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誘い
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だがその人手なしに、私はつい悩み事を打ち明けてしまっていた。母親が失くなってからというもの仕事に身が入らず原因不明の微熱や下痢が続き、私は鬱かもしれないという弱みを握られていた。
二人でいたところに、ナースの、士長がやってきた。
「やあね、お二人さん、またイチャイチャしていたの?」
事情を知らない士長は噂になっている私とドクターのことをこれ見よがしに嫌そうにからかった。士長の態度から私が嫌われているのは明らかで、それは医師とベタベタするなんてというやっかみなのか私が若いからゆえの嫉妬なのかはわからないが、とにかく嫌な態度であり私は胃を痛くした。士長には霊感がないのか知らないが病室をみると、そこは湿気たがらんどうの部屋に戻っていた。何も揺れていない。風と光とり窓のついたピンクの部屋で、淡いブルーの便器が設置されている。ピンクとブルーを混ぜればグリーンで、大自然のいろは精神に良いとされているのだ。この部屋に落ち度はない。
「まったく世間知らずの盛りのついた若い子はこれだから気持ち悪い。」
捨て台詞をはいて士長は去っていった。私とて、これ以上噂が独り歩きするのは嫌だった。みな、色眼鏡でみるからだ。それにもう一つ。密かに憧れている電気工事士の業者の男性にまで、ドクターとできているなんて思われていないか不安だった。
「気にしなさんな」
ドクターがいった。
「橘くん、煮詰まってるの?だったら僕と旅行しない?ほら来週休暇をもらってS島へ行くんだよね僕」
S島と言えば東京からの観光客や他府県からの移住者が年間500人を越えると人気の島で、清々しい山や海と隣人に親切で人懐こい住民、美味しい海の幸が揃った日本海の楽園だ。私は2つ返事ではいといった。是非とも行ってみたかった。
果てしなく広い海をみたいと思った。ちっぽけな人間関係に疲れて狭いここではなく大自然に包まれたいと思っていた。看護士をしているときつい人が多いなと思う。きめられたことをきっちり守る生活に辟易していたのだ。だが私には懸念があった。
「ドクターと二人きりですか?ちょっとまずいんじゃないかしら」
「大丈夫もう一人くるよ。馴染みの店のホステスさんさ」
それはそれで、どうかと思う。ホステス?なんだかやらしい響きである。それでも、S島に行きたい気持ちは、抑えられなかった。私は天気を入念に調べた。運良くというか当たり前というか、5月の晴れに重なって天気は上場。文句無しのスカイブルーだ。
二人でいたところに、ナースの、士長がやってきた。
「やあね、お二人さん、またイチャイチャしていたの?」
事情を知らない士長は噂になっている私とドクターのことをこれ見よがしに嫌そうにからかった。士長の態度から私が嫌われているのは明らかで、それは医師とベタベタするなんてというやっかみなのか私が若いからゆえの嫉妬なのかはわからないが、とにかく嫌な態度であり私は胃を痛くした。士長には霊感がないのか知らないが病室をみると、そこは湿気たがらんどうの部屋に戻っていた。何も揺れていない。風と光とり窓のついたピンクの部屋で、淡いブルーの便器が設置されている。ピンクとブルーを混ぜればグリーンで、大自然のいろは精神に良いとされているのだ。この部屋に落ち度はない。
「まったく世間知らずの盛りのついた若い子はこれだから気持ち悪い。」
捨て台詞をはいて士長は去っていった。私とて、これ以上噂が独り歩きするのは嫌だった。みな、色眼鏡でみるからだ。それにもう一つ。密かに憧れている電気工事士の業者の男性にまで、ドクターとできているなんて思われていないか不安だった。
「気にしなさんな」
ドクターがいった。
「橘くん、煮詰まってるの?だったら僕と旅行しない?ほら来週休暇をもらってS島へ行くんだよね僕」
S島と言えば東京からの観光客や他府県からの移住者が年間500人を越えると人気の島で、清々しい山や海と隣人に親切で人懐こい住民、美味しい海の幸が揃った日本海の楽園だ。私は2つ返事ではいといった。是非とも行ってみたかった。
果てしなく広い海をみたいと思った。ちっぽけな人間関係に疲れて狭いここではなく大自然に包まれたいと思っていた。看護士をしているときつい人が多いなと思う。きめられたことをきっちり守る生活に辟易していたのだ。だが私には懸念があった。
「ドクターと二人きりですか?ちょっとまずいんじゃないかしら」
「大丈夫もう一人くるよ。馴染みの店のホステスさんさ」
それはそれで、どうかと思う。ホステス?なんだかやらしい響きである。それでも、S島に行きたい気持ちは、抑えられなかった。私は天気を入念に調べた。運良くというか当たり前というか、5月の晴れに重なって天気は上場。文句無しのスカイブルーだ。
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