催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

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 習性まで弄ると俺の精神に影響が出る……念のため(魔法知識:制限)スキルで調べた結果判明したため、とりあえず身に染み付いた動きを忘れることは止めておいた。

「ステータスは視れるか?」

「魔道具があります……これ、すご、五割も補正が入るなんて聞いたことがありません」

「魔道具便利過ぎだろ……まあ、一流の料理人と付与士に(勝手に)協力してもらったんだから当然だけどな。本当はもう少し効果を高められたんだが、今は短期間より長期間の効果を求めたから少し劣化しているぞ」

「こ、これで劣化って……」

 料理と付与魔法の両方のスキルが、異世界人産のちょいとグレードの高いモノだ。
 凡人のスキルより、派生発現率が高いらしい……そこまでコピーできたかは微妙だが。

「さて、そろそろ行くとしよう。サリス、お前は行くか?」

「えっ? あの、えっと……ど、どこに?」

「そりゃあもちろん、ここの外だ。強い奴らばっかりだし、危険だからここで休んでいてくれても構わない……風呂もあるぞ」

「お、お風呂もですか!?」

 地球における俺の住まいを再現したのだ。
 当然、日本である以上風呂などの設備は大半が完備しているだろう。

 ……というか、無かったら妹が俺に作れとでも言っていたかもしれない。

「ああ、石鹸やシャンプーとかもちゃんと用意してあるから、体を綺麗にしてこい……その方が気持ちいいだろう?」

「…………そ、そうさせてもらいます」

「いくつか特殊な魔道具が有るんだが……使い方、先に聞いておくか?」

「あっ、大丈夫です。私、なんとなく触れた魔道具の使い方が分かりますので」

 チートっぽい能力、やっぱりあったな。
 問題なさそうなので風呂のある部屋を教えると、サリスはすぐにそこへ向かう。

「やっぱり女だな。使い方はサンプル用に容器に書いてあるし、まあ困ったらアイツがどうにかするか……さて、俺も行くとしよう」

 現在もなお、俺の分身たちがさまざまなスキルの熟練度を上げて習得を目指している。
 還元を行うためにも、一度サリスから離れた所で合流しなければならない。

 ──すべては俺の楽のため、アイツらの努力を体験させてもらおうか。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 合流するのは拠点から少し離れた暗い森の中……集まるのは俺と寸分違わない姿をし、血に塗れた分身体たち。

「あれ、数が減ったな?」

「死んだに決まっているだろう」「だって俺だぞ、回復量に制限もあるのに耐えられるわけないだろう」「ああ、ちょうど死んでいるところを見たぞ、何でも斬る剣にバッサリ斬られて……粒子になって消えてたな」

「そうか……まあ、俺だしな。それじゃあ全員還元されて、サクッと熟練度をくれ」

『そうだな、面倒だしさっさと休みたい』

 こういうとき、分身体が反乱を起こす……なんてことは起きない。
 元は俺なのだから、考えることは同じ……面倒事を何よりも避けたいのだ。

 分身体の一人が語ったように、体が粒子となって散布されていく。
 ただ違うのは、空気に溶けるのではなくそれがすべて俺に吸い込まれていく点だ。

「うわっ、どんどん頭に知らないことが入ってくる……これ、並速思考スキルを持ってなかったら廃人になってたんじゃないか?」

 一瞬だけ、そうではない状態で入ったきた数秒の経験で、頭が破裂しそうなほどの痛みに苛まれた。

 催眠によって緊急事態に反応して暗示されたプログラムが起動、並速思考もその中に含まれており、そんな膨大な経験を処理する。

「……俺って、死にかけの状態になるといろいろと頑張れるんだな。うん、やっぱり人間やればできる生き物なんだ」

 死にたくないと足掻き、どうにかここまで生き延びてきた分身体たち。
 彼らはやる気のない俺から生まれたはずなのに、生にしがみ付きここまで来てくれた。

 ……面倒だって消えたはずなのにな、状況が全然違うからか、もうテンションが下がり過ぎてどうでもよく思ったからか?

「って、スキルもいっぱいだ。コピーしたスキル以外にも、足掻いて派生スキルを得ているみたいだな……死にかけだと、何でもしようとするのがよかったのか」

「──そうなんじゃないか? というか、お前それって……その流れは……」「嫌なんですけど、死にたくないんですけど」「何か別の方法を探そうぜ……なっ?」「…………ダメだな、こいつ考えるのも面倒臭そうだぞ」

「うん、そういうことで再び出発だ。それぞれスキルを一つ選んで、連戦で疲れているだろう奴らから報酬を掻っ攫おうぜ。料理のバフもあるんだ、もう少し粘れるだろう?」

 俺が料理を長時間持つようにしたのは、そのためだ。
 いつまた還元できるか、分からないからこその選択だな。

 分身体はそれぞれ散り散りになり、再び俺の下から誰もいなくなった。
 新たなスキルを共有したうえ、それぞれ強力なスキルを得た……死亡率は低下する。

「俺もそろそろ行くかな? 女の風呂が長いとはいえ、さすがに終わっているだろうし」

 お風呂でばったりイベント……なんてこともないだろうし、まったり歩いて帰ろう。
 この辺りに誰もいないことは確認した……分身体はこういう使い方もできるな。

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