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大きな戦いに挑もう

お薬をあげよう

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『…………』

「よし、ポーションの完成だ。ほら、ちょうど病気のヤツ五人分ピッタリ。えっ、お代が無い? ああ、イイってイイって──お礼はちゃんと貰っているからさ」

『…………』

 声が出せないほど、疲れているのだろう。
 きっとそれも、病気の弊害なのかもな。

 それなりに連携も取れていて、それなりな戦闘もできていた。
 だが使用可能なスキルを知っているので、何をするのかも大体の行動に想定が付く。

 なので一人で相手をしながら、病気に合わせたポーションを作っていても圧倒することができる。

 ちなみに彼は【剛健勇者】。
 いろんな意味で男らしい、そんな感じのスキルに特化した勇者だった。

「まあ、そんな性豪野郎についていくんだから、病気になるわけだな。ほら、ポーション一本でしばらくヤらなければ治る。ソイツから離れない限りは無理だろうが、それぞれ受け取っておけよ」

「ぐぅ……うぉおおおおおおおおおおお!」

「っと、まだ動けるのかよ」

 女たちの前にポーションを並べていたのだが、そんなヤりの勇者が俺の束縛から抜け出して暴れ始める。

 アレな能力だけでなく、肉体的にも頑強なためすぐに活力を取り戻したようだな。
 遠くに配置していたのだが、すぐさまこちらへ駆けつけて女たちから剥がそうとする。

「おいおい、ポーションが割れちゃうだろ。物は大切に……そう聞かなかったか?」

「黙れ! ────たちが病に罹っているはずがないだろう! 僕と────たちは愛し合っている!!」

「……へー。性事情なんかはどうでもいいんだけど、病気が他のヤツのせいじゃないって言うならお前かその周りのヤツのせいだぞ。お前だけが能力で無効化しているから、他のヤツは全員罹るんだよ」

「…………」

 言葉を失う、というか表情が抜け落ちたヤりの勇者。
 えっ、もしかして気づかなかったの……と思ったが、どうやらそうではないらしい。

 男の顔は今や真っ赤っ赤。
 怒りに震えているのか、拳からは血が滲み出ている。

「僕の……せい、だと? そもそも病気というのもお前の想像でしかない。なのに、そんなことまで言うのか? ……許せない、お前は僕を怒らせすぎた」

「なあ、診察スキルって知ってるか? しっかりと効果を発揮すれば、相手が病気になっているか分かるスキルなんだ。曲がりなりにもここに居るんだ、隠蔽や偽装を突破する程度の実力はある……で、視た結果がそれだ」

「嘘を……嘘を吐くなぁああああああ!」

「うるせぇよ、お前もヒステリー系のヤツなのか? もっと冷静になれよ。あっ、もしかして……お前病気持ちのヤツとはヤりたくないとか、そういうこと言うヤツ? だから安心しろって、ポーションをやっただろ」

 優秀な職人からコピーしてあるので、補正も凄まじくよく使っている。

 生産職系のクラスメイトから別系統のスキルも取れたので、相乗効果で俺の生産はそれなりに質のいいアイテムが作製可能だ。

 なのでちゃんと性の病気にも対応したポーションが作れたのだが……おかしいな、どうしてそこまで怒られるんだか。

「──“狂勇化ベルセルク”!」

「……うわぁ、バーサーカー感が凄い」

「グウォワァガァアアアアアアアアア!!」

「これ、止めるべき? 普通に逃げてもいいけど……ポーション割られると損だしな。とりあえず──『解除』」

 女たちに施していた拘束を外しておく。
 ゆらゆらと起き上がるのだが、皆が呆然とした表情で俺の方を見てくる。

「ね、ねぇ……本当なの? 私たちが……その、病気だって」

「このタイミングで訊くか? うーん、少し待てよ──『強くなれ』“暗黒牢ダークネスプリズン”」

 昏い、光を通さない漆黒の牢獄が、ヤりの勇者を中に閉じ込めた。
 中で獰猛な唸り声を上げているが……しばらくは出てこれないだろう。

『…………』

「そんなに驚くなよ。お前ら、アイツのあの技を知っているか?」

「は、はい。────様の“勇狂化”は、私たちに危険があるという状況下で、独りで闘う時のみ使うスキルです」

「で、それをわざわざこのタイミングで。嫌になるなぁ……ちなみに病気ってのは本当。けどポーションを飲めば、しばらくそういった行為をしないだけで治る」

 これ以上細かいことを話し、発狂されても困るので話題を切り替える。
 つまり仲間を気にする必要が無くなった、不要と認識したわけだしな。

「それで、俺をさっきまでみたいに殺そうとするか? 別にそれでもいいぞ、もう一回拘束して放置すれば殺せるし」

「ヒッ! そ、そんな、滅相もありません。貴方様が望むのであれば、どんなことでもやらせてもらいます!」

「あー、俺は嘘が分かるスキルを持っているから、気持ち悪い敬語とかは要らない。普通でいいからさ、アイツをどうしたい?」

「……違和感は合ったのよ。けど、理由が分からなかった。だからアンタには感謝してるし、アイツは許せない。協力してくれないかしら、アイツを懲らしめることに」

 素を出した女の発言に、他の三人の女たちも頷く。
 だが一人、もっとも若いJCぐらいの少女だけは俯いているだけで何も言わない。

 俺はソイツに近づき、頭を掴んで持ち上げる……そして目を合わせる。

「で、お前はどうする?」

「……あ、あの方は、わたしを助けてくれました。変な感じはしていましたが、奴隷だったときの方が苦しかった。あの方と居られるのなら、わたしはそれだけで幸せです」

「ふーん、ならとりあえず生かそうか。他の女たち、俺はお前たちを連れていく気はないから生かしておいた方がいいぞ。じゃないとこれから、他の奴らにどんな目に遭わされるか知らないし……いいよな?」

『は、はい』

 どうせならヤりの勇者は人形としてお土産にしたかったが……まあ、スキルを貰った代金と言うことで勘弁してやろう。

 それに、初めて見たリアル奴隷モノ。
 その成功者にご褒美を上げないとな。

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