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第一章 魔王討伐編
第15話 ルカラくんに応えたい:デレアーデ視点
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~デレアーデ視点~
「さあ、そろそろ追いかけなさい。本契約したのなら、あなたの主人はもうルカラくんでしょ?」
「ですが、デレアーデ様……」
「これは、あなたが望んでいたことのはずよ?」
「はい……」
ルカラくんはジローちゃんと本契約し、今回の目的を達成したので、ルミリアさんに森の外へと案内されている。
あんまり遠くへ行かれてしまうと、まだルカラくんの家を知らないジローちゃんでは追いつけなくなってしまう。
それでも迷ったように、ジローちゃんはあたしとルカラくんを見比べていた。
「別にこれでもう会えなくなるわけじゃないわ。今すぐにではないけれど、確実にあたしも、そしてルミリアさんもルカラくんと一緒に戦うことになる」
「それってつまり……!」
「ジローちゃんと同じ、かもしれないし、そうじゃないかもしれない。でも、あたしの未来視はそう伝えてくる」
「デレアーデ様がそう言うなら間違いないですね」
「多分ね」
そう、多分だ。あたしの未来視は確実ではない。
あたしが長になれたのは、この予言の巫女としての力。魔法ではなく、あたしだけの才能。具体的に未来がわかるわけではないけれど、未来の像をなんとなく感じることができる力。
でも、最近も一つ未来視が外れたばかりなのだ。
このネルングの森周辺には、強いけど邪悪な存在が近くにいるはずだった。それがいつの間にかいなくなっていたのだ。
そいつはあたしやルミリアさんを利用しようとする影だったはずなのに、そんな気配はもう感じられない。
むしろ、別の脅威が迫っている感じがする。それくらい、ぼんやりしたもの。
でも、あたしの未来視では、新しい影にルカラくんとあたしたちが協力して戦う像が写っている。
今なら、それも理解できる。
ルカラくんはルミリアさんの言う通り、本当にいい子だった。
あたしの見た目はあくまで擬態。魔獣としての力があれば、服を着ていなくても環境への適応は簡単だ。それなのに、気を遣って、ルカラくんの方がよっぽど冷えるだろうに、毛の代わりである服をくれた。
あたしたちの風習を知ってるのかどうかはわからないけど、今もまだドキドキしている。
動揺した勢いで本契約してみろって言っちゃったけど、ジローも心を許しているから、ルカラくんと本契約が成立させてしまった。実力も優しさも持ち合わせるいい子だ。
「しかし、戦いとなると、このジローなぞが契約してよかったのですか?」
「いいのよ。これも協力するために必要なことだもの。それに、ルミリアさんとこのタロちゃんを見たでしょ?」
「はい。聖獣としては一番若いはずが、次の長と紹介されても疑う者はいない。それほどまでのオーラでした」
「そうでしょ? あれは、タロちゃんの才能だけじゃなく、ルカラくんと本契約した影響よ。本契約はお互いの力を高め合うの。今のジローちゃんもオーラだけならタロちゃんに匹敵しているわ」
「本当ですか?」
「ええ。でも、なまけないで上を目指しなさい」
「もちろんです」
「そもそも、まだルカラくんの力には余裕があるし彼なら大丈夫よ。さあ」
「はい! では、行ってまいります」
「ええ。あんまり迷惑かけすぎちゃダメよ?」
「はい! わかりました」
魔獣がまた一匹、ジローちゃんがここを巣立つせいなのか、胸に穴が空いてしまったよう。
代わりに、寒さなんて感じたことなかったはずなのに、もらった服が手放せない。ルカラくんの服はなんだかあったかい。
あれは生粋の獣使い。生き物たらしだ。
森の植物たちさえもルカラくんにあやかろうと茎を根を伸ばしていた。
近くの動物たちですら、影からルカラに近づこうと様子をうかがっていた。
「ねえ、ジローちゃん、最後に」
「なんでしょうか?」
「この服、あたしの力だけであたしが着られるようにできるかしら?」
ジローちゃんは一瞬キョトンとしたように小首を傾げる。
どう言おう。
「この服、ルカラくんのでしょう? あたしにくれた訳だけど、あたしが着るには小さいのよ。だから、あたしが着られるように形を変えてみようと思うのだけど」
「できますよ! デレアーデ様ならできますとも!」
「そ、そうかな?」
「ええ! もちろんです。それに、ルカラ様。ジローのご主人様もデレアーデ様が着てくださったらきっと喜んでくれるはずです。初対面なのに渡した、熱烈なアプローチですもの」
「そうよね? できるわよね? 喜んでもらえるわよね?」
服を着たら、ルカラくんに真っ直ぐ見てもらえるかな?
うん。覚悟は決まった。
ルミリアさんのようになるのは遠いけど、あたしも頑張ってみよう。
魔獣のみんなが憧れるようなあたしになるためにも。
「行きなさい。これ以上離れると、追うのが難しくなるわよ」
「はい!」
ジローちゃんはきっとルカラくんのそばで成長するんだろうな。
あたしも、ルカラくんの気持ちに応えられるように準備をしておかないと。
「まずはこの服からね。ふふっ。でも、どうすればいいのかな?」
ルミリアさんも布切れ一枚だし、こんなツギハギの服は持ってなかったと思う。
でも、ルカラくんに直接聞くのは何か違うよね。
ジローちゃんだってできるって言ってくれたんだもん。あたしの力で作り直してみよう。
初対面で服をくれた、ルカラくんの気持ちに応えるために。
「さあ、そろそろ追いかけなさい。本契約したのなら、あなたの主人はもうルカラくんでしょ?」
「ですが、デレアーデ様……」
「これは、あなたが望んでいたことのはずよ?」
「はい……」
ルカラくんはジローちゃんと本契約し、今回の目的を達成したので、ルミリアさんに森の外へと案内されている。
あんまり遠くへ行かれてしまうと、まだルカラくんの家を知らないジローちゃんでは追いつけなくなってしまう。
それでも迷ったように、ジローちゃんはあたしとルカラくんを見比べていた。
「別にこれでもう会えなくなるわけじゃないわ。今すぐにではないけれど、確実にあたしも、そしてルミリアさんもルカラくんと一緒に戦うことになる」
「それってつまり……!」
「ジローちゃんと同じ、かもしれないし、そうじゃないかもしれない。でも、あたしの未来視はそう伝えてくる」
「デレアーデ様がそう言うなら間違いないですね」
「多分ね」
そう、多分だ。あたしの未来視は確実ではない。
あたしが長になれたのは、この予言の巫女としての力。魔法ではなく、あたしだけの才能。具体的に未来がわかるわけではないけれど、未来の像をなんとなく感じることができる力。
でも、最近も一つ未来視が外れたばかりなのだ。
このネルングの森周辺には、強いけど邪悪な存在が近くにいるはずだった。それがいつの間にかいなくなっていたのだ。
そいつはあたしやルミリアさんを利用しようとする影だったはずなのに、そんな気配はもう感じられない。
むしろ、別の脅威が迫っている感じがする。それくらい、ぼんやりしたもの。
でも、あたしの未来視では、新しい影にルカラくんとあたしたちが協力して戦う像が写っている。
今なら、それも理解できる。
ルカラくんはルミリアさんの言う通り、本当にいい子だった。
あたしの見た目はあくまで擬態。魔獣としての力があれば、服を着ていなくても環境への適応は簡単だ。それなのに、気を遣って、ルカラくんの方がよっぽど冷えるだろうに、毛の代わりである服をくれた。
あたしたちの風習を知ってるのかどうかはわからないけど、今もまだドキドキしている。
動揺した勢いで本契約してみろって言っちゃったけど、ジローも心を許しているから、ルカラくんと本契約が成立させてしまった。実力も優しさも持ち合わせるいい子だ。
「しかし、戦いとなると、このジローなぞが契約してよかったのですか?」
「いいのよ。これも協力するために必要なことだもの。それに、ルミリアさんとこのタロちゃんを見たでしょ?」
「はい。聖獣としては一番若いはずが、次の長と紹介されても疑う者はいない。それほどまでのオーラでした」
「そうでしょ? あれは、タロちゃんの才能だけじゃなく、ルカラくんと本契約した影響よ。本契約はお互いの力を高め合うの。今のジローちゃんもオーラだけならタロちゃんに匹敵しているわ」
「本当ですか?」
「ええ。でも、なまけないで上を目指しなさい」
「もちろんです」
「そもそも、まだルカラくんの力には余裕があるし彼なら大丈夫よ。さあ」
「はい! では、行ってまいります」
「ええ。あんまり迷惑かけすぎちゃダメよ?」
「はい! わかりました」
魔獣がまた一匹、ジローちゃんがここを巣立つせいなのか、胸に穴が空いてしまったよう。
代わりに、寒さなんて感じたことなかったはずなのに、もらった服が手放せない。ルカラくんの服はなんだかあったかい。
あれは生粋の獣使い。生き物たらしだ。
森の植物たちさえもルカラくんにあやかろうと茎を根を伸ばしていた。
近くの動物たちですら、影からルカラに近づこうと様子をうかがっていた。
「ねえ、ジローちゃん、最後に」
「なんでしょうか?」
「この服、あたしの力だけであたしが着られるようにできるかしら?」
ジローちゃんは一瞬キョトンとしたように小首を傾げる。
どう言おう。
「この服、ルカラくんのでしょう? あたしにくれた訳だけど、あたしが着るには小さいのよ。だから、あたしが着られるように形を変えてみようと思うのだけど」
「できますよ! デレアーデ様ならできますとも!」
「そ、そうかな?」
「ええ! もちろんです。それに、ルカラ様。ジローのご主人様もデレアーデ様が着てくださったらきっと喜んでくれるはずです。初対面なのに渡した、熱烈なアプローチですもの」
「そうよね? できるわよね? 喜んでもらえるわよね?」
服を着たら、ルカラくんに真っ直ぐ見てもらえるかな?
うん。覚悟は決まった。
ルミリアさんのようになるのは遠いけど、あたしも頑張ってみよう。
魔獣のみんなが憧れるようなあたしになるためにも。
「行きなさい。これ以上離れると、追うのが難しくなるわよ」
「はい!」
ジローちゃんはきっとルカラくんのそばで成長するんだろうな。
あたしも、ルカラくんの気持ちに応えられるように準備をしておかないと。
「まずはこの服からね。ふふっ。でも、どうすればいいのかな?」
ルミリアさんも布切れ一枚だし、こんなツギハギの服は持ってなかったと思う。
でも、ルカラくんに直接聞くのは何か違うよね。
ジローちゃんだってできるって言ってくれたんだもん。あたしの力で作り直してみよう。
初対面で服をくれた、ルカラくんの気持ちに応えるために。
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