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第一章 魔王討伐編
第4話 師匠探し
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ユイシャの怪我を治した翌日。
俺は今、聖獣、魔獣に媚びを売る算段をつけるため、ある人物を探していた。
「んふふー」
のだが、ユイシャが、ルカラの記憶の中にあるユイシャや、俺が知るユイシャよりもベッタベタにくっついてくるようになってしまいうまく進んでいない。
おかしい。スキンシップが多い。
ユイシャの様子がおかしい。
これは俺の知らないゲーム以前のイベントが進んでいるのだろうか。
「なあ、ユイシャ?」
「なに? ルカラ」
今も俺の腕に抱きついたまま上目遣いで見上げてくる。
もっと子どもらしく走り回ったりしないの?
「そんなにくっつかなくても外は安全だぞ?」
「でも、ルカラから離れたくなくて」
「そ、そうか」
「その、ルカラなら少しくらい叩いてもいいよ?」
「は?」
「なんだか不安で……」
「……」
いや、何も言えない。
今、ユイシャなんて言った?
叩いていい? 不安だ?
ルカラ。お前が叩きすぎたせいでユイシャがMっぽく変わってしまったみたいだぞ……。
これは責任取らないとな……。
「ユイシャ。お前は叩くためにいる訳じゃない。無理しなくていいからな? 俺は何もお前を殴るのが好きだった訳じゃない」
「そうなの? でも、無理じゃないよ?」
ユイシャはうるうるとした目で見上げてくる。
なんだか請われているような気がする。
俺は手を上げ、頭を撫でておいた。
「ふあー」
「これからは理由もなく人を叩かないからな」
「わかった。代わりにこれでいいよ」
「まあ、それなら」
ユイシャは人間なはずだが、獣使いとしての才能はきのみの時みたく効果を発揮するのか? 正直この反応はよくわからない。
好かれているなら、問題はない……か? そうだな。そうに違いない。
少し悲しそうな顔をしたが、そういうプレイはもっと大人になってからにしなさい。そうじゃないと俺がこれまでに逆戻りしてしまう。
じゃなかった。今日はユイシャと話すのが目的じゃなかった。
媚びを売る方法を学びに来たのだ。
聖獣、魔獣に媚びを売ると決めたが、腹を出してゴロゴロ言っていればいいことはないだろう。
そうなるとやり方がわからない。どうすればいいのか俺はゲームとしてしか知らない。
主人公ならば地道な交渉を繰り返しイベントを進めて仲間にすることができるが、それは主人公だからできたことだ。
他のモンスターと違い、追い詰めても仲間になりたそうにこちらを見てこない。
そもそも、今の俺にあるのは才能だけで、主人公のような信頼がない。
しかし、こんな時のためにちょうどいい人がデグリアス家には雇われている。
今は屋敷の外にいるらしい。
どこで知ったのかって?
必死になって、
「どうかお願いします」
と頭を下げて聞いたら使用人の一人が教えてくれた。
実際は大変だった。
ユイシャとの仲を修復してから屋敷に帰ると、こっそり出ているというのにどうやらバレているらしく、使用人の人たちから散々な陰口が聞こえてきた。
「帰ってこなければよかったのに」
「死ね」
「外でモンスターに襲われて死ねばいいんだわ」
「どこかでくたばれ」
陰口はどれも明らかに俺に聞かせるように言っていた。
ユイシャだけじゃなく、俺の評価はどの方面からも最悪らしかった。
地道に挨拶からと思ったが、無視された。
結構きつい。だからと言って逃げる訳にはいかない。
何度も何度も頼んでようやく教えてもらえた。
最後の方は多分けむたがられていたが、今はそれでいい。まだ始まったばかりだ。
「いた! ツリーさん!」
「ルカラ様!? また抜け出して来たんですか? 他の者に見つかったら連れ戻されますよ?」
「すみません」
少し驚いたような表情を浮かべているのはデグリアス家、庭師の男。ツリー・ドットマン。
元勇者パーティに所属していた獣使いで、先代魔王討伐に一役買ったやり手。この男なら、俺の目的を達成するヒントを与えてくれるはず。
「えーと、それでどうされました? こんなところまでやってきてわざわざ私に用ですか?」
「ちょっと聞きたいことがあってですね。ツリーさん。僕に、獣使いとしての特訓をしてくれませんか?」
「え!? いや、失礼。その、お言葉の意味がわからないのですが……」
「そうですか? なら、わかるまで言いましょう。僕に獣使いとしての特訓をしてください。お願いします」
俺は頭を下げてはっきり聞こえるように言った。
ツリーさんはあごに手を当て目線を下げた。
少し考えるように一拍置いてから。
「……なるほど、聞き間違いではなかったのですね」
これはあれか? 名前を呼んだら無視じゃなかったからちょっと喜んじゃったけど、俺、ツリーさんにも嫌われてる?
まあ、仕方ないか。ツリーさんに対しても今までひどい仕打ちをしてきたのだ。
となるとしくじったか。
きっと他の使用人たちと同じくこんな屋敷の外、人の見ていない場所で遭遇すれば、日頃の鬱憤を晴らすように俺はここで、こき使われ肉塊となるのを待たず死ぬ。
そう思っていると、ツリーさんはうなずいた。
「わかりました。ルカラ様のご命令とあらばお引き受けいたしましょう」
「ほ、本当ですか? ありがとうございます」
よ、よかった。死ななかった。
いや、本当によかった。
獣使いとしての力を正しく使えれば聖獣、魔獣からのヘイトも溜まりにくくなって、ひいては死なずに済むはず。
俺は今、聖獣、魔獣に媚びを売る算段をつけるため、ある人物を探していた。
「んふふー」
のだが、ユイシャが、ルカラの記憶の中にあるユイシャや、俺が知るユイシャよりもベッタベタにくっついてくるようになってしまいうまく進んでいない。
おかしい。スキンシップが多い。
ユイシャの様子がおかしい。
これは俺の知らないゲーム以前のイベントが進んでいるのだろうか。
「なあ、ユイシャ?」
「なに? ルカラ」
今も俺の腕に抱きついたまま上目遣いで見上げてくる。
もっと子どもらしく走り回ったりしないの?
「そんなにくっつかなくても外は安全だぞ?」
「でも、ルカラから離れたくなくて」
「そ、そうか」
「その、ルカラなら少しくらい叩いてもいいよ?」
「は?」
「なんだか不安で……」
「……」
いや、何も言えない。
今、ユイシャなんて言った?
叩いていい? 不安だ?
ルカラ。お前が叩きすぎたせいでユイシャがMっぽく変わってしまったみたいだぞ……。
これは責任取らないとな……。
「ユイシャ。お前は叩くためにいる訳じゃない。無理しなくていいからな? 俺は何もお前を殴るのが好きだった訳じゃない」
「そうなの? でも、無理じゃないよ?」
ユイシャはうるうるとした目で見上げてくる。
なんだか請われているような気がする。
俺は手を上げ、頭を撫でておいた。
「ふあー」
「これからは理由もなく人を叩かないからな」
「わかった。代わりにこれでいいよ」
「まあ、それなら」
ユイシャは人間なはずだが、獣使いとしての才能はきのみの時みたく効果を発揮するのか? 正直この反応はよくわからない。
好かれているなら、問題はない……か? そうだな。そうに違いない。
少し悲しそうな顔をしたが、そういうプレイはもっと大人になってからにしなさい。そうじゃないと俺がこれまでに逆戻りしてしまう。
じゃなかった。今日はユイシャと話すのが目的じゃなかった。
媚びを売る方法を学びに来たのだ。
聖獣、魔獣に媚びを売ると決めたが、腹を出してゴロゴロ言っていればいいことはないだろう。
そうなるとやり方がわからない。どうすればいいのか俺はゲームとしてしか知らない。
主人公ならば地道な交渉を繰り返しイベントを進めて仲間にすることができるが、それは主人公だからできたことだ。
他のモンスターと違い、追い詰めても仲間になりたそうにこちらを見てこない。
そもそも、今の俺にあるのは才能だけで、主人公のような信頼がない。
しかし、こんな時のためにちょうどいい人がデグリアス家には雇われている。
今は屋敷の外にいるらしい。
どこで知ったのかって?
必死になって、
「どうかお願いします」
と頭を下げて聞いたら使用人の一人が教えてくれた。
実際は大変だった。
ユイシャとの仲を修復してから屋敷に帰ると、こっそり出ているというのにどうやらバレているらしく、使用人の人たちから散々な陰口が聞こえてきた。
「帰ってこなければよかったのに」
「死ね」
「外でモンスターに襲われて死ねばいいんだわ」
「どこかでくたばれ」
陰口はどれも明らかに俺に聞かせるように言っていた。
ユイシャだけじゃなく、俺の評価はどの方面からも最悪らしかった。
地道に挨拶からと思ったが、無視された。
結構きつい。だからと言って逃げる訳にはいかない。
何度も何度も頼んでようやく教えてもらえた。
最後の方は多分けむたがられていたが、今はそれでいい。まだ始まったばかりだ。
「いた! ツリーさん!」
「ルカラ様!? また抜け出して来たんですか? 他の者に見つかったら連れ戻されますよ?」
「すみません」
少し驚いたような表情を浮かべているのはデグリアス家、庭師の男。ツリー・ドットマン。
元勇者パーティに所属していた獣使いで、先代魔王討伐に一役買ったやり手。この男なら、俺の目的を達成するヒントを与えてくれるはず。
「えーと、それでどうされました? こんなところまでやってきてわざわざ私に用ですか?」
「ちょっと聞きたいことがあってですね。ツリーさん。僕に、獣使いとしての特訓をしてくれませんか?」
「え!? いや、失礼。その、お言葉の意味がわからないのですが……」
「そうですか? なら、わかるまで言いましょう。僕に獣使いとしての特訓をしてください。お願いします」
俺は頭を下げてはっきり聞こえるように言った。
ツリーさんはあごに手を当て目線を下げた。
少し考えるように一拍置いてから。
「……なるほど、聞き間違いではなかったのですね」
これはあれか? 名前を呼んだら無視じゃなかったからちょっと喜んじゃったけど、俺、ツリーさんにも嫌われてる?
まあ、仕方ないか。ツリーさんに対しても今までひどい仕打ちをしてきたのだ。
となるとしくじったか。
きっと他の使用人たちと同じくこんな屋敷の外、人の見ていない場所で遭遇すれば、日頃の鬱憤を晴らすように俺はここで、こき使われ肉塊となるのを待たず死ぬ。
そう思っていると、ツリーさんはうなずいた。
「わかりました。ルカラ様のご命令とあらばお引き受けいたしましょう」
「ほ、本当ですか? ありがとうございます」
よ、よかった。死ななかった。
いや、本当によかった。
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