虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、とにかく戦い続ける

特殊耐久サバイバル部門後篇 その44

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 総力戦がついに始まる。
 逆侵攻を始めた参加者たち、そしてそれに手を貸す逸脱した連中。

 四つの初期地点から中央を目指し、立ちはだかる複製魔獣やその因子を取り込んだ裏切り者たちを突破しなければならない。

 そんな敵役サイドにも物語はある。
 決死の覚悟で挑む彼らに、俺は優しい嘘を吐くことしかできない……生還できる者は、居ないのだから。

「──と、いうわけでピンチですね」

「ええ。まさか、一日も持たずに全滅してしまうなんて……予想通りでしたが」

「ははっ、彼らも弱くはありませんし、改造の結果より多くの力を得ていました──しかしながら、紛い物ですので。本物の、磨かれた宝石とその原石たちには及びませんよ」

 星々が綺羅星の如く誇る逸脱者たち。
 そして、自らの願いを糧に強く光らんとする『プログレス』使いたち。

 最終決戦も近いこの場に残るのは、正真正銘実力を持つ者のみ。
 裏切り者たちも強かったが、相手が悪いとはまさにこのことだ。

「今は複製魔獣(狂化版)で誤魔化していますが、もう持ちませんよ。どうですか?」

「……ええ、充分です。ご苦労様でした」

「ちなみに、最後に私を取り込んで完全体にといった展開は無理ですので、諦めてくださいね」

「たしかにそれも本体は考えていたようですが……ダメでしたね。星敵として内包しているはずのエネルギーは、結局見つけることができませんでした」

 想定されていた展開の一つ、それはここまで残していた俺を喰らいパワーアップするというある意味王道の流れ。

 だがそれはこちらも想定しており、万全の態勢で迎え撃つ準備が出来ている。
 具体的にはエクリ憑依のうえ、【救星者】で周囲の空間を掌握しています。

 そんなわけで、抵抗を続ける俺を喰らおうとすれば時間が足りなくなってしまう。
 なので『空間』の魔獣本体は、それ以外の手段でパワーアップする必要が生まれた。

 それについては分かっていただろうし、そうするための材料はとっくに手配済み。
 上手くいけば儲けもの、ぐらいの感覚でしかなかったはずだ。

「それで、私は何をすれば?」

「……協力を、続けていただけるので?」

「家族に害を成さない、それを認めていただけているのですから構いません。乗り掛かった舟、というわけでもございませんが、最後ぐらいは遊びたいですし」

「…………では、最高戦力たちの足止めをお願いできますか? 彼らも同時に、となると不意を突くことすらできませんので」

「お安い御用です。この『生者』……いえ、星敵『超越生者』の名に懸けて果たしてみせましょう」

 闘技大会と違って縛りも少ないし、むしろ魔獣の支配領域だからこそ得られるモノも少しだけある……勝てと言われているわけでもないし、いろいろと試してみようか。

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