76 / 124
外国へ遊びに行こう
忠誠を誓わせよう
しおりを挟む「……やっと終わった」
屋敷を丸ごとでいいならすぐに済んだことだったが、あえて手間をかけることで後に楽ができるように尽力した。
「さて、残された諸君らには、二つの選択肢がある。俺の言う通りに従い、力を置いて成仏する。それか霊体のまま俺に尽くすかだ」
地下室から連れだした幽霊たちを広間へ並べ、同じく並べておいたこの屋敷の幽霊たちといっしょに交渉を行う。
「肉体、というか憑りつける物は随時用意しておく。誰かに会いたいというなら、できるだけやってやろう。俺が欲しいのは、従順な配下だ。だから、成仏したいというならそうすればいい……できないなら、送ってやる」
少し神聖魔法の気配を漂わせれば、この場の幽霊たちに怯えが感じられる。
ため息を吐き、解除して逆に死霊魔法を発動して安定化を促す。
「……感覚で分かると思うが、今のお前たちは物理干渉が可能になっている。少なくともこの屋敷に居るのであれば、それが永遠にできると思え」
『あ、あの!』
「ああ、どうした?」
子供の幽霊が、手を挙げる。
ちなみに、俺は二階から下へ向けて叫んでいるため、子供は意思表示のためにふわふわと上に飛んでいた。
『お、お母さんに会わせてくれますか?』
「……お前の母親次第だ。見た目から魔族なのは分かるが、母親がこの世界にまだ居るかどうかが不明だ。居るなら、生きていようが死んでいようが会わせてやる……お前の質問への答えは、これで充分か?」
『は、はい!』
死者とは停滞している存在だ。
餓えることも、老いることもなく、自身が抱いた遺志だけで漂う死した生命体。
だからこそ、俺の言葉は彼らは響く。
すでに止まった彼らの人生は、俺との邂逅によって強引にその針を動かされる。
「過去を引き摺るのであれば、それを手伝おう。捨て去るのであれば、それも手伝おう。どのような願いであれ、誓うのであれば俺は叶えてやろう……さぁ、忠誠を誓え」
子供への対応が、彼らをより強く導く。
もちろんやらせではないし、子供の願いはできるだけ叶えるように尽力するつもりだ。
……嘘偽りを言う必要が、そもそも俺にはないからな。
『──はい!』
だからこそ、この結果は分かっていた。
◆ □ ◆ □ ◆
それからは忙しい日々を過ごしたものである……主に、幽霊たちが。
屋敷を綺麗にさせる人材は、腐るほど存在しているわけで。
屋敷の主が殺しまくった人材は、今やほぼすべて俺の支配下に収まっている。
数はだいたい数百、屋敷の大きさからするとそう多くは無い……悪霊として暴走していた奴が多かったからな。
「しかし、まさか奴隷がいないとは……」
そう、簡単に人材を得ようと奴隷を期待していたのだが、まさかの店が存在しないとのことだった。
代わりにフリーターの真似事をする、いわゆる人材派遣の店はあるのだが、それでも永久の拘束は難しそうなので止めておく。
「というか、魔族にはいないのにアイツらはまだそれを許容するんだよな。あの国はともかく、召喚した国はそういう用途だろうし」
国同士のしがらみは面倒で、こういう店をいくつ出さなければならない的な決まりまで存在するらしい。
しかも、その商人は商人ギルドが決めるため、王族でも絡めないと……本当に、誰かの欲望が叶えられる世界だよ。
「まあ、一部は成仏したけど……それでも不満が出てこないからいいか」
ちなみにだが、例の子供幽霊は成仏することなく忠誠を誓っている。
母親は人海戦術で見つけだし、すでに再会している……母親もついでに忠誠を誓わせ、霊体ではできない仕事をさせていた。
成仏した奴はお土産を残して、輪廻の環へ向かったはずだ。
実際にはどうだか分からないが、仕掛けを施した奴がどうなったかが見物である。
『ご主人様、お時間です』
「……ああ、もうそんな時間か」
『はい。魔王様がお呼びですよ』
また名前を憶えないとな。
実体のある奴隷と違い、紙を貼って確認するわけにはいかないし……早く受肉させるアイテムを用意したいよ。
俺を呼ぶ女性の霊体は、顔がよかった結果惨殺された女の霊だ。
メイドとして短期間とはいえ働いていたので、そのまま仕事を継続してやらせている。
「そうか……なら、もう少し待たせてもいいかな? 正直、会うのも疲れるし」
『ダメです。ご主人様は、魔王様と並び立つ存在なのですから、もっと上位者だということを表明なさりませんと』
「えー」
『えー、ではありません!』
ただ、従順すぎる配下が欲しいわけではないので発言の自由は許している。
あくまで自由意思で、俺に従ってもらいたかったからな。
「はいはい、分かりましたよ。行けばいいんだろ、行けば」
『もちろんです』
「ハァ……。いちおう訊くけど、魔王から何も貰ってないよな?」
『…………もちろんです』
嗚呼、すでに買収されていたようだ。
俺が甘すぎるのが悪いのか、それとも悪魔染みたあの魔王が悪いのか。
「まあ、そこはどうでもいいか。それじゃあ行ってくるから、留守は頼むぞ」
『はい、行ってらっしゃいませ』
何も無ければいいが……絶対あるよな。
0
お気に入りに追加
155
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ゴミスキル【スコップ】が本当はチート級でした~無能だからと生き埋めにされたけど、どんな物でも発掘できる力でカフェを経営しながら敵を撃退する~
名無し
ファンタジー
鉱山で大きな宝石を掘り当てた主人公のセインは、仲間たちから用済みにされた挙句、生き埋めにされてしまう。なんとか脱出したところでモンスターに襲われて死にかけるが、隠居していた司祭様に助けられ、外れだと思われていたスキル【スコップ】にどんな物でも発掘できる効果があると知る。それから様々なものを発掘するうちにカフェを経営することになり、スキルで掘り出した個性的な仲間たちとともに、店を潰そうとしてくる元仲間たちを撃退していく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クモ使いだとバカにしているようだけど、俺はクモを使わなくても強いよ?【連載版】
大野半兵衛
ファンタジー
HOTランキング10入り!(2/10 16:45時点)
やったね! (∩´∀`)∩
公爵家の四男に生まれたスピナーは天才肌の奇人変人、何よりも天邪鬼である。
そんなスピナーは【クモ使い】という加護を授けられた。誰もがマイナー加護だと言う中、スピナーは歓喜した。
マイナー加護を得たスピナーへの風当たりは良くないが、スピナーはすぐに【クモ使い】の加護を使いこなした。
ミネルバと名づけられたただのクモは、すくすくと成長して最強種のドラゴンを屠るくらい強くなった。
スピナーと第四王女との婚約話が持ち上がると、簡単には断れないと父の公爵は言う。
何度も婚約話の破談の危機があるのだが、それはスピナーの望むところだった。むしろ破談させたい。
そんなスピナーと第四王女の婚約の行方は、どうなるのだろうか。
ボッチはハズレスキル『状態異常倍加』の使い手
Outlook!
ファンタジー
経緯は朝活動始まる一分前、それは突然起こった。床が突如、眩い光が輝き始め、輝きが膨大になった瞬間、俺を含めて30人のクラスメイト達がどこか知らない所に寝かされていた。
俺達はその後、いかにも王様っぽいひとに出会い、「七つの剣を探してほしい」と言われた。皆最初は否定してたが、俺はこの世界に残りたいがために今まで閉じていた口を開いた。
そしてステータスを確認するときに、俺は驚愕する他なかった。
理由は簡単、皆の授かった固有スキルには強スキルがあるのに対して、俺が授かったのはバットスキルにも程がある、状態異常倍加だったからだ。
※不定期更新です。ゆっくりと投稿していこうと思いますので、どうかよろしくお願いします。
カクヨム、小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~いざなわれし魔の手~
高見南純平
ファンタジー
最弱ヒーラーの主人公は、ついに冒険者パーティーを100回も追放されてしまう。しかし、そこで条件を満たしたことによって新スキルが覚醒!そのスキル内容は【今まで追放してきた冒険者のスキルを使えるようになる】というとんでもスキルだった!
主人公は、他人のスキルを組み合わせて超万能最強冒険者へと成り上がっていく!
~いざなわれし魔の手~ かつての仲間を探しに旅をしているララク。そこで天使の村を訪れたのだが、そこには村の面影はなくさら地があるだけだった。消滅したあるはずの村。その謎を追っていくララクの前に、恐るべき魔の手が迫るのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる