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外国へ遊びに行こう

廊下で待とう

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「ふぅ……ようやく一息吐ける」

 部屋に入った俺だが、二人っきりで話がしたいというアキラというクラスメイトの要望によって、あっさりと廊下に立たされた。

 だが俺も負けてはいられない、許可も取らずに元素魔法で椅子を創ってそこに座る。

「あ、あのー。アキラ様のご許可も無くそのようなことをされると……」

「ん? ああ、『許可なら貰ったよ』。だから大丈夫だ」

「へ? そ、それならばよろしいのですが」

「それより、お茶とお菓子でも貰えない? 少しお腹が空いちゃってな」

 もちろん許可など貰っていないので、催眠で誤魔化しておく。

 これぐらいの簡単なヤツなら、別に困らないし……何より立ったまま待機するなんて面倒なこと、ゴメンだしな。

「お、お待たせしました」

「ああ、ありがとう。そういえばこの部屋には何も届けないのか?」

「アキラ様はご自身で客人を迎えるのを好んでいるので、私たちには出番が回ってこないのです。そのため、こうしてご客人の護衛などの方々をもてなすのが私たちのお役目でございます」

「ふーん、そうなのか」

 地球でのことはまったく覚えていないし、そのときとの差異を比べることはできない。
 だがたしか、アイツのステータスにはそんなスキルも備わっていたな……。

「ところでメイドさん、アンタはアキラとどういう関係なんだ? もともとの学友として少し気になってな」

「……私は、借金のカタに奴隷へ堕とされそうになっているところを、偶然アキラ様に救われたのです。その恩義に報いるべく、こうして仕えております」

「そうか……イイご主人様だな」

「はいっ! ……あっ、すみません」

 ふむふむ、借金ねぇ……。
 利息に押し潰される悪徳の高利貸しに引っ掛かったのか、それとも単純に金の周りが悪かったのか。

 それが気になって、訊いてみると──

「『レイブンワンワン』という、お金を誰でも借りられる施設ができたのです。文字が読めない平民にも、しっかりと答えてくれる場所でして……ですが、一日後にその借金が増えていると知らされました……」

「……カラス金、一一の金利かよ」

「な、何か知っているのですか?」

「いや、名前だけだ。けどそんな場所、アキラがいつかどうにかしてくれるだろ」

 そう話すと、またメイドは明るくなりきっとそうだと言う。
 そしてこれまでアキラがやってきたこと、そのすべてを語り始めた。

 ──さて、自動モードに入るか。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 イムが居なくなった部屋で、顔を合わせて一人の男と話すミネルバ。
 慣れない態度を取らなければいけないせいか、その緊張はピークに達していた。

「改めて。イム・トショクのクラスメイト、異世界人の『アキラ・ナイトウ』です」

「ミ、ミネルバ・バスキ……ですわ」

「そう固くならずとも。今、お茶を入れますね。ついでにお茶菓子も」

「へっ?」

 本来、商会の長はそういった雑事を下の者にやらせるもの。
 しかしアキラはそうではなく、自らやると言って席を立つ。

「ああ。すみません、説明もなく。実は私、こう見えてもお茶を汲むのが趣味でして……ついでにそれに合うお茶菓子を作るのにも、最近嵌っているんですよ」

「は、はぁ……」

「ですので──『気にしないでください』。『何もおかしなことではありませんから』」

「わ、分かった……分かりました」

 緩んだせいか素の口調が出てしまったことに気づき、慌てて改めて了解を口にする。
 その様子を見たアキラは、ミネルバに見えない角度でニヤリを微笑んだ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「──とまあ、こんな感じか」

 メイドさんは仕事があるとかで、もうここにはいない。
 記憶の処理も済ませたので、俺のことはあまり覚えていないだろう。

「しかしまあ、やるもんだな。初期のスキルだと……たしか、リュウハン君とやらが魅了スキルの持ち主だったっけ?」

 まあ、つまりはそういうことだ。
 第二王女には説明していなかったが、アキラは黒でしかもどす黒い。

 言ったことは本当だが、別に騙された被害者というわけではないのだ。

「異世界行ったら成り上がりってか? のんびりスローライフを目指すならともかく、どうして自分が勝ち組って思っていられるのか俺にはさっぱりだよ」

 ちなみに俺はスローライフではなく、奴隷使いで隠居生活の方がいいと思う。

 衣食住は整えるし、金だって払う……迷宮に行かせてその分の金を手に入れらさせれば充分な利益が手に入るだろうし。

 俺自身、コピーしたスキルを使えばいくらでも儲けることができる。

 回復魔法で癒したり、錬金術で価値のある物を売り捌いたり……それこそ、魔物を殺し尽くすのだって簡単だ。

「面倒なことは避けた方がいい。こんな当たり前のこともできないヤツが、成り上がれるわけないのにな」

 この世界で得たスキルやら職業やらを過信しているのだろう。

 まだ寝ていないので確認はしていないが、おそらく何かしらの力をすでに手に入れていることは間違いない。

「というわけだから……俺が寝ている間は、代わりに守っておいてくれ──『お休み』」

 誰に伝えるでもなく、ただ独り言のように呟いて瞼を閉じる。
 さてさて、どんなお土産をくれるのか……今から楽しみだよ。

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