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外国へ遊びに行こう

冒涜しよう

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 あれから数日経っているものの、フレイアは未だに朝練に参加している。
 魂魄を剥きだしにして運動をさせた結果、ゲームで言うところの努力値が磨かれた。

 長距離を走っても息切れしづらくなり、あとに行う戦闘訓練にも参加するようになる。

 レクリエーションを経て、奴隷たちから何かを教わったのだろう……まあ、それなりの動きができていた。

『ふっ、はぁぁっ!』

『最後まで動きを捉えてください! 攻撃は避けきるまで、油断してはいけません!』

『はいっ!』

 なんだかバトル物の訓練シーンのような光景が、俺から離れた場所で行われている。
 視覚と聴覚を強化し、思考の片隅でその状況を把握していた。

『時間終了です。フレイア様、時間いっぱいまで戦えるようになりましたね』

『護衛が来るまでの時間、耐えられますね』

『はい。これならば、イム様がきっとお助けになってくれますよ』

 どうして俺の名前が出てくるのだろうか。

 たしかに、第一と第二王女が死んだうえでクーデターでも起きたなら、助けて俺の自堕落ライフの協力をさせるために生かすとは思うが……あのメイド──リディアが居るのだからそれはありえないしな。

「って、もういいか」

 強化していた感覚を元に戻し、自分に起きている状況に向き合う。
 視界の先には、魔法で生みだした人造の魔物たちが『あー、うー』などと発している。

「暗黒魔法“死屍傀儡ネクロスドール”……材料が必要なのは問題だが、条件を満たせれば有意義に使える魔法だな。あの魔王が使うかは別として」

『あー、うー』

「神聖魔法──“聖浄領域サンクチュアリ”」

『あぁああああああ、うぅうううう!』

 発動した魔法は、俺を中心として地面を□色に染め上げていった。
 白の矢の原型であり、聖人たちにのみ与えられた強力な破邪の力。

 その光に当たられた魔物たちは、未練も怨念も関係なく強制的に浄化させられる。

「人によっては、幸せそうに成仏させられるらしいけど……俺には無理だな」

 少し前に従えたメィシィからの情報だ。
 暗黒魔法は使えないが、死霊魔法が使えるので少々実験してもらっていた。

 そしてその結果、人格やどう浄化したいか強く意識することで変化が起きることを知ることができた。

「どいつもこいつも恨んでるな……そもそも素体が最悪だったからか?」

 山賊、盗賊、etc……しっかりと正当防衛に則って屠った奴らを材料に先ほどまで居たアンデッドたちは生みだされていた。

 俺を殺したい、とかもっと欲望を叶えたいとか言うどす黒い願いを洗脳で高め・・・・・、現世に維持させていたんだがな。

「というか、霊体にも死体にも効いたんだよな……普通の催眠術とは大違いだ」

 やはり、催眠術ではなく催眠魔法という点が大きいのだろう。

 魔法はこの世界において、異世界ににすら干渉できる概念──ならば死体や魂程度、簡単に弄れるのだ。

 だから、その気になれば幸せな記憶でも見せて成仏させることは可能だ……設定が面倒なので、やる気は絶対に湧かないだろうが。

「誰か──」

「お呼びでしょーか」

「……そうだな、まずこの灰を集めて神聖魔法について研究を。死霊に関するデータも同時並行でやっておいてくれ。死者蘇生は、俺にとって重大なことだ」

「かーしこまりましたー」

 身体同様小さな札に『アスル』と書かれた妖精の奴隷に、そう頼んでおく。
 指示を受けると、現れた時と同じように空間魔法ですぐに情報伝達を行ってくれる。

「報酬のためとはいえ、かなり酷使している気がするな……便利すぎるからか?」

 空間属性を持つ奴隷は貴重で、かなり高額だったという記憶がある。

 しかも妖精族、まあ魔力が高いから遠くまで転移できるとあれば、普通の奴隷を何人買おうと足りないような額だった気がした。

 だが、すべては楽に生きるため。
 金はいくらでも稼ぎようがあったので、経済に影響の出ない範囲で儲けてどうにか買った気がする。

「ほとんど覚えてないけど」

 すべてが曖昧なのは、似たようなことが多かったうえに覚える必要性を感じていなかったからだな。

 一言で纏めれば『奴隷を買った』、ただこれだけで済むんだし。



 さて、そうして今日も今日とで朝練で時間が潰れていく中、終了時刻と同時にフレイアがこちらに近づいてくる。

 これはいつものことなんだが……とても嫌な予感がして、空間魔法で脱出の準備を整えようと──

「イム様、おはようございます」

「リディアも来てたの? イム、おはよう」

「……おはよう」

 堅苦しい挨拶が無くなったフレイアも、その存在に気づいたようだ。
 謎に満ちた、この国最強の存在──王家に仕えるメイドであるリディア。

 今日はなぜか、彼女がここに現れた。
 なので空間魔法は強制終了させられ、威圧に似た脅しによって身動きが取れずにいる。

「イム様、国王様よりお呼び出しです」

「父上が?」

「はい。何やら他国で、怪しい動きがあるとのことでして……調査と同盟締結を兼ねて、王女様一人・・・・・と共に行ってほしいと」

「……マジか」

 単独であったなら、何をしても自由だっただろうに……まあ、できるだけそうするが。

「その一人って、誰なんだ?」

「謁見する前までに、イム様が決めるようにとのことです。──では、また謁見の際にお会いしましょう」

「はっ? ちょ、待──」

 俺の声などスルーして、リディアはさっさと王城へ消えていった。
 残るのは虚空に伸びた虚しい手、そしてこちらをジッと見つめる王女の視線だけだ。

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