97 / 121
外国へ遊びに行こう
提案をしよう
しおりを挟む弱り切ったアキラに催眠を施して、ある意味奴隷と同じような状態にしておいた。
もともと奴隷だった者たちは、今回の出来事を経て第二王女に非常に感謝している……というか、そう精神を誘導しておいた。
「な、なあイム、こういうときってどうすればいいんだよ」
「とりあえず国に来い、養ってやるとか言えばいいんじゃねぇの? 人材はどれだけ居ても足りないし、見た限り選り好んだからか優秀な奴らばっかりだ。このまま居ても何かあるだろうし、家族ごと連れてってやれよ」
「そ、そういうものなのか?」
「騎士団でも作っておけよ。大好きな姉妹を守れるような騎士でもさ」
奴隷たちはそれぞれ第二王女へ名を名乗ると、ぜひとも私をと騎士っぽい忠誠の姿勢を取りだす……容量がいっぱいだし、どうでもいいので名前は忘れておく。
「それじゃあ、俺は散歩に行ってくるからあとはよろしく」
「お、おい! 何をすればいいんだよ!」
「ソイツにどうしてほしいか言えば、明日から真面目に働いてくれるさ。滅ぼすのは簡単だが、回っている利益をぐちゃぐちゃにすると街の奴らに影響があるからな。やりたいことがあるなら、どうぞご自由に」
「あ、ああ、分かった……のか?」
俺は知らないが、どうせ王からだいたいの指示があるのだろう。
それに任せおけばどうとでもなるので、とりあえず時間潰しにふらふらと彷徨っていても問題ないさ。
奴隷として使役していたものは、首輪を介して干渉すればすぐにどうにかなった。
面倒臭いことを可能な限り回避している俺ではあるが、避けたが故に面倒なことになるのが分かっているなら、活発的に動く。
必要な労力を最小限にする、それこそが真の面倒臭がりというモノだろう。
溜め込んで一気に消化する、そんなことができるのはユウキみたいな奴だけだ……凡人はチマチマとやっていくことこそがベスト。
「──やっぱり隠していたか」
だからこそ、火種は取り除くべきだ。
異世界転移者あるあるを思いっきりやっているアキラなので、どうせそんなことだろうと思っていた。
「そういえば、奴隷に魔力透過なんてスキルの持ち主が居たな……なるほど、それがあれば効果範囲に入っていれば同じように潜れるようになるのか」
イメージ的に狂気の研究は、なぜか地下で行われる。
情報隠蔽などの観点からそうなっているのだろうが、魔法があるこの世界ならどこでやろうと変わらないだろうに……。
エレベーターや普段使われている階段からでは向かうことのできない、道なき道を通ることで辿り着く地下室。
そこでは首輪を嵌めた研究者たちが実験を行い、何かしらのレポートを書いている。
「──『隷属』」
奴隷に関するスキルや魔法をセットしたこのワードによって、彼らの首輪は一度解除されたうえで主の部分を俺に書き換えられた。
外すと何が起こるか分からないので、とりあえず最初はこうしておく。
「まず、『受け入れろ』。次に『動くな』。いいか、まずお前たちにこの研究をさせていた男は破滅した」
『…………』
「まあ、お前らがどんな気持ちでこの研究をしてたか知らないが、とりあえずこのままの体制で研究が続くことは無い。──というわけだ、『動くことを許可する』」
『ありがとうございます!』
許可した途端、いきなり感謝されるもんだからさすがに少しだけ驚く。
話を聞いてみたところ、全員がさまざまな手段で嵌められて捕らえられ、強引に研究をさせられていたらしい。
「行く当てがない奴は、あとで良い場所を紹介してやるからいっしょに来い。そうじゃないヤツ……家庭がある奴は連れてってやるから帰れ。協力してやるから、言えば叶える」
「ほ、本当に帰れるのですか?」
「嘘を吐いて何の得になるんだよ。さすがに行き先がどうなっているかまでは保障できないが、安全に送ってやることだけは約束してやろうじゃないか」
「あ、ありがとうございます!」
感謝されるついでに記憶処理云々を話したのだが、むしろ忘れたいとなおのこと感謝されてしまった……アキラ、どんだけ研究を押しつけていたのやら。
◆ □ ◆ □ ◆
正式な手順を踏んで第二王女を外へ送りだしたうえで、王城へ送り届けたのち、少し放れた場所にある草原を歩いて星を眺める。
「綺麗な星だな。前に報告した時にここに居たから来てみたが──理由でもあるのか?」
「あの街は明る過ぎます。自然の輝きは人工の光に淘汰され、小さな輝きなど私たちの目には入らなくなっています」
「それは俺たち異世界人の居た世界でも似たようなものだ。星の光を観れるのは、もう人族が居ない山奥とかだからな」
いつの間にかそこに居た少女こそ、俺があの街に派遣していた密偵である。
アキラに関する情報も、だいたい彼女が集めてきたものなのでとても役に立った。
「お褒めに与り光栄でございます」
「とりあえず、ご褒美だな。普通にここで休暇を取るのか、それとも屋敷でしばらくまったりするか……どっちがいい?」
「──屋敷でお願いします」
「即答だな。そこまで人気があるのか」
まあ、たしかに俺が使うこともあるので衣食住の質向上は常日頃から心がけている。
出張先で環境に慣れず、住み慣れた場所に帰りたくなるようなものかもしれない。
「あとは──これを渡しておく。アキラの能力を参考に、商人を相手に戦えるように準備した魔道具だ」
ついでにアキラの研究結果も使えるよう、不要と言った者から奪った記憶を突っ込んであるので、交渉(物理)にも対応できるようにしてある。
「──ッ」
「おい、どうした」
「…………」
「いや、なぜに気絶?」
前にもこんなことが有った気がする。
アキラの能力を再現したってのが、もしかしたら不味かったのかもしれない。
悪いことをしたな、立ったまま気絶するほど嫌だったとは……。
──さて、今度こそゆっくりしよう。
0
お気に入りに追加
152
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる