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第一章 魔王討伐編
第17話 VSルミリア
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ルミリアさんなんか戦闘モーションに入っている。空気がバチバチしている。どこからかはじける音が聞こえるし、そのうえオーラがすごい。
俺に教える時以外、しっかりした構えをしたこと一度もなかったのに、動きがゲームで見た全力のそれと重なって見えるんだけど?
隠し玉ってそんなにまずかった!?
「ここまでしても使わんのか? それとも、本気で首は狙わないと思っておるのか?」
「ルミリアさん。冗談でもそれは」
「デレアーデは黙っておれ」
「はい!」
デレアーデさんが背中を伸ばして黙ってしまった。
なんだろう、ルミリアさん怒っているように見える。いや、どうやら、本気で怒らせてしまったのだろう。
まあそうか。師匠として教えるなら、弟子の実力を把握しておきたいものか。
でも正直、ルカラのユニークスキルは使いたくない。強力だが、存在に気づいていないフリをし続けた方が、俺の目的を達成するには絶対に都合がいい。
「いやぁ。なんの話ですかね」
「とぼけるな」
「僕には心当たりがありません」
「隠していた力を見せればそれでよいのだぞ? どうしてそこまで隠そうとする?」
「隠してると言われましても。僕は何も知らないもので」
ルミリアさんが言ってるのはきっと、ルカラのユニークスキルの話だ。
ルカラを象徴するそのスキル、それは強制使役または本契約中の生き物の力を武器や防具などにまとわせること。
その間、力を武器へ移された生き物は仮死状態のようになる。
言わば、お前の力、俺が使ってやる。という、ルカラの性格をよく表したようなスキルなのだ。
だから俺は、タロやジローと本契約してからも使ってこなかった。
タロと本契約をした時から発動の条件を満たし、使えるようにはなっていたが、特に話していなかった。
スキルの設定上は本契約でも使えたが、ルカラは一度も本契約で使っていない。となると、本契約で使った場合どうなるかわかったものではない。
しかし、意識には登っていたせいでルリミアさんにバレた。
「仕方ない、自覚なく余力を残していると言うのなら、そなたに自覚させるまでじゃ」
「ぐぅ!」
「弟子の才能を引き出してこその師匠。ルカラの才能、何がなんでも引き出させてもらうぞ」
「くっ!」
速い。
表情が怖い。完全にものを教える人の顔じゃない。あれは俺の心臓だけを狙っている。
使わなければ確実にルミリアさんに首を取られる。
こうなったら、使うしかないか……。
ここまでやってきたことが水の泡にならないことを祈るしかない。
「はあ、はあ……」
「どうだ? どうすればいいかわかったか?」
「ええ。思いつきましたよ。ルミリアさんの言う、俺の余力ってやつをね」
そういうことにしておこう。
「面白い。ならば見せてみろ」
俺はうなずき、タロに手を伸ばした。
「タロ、力を貸してくれ」
「アウ?」
「タロに時間稼ぎをさせるのか? 力を溜める必要があるならば、その時間くらい余はいくらでも待つぞ?」
「いいえ、そうじゃありません」
獣使いは、信頼により力をブーストさせて引き出す。そして、その安心から獣使い本人の力も高まる。ゲームではそんな設定だった。
が、この世界でもおそらくそうだ。細かいステータスまではわからないものの、タロやジローが俺と本契約した前と後で力が大きく変化していた。
俺もおそらくそうなのだろうが、自分のことだとよくわからない。
ここからは俺の願望だが、ゲーム内でのルカラはスキルを使いこなせていなかった。
無理矢理力を奪うのは、獣使いの本質じゃない。
以前のルカラが独裁なら、今の俺は団結。これが、きっと本来の使い方なんだ。
「力借りるぞ、タロ!」
「アオン!」
タロが鳴く。
「『オーラ・エンチャント』!」
タロの体と、訓練用の木剣が、共鳴したように一際大きな音が鳴る。
そして、木剣から衝撃波が放たれる。強風が吹いているように周囲の植物がざわめき出した。
「ルカラ、何をした?」
「これが、ルミリアさんに気づかせてもらった力です。本契約した仲間の力を借り、武器や道具などに付与することができる。その名もオーラ・エンチャント」
「どうして、そのようなすごいものを隠していた?」
「そ、それは、言ったじゃないですか。気づかせてもらったって」
さて、これで満足させられたかな。
「剣に本契約した者の力を加えたうえで戦える。余の分身に似たスキルか」
「いえ、多分違うと思います。このスキルにはルミリアさんの分身とは違い、大きな弱点があります。それは、力を借りている間、今ならタロの身動きが取れません。実際に本来の能力を発揮できていないはずです」
「なるほどな。ルカラのスキルに意識を奪われていたが、タロの気配がほとんど消えている。となると、ルカラは実戦では使えないと考えておるわけじゃな?」
「そんなところです」
ルミリアさんは目をつぶった。
納得してくれただろうか。
「ならば守ればいい。その剣からあふれんばかりに放たれるオーラ。それが、どれほどのものか、今のルカラならわかるじゃろう」
「はい」
それならわかる。
これは多分、ゲームで聖獣、魔獣どちらもの長から強制的に力を奪った時に匹敵する力だ。
強制使役による力の減り具合と本契約によるブーストも相まって、今のタロだけで長の力をまかなえている。
「こうなれば、余も全力を出さなくてはいけないじゃろうな」
そう言うと、ルミリアさんは擬態を解き、聖獣としての本来の姿、巨大な狼のような姿へ変わった。
そして、手に持っていた剣を口にくわえ、まっすぐに見つめてきている。
「え、え!?」
「さあこい。相手にとって不足なし、全力でかかってこい」
「いや、そう言われても……」
俺は、スキルを見せれば終わると思ってたんだが。
だから、見せるために使うだけのつもりだった。しかし、いつの間にか戦うことになってる。
でも、今のオーラ・エンチャントは信頼の力、俺だってそう感じてたじゃないか。
「アウ!」
タロまで俺にほえてくる。
いや、そうだ。タロの意識がある。これも大きな違い。これなら、本当に、
「こないのか? なら、こちらからゆくまでだ」
「くっ!」
ルミリアさんは口にくわえた剣を器用に振ってくる。攻撃位置が低い。
いつもの俺なら、受けるだけで手一杯のはずだが、タロの助力のおかげかそれほど苦じゃない。
いつも戦っているのとそう変わらない感覚で戦える。いや、少しラクかもしれない。
初めての戦闘経験のはずが、俺の体が攻撃に合わせて動いてくれる。
「アウアウ!」
しっかりしろと言わんばかりにタロの鳴き声がした。
ゲーム中、ルカラが本契約したモンスターでオーラ・エンチャントを発動させたことはなかった。
だから、ゲームと今の両方を知っている俺だからわかる。これは、強制使役と本契約で効果が変わるのだ。
全力のルミリアさんについていけるのは、タロがサポートしてくれているからだ。
「これならいける」
タロの見ている世界も同時に把握できるような不思議な感覚、精神が研ぎ澄まされる。
「ふ。まだまだここからじゃ!」
「いいえ、ここで決めます!」
俺はルミリアさんの木剣を弾き飛ばした。
全力ということで、動きも封じさせてもらう。
「『ハビット・ジェイル』!」
「むぅ」
どういうわけかもふもふだった姿から人間態に戻ってしまった。
だが、このスキに、俺はルミリアさんに馬乗りになって剣を地面に突き立てた。
「ルミリアさん、俺の勝ちです」
「近いっ!」
「あいたっ!」
開いていた左手でデコピンされた。
あいたたた。
思わず解放してしまいながら、額を押さえる。
「急に何するんですか!」
「ち、近いわ! 何事かと思ったわ!」
顔を真っ赤にしてルミリアさんはそっぽを向いた。
やばい! 調子に乗って怒らせたか?
俺に教える時以外、しっかりした構えをしたこと一度もなかったのに、動きがゲームで見た全力のそれと重なって見えるんだけど?
隠し玉ってそんなにまずかった!?
「ここまでしても使わんのか? それとも、本気で首は狙わないと思っておるのか?」
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「デレアーデは黙っておれ」
「はい!」
デレアーデさんが背中を伸ばして黙ってしまった。
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「とぼけるな」
「僕には心当たりがありません」
「隠していた力を見せればそれでよいのだぞ? どうしてそこまで隠そうとする?」
「隠してると言われましても。僕は何も知らないもので」
ルミリアさんが言ってるのはきっと、ルカラのユニークスキルの話だ。
ルカラを象徴するそのスキル、それは強制使役または本契約中の生き物の力を武器や防具などにまとわせること。
その間、力を武器へ移された生き物は仮死状態のようになる。
言わば、お前の力、俺が使ってやる。という、ルカラの性格をよく表したようなスキルなのだ。
だから俺は、タロやジローと本契約してからも使ってこなかった。
タロと本契約をした時から発動の条件を満たし、使えるようにはなっていたが、特に話していなかった。
スキルの設定上は本契約でも使えたが、ルカラは一度も本契約で使っていない。となると、本契約で使った場合どうなるかわかったものではない。
しかし、意識には登っていたせいでルリミアさんにバレた。
「仕方ない、自覚なく余力を残していると言うのなら、そなたに自覚させるまでじゃ」
「ぐぅ!」
「弟子の才能を引き出してこその師匠。ルカラの才能、何がなんでも引き出させてもらうぞ」
「くっ!」
速い。
表情が怖い。完全にものを教える人の顔じゃない。あれは俺の心臓だけを狙っている。
使わなければ確実にルミリアさんに首を取られる。
こうなったら、使うしかないか……。
ここまでやってきたことが水の泡にならないことを祈るしかない。
「はあ、はあ……」
「どうだ? どうすればいいかわかったか?」
「ええ。思いつきましたよ。ルミリアさんの言う、俺の余力ってやつをね」
そういうことにしておこう。
「面白い。ならば見せてみろ」
俺はうなずき、タロに手を伸ばした。
「タロ、力を貸してくれ」
「アウ?」
「タロに時間稼ぎをさせるのか? 力を溜める必要があるならば、その時間くらい余はいくらでも待つぞ?」
「いいえ、そうじゃありません」
獣使いは、信頼により力をブーストさせて引き出す。そして、その安心から獣使い本人の力も高まる。ゲームではそんな設定だった。
が、この世界でもおそらくそうだ。細かいステータスまではわからないものの、タロやジローが俺と本契約した前と後で力が大きく変化していた。
俺もおそらくそうなのだろうが、自分のことだとよくわからない。
ここからは俺の願望だが、ゲーム内でのルカラはスキルを使いこなせていなかった。
無理矢理力を奪うのは、獣使いの本質じゃない。
以前のルカラが独裁なら、今の俺は団結。これが、きっと本来の使い方なんだ。
「力借りるぞ、タロ!」
「アオン!」
タロが鳴く。
「『オーラ・エンチャント』!」
タロの体と、訓練用の木剣が、共鳴したように一際大きな音が鳴る。
そして、木剣から衝撃波が放たれる。強風が吹いているように周囲の植物がざわめき出した。
「ルカラ、何をした?」
「これが、ルミリアさんに気づかせてもらった力です。本契約した仲間の力を借り、武器や道具などに付与することができる。その名もオーラ・エンチャント」
「どうして、そのようなすごいものを隠していた?」
「そ、それは、言ったじゃないですか。気づかせてもらったって」
さて、これで満足させられたかな。
「剣に本契約した者の力を加えたうえで戦える。余の分身に似たスキルか」
「いえ、多分違うと思います。このスキルにはルミリアさんの分身とは違い、大きな弱点があります。それは、力を借りている間、今ならタロの身動きが取れません。実際に本来の能力を発揮できていないはずです」
「なるほどな。ルカラのスキルに意識を奪われていたが、タロの気配がほとんど消えている。となると、ルカラは実戦では使えないと考えておるわけじゃな?」
「そんなところです」
ルミリアさんは目をつぶった。
納得してくれただろうか。
「ならば守ればいい。その剣からあふれんばかりに放たれるオーラ。それが、どれほどのものか、今のルカラならわかるじゃろう」
「はい」
それならわかる。
これは多分、ゲームで聖獣、魔獣どちらもの長から強制的に力を奪った時に匹敵する力だ。
強制使役による力の減り具合と本契約によるブーストも相まって、今のタロだけで長の力をまかなえている。
「こうなれば、余も全力を出さなくてはいけないじゃろうな」
そう言うと、ルミリアさんは擬態を解き、聖獣としての本来の姿、巨大な狼のような姿へ変わった。
そして、手に持っていた剣を口にくわえ、まっすぐに見つめてきている。
「え、え!?」
「さあこい。相手にとって不足なし、全力でかかってこい」
「いや、そう言われても……」
俺は、スキルを見せれば終わると思ってたんだが。
だから、見せるために使うだけのつもりだった。しかし、いつの間にか戦うことになってる。
でも、今のオーラ・エンチャントは信頼の力、俺だってそう感じてたじゃないか。
「アウ!」
タロまで俺にほえてくる。
いや、そうだ。タロの意識がある。これも大きな違い。これなら、本当に、
「こないのか? なら、こちらからゆくまでだ」
「くっ!」
ルミリアさんは口にくわえた剣を器用に振ってくる。攻撃位置が低い。
いつもの俺なら、受けるだけで手一杯のはずだが、タロの助力のおかげかそれほど苦じゃない。
いつも戦っているのとそう変わらない感覚で戦える。いや、少しラクかもしれない。
初めての戦闘経験のはずが、俺の体が攻撃に合わせて動いてくれる。
「アウアウ!」
しっかりしろと言わんばかりにタロの鳴き声がした。
ゲーム中、ルカラが本契約したモンスターでオーラ・エンチャントを発動させたことはなかった。
だから、ゲームと今の両方を知っている俺だからわかる。これは、強制使役と本契約で効果が変わるのだ。
全力のルミリアさんについていけるのは、タロがサポートしてくれているからだ。
「これならいける」
タロの見ている世界も同時に把握できるような不思議な感覚、精神が研ぎ澄まされる。
「ふ。まだまだここからじゃ!」
「いいえ、ここで決めます!」
俺はルミリアさんの木剣を弾き飛ばした。
全力ということで、動きも封じさせてもらう。
「『ハビット・ジェイル』!」
「むぅ」
どういうわけかもふもふだった姿から人間態に戻ってしまった。
だが、このスキに、俺はルミリアさんに馬乗りになって剣を地面に突き立てた。
「ルミリアさん、俺の勝ちです」
「近いっ!」
「あいたっ!」
開いていた左手でデコピンされた。
あいたたた。
思わず解放してしまいながら、額を押さえる。
「急に何するんですか!」
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