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DIY、高みへと挑む
違法侵入者 その25
しおりを挟む影の空間に引き摺り込んだカルマと共に、のんびり話し合いを継続中。
地上では亀たち相手に、『AAA』の面々が激闘を繰り広げている。
《旦那様、ご報告が》
(……ん、何か分かったか?)
《一つ、重要なお知らせが。旦那様の目の前に居るカルマ……いえ、カルマを名乗る休人についてです》
(…………マジか、分からなかったのか)
分からないということが分かった。
これが意外と厄介──少なくとも、確実に『プログレス』は移植されていないな。
運営側との取引もあり、ある時期を境に休人たちには強制移植の仕様となっている。
だがそれ以前から[ログイン]している休人は、選択の自由があるのだ。
無論、例外というか手順を踏めば移植した『プログレス』を外すこともできる。
じゃないと、権能云々などで星々とかなり揉めることになるからな。
目の前のカルマ(仮)もまた、合法か非合法かはともかく『プログレス』が常に付いている状態でないことは間違いない。
《所持はしております。ですが、旦那様と同じ状態となっています》
「……カルマさん、参考までにお聞きしたいのですが。貴方のようなオーナーになれるような方って、どういった『プログレス』を発現されているのですか?」
「…………すみません、言えません」
《──本当のようです。保有自体は肯定しておりますが、それを語ることを禁じられているようです》
俺と同じ、つまりアイテムとして持ってはいるもの装備はしていないということ。
メリットもデメリットもあるが、この場合はそれが俺から情報を守っているな。
いちおう、デメリットとしては装備補正が発生しないことが挙げられるが……ここに来てから戦っている姿を見ていないし、それが不要なビルドなのかもしれない。
「こちらこそすみません、突然このようなことを言って混乱させてしまいましたね。ただ少し、気になりましてね……私と同じ、移植していない方は初めて見たもので」
「えっ? あっ……本当だ」
「おや、見たことが無い? いつだったかのアップデートを境に、誰も彼もが付けた状態で始まるようになったのですが」
「は、はい……そう、でしたね……」
《──嘘と言うほどではありませんが、肯定ではありません。あえて言葉にしていない、先ほどの禁忌事項による強制とは違うようですが……少なくとも、初期[ログイン]は仕様変更以降でしょう》
禁じられているやら禁忌事項やら、不穏なワードを挙げる『SEBAS』。
まあつまり、そういうことなのだろう……上位存在による干渉、そのせいか。
この話をこれ以上突いても、出てくるのは蛇ではなくもっとヤバい存在。
話題を切り替えよう──差し当たっては、決着がつきそうな地上の件で。
「こほんっ。そろそろ終わりますね……まさか、レベル10を引き出すとは。ああ、ご存じかもしれませんが、『超越者』が相手だろうと条件付きで勝てる強さなんですけど」
「『超越者』って……あの、公式チートとか言われている人たちのことですか?」
「ズル、ではなく常識外れ、という意味であれば間違いありません。この星を護る、そのための力はどれだけあっても足りません。現にそんな強さがあっても、貴方がたには敵いません」
「…………なんだか、すみません」
《本心から謝罪をしております》
うん、やっぱり自分からなりたくてトップになっているとは思えないんだよな。
……事情は話せないっぽいし、ここでの会話はそういった意味では無意味だ。
そろそろお開きにして、後でゆっくり考える時間を設けよう。
──カルマに見えない角度で指を動かす、それだけでどんでん返しの開幕だ。
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