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外国へ遊びに行こう

転送されよう

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「──その台詞セリフは俺のものだよ」

 面倒なことをしやがって。
 王は俺を国に縛る鎖を用意したいらしく、娘をそれに使おうとした。

 まあ、三人とも俺に好意があるわけじゃないし、嫌われてるから問題はないけどさ。

「俺は人類の味方じゃないし、誰かのために動こうとも思ってない」

 諦めて立ち止まった、だからここに居る。
 やることなすことすべてが面倒で、それでも楽をしようと仕方なく動いているだけだ。

「しかし、結婚ねー。男なら大賢者を目指す方が夢があるよな」

 もしかしたら、スライムに転生してチートライフになるかもしれないし。
 何より俺みたいな奴に惚れるって……かなりヤバくね?

「自覚はあるんだぜ、他人を洗脳して扱き使うクソ野郎だって……まあ、変わろうとする気は微塵も無いけど」

 有効に使えるものがあるなら、使った方がいいだろ。
 あらゆる手を許容して、この世界で贅沢三昧をする……それこそが俺の目的だ。

「そのためにはまず、確実な安全を確保しなければならない──地球人は召喚した国の魔法が洗脳中、これはパス」

 俺がどうこうする以前に、なってしまったものだからしょうがない。
 せめて、俺の肉壁になることを誓わせておけばよかったな。

「派遣された国は第二、第三王女が俺の安住について約束をしてくれている……第一のシスコンが何をするか分からないが、そこはゴリ押しでどうにかしよう。」

 王子も居るのだが、あちらはあちらでしっかりと俺が住むことに利益があると分かっていらっしゃるので問題ない。

 あとは力も知恵もある七面倒なシスコンのみ、どうやって解決するかだな。

「そして最後に一つ、俺の平穏を邪魔する輩が……これか」

 ポツンと置かれた迷宮。
 あまりにも小さく、小迷宮の中でもかなり階層が少ないのが入り口から見て分かる。 

「おじゃましまーっす──『検索』」

 すぐに中を確認して、進んでいく。
 小迷宮らしく魔物は弱いが、別々の種族が連携していることから迷宮だとしっかり認識されたのだろう。

 弓でパパッと屠り続け、三階層に行く頃にはそこが終点となる。
 そこにはこれまたイケメン……チッ、イケメンの額に角、そして髪色を紫に染めた男が黒い騎士のような恰好をして立っていた。

「──やっと見つけた。今回の奴は、敵意があるかないかどっちだ?」

「お待ちしておりました、イム様。魔王様より送られた使者でございます」

 うんうん、バッチリ洗脳対策をしているようで関心関心。
 それをしないぐらい兵を駒にしている王様だったら、もうどうしようかと思ってたよ。

「それで、ここから中継で会談か? それともどちらかがどちらかの領土に行くか」

「……転送陣を用意しておりますので、イム様に魔王様の下へ向かってもらおうかと」

「まあ、アポを取ったのは俺の方だしな。座標とか全部貰うけど、本当にいいのか?」

「それよりも、魔王様が外に出ることを避けたいので問題ありません。イム様とであれば友好的な関係が築ける、魔王様はそうお考えでございます」

 自身の配下を洗脳する奴を、いったいどうやったら信頼できるのだろうか。
 感性が違うのか? まあ、俺と妹も考え方が違ったぐらいだから同じようなものだな。

「分かった、それじゃあ案内してくれ」

「畏まりました。では、こちらへ」

 案内された場所には、複雑な術式が拵えられた魔法陣が置かれている。
 すぐに見て分からない高難易度のものなので、何かしら特殊な効果があるのだろう。

「へー、これが転送陣か」

「はい。魔族製のものです」

 すぐにその上に乗ると、隣でブツブツと詠唱を始める魔族。
 それを耳コピして憶えようとすると、転送陣が輝いて──俺たちはその場から消える。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 光が収まるとそこは、少しおどろおどろしい魔力が漂う森の中だった。

「……どうして、森の中なんだ?」

「ここは『迷いの森』とも呼ばれていて、特別なアイテムを持たない者がこの近くへ転移で向かおうとすると、強制的に介入してこの場へ送るようになっているのです」

「つまり、俺が居るからそうなったと」

「いえ、今回は私も持ち合わせておりませんので……手間を掛けてすみません」

 俺が洗脳対策を突破した際の時間稼ぎか。
 ここから遠くにそびえ立つ居城まで、まあずいぶんと時間をかけられそうだしな。

「俺があそこまで飛ばしてやろうか?」

「……できるのですか?」

「まあ、できるにはできるが……止めておこうか。何が相手の顰蹙ひんしゅくを買うのか、分からないもんだしな」

 少なくとも洗脳は嫌われただろう。
 使い方を変えれば、強靭な兵士を作ることもできるんだがな。

「責任を持って、ご案内しますので。イム様は、弓をお使いになられるんですよね?」

「ああ、そうだが」

「……先に申しておきますと、この森には掟がありまして」

「掟?」

 聞いてみれば、何やら神の加護を受けた特殊な獣──神獣が居るらしい。

 魔族に協力するその神獣を攻撃するのは危険らしく、決して弓を引かないことを誓わされてしまった。

 また別の機会に会いに行ってみよう。

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