじゃな。聖獣、魔獣一体ずつはいなければいけなかったものが、一人でできるということじゃもんな」
「は、はは」

 俺の手を取り、飛びながら喜ぶデレアーデさん。
 いや、俺ちょっとすごすぎてついていけてないんだけど。

「これは、もっとルカラくんを知らないとね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...