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第一章 魔王討伐編
第11話 ルカラの実力は高すぎる:ルミリア視点
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~ルミリア視点~
ユイシャと呼ばれた少女の腰に手を当てながら歩いて行ったルカラが見えなくなるまで、余は先を眺めていた。
思ったよりも時間が経ってしまった。
しかし、恐るべき収穫じゃったな。
「タロ。見ていたか?」
「はい。あれは人間のつがいのようかと思われます」
「やはりか……いや、そうではない。それに、まだわからないではないか。ルカラも友だちと言っておったぞ。余だって友だちじゃ」
「長!?」
「おほん! それも驚いたが、剣術の方じゃ」
「剣術ですね。もちろん見ていました。あれは、人間の身のこなしではないかと。あれは優秀な戦士の動きです。長以外が相手するには実力不足でしょう」
「そうじゃな」
ルカラは、剣術はさっぱりなんて言っておったが、あれは真っ赤な嘘じゃ。
おそらくは、余が遊び相手だけでいいと言われ拍子抜けしていることに気づき、気を遣ってくれたのじゃろう。
でなくては、いくら突出した才能があろうとあそこまでの動きはできない。
「タロはあのレベルに至るまでにどれほどの時間がかかると思う?」
「ご主人と契約した今のタロでも数年はかかるでしょう。そうでなければ一生力を磨いて届くかどうか」
「ならば、人間ならば?」
「才能があり、一生かけられるほどの余裕があればでしょうか。ご主人ほどの年齢で到達できるレベルではないと思われます」
「そうなんじゃよな」
そもそも成人していない子どもにしては動きがよすぎる。できすぎている。
これで余が教えると言っても嫌な顔一つしないとは、どれほど心が広いのか。
そもそもあの実力なら、旅など余裕でできるじゃろう。さらに高みを目指すとしても誰から教わるというのじゃ。もし人間で教えられるとすれば、もうそれこそ王国騎士団レベルの人間や、最上位冒険者などを揃えなくてはいけないのではないじゃろうか。それでもすぐに追い抜かれるじゃろうが。
本来、余が人間に遅れをとるはずがないのじゃ。油断をしていても見てから動けば間に合うはずじゃった。にも関わらず、獣使いの動きを封じる技も使わずに鳥に意識を奪われている間に余の視界から出て分身まで使わせるなど……。
初めは才能というより熟練度の問題じゃろうと思っていた。
余の考えではルカラは獣使いとして、これまで十一年間、特訓を繰り返した末、タロを助けたと思っておった。じゃが、あの様子じゃとそうではないのじゃろう。貴族ということで習っている。たったそれだけで相手の命を刈り取る動きをマスターし余に秘技分身まで使わせた。
人として出来がいい。いやよすぎる。余のこれまでを振り返ってみてもルカラほどの実力者を人間としては知らない。
「タロよ。力の高まりはどうじゃ?」
「あと数年もあれば、長のように人の姿に擬態できるかと」
「じゃろうな。余もそれほどの変化は感じていたが、直に聞くと恐ろしいな」
「はい。体力が有り余る感覚です。むしろ、聖獣として体力を奪っていないか心配になるほどに力がみなぎっています」
「そこまでか……」
余としても自らだけで力を高めるだけじゃない道を知る必要があるとは思っていた。
しかし、人間に利用され、ただの物として扱われていたこれまでがあるだけに、人間で獣使いのそれこそ友と呼べるような存在は現れないと思っておったのじゃが、長く生きてみるものじゃな。
「これでまだ十一の子どもじゃ。伸びしろは先が見えぬほどある」
「はい。タロの力もこれから伸びていくと思われます」
「そうなればさらにルカラの力も伸びる、か。こうなると練習の内容はしっかりと考えておかないとな。しかし、余の剣術もすぐに覚えてしまうのじゃろうな」
「長の肩を持ちたいですが、タロはご主人であるルカラ様なら長の技術を継承できると考えます」
「よい。それがタロの素直な感想なのじゃろ?」
「はっ」
「ならば余のためでもある。これからも言ってくれ。情報は正確に伝えるべきじゃ。そして、抜かれぬように手を抜いているように見えたら指摘してくれ」
「しかし」
「構わぬ。そうでなくば、タロをルカラと本契約させた意味がないというものじゃろう。何もタロの願いを聞き届けただけではないのじゃぞ」
「わかりました」
それに、実のところ、これから人間に実力が抜かれるかもしれないことが悔しいよりも嬉しいまであるのじゃ。
これまでは聖獣の長として長らく一番じゃった。
それをただの人間の子どもに抜かれるかもしれない。
そう思うとこれからが楽しみでもあった。
「人以上に、聖獣、いや全ての生き物を殺そうとしてきた現魔王。ヤツを倒すのはあの少年、ルカラやもしれぬな」
杞憂かもしれぬが、聖獣であるタロを傷つけるようなやからがこの辺りには潜んでいる。
不意打ちや油断させてのことかもしれぬが、そうじゃとしても、ルカラの実力ならばタロに怪我をさせたやからと遭遇しても問題にはならないじゃろう。
ユイシャと呼ばれた少女の腰に手を当てながら歩いて行ったルカラが見えなくなるまで、余は先を眺めていた。
思ったよりも時間が経ってしまった。
しかし、恐るべき収穫じゃったな。
「タロ。見ていたか?」
「はい。あれは人間のつがいのようかと思われます」
「やはりか……いや、そうではない。それに、まだわからないではないか。ルカラも友だちと言っておったぞ。余だって友だちじゃ」
「長!?」
「おほん! それも驚いたが、剣術の方じゃ」
「剣術ですね。もちろん見ていました。あれは、人間の身のこなしではないかと。あれは優秀な戦士の動きです。長以外が相手するには実力不足でしょう」
「そうじゃな」
ルカラは、剣術はさっぱりなんて言っておったが、あれは真っ赤な嘘じゃ。
おそらくは、余が遊び相手だけでいいと言われ拍子抜けしていることに気づき、気を遣ってくれたのじゃろう。
でなくては、いくら突出した才能があろうとあそこまでの動きはできない。
「タロはあのレベルに至るまでにどれほどの時間がかかると思う?」
「ご主人と契約した今のタロでも数年はかかるでしょう。そうでなければ一生力を磨いて届くかどうか」
「ならば、人間ならば?」
「才能があり、一生かけられるほどの余裕があればでしょうか。ご主人ほどの年齢で到達できるレベルではないと思われます」
「そうなんじゃよな」
そもそも成人していない子どもにしては動きがよすぎる。できすぎている。
これで余が教えると言っても嫌な顔一つしないとは、どれほど心が広いのか。
そもそもあの実力なら、旅など余裕でできるじゃろう。さらに高みを目指すとしても誰から教わるというのじゃ。もし人間で教えられるとすれば、もうそれこそ王国騎士団レベルの人間や、最上位冒険者などを揃えなくてはいけないのではないじゃろうか。それでもすぐに追い抜かれるじゃろうが。
本来、余が人間に遅れをとるはずがないのじゃ。油断をしていても見てから動けば間に合うはずじゃった。にも関わらず、獣使いの動きを封じる技も使わずに鳥に意識を奪われている間に余の視界から出て分身まで使わせるなど……。
初めは才能というより熟練度の問題じゃろうと思っていた。
余の考えではルカラは獣使いとして、これまで十一年間、特訓を繰り返した末、タロを助けたと思っておった。じゃが、あの様子じゃとそうではないのじゃろう。貴族ということで習っている。たったそれだけで相手の命を刈り取る動きをマスターし余に秘技分身まで使わせた。
人として出来がいい。いやよすぎる。余のこれまでを振り返ってみてもルカラほどの実力者を人間としては知らない。
「タロよ。力の高まりはどうじゃ?」
「あと数年もあれば、長のように人の姿に擬態できるかと」
「じゃろうな。余もそれほどの変化は感じていたが、直に聞くと恐ろしいな」
「はい。体力が有り余る感覚です。むしろ、聖獣として体力を奪っていないか心配になるほどに力がみなぎっています」
「そこまでか……」
余としても自らだけで力を高めるだけじゃない道を知る必要があるとは思っていた。
しかし、人間に利用され、ただの物として扱われていたこれまでがあるだけに、人間で獣使いのそれこそ友と呼べるような存在は現れないと思っておったのじゃが、長く生きてみるものじゃな。
「これでまだ十一の子どもじゃ。伸びしろは先が見えぬほどある」
「はい。タロの力もこれから伸びていくと思われます」
「そうなればさらにルカラの力も伸びる、か。こうなると練習の内容はしっかりと考えておかないとな。しかし、余の剣術もすぐに覚えてしまうのじゃろうな」
「長の肩を持ちたいですが、タロはご主人であるルカラ様なら長の技術を継承できると考えます」
「よい。それがタロの素直な感想なのじゃろ?」
「はっ」
「ならば余のためでもある。これからも言ってくれ。情報は正確に伝えるべきじゃ。そして、抜かれぬように手を抜いているように見えたら指摘してくれ」
「しかし」
「構わぬ。そうでなくば、タロをルカラと本契約させた意味がないというものじゃろう。何もタロの願いを聞き届けただけではないのじゃぞ」
「わかりました」
それに、実のところ、これから人間に実力が抜かれるかもしれないことが悔しいよりも嬉しいまであるのじゃ。
これまでは聖獣の長として長らく一番じゃった。
それをただの人間の子どもに抜かれるかもしれない。
そう思うとこれからが楽しみでもあった。
「人以上に、聖獣、いや全ての生き物を殺そうとしてきた現魔王。ヤツを倒すのはあの少年、ルカラやもしれぬな」
杞憂かもしれぬが、聖獣であるタロを傷つけるようなやからがこの辺りには潜んでいる。
不意打ちや油断させてのことかもしれぬが、そうじゃとしても、ルカラの実力ならばタロに怪我をさせたやからと遭遇しても問題にはならないじゃろう。
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